女海賊【泣跡の鬼神】   作:なゆさん

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いつもの如く、思いつき。


1話

「ぐわぁ!!」

 

眼の前で斬られて息絶える男。一応肉親であったその肉塊を私は無感動に見つめる。

 

 

生まれて落ちて4年間、ろくなことのない生活だった。

()()()()()があったから生き残れたが、私が早熟だからと2歳の頃から毎日毎日この男に命令され、物を盗み殴られ、帰ればこの男に殴られ、食べ物すらろくにない環境で生きてきた。

時には刃物なんて持ち出されたりして、顔の目の下あたりを斬られた。その傷跡は涙の跡のようになってずっと残っている。

 

 

そんな生活を過ごす羽目になった元凶を人型の肉塊に変えた男。そいつは斬殺を楽しんでいるのか、肉塊を何度も斬りつけていた。

男の心からの快楽を感じる。ある時から相手がどこに居るのか、何を考えているのか分かるようになっていた私は、私の運命を悟った。

 

「……私は、死ぬのか」

 

せっかく転生を果たしたのに、生まれた環境は最悪だし、今まさに村に攻めてきた海賊によって私の人生は終わろうとしている。

クソだ。まさしくクソだ。腹が立つ。何故私がこんな目に遭わなければならないのか。

 

 

「へへへ。次は君の番だ。何なら逃げてもよかったんだがなぁ。逃げねえっつーんなら大人しく殺されてくれや」

 

嘘つき。どっちにしろ殺す気満々の癖に。私は半分ヤケクソで、拳を握る。

 

「お? どうしたんだ? まさか、そのちっちゃなおててで俺を倒そうってか? ハハハハハハ! まったく笑わせんなよなぁ!」

 

うるさいな。こっちだって分かってるんだよ。

2歳から鍛えてるとはいえ、4歳の、それも栄養失調の女が拳を握る。相手は本当の海賊。まったく冗談にしちゃ出来が悪い。

 

「決めたぜ。お前はただじゃ殺さねえ。じっくり痛ぶって、泣きわめいて許しを請うお前をなぶり殺しにしてやる。――先手は譲ってやるぜチビ。優しいオジさんからのお情けだ。ホレ」

 

無防備に顔を近づける男。

私では、4歳の女ごときでは、己を害することなどありえないとたかをくくっているのだ。

 

私は、その事実に―――

 

 

―――普通に苛ついた。

 

「あ、ん、ま、り……」

 

振りかぶる。それと同時に()()()()()()()

 

「……舐めるな!!!」

 

『ゴシャッ』

 

おおよそ拳が当たった音とは思えない音が、滅びた街に響き渡る。

 

「ゴハッ!?」

 

男は何が起こったのか分からぬまま、致命的なダメージを受け倒れ伏した。

 

 

「今のは……武装色の覇気?」

 

この技には見覚えがあった。まあ技というより技術か。

【武装色の覇気】前世の漫画【ワンピース】に出てきた技術だ。

……つまり、ここはワンピースの世界か? ということは、私が人の場所や心が分かったりしたのは【見聞色の覇気】のお陰か。

 

「……何で私のような子供が?」

 

本来、私のような子供が出来るような技術でもない筈だ。

原作では化物みたいな強さと才能を持った主人公でさえ、習得しきるのに2年かかっている。こんな小娘が一朝一夕で出来るような、簡単な物ではない。

……そこまでガチでワンピースを読んでいた訳ではないし、何なら前世の記憶は少しずつ忘れつつあるが、はっきり覚えていることがある。ワンピースの世界は弱肉強食の世界。強い奴が正義で、弱い奴は惨めにすべてを奪われる。

 

「力があるんなら、あった方がいいな。」

 

前世では親のせいで掴めなかった【自由】。もしかしたら、この世界でなら、そして親が死んだ今なら、掴めるかもしれない。

 

「よし!」

 

私は決意する。この世界で、真に自由になる。その為なら、周りはもちろん、自分の命ですらかけてみせよう。阻むもの全てを打ち砕こう。

 

「そうと決まれば……」

 

私は、他の海賊の去った、焼け野原となった故郷を旅立った。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

正直に言おう。旅立った直後はハイになっていて気づかなかったが、それはもうヤバい状況だった。

いくら4歳で大人顔負けの体力と膂力を持ってたって、覇気が使えたって、所詮は四歳児だ。

十分な食事も休息も取ってない私の身体はもうボロボロだった。もう感覚すらなくなりかけている足を引きずり、倒れそうになりながら、どこに行くかも分からずに歩いた。

 

