【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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真田「芸能人のアクア君、ルビーちゃん、そしてマリア君。強くて、健気で、真っ直ぐで、美しくて……宝石の名に恥じない輝きを放つ子達。ぞっこんになりそう」

八神「流石に子供は止めておけ真田。色々な意味でアウトになる」

真田「あれ? 裏社会の住民の俺にそれ言っちゃう?」





さて、いよいよ炎上問題解決へと動きます。


76話

――久々に家族みんなと添い寝した翌日の事。

 

おれはお兄ちゃんの自室に赴き、お兄ちゃんが椅子に座ってパソコンを操作する姿を後ろから眺めていた。

キーボードの連続的なカタカタ音とマウスの小刻みなクリック音。それらが落ち着いたところでおれは話し掛ける。

 

「お兄ちゃん、協力ありがとね」

「俺もこのままは気に喰わないと思ってたからな。マリアに頼まれなくてもやっていたさ。編集の方は任せてくれ。監督から教えられた全てを叩き込んでやるから」

「さっすがは映像監督様! 頼もしー」

「よしてくれ、俺なんてまだまだ卵だよ」

 

椅子の背に肘を置き、両手で頬を支えながら敬愛する兄へ純粋な称賛を向ける。謙遜する割には弟に褒められて嬉しそうだ。

 

さてさて、現在お兄ちゃんが使うパソコンの画面上には、今ガチ収録中にスマホで撮影した写真データがズラリと並んでいる。とは言えお兄ちゃんの分だけなので数はそれ程でもなくて、素材として使うには少々寂しいかな。

これに関しては自分からも提供するつもりだけど、その量を見たお兄ちゃんはきっと面白い反応をしてくれそう。

 

「……問題は番組側が此方の提案、もとい“お願い”を聞いてくれるかだが」

「番組なんか知った事じゃない。おれ達はあくまで仲間の為にやるんだから。……まあ呑んでくれるなら少しは番組にもメリットになる形にはしてあげるけど。ダメならダメで代案は用意出来てるし」

「何だ、その代案ってのは?」

「まだ秘密。ただ、本来ならこの代案だけで十分なんだけどね。態々番組サイドに提案してあげるのも、彼等がどこまで堕ちてるか確認してみたいのが真の目的だし」

「……俺達のお願いを聞いて尚子供を悪者扱いするつもりなら、こっちにも考えがあるって事か」

 

するとお兄ちゃんが此方を振り返り、真剣そうな面持ちでおれを見詰める。

 

「だがマリア、それは本来良い手段とは言えないぞ? こと芸能界においては、相手に喧嘩を売る行為はリスクでしかない。そしてそれで損害を受けるのはお前だけじゃない、事務所やそこに所属する人間全員にも類が及ぶんだ」

 

……もう分かってるんだろうなあ、お兄ちゃんは。おれが番組側を逆に悪者に仕立て上げるつもりだって。

 

「流石に訴訟されるレベルの真似はしないよ? 母さん達にまで迷惑掛けたくないし」

 

お兄ちゃんが語るリスクなぞ百も承知だ。苺プロまで巻き込むつもりは一切無い。

みなみ達を悪者みたいに編集したのは番組側なのに、それで事実を公にされれば訴訟ものとか逆切れも良いとこだけど。

 

「まあちょ~~と匂わせる程度には描写するかもね? 『コイツ等おれ達を餓鬼だからと舐めてやがりましたよ』って。それでほんの僅か~に番組そのもののイメージがダウンしちゃうかもだけど」

 

って言うか、タレント悪者化商法で結局リアルに今ガチ自体がイメージダウンしちゃってるし。『”性悪女”を起用した番組は人を見る目が無い無能共』とか。じゃあその程度は誤差だよね♪ 

 

(……昔のおれならこの程度では済まさなかった。舐められたら相手を殺る一択なのだから)

 

そこから物凄く丸くなれたけど、どうやら根っこの部分は全然変わってないらしい。そんな危うさも残す弟が行き過ぎたりしないか、お兄ちゃんは心配で仕方ない。

 

「……仮に作る事になったら俺が最終チェックを行う。そんなリスクをマリアに犯させる訳にはいかないからな」

「は~いお兄ちゃん」

 

