【裏社会の悪魔の転生先は、完璧で究極のアイドルの子でした】(本編完結)   作:Woudy

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78話

「みんなよく来たねー! さあさあ、遠慮しないで上がって頂戴!」

 

『お邪魔しまーす』

 

翌日。みなみと黒川を含む今ガチメンバーが五反田監督の自宅を訪れていた。玄関口にて髪型と声量で存在感マックスな監督の母――おばさんに出迎えられ、おれとお兄ちゃんが待つ監督の自室に案内される。

 

「何でまた俺ん部屋にこんなに集まんだよ……人口密度高過ぎだろ?」

「だって此処が機材とか色々揃ってて動画作るのに最適なトコだし」

 

あまりの大人数に顔を顰めた監督が愚痴を零すも、準備に取り掛かっている最中のお兄ちゃんは当人の方を向かず軽く返答するのみ。半ば素っ気ない扱いに溜息を吐く監督に対し、キッチンへ戻りかけてたおばさんが元気溌溂な声で話し掛けた。

 

「ほらほら泰志! アンタは今日くらい部屋に引き篭もってないで外の空気でも吸ってきな! もう何日も閉じこもったまんまでしょ!」

「仕事なんだから仕方ねえだろ母ちゃん……まあ良いや、ある程度落ち着いたとこだし。おいお前等、部屋には貴重な備品も山程あるんだ。くれぐれも下手に触って壊さねえようにしろよ?」

『はーいッ』

 

部屋の主たる監督が弾かれるように去っていくと、彼と入れ替わるようにして3人の女性が姿を現す。

 

「あ、みんな。一週間ぶりだね~」

「やっほーみなみちゃん、みんな! いらっしゃーい!」

「これまた凄いわね……ぎゅうぎゅう詰めじゃないの」

 

母さんにお姉ちゃん、そしてパイセンである。彼女達もおれ達が作る動画制作が気になり、手伝いも兼ねて一緒に監督の家へお邪魔になっていたのだ。

 

「うおッ、マジか……」

「嘘、超大物が来てるんですけどぉ……」

「あ、あのアイさんにまたお会い出来るなんて! 今日は人生最高の日だよー!」

 

「あはは、もーみんなったら大袈裟だよー」

 

いやいや母さん、貴女の人気っぷりを考えたら大袈裟どころじゃないから。喜びの雄叫びを上げる人の方が大多数だからね?

 

当たり前だが国民的大女優の、それもプライベートな格好での登場に驚きを隠せない一同。MEMちょに至っては感激のあまり恋する乙女のような仕草で感動っぷりを表現する。みんな母さんのマジ切れした姿を目の当たりにした筈だけど、まるで忘れたかのように恐れている様子が一切見受けられないね。

 

(きっとあまりにも怖過ぎたんだろうなぁ……自発的に記憶の彼方へ飛ばしたとか、そんなところだろうか。おれも出来れば忘れたいし)

 

そう考察するおれの隣に座っていたみなみが立ち上がり、お姉ちゃんの元へ近付いていく。

 

「ルビーちゃんも来てたんやな。それにまさかアイさんまで――」

 

仲間達(主にMEMちょ)と楽し気に遣り取りしている母さんを見ようと視線を動かすみなみ。その途上でお姉ちゃんの斜め後ろに立っていた赤髪ボブカットの美少女を視界に収めた。視線に気付いた少女が目をパチクリとさせながらみなみに言葉を返す。

 

「――ん? 何かしら?」

「あの、失礼ですけど何て名前でしたっけ? ルビーちゃんの相方のアイドルなのは知っとるんですけど……」

「ちょッ!?」

 

あぁ、そういえばパイセンとみなみが真面に会話するのは今回が初だったね。一世を風靡した天才子役としての自分は綺麗さっぱり忘れ去られており、パイセンはガーン状態である。

 

「”有馬かな”! 元”10秒で泣ける天才子役”!! 知らない筈ないでしょ、こんな超絶プリティな大人気女優を! ねえッ!?」

「自分でプリティとか人気とか言ってて虚しくない先輩?」

「うっさいわよルビー! その哀れむような目は止めろ!」

 