 

その結果―――

 

「おい小娘!! さっさと起きんか!! 飯作れ!!」

 

「大声出すな!! うるさい!!」 

 

クソジジイに拾われたのだった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

このジジイの名前は、モー・D・レッド。

何でも、グラウンドライン新世界で暴れまわり、【国落とし】の二つ名を世に轟かせた大海賊、それも船長だったらしい。身体にガタがき始め、海賊団を解散。そのまま隠居先としてここを選んだそうだ。

 

拾われた後、私はこのジジイにご飯を恵んでもらった。

だから最初は、普通にいいおじいさんかと思っていたのだが、その期待は早々に裏切られる。

 

 

 

話は拾われた頃に遡る。

 

「お前はこの儂に飯を恵んでもらった。そうじゃな?」

 

「ああ。そうだ」

 

「ならその恩を返してもらおう。お前には儂の家の雑用を全てしてもらう」

 

「――はぁ?」

 

「子供だが、身体つきと手の荒れ具合を見るに家事は一通り出来るじゃろう? 儂もそろそろ、家事の出来る者を雇おうと思っていたところじゃ。丁度いい」

 

「何を勝手に……」

 

「――儂に逆らうか?」

 

その瞬間、眼の前のおじいさんからとてつもないプレッシャーが放たれる。

 

「ッ!!!」

 

「……ほう。その歳で儂の覇王色に耐えるか。小娘、歳と名前は?」

 

「4歳だ。名は無い」

 

そんなもの、今世ではもらってない。かと言って、前世のは名乗りたくなかった。

 

「そうか! なら儂が名づけてやろう……」

 

そして、おじいさんは少し考える素振りを見せて、

 

「……後でな!!」

 

後回しにした。

 

「こんのクソジジイ!!!」

 

人の名前だぞ!

当然私はキレた。

 

「ガッハッハ! 無論、お前にも得はある。今のお前では何処に行っても野垂れ死ぬだけだ。そこでお前に、儂の海賊としての全てを授けよう。全てを習得し、儂に勝てたらもう出ていって構わん」

 

行く宛も無く、航海術も船も無い私は、その提案を渋々受けた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

そして今に至る。あれから2年。ジジイから習った必要知識、航海術、医術はマスターした。――そして、

 

「ガハハ! 今日も負けに来たか!」

 

「今日こそ勝つ!」

 

残すは独り立ちと船をかけた真剣勝負のみとなった。

 

 

「んじゃ、行くぞぉ!!」

 

先に動いたのはジジイ。真正面から、そのゴリラみたいな馬鹿力で殴りかかってくる。

 

「クッ!!」

 

ギリギリで躱す。ジジイはスピードもパワーも化物。一瞬でも気を抜いたら終わることは、これまででよく思い知らされた。

その勢いのまま、武装色の覇気でカウンターを決める。

 

「【天拳(てんけん)】!!」

 

「ぐはっ!!」

 

ジジイの身体がくの字に曲がり、のけぞる。

 

「ガハハ!相変わらずガキのくせしてやるのう!」

 

だが、ダメージ自体はそこまででもないのか、すぐさま襲いかかってきた。

 

「【螺旋天鋼(らせんてんこう)】!!」

 

「甘い!!」

 

ジジイの突進を読んでの攻撃が空を切る。見聞色で察知されたようだ。

 

「ガハハ! どれ、ガープの真似事でもしてみるか!! そぉら、げんこぉつ!!」

 

ジジイの拳が上から迫る。

 

「【天落(てんらく)】!!」

 

それを利用し、ジジイを投げ下ろし、地面に叩きつける。

 

「ぐっ!!」

 

流石のジジイもこれにはダメージを受け、吐血する。

 

「見聞色もよく使えておるな。ガハハ! 久々に血が滾ってきたわい!」

 

ジジイのプレッシャーが増す。覇王色だ。

 

「フン!!」

 

こちらも覇王色を発動させる。互いの覇王色は衝突し、黒い稲妻を生んだ後、対消滅した。

 

「ギア上げていくぞぉ!!小娘!!」

 

瞬間、ジジイが消えた。

 

「【天拳(てんけん)】!!」

 

見聞色で察知し、拳を放つ。しかし、

 

「っ!!いない!?」

 

「見聞色対策など済んでおる。この程度のフェイントで動じるな!」

 

横から声がした。咄嗟に武装色を発動する。

 

「ぐっ!!」

 

『メキィ』

 

横腹に凄まじい衝撃。堪らず吹っ飛ばされる。

 

「まだまだぁ!!死ぬなよぉ!!」

 

追撃の手を緩めないジジイ。そのまま私の頭を掴んで、地面に叩きつける。

 

『ドゴォ』

 

受け身と武装色でダメージを緩和するが、上から迫る影に休む暇も無く必死に回避する。

 

「せいやぁ!!」

 

ジジイは地面に拳を放つ。地面が耐えきれず、抉れた。

 

「くっ!!」

 

威力がおかしい!! 絶対に六歳児に使っていい技じゃないだろう!!