ありゃりゃ、信用されてないなあ。単に弟想いなだけなんだけど。

 

まあ、最優先事項はみなみ達を救う事。好きな女の子と仲間が世間から悪い意味で誤解されたままなんて、おれには我慢出来ない。彼女達には相応しい戦場へと問題なく復帰し、今後も全力で輝いて欲しいものだ。だから例え番組にケジメを取らせられなかったとしても、それはそれで別に構わないという姿勢だ。

 

「でもさ、仮におれが何もしなくたって同じ事を今後も繰り返すようなら、代償を支払う時が絶対に来る。やった事に対するケジメは必ず取らされるものなんだよ、お兄ちゃん」

 

ついこの間滅亡したヤクザやマフィア達のように。

 

「そんな結末になる前に、ここで改めて欲しいと考えてる」

「そうだね。黒川さん達みたいな被害者がこれ以上出る事はあってはならない事だよ」

 

願わくば此方の訴えで僅かでも番組の姿勢が改善される事を。それでもダメなら仕方ない。今ガチを手掛ける連中とは縁を切らせて貰おう、苺プロ総出で。

 

「さーて、あとはMEMちょに協力要請だ。一番大衆の注意を惹けるタイミングを見計らってバズらせるなら、彼女程の適任はいないもんね」

「なら寿さんとあかね以外の面子で一度集まろう。事前協議で話を固めておいた方が当日スムーズに事を運びやすいからな。おれとマリアの分以外の写真や動画も欲しいし」

「そうだねお兄ちゃん。早速みんなに個別で連絡を入れてくよ」

 

実は今ガチ製作委員会から重要な話があると、メンバーに対して4日後に集まるよう呼び出しを受けた。内容は大方予想が付くけど、みなみと黒川の意思次第では本件を提案してみるつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そしてあっという間に事件解決から5日後。

 

おれ達今ガチメンバーは、何時もの撮影場所である高校の会議室に集められていた。直接誘拐被害を受けたメンバーのみ参加は自由と伝えられたが、ある計画を実行する為にもおれはお兄ちゃんと共に出席する。

 

其処へ近付く二人の女の子。少々病み上がりのようにも見える黒髪の子が、桃色の髪の子に寄り添われるようにして歩いている。良くも悪くも現在世間から注目を浴びている子達だ。

 

「あかねちゃん大丈夫なん? あんな事あったばかりやし」

「うん、なんとか。みんながいるからね。でも明日からの復帰はまだちょっと無理かな? そう言うみなみちゃんは?」

「ウチも平気や。取り敢えず明日の撮影には参加するよ。おおきにな」

 

炎上騒動に加え、ヤクザに誘拐され危うく内臓を抜かれるところだったのだ。高校生の子供がそんな目に遭えばトラウマになってもおかしくなく、普通なら番組出演を見送る筈だ。それでも二人は数日ぶりに姿を見せてくれた。

 

「あかね! みなみちゃん!」

「ゆきちゃん、みんな。おはようございます」

「おはようございますー皆さん」

 

入室した黒川とみなみに気付いた鷲見が真っ先に駆け寄り、二人に思いっきり抱き着く。

 

「あれから学校休んでるらしいけど、二人とも出ても大丈夫なの?」

「大丈夫、みんなが毎日電話で元気付けてくれたから。スマホもお母さんに預けてコメントを見ないようにしてるし、1週間前と比べたら大分落ち着いたよ」

「……みなみちゃんから誘拐される直前に飛び降りようとしてたって聞いてさ、私ここ数日あかねの事が気になって仕方なかった。そんな馬鹿な真似、次やったら絶対許さないからね?」

「うん、心配掛けて本当にごめんなさい。私は独りぼっちじゃないって、もう分かってたから。友達を悲しませるような真似は二度としない。何かあったらちゃんと相談するよ」

「……なら良いよ。許す」

「ありがとう、ゆきちゃん」

 

そこへおれを含む残る5名のメンバーも近付き、現れた二人に心配と労いの言葉を掛けるのだった。

 

「みなみ」

 