「有馬……? ――あぁ、ピーマン体操の人でしたっけ? ウチも小さい頃よう踊ってましたけん、思い出しました」

 

ザグッ。そう鋭いものが刺さるような音を聞いた気がした――パイセンから。

 

「うぅ、ちぐしょう……どうしてみんなそっちの私の事しか知らないのよぉ……」

「文字通り苦い思い出だけ残っちゃってるね、先輩?」

「ピーマンだけにね、って黙らっしゃい」

「な、なんだかすんまへん……?」

「お願いだから謝んないで頂戴。余計惨めになってきちゃうから……」

「あ、はい」

 

部屋の隅っこで落ち込むパイセンをお姉ちゃんが背中を擦って慰めてあげた。あはは……まあパイセンがんば。そう遠くない内にアンタは有名人に返り咲けると思うから。それだけのポテンシャルを秘めたモンスターだって、このおれが保証してあげる。

 

「――あ、あの。やっぱりかなちゃん……だよね? えと、久しぶり……?」

 

そんな寂しげで小さな背中に恐る恐るといった様子で声を掛ける少女――黒川。座り込んだまま振り返ったパイセンの彼女に対する表情は、何と言うか……複雑そうである。

 

「黒川、あかね……」

「聞いたよ、みんなと一緒に私達を探してくれたって。この間もゆきちゃん達と警視庁に来てたし。あの時は挨拶すら出来ずに帰宅しちゃったからさ、どうしてもお礼を言いたかったんだ」

「……別に、アンタの為じゃないし。マリア達が猫の手も借りたいって感じだったから仕方なく手伝ってあげたまでよ。まあ想像以上に元気そうで何よりだけど」

 

うっそだぁ、目が濁ってるよパイセン? ホントこれだから素直になれないツンデレさんは。

 

「あ、気を悪くしないでね黒川さん。パイセンてばっ、こう言ってるけど本心は黒川さんを凄く心配してくれてたんだよ?」

 

誤解される前に助け舟を出してあげよっと。善意の擦れ違い程悲しいものは無いからね。

 

「はッ!? し、心配とかしてないし別に!」

「え? 有馬さん私達と一緒の時言ってたじゃん? あかねは天才だからとか、まだ勝負は付いてないからとか、そういう理由であかねを助ける事にしたってさ」

「ちょ、ちょっと……!?」

 

そこへ鷲見の援護射撃が加わり、もはや誤魔化しは効かなくなってしまった。それを聞いた黒川は感極まった様子だ。

 

「かなちゃん……」

「な、何よ? あーもう、心配だし決着もついてないから助けたいと思いました! はい、これで満足……!?」

「……とうとう負けを認める気になったんだね?」

「何処をどう聞いてそう解釈した!? まだ決着ついてないっつってんでしょうが! やっぱ心配して損したわコイツ!」

「まあまあ先輩」

 

意外、あの黒川がパイセンにだけは辛辣に接してるなんて。他の人に対しては礼儀正しくて大人しい振る舞いなのに。それだけ彼女にとってパイセンは特別という事だろうか。おれは二人の過去の因縁?に少し興味が湧いた。

 

「みんな、準備出来たぞ?」

「オッケーお兄ちゃん。早速始めよっか」

 

狼みたいにガルルルと黒川へ威嚇するパイセンを視界の端に収めながら、おれ達の動画制作はスタートした。

 

 

 

 

「……話には聞いてたけど、アッくんすげえな」

「アクたんの手付きが完全にプロのそれだよ〜。イケメンの作業姿って超絵になるー」

「凄いよねー、うちのおにいちゃん! 私こういう作業は今までも見てきたけど未だちんぷんかんぷんだし」

「いや、俺は本業俳優だし。監督みたいな本物のプロにはまだまだ及ばねえよ」

 

