女海賊【泣跡の鬼神】   作:なゆさん

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3話

私は今、かなり豪華な部屋のベッドに大の字になっていた。気分は憂鬱だ。落ち着かない。

 

「ごゆっくりしていって下さい」

 

そう言って部屋から退出するメイド。

 

「はぁ。何でこんな事に……」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

話は、数時間前に遡る。

私はドラム王国を出て幾つかの島をまわり、砂の王国アラバスタを目指していた。

道中、規模だけ大きな雑魚海賊団を壊滅させた事以外は、特に何もしていなかった。

まったく、雑魚はよく群れるなんて言いたくはないが、今まであった大型の海賊団の殆どが、普通に弱かった。物量作戦でいつも押し切るため、個々人の戦闘能力はさほど重要ではないのだろう。

ただ、そういう海賊団はかなり貯め込んでいるタイプと、スッカラカンなタイプがある。今回の海賊団は後者。さっさと稼いだ金を使ってまた稼ぐを繰り返す、貯金を知らない連中だったようだ。

最近あまり貯め込んでいる海賊団と会っていないせいで、そろそろお金が心もとなくなってきた。

どこかでひと稼ぎしないと、貯金から払う事になってしまう。

私は貯金は貯めておきたいタイプなので、それはできるだけ避けたいところだ。

 

 

そんなこんなでアラバスタ王国に着いて、観光がてら街をぶらぶらしていたところ、

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

白目をむいて倒れている女性とそれに駆け寄る男が視界に入った。

ここで死なれても目覚めが悪いと思い、ただの熱中症だったので手持ちの薬で治してあげた。

この世界、熱中症も薬で治るのだ。本当に意味が分からない。

 

 

「ありがとう! ありがとう!」

 

男に凄い勢いで感謝された。特に御礼の品とかは受け取らず、何か起こる前に早足で去ろうとした時、

 

「すまない。少し、良いだろうか?」

 

衛兵に呼び止められた。

賞金首だとバレたか? 写真撮られてないから手配書は絵だし、そう簡単に見つからないと思ったんだが……。

 

「何だ?」

 

警戒しつつも答える。

 

「さっきの手際の良さ、中々に腕の立つ医者とお見受けする。少し、王宮へ来てもらえないか?」

 

なるほど。医者としての私の力が要るのか。私は、一応警戒は解かずに、

 

「分かった」

 

そう返事をした。

 

 

王宮に着いて、事情の説明を受けた。

何でも、王宮で謎の発熱病が広がっているらしい。

原因が分からず、またアラバスタの医者は、怪我や脱水症状の治療に長けている者ばかりで困っているようだ。死者は居ないが、ついに王子である【ネフェルタリ・コブラ】にも感染が広がり、流石に不味いということで医者を探していたという。

患者を見た感じ、普通はこんな砂漠では流行らないような病だった。旅行者から感染ったのだろうか。

幸いな事によく効く薬の材料は揃っていたので、ちゃっちゃと作って、病人全員に飲ませた。

結果、全員治ったは良いものの、ひどく感謝されて、賞金首とはいえここまでされて何もなしでは王家の名がどうちゃらこうちゃらとか、うまい具合に丸め込まれ現在に至る。

王家と繋がるなんて自由が阻害される危険性がある。

できればすぐ去りたいが、人の善意を人の面子を潰してまで無視するのは気が引ける。

 

 

まあ悪い事ばかりではない。こちらにも大きな収穫があった。

ネフェルタリ・コブラは原作では王様、しかも中々に年のいった人だった。クロッカスと会ってラブーンを見た時点で察してはいたが、つまりここは原作より、3〜40年前という事だ。

まだ、ルフィも生まれていないし、大航海時代も訪れていない。王宮に保管されている新聞を読んだら、【ゴッドバレー事件】が一年前に起こっている。もう原作は断片的にしか覚えてないが、新聞記事とは違い、ここではガープとロジャーが共闘してロックスを倒したという事件だった筈だ。つまり、まだロジャーが生きているという事だ。

ガープやセンゴクといった原作の老兵も、今はまだまだ全盛期。気をつけなければならない。

 