開始5分前になって他の仲間達が席へ移動する中、おれは前を歩いているみなみを呼び止めた。くるりと振り返る仕草が何とも可愛らしい。

 

あ、おっぱい揺れた。

 

「どうしたんマーくん?」

「え、いや、あのさ……!」

 

いかんいかん、何失礼な事考えてんの。彼女に伝えたい事があるんでしょうが。

 

「今回番組から呼び出された理由なんだけどさ――おそらく番組を取り止めたいとかその辺の話をする為だと思うんだ」

 

みなみはまるで頭をトンカチで打たれたかのような衝撃を受け、目を見開き固まった。そしておそるおそる口を開く。

 

「……え、それって打ち切り? どうしてなん?」

「理由は十中八九、5日前の事件だろうね」

 

少女連続失踪事件は全国規模でニュースとなり、数日間は特番が組まれるなど日本中が大騒ぎとなっていた。その際、被害者の中に今ガチの出演者――ゆきと黒川、みなみ、熊野、そしておれ――がいた事も報道され、結果限られた領域のみで話題に挙がっていた今ガチ、およびメンバーの知名度は爆発的に上昇。今や今ガチは日本でも上位に入る有名なネット番組となった。

 

皮肉にもそれが黒川とみなみに対する誹謗中傷を弱らせ、同情的な意見もそれなりに見受けられるようになった。流石に命の危機に関わる目に遭った少女達を、それでも尚叩こうという行為に躊躇する者も出始めた、という訳である。

勿論、『性悪女共に天罰が下った』と更に罵声を浴びせるゴミも一定数いたが、その手の輩はみなみ達を擁護する者や不謹慎過ぎる発言に琴線が触れた連中とネット上で激しくぶつかり合い、拮抗状態となっている。

 

MEMちょ曰く、今は広告代理店風に言うと『能動視聴者数が多く、強いインプレッションが期待出来る』状況……との事。

黒川達への批判の意見を出している者はごく少数。誘拐事件というセンシティブな話題を前に、民衆は叩くべきか擁護すべきか悩み、答えを出しかねている。

そんな中へおれとお兄ちゃんが考えた”秘策”をぶち込めば、二人の立場は一気に改善へと向かうだろう。数千万もの人間の注目を浴びている状況だ。誇張無しの世論操作となる。

 

風見組さん、この点に関してだけは感謝するよ。仲間達の名誉を回復させる、最大規模のチャンスを齎してくれたのだから。それはそれとして刑務所で臭い飯食ってて欲しいけど。

 

閑話休題。

 

「出演者の半数以上が誘拐被害に遭ったんだ。普通に考えれば番組の続行は難しい。だから一度タレントの意思を確認したい、そんなところだと思うよ?」

 

先程も言ったように、これ程の大事件に自分の所の出演タレントが5名も巻き込まれてしまった。いや、誘拐犯に襲撃された件も含めれば、お姉ちゃんやパイセンも入れて実に10名もの被害者を出している。場合によっては被害者全員が番組を降りる事になり、そうなれば今ガチの続行は不可能となる。

 

これだけ注目を浴びてる状況はまたとないビジネスチャンスだが、タレント達の意思次第では打ち切らざるを得ない。当人達の希望を明確に確認し、それを公式で強調してから続行する。じゃないと、最悪今度は番組側が誹謗中傷の渦中に放り込まれる。そういうリスクを避けたいのも理由の一つだろう。

 

もっとも、それが秘策を中断する理由にはならない。番組は番組、仲間は仲間だ。

 

「安心してよみなみ。仮に番組が中止になっても君と黒川さんの誤解を解いてみせるから」

 

おれは不安そうなみなみに人懐っこい笑みを浮かべてそう答えた。

 

「……マーくん、何か考えがあるんやな?」

「うん。これから番組の人達にも話すつもりだから、そこで聞いてくれるかな?」

「分かったで」

 

廊下からディレクターを始め、番組製作の責任者やスタッフ陣が近付く足音が聞こえる。おれとみなみは急いで席に腰を下ろすと、直後に大勢の大人達が部屋へと入ってきた。




次回、子供VS大人(※殺し合いではなく議論のようなものです)
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