と謙遜しながらもMEMちょの言う通り、殆ど本職と変わらない的確で素早い編集捌きを披露するお兄ちゃん。監督の教育成果が顕著に現れていた。みんなに愛する兄の素晴らしいところを知って貰えて、おれは弟冥利に尽きる。

 

「あ、この部分はパーッと明るくすりゃあメッチャ魅力的に映んじゃね?」

「こことかもっと女子の可愛さアピールさせた方が絶対映えるって!」

「熊のんもゆきぽんも意見は順番にね……アクたんが混乱しちゃうから」

「……お、ここはこの曲が雰囲気良さそう。アッくん、渡したデータのNo.25を開いてくれるか?」

「おう、これだな森本」

 

そんなこんなで朝から殆ど休憩なく、ぶっと通しで作業を続けたおれ達。気が付けば外はすっかり暗くなっていた。メインで作業していたお兄ちゃんやMEMちょだけでなく、ほぼ観察するか意見するかだけだった他のメンバーも疲労が溜まっていく。

 

「みんなー、ちょっと良い?」

 

そこへ扉を開けて入室してくる母さんはエプロン姿で、艶やかな黒髪をポニーテールに纏めていた。大人気女優にして絶世の美女の家庭的な姿は、見慣れている筈のおれ達子供ですら目を奪われそうな魅力を持っている。

 

「おばさんと一緒に生姜焼き作ったから、一旦作業は止めてご飯にしよっか? ちゃんと休息は取らないとね?」

「生姜焼き!」

「お肉ッ!」

「推しの手料理を堪能出来る!? こんな日が来るなんて生きてて良かったー!」

「ありがとうアイ姉ちゃん、お腹ペコペコだよー。みなみ、早く行こう!」

「わちょちょ、分かったよマーくん」

「あはは、マリア君もみなみちゃんも仲良いねえ」

「おうおう、見せ付けてくれるぜー」

 

母さん(とおばさん)の手料理と聞いて、お腹も空いていたみんなは目を輝かせる。作業を中断し、おれは仲間達と共にリビングへ向かう。その際、ナチュラルにみなみの手を引いて歩いたので、着いた時に仲間に指摘されて顔が熱くなったけど。

 

『いただきまーす!』

「召し上がれ! ご飯もいっぱい炊いたげたからね、遠慮せず御代わりしなさい! おばちゃんがよそってあげるから」

『はーいッ』

「わ、私は糖質制限してるんで大丈夫です……」

 

大きめのテーブル2つを繋げて囲むように座り、並べられた御馳走に舌鼓を打つ。ぱくっ……うん、このかぼちゃの煮物、甘くて美味しい。出汁が効いてて柔らかくて、口の中でホロホロと崩れていく感じがとても良い。

 

「アイ姉ちゃん、このかぼちゃの煮物って」

「うん、私が作ったんだ。どうかなマリア、味の方は?」

「うん、凄く美味しいよ」

「こっちの生姜焼きも最高ですー」

「良かったー!」

 

隣に座るみなみと一緒に褒めると、母さんは無垢な少女のように喜んでくれた。それを見て嬉しい気持ちになりながら、おれはメインディッシュの豚の生姜焼きをパクリ。うん、美味い。

 

チラリと周囲を見回すと、みんな幸せそうに夕飯を堪能している。此処に並ぶ料理に使われている豚肉もかぼちゃもスーパーの安物ばかり。でも前世で散々食べた高級料理なんかより、家族や仲間と一緒の食事の方が何万倍も美味しい。

 

……あぁでも、幹部連中との食事はそこそこ楽しめたかな。

 

「あとは例のシーンの編集だけか」

「そうだねお兄ちゃん。みなみと黒川さんの印象が良くなるように気合いを入れて臨まないと。……そう言う訳だから2人とも。気分が悪くなるだろうけど当時の心象を後で教えてくれないかな?」

「分かりました。折角みんながウチとあかねちゃんの為に頑張ってくれてるんや。ウチ等に出来る事なら何でも協力するで?」

「うん、これは私達自身の問題だし、任せっぱなしにする訳にはいかないもんね」

「ありがとう、お願いするね?」

 