 

「トドメじゃ!!」

 

衝撃で態勢の崩れた私に、ジジイがそう告げ、消える。

――瞬間、私は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これって…! ッ!!」

 

その幻影通り、後ろを振り返るとジジイが拳を振りかぶっていた。

 

「ぬ?――フン! 気付いたとて遅いわ!!」

 

ジジイの拳が迫る。私は武装色を一点に集中させた。

 

「おりゃあ!!」

 

「ぐっ! あああー!!」

 

ジジイの拳は重く、硬く、強かった。

 

「何!?」

 

だが、満身創痍になりながらも、意地で何とか踏ん張った。

 

「――ガアアア!!」

 

殆ど意識は無く、気合だけで立っているようなものだった。だが、残った全ての力を込め、全霊の一撃を放つ。

 

「【天衝(てんしょう)】!!!」

 

 

その少女が無意識に放った、全身全霊。その一撃は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぐおおッ……!!」

 

堪らず意識を失い、白目を剥いて倒れるレッド。

 

「……。」

 

そしてそれを成した本人は立ったまま、技を放った姿勢のまま気絶していた。

 

両者、戦闘不能という結果で、この戦いは幕を下ろした。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

目が覚めた。

 

「……知ってる天井だ」

 

なんとなく頭に浮かんだセリフを口ずさむ。

 

「――おお! 起きたか小娘!」

 

どうやら近くにいたらしい。ジジイが部屋に入ってきて、私の顔を覗き込んできた。

 

「ああ。それよりあの後、どうなった?」

 

「……ウム。儂は倒れ、貴様は倒れなかった。それが全てであろうよ。【未来視】と【流桜】を覚えた貴様なら十分に一人でやっていけるしな」

 

「……やっとか!」

 

私は感動に震えた。この2年、負けっぱなしだったこのジジイが、ついに自分を認めたのだ。

土壇場で未来視と流桜を使えなければ負けていたのだが、今世の私は才能がある。感覚は掴んだので、もう実戦使用できるだろう。

 

「今の貴様の実力なら、新世界でもそうそう負けはせんだろう」

 

「何六歳児を新世界で通用するレベルにしてるんだ…!」

 

ほとほと、このジジイには呆れ果てる。

 

「お前には我が船、【ブリテ号】、そして儂の仲間が造った名刀、【天泣(あまな)】。それと、名を与えよう」

 

船は、港に停めてある。一度乗った事があるが、いい船だった。刀は、私が一番使いやすい武器なのでとても助かる。素手だけじゃ心許ないし。贈り物としては、素直に嬉しい2つだ。

……ただ、

 

「ちゃんとした名前をつけろよ?」

 

「ガッハッハ!分かっておる!」

 

心配だ。凄く心配だ。

 

「……うむ! お前の名前は―――」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

数時間後、夜にも関わらず私は海の上にいた。

あの後食料を詰め込み、すぐに出航したのだ。

 

「それにしてもあのジジイ……まさか剣と同じ名前にするなんて……」

 

そう、私の名前は、今日から『モー・D・アマナ』だ。

悪い名前とは言わないし、この世界では普通の名前なんだけど、もう少し考えてもよかったと思う。 

 

「まあいい。せっかく出航したんだ。景気よくいこう」

 

自作した花火を取り出す。

 

「一回やってみたかったんだよなぁ、花火の打ち上げ」

 

指パッチンで火をつける。

 

「よし、来る!」

 

『ドォン』

 

花火が咲き誇る。

 

「私は、自由だッ!!!」

 

この瞬間、私の大冒険が、幕を開けたのだ。




オリ主……強い。普通に強い。潜在能力と学習能力が半端ない。たった六歳で流桜と未来視使える。覇王色持ち。
モー・D・レッド……強い。オリキャラだけど、あの世界でガープと知り合いの海賊で、五体満足な時点でお察しだよね?
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