【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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番外編⑬

 

私の名前は白銀かぐ……や……

 

「安心したまえ。私が女の子達のお腹の傷を綺麗に消してみせよう」

 

……

 

 

…………

 

 

……………………は?

 

「ヤブ医者が何故此処にぃッ!!?」

 

「恋の病診断、まだ根に持ってたんだ」

「相変わらず失礼な子だね」

 

後日訪れた田沼総合病院にて、かつて母の主治医だったヤブ医者に女の子達を任せる羽目になった、元お嬢様のカメラマンだ。

 

コイツが現れると何故かタイミング良く病院のBGMが変わるのよね。朝の総回診を連想させるようなアレに。何故かしら……?

 

「そりゃあ私はこの病院の院長だからね。私がいるのは当然さ。――では早速一人目のオペを始めよう。翼、渚くん、長丁場だが手伝っておくれ」

「はい、お祖父さん」

「分かりました。じゃあかぐやちゃん、早坂さん。また」

「え、えぇ、お願いしますね」

 

手術室へ向かった渚さん達を私と愛で見送る。正直碌に診察も出来ないヤブ医者が執刀医とか不安しかないけど、渚さん達夫婦がサポートに付くならまあ大丈夫でしょう。

 

「しっかし渚さんも凄いよねー。実家の仕事や子育てと並行して、旦那の為に看護師の資格まで取ったんだから」

「あら愛ったら、愛する人の為の努力ってどれだけやっても苦じゃないものよ?」

「そうなの?」

「えぇ。私だってカメラマンと御行さんの仕事の手伝いで多忙だけど、寧ろ彼の力になれてると思うと幸せ一杯になって、逆に日頃の疲れが吹っ飛んでしまうわー」

「あはは、相変わらず会長とは仲良さそうで何よりだよ」

「勿論、私と御行さんは年がら年中おしどり夫婦なんだから! この間だって――」

 

此処が病院なのも忘れて思わずハイテンションで惚気話に移行する私を、若干呆れつつも微笑ましそうな様子で耳を傾けてくれる愛。修学旅行で起きたハプニングを乗り越え親友へと至った私達。こうして分け隔てなく接し合える関係がずっと続いていって欲しいものね。

 

「……?」

 

その時、酷く澱んだ空気が漂ってくるのを感じた。

 

「……良いなぁ翼くんとの共同作業。私も選択を間違えてなければ今頃ああなってた筈なのに」

 

「って何時の間に!?」

「眞紀さん……」

 

気が付けば隣に立っていた眞紀さんが、既に誰もいない廊下を死んだ魚の目で見詰めながらボソボソと独り言を呟いていた。あの、やめて下さいません? 怖いんですけど。

 

「全く……貴女もいい加減諦めて新しい恋を見付けなさいよ。このままだと行き遅れちゃうわ」

 

ゴブッ!!? お、おば様は良いわよねッ!? 意中のお相手と疾う昔にゴールインしてるんだから!!」

「か、かぐや止めて……その言葉は私にも効く、カフッ」

 

えっ、愛もまだ出会いに恵まれてなかったの? この年でまだ処女だなんて……流石に同情してきたわ。

 

「私がお二人にお似合いの男性を見繕って差し上げましょうか?」

 

「「要らんお世話だッ(よッ)!!」」

 

手伝いを申し出たものの、半ギレした二人からキッパリと断られました。

 

「よう、お前ら此処にいたのか。探したぜ」

「あ、龍珠先輩」

 

其処へ現れた龍珠先輩が、視界に映った光景に怪訝な顔を浮かべる。

 

「うえええええんッ、なんでこんな事にぃいいいい!!」

「はぁ、ダメだー私。どうしてこんなに男運無いんだろう……」

 

何せ眞紀さんと愛が己の将来を憂いている場面だったので。

 

「……コイツら何があったんだ?」

「そっとしといてあげて下さいます?」

「いやでも……此処は病院なんだから騒ぐのは迷惑だろ?」

 

あぁ、確かに先輩の言う通りですわね。取り敢えず喚き散らかしてる眞紀さんを頭チョップで黙らせておきましょう。

 

「ホゴッ!?」

 

よし、これで静かになったわ。

 

「容赦ねえなお前……」

「それよりも龍珠先輩。本事件を起こしたもう一つの犯人について何か分かりましたか?」

「……場所を変えるぞ。あまり他人に聞かせられるような話じゃない」

 

ふむ、この態度からして物騒な内容なのでしょうね。

 

私と愛は気絶した眞紀さんを引き摺り、龍珠先輩の後を付いて行きました。

 

 

 

 

 

「――行方不明のマフィア『ナックル・アイ』だが、どうやら天羽組に消されたようだ」

 

病院の地下駐車場に停められた先輩の車にお邪魔させて頂いた私達は、その中で先輩から残る犯人達の末路を聞かされた。裏社会でもかなり名の知れた組織の登場に、愛は驚いた様子で聞き返す。

 