食事も中盤に差し掛かると、他愛も無い談笑は残る作業についてのミーティングへ移行していく。いよいよメインとなる黒川が鷲見を傷付けてしまったシーンの編集。黒川の焦りと苦しみ、みなみの葛藤と後悔、それらを強調した上で鷲見とはしっかり仲直りした事を世間にハッキリと伝えるつもりだ。

 

「……とはいえ、あのシーンは定点カメラの映像だけだったからな。如何せん素材不足だが、何とかして魅せれるようにしないと」

 

そう、お兄ちゃんが懸念しているのはそこだ。この動画は仲直りするシーンが中心と言っても過言ではないのに、使える映像が足りない状況なのだ。

一応言っておくが制作陣が態と映像提供を渋った訳ではない。本当に素材不足なのである。

 

でもみんな、其処は安心して良い。解決策なら既に用意してある……おれが。

 

「お兄ちゃん。だったらこのデータを使ってよ? はいコレ」

「……ん? マリア、このUSBは?」

 

ポッケに仕舞っていたケースからUSBを取り出し、お兄ちゃんに手渡す。それをマジマジと注意深そうに観察するお兄ちゃんに、おれは詳細を語った。

 

「例のシーンの動画データだよ。収録中はずっと録画しっぱなしだったから、切り取って使ってね?」

 

それを聞いたお兄ちゃんが驚き、得意気に笑うおれを見る。

 

「……まさかマリア。お前が言ってた代案って」

「うん、それの事」

 

実は初回の頃から着用している制服に絡繰りを仕込んであったのだ。多数の小型カメラを全周540度死角無く配置して、収録前から終了後までぶっ通しで録画。帰宅後に自室のパソコンで整理・取捨選択した上でUSBに収めておいた。高解像度カメラだから若干距離があっても例のシーンはバッチリ撮れてある。

恋愛リアリティーショーは人気ながらも毎年何十人もの自殺者を出すハイリスクな番組だ。何より数字重視の傾向が未だ根強い芸能界。万一の時の証拠として活用するつもりでやっといた。リスクヘッジは重要だからね。こんな形で役に立つとは思わなかったけど。

 

「一体どうやって……? 確かお前、当時はカメラ回してなかったよな?」

「そこは企業機密って事でお願い」

 

……まあ、我ながら行き過ぎた警戒心なのは自覚してる。詳細を伝えないのも、流石にドン引きされたくないからだ。

 

お兄ちゃんだけに限らず、その場にいたメンバーの殆どが驚きを隠せない様子となる。誰もが唖然とした表情でおれに注目する中、みなみが開口一番に当然の疑問を投げ掛けてきた。

 

「なあマーくん。そのデータがあるなら、態々スタッフさん達に映像を求める必要無かったんやないの?」

「お兄ちゃんには話したんだけど、確かめたかったんだ――――制作陣が何処まで堕ちているのか」

「堕ちているか?」

「うん」

 

ねえみんな。おれはそう言って笑顔を引っ込ませ、真剣な面持ちで今ガチメンバーを一人一人に語り掛けるように視線を動かす。

 

「今回は運悪くみなみと黒川さんが被害を受けてしまったけどさ……仮に他の人が当時2人と似たような状況になった時、番組側は視聴率よりみんなの事を優先してくれたかな?」

「ッ」

「それは……」

 

全員が言葉に詰まり、視線を逸らす。誰もが分かっていた。もし自分が黒川みたいに鷲見の顔を誤って傷付けてしまったら、ほぼ間違いなく彼女と同じ目に遭ってしまうと。悪者にされ、炎上に晒されてしまうと。

 

キラキラと輝く白米をパクリ。うん、美味しい。モチモチしてて仄かに甘い。

 

「子供の真摯なお願いを正面から受けて尚、子供を数字や食い物として扱うつもりでいるなら、おれは容赦しないよ? ――返答次第では映像データを駆使して番組自体ぶっ潰すつもりでいたし」

「おまッ、なんつう恐ろしい事考えてやがんだよ……!」

 

監督はおれの本気っぷりに愕然とし、思わず口に付けていた味噌汁を容器に戻しかける。仲間達は開いた口が塞がらず、最愛の家族は額に手を当てるか苦笑いのどちらかだ。

だってしょうがないじゃん。おれ、こう見えて舐められるのは大嫌いなんだよ。おれの仲間と知って食い物にする事を選んだ、つまり番組はおれ自身を舐めてるって意味だ。何らかの形で思い知らせたくなっちゃうんだもん。

 

……とは言うものの。

 

「大丈夫、そんな事はしないよ。結局番組からデータは貰えたし、お兄ちゃんにも咎められたし」

「当たり前だ。下手すりゃ苺プロの敵を増やす行為に繋がりかねないんだからな」

「ちゃんと反省してるってば」

 

ぶっちゃけ番組をどうこうするより仲間を救う方が最優先。ここで体制が変わらないようなら放置しても破滅するだろうし、そもおれが直々に何らかのアクションを起こす必要は無いかもしれない。

 

「――でも嬉しいなあ」

「な、何、みなみ……?」

 

するとみなみが楽しそうに笑い掛けてきたので、思わずドキッとしちゃった。

 

「昨日大人達相手に交渉していた時もやけど、ウチ等こんなにマーくんに大事に想われてんやなって。素敵な仲間に出会えたと思わへん、みんな?」

「まあ……確かに?」

「怖いとこも沢山あったけど、結構頼りがいのある子だよなって思ったよ」

「ライトくんが居たから番組もデータをくれたんだろうしな。感謝しかねえよ」

 

「……あんな暴力的な所を見せたから、てっきり嫌われちゃったかなって思ってた」

 

でもどうやら仲間達はおれを拒絶するつもりはないようで、全員笑顔を見せてきてくれた。

 

「ギャップは凄まじかったけどな。でも別に嫌ったりなんかしねえよ、俺達の為に戦ってくれた仲間をよ」

「寧ろ普通にこれからも友達で居たいなって思ったね」

 

仲間達の瞳は、何処までも透き通っていて綺麗だった。

 

「……ありがとう、みんな」

 

嬉し過ぎて、ちょっと目頭が熱くなった気がする。それを隣で見ていた母さんが、慈しみの籠った笑顔を浮かべていた。

 

「みんな良いお友達だね?」

「うん、ありがとうアイ姉ちゃん」

 

とても温かく賑やかで、楽しい夕飯。今生において一二を争う素敵な夕食会だと思えた。

 

 

 

 

 

そして夕飯は終わり、再び監督の自室に戻ったおれ達。

 

「あまり無理しちゃダメだよーみんな?」

『はーいッ』

 

明日の9時から撮影がある母さんは、子供達にそう言って割り当てられた部屋へ戻っていく。そのまま監督の家から出勤するつもりとの事。お姉ちゃんも最初は母さんに早く寝るよう言われたが、必死に説得して夜更かしを認めて貰った。

 

因みに夜通しで自室を占領される羽目になった監督は、別の部屋で就寝に入って貰っている。申し訳ないが、あと数時間は協力して欲しい。

 

「あ、そうだ! 私から一つ提案良いかな?」

「何、お姉ちゃん?」

 

お兄ちゃんがおれから受け取ったデータを使って例のシーンの編集に入った時、お姉ちゃんが挙手してみんなの注目を集める。

 

「動画の最後でさ――この動画を作ろうとした経緯をしっかり説明するのはどうかな? ぴえヨンとコラボした時もぴえヨンがコラボした理由を最初に話してたから、ちょっと考えてみたんだけど」

 

それは嘘嫌いなお姉ちゃんらしい、真っ直ぐで素敵な提案だった。




マリア「多数の小型カメラを全周540度死角無く配置して――」

須永「因みに私の目も540度見えます」

一条「一周半してどうすんだよ」
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