「あの”コロシの天羽組”に? この事件、裏で彼等も動いてたのですか?」

「あぁ、誘拐された少女の中に空龍街出身の女子高生が2名いたんだ。彼女達が誘拐されたのは別の街だったし、おそらく風見組は天羽組のシマの堅気と知らずに攫ったんだろうぜ」

「……なんて命知らずな」

 

コロシの天羽組。空龍街を拠点とする少数精鋭の超武闘派極道で、構成員の殆どが怪物染みた実力者の集まりだとか。

 

「全くだ。情報によれば、風見組の取引役含む100人を僅か三人で皆殺しにしたんだと。そんな化け物集団、龍珠組(うち)ですら仮に戦争になれば大被害は避けられねえよ」

「天羽組自体は聞いた事あるけど……噂以上に人間辞め過ぎじゃない?」

 

既に意識を取り戻していた眞紀さんも開いた口が塞がらない御様子。私や愛、龍珠先輩も相当鍛えてはいるものの、流石に30倍以上の敵相手に一方的な殲滅は無理だ。それを普通にやってのけてしまうのが、”コロシの天羽組”と呼ばれ恐れられる所以でもある。

構成員1万人超えの武闘派組織である龍珠組ですら対立を避ける相手。弱体化したナックル・アイや風見組では勝負にすらならなかったでしょう。

 

「ま、所詮は証拠能力のない裏社会出自の情報だ。小島の話じゃ取引場所は争った形跡も指紋も皆無だったらしいし、天羽組本人に確認を取っても知らぬ存ぜぬだろうぜ」

「それだけ派手に暴れておきながら証拠は一切残さず、ですか。何十年もそれを続けて、警察機能が回復して以降も一斉逮捕されなかったのは逆に凄いですね……」

 

とはいえ天羽組に対して何かするつもりは我々にはありません。

御前討伐で治安が大幅に回復したとはいえ、悪人が消える事は決して在り得ない。人間である以上、善人だらけの完璧な世界なぞ未来永劫実現不可能なのだから。ならばそれを抑える必要悪も根絶すべきではないと私達は考えます。龍珠組もまたその一端を担う勢力です。

 

天羽組は根っからの任侠集団。彼等の存在は間違いなく空龍街および周辺地域の治安維持に大きく貢献している。少なくとも現状は当人達に任せておくのがベストでしょう。

 

……仮に彼等が外道に落ちたとしても、その時こそ優秀さを取り戻した司法に排除されるだけですし、場合によっては拷問ソムリエやアサシンの餌食になるだけしょうからね。

 

「とまぁこんな感じで、暫くの間ナックル・アイは日本での活動は不可能だろう。お前等に伝えたかった情報ってのは、こんなところだな」

 

で、話は変わるんだが。そう言って龍珠先輩は助手席に座る私に視線を送る。

 

「――事件当時、風見組本部の構成員が殆ど倒れてたらしいが、あれが星野マリアって餓鬼の仕業の可能性が高いと考えて良いな」

「私の予想通りですね……警察は『子供がヤクザの集団相手に勝てる訳がない』と信じてないみたいですが」

 

事情聴取した警察官は本人達にちゃんと確認したのかしら……? まあ仮に信じてもヤクザは銃火器で武装していて、マリア君達はほぼ素手。正当防衛は成立してたでしょうけど。

 

「前に紅林の事を話したよな? アイツは堅気ながらも裏社会で『紅鬼』の異名で有名なんだが、星野マリアにその兄貴と姉貴は――その弟子だという事が判明した」

 

表社会の人間が異名付きで評判になる事自体凄いが、裏で有名という事は即ち相応の猛者を意味する。そんな人物の元で訓練を受けていたのなら、確かに並の子供よりは強い筈だ。

 

「因みにその紅林はな――あの『伊集院茂夫』の弟子でもあるんだ」

 

「―――」

 

途轍もないビッグネームを耳にした私は一瞬思考が止まるも、すぐに再起動する。

 

「何ですって……伊集院氏の?」

「拷問ソムリエの、弟子……?」

「あの名家の伊集院家の嫡男に弟子がいたなんて初めて聞いたんですけど……!」

 

対御前戦争に参戦した連合軍最高戦力の一人にして、かつての暴君『御堂鋼作』を討ち取った旧華族の御曹司。現在でも裏社会の災厄と恐れられてる方だが、ここでその名前が出てきた事に私達三人は驚愕した。何時も威圧的な態度を崩さない龍珠先輩ですら心穏やかではなく、冷や汗をかきながら力強く頷く。

 

「つまり星野三兄弟は――拷問ソムリエの孫弟子にあたる」

 

敵対自体が破滅と同義の拷問ソムリエ。その弟子である”紅鬼”こと『紅林二郎』。そしてそのまた弟子であるマリア君達三兄弟。

 

「そう考えたら納得出来るだろ? ヤクザ数十人を子供がたった三人で倒すのもさ」

 

昨年の巨人と戦えた事といい……これは私がイメージする星野マリア君の実力を上方修正しなくては、ですね。

 

「あの地獄の閻魔と繋がりがあるんだからよ」

「……えぇ」

 

もしかしたらあの子、私や愛以上の猛者かもしれないわ。

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