 

王宮のおもてなしを堪能した後、私はアラバスタを出た。船に乗り、出航する。

正直、王宮のおもてなしはとても良かった。流石王宮なだけあって、食事ではアラバスタ独自の品、しかも高級でものすごく美味しい料理が次々と運ばれてくるし、お風呂は広いお風呂を貸し切り、ベッドはふかふかでいい匂いがするし、部屋も豪華だった。

この船とは大違いだ。後半はもっといたいなんて思っていたが、流石に賞金首が居ると知られる前に私の方から、身を切る思いで辞退した。

ただ、アラバスタ料理は教えてもらった。

私は現在、訪れた全ての島のご当地料理を伝授してもらっているが、アラバスタのは1,2を争う程うまい。食材も分けてもらったし、航海の楽しみが増えた。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

数日は何もなかったのだが、驚いた事に何もしてないのに私の懸賞金が上がっていた。新聞を見る限り、海軍支部への被害がようやく全て本部に伝わったようだ。私が潰した腐った海軍支部は合計9つ。殺した海兵は大佐7人、少将2人、その他大勢だ。そこそこな奴もいたが、全員大した労力も無く殺せた。その地の住人を苦しめていたのだから、死んで当然だと思うが、海軍の面子は丸潰れだろう。この懸賞金額から見るに、相当怒ってるみたいだ。賞金首になって一年も経っていないのにコレは異例中の異例だろう。

 

 

【泣跡の鬼神 モード・アマナ 懸賞金6億8500万ベリー】

 

 

今回は、何処で撮られたのか写真も貼ってあった。

いつ撮ったかは知らないが、良く撮れるなカメラマン、6億の賞金首だぞ? そんな度胸あるなら海軍のスキャンダルでも撮ってやれ。

そんな事を考えながら、私は船を進めた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

そんなこんなで海賊を初めて4年が経った。原作でのルフィ達は最短経路で1年と経たず新世界ヘ行っていたが、私は各地を巡って、修行したりポーネグリフを読んだり腐った海軍やら貴族やら海賊やらをボコしたり、とにかくグランドライン前半を遊び回っていた。

だが、停滞しているわけでもなく、腕は上がったし、そもそもの肉体が成長して基礎能力が大幅に上昇した。

身体は、まだ十歳とは思えない大人な身体に成長。身長はもう170センチは余裕で超えている。顔は、年相応の童顔だが、私の精神年齢のせいか、少し大人びた雰囲気がある。スタイルも、少しずつ胸が膨らんできて、ボン・キュッ・ボンの兆しを見せている。今の私を見て一目で10歳と分かる人は少ないだろう。

まあそのせいで時々男からイヤな目で見られたり、何なら誘われる事もあるが。

一度断ってもしつこい奴らは、全員ぶった斬った。私はお前らみたいなごろつきが釣り合う程安い女じゃないって何度言っても聞かないあいつらが悪い。まったく、実力差が分からなくても懸賞金見たら自分達との格の差くらい分かるだろうに、何を期待してるのか。寝言は寝て言えと言いたくなる。

まあ色々な事があるが、私の実力はここらの海ではぶっちぎりである。どんなやつでも本気を出すまでもなく撃退できるので、平和な船旅が続いていた。

 

 

だが、いやだからこそ、気が抜けていたのだろう。

 

「やらかした……!」

 

私が見ている新聞には、私の記事がでかでかと載っていた。

 

【万能の海賊『泣跡の鬼神』、ポーネグリフ解読!! 更には若返り薬の開発か!?】

 

私がポーネグリフを読んでいるところを誰かに見られた。

私の見聞色は、敵意や強者の気配は寝ている間でもフルオートで感知出来るが、それ以外は意識しないと出来ない。一息つきながらポーネグリフの写しを読んでいて、周りを意識していないところを見られたのだ。恐らくは上空から。

更に若返り薬。コレは私が訳あって船の在り処が分からなくなっていた時、一文無しの私が金を手っ取り早く集めるために裏の市場で効能を薄めた若返り薬を売ったのだ。

顔は伏せたし、名前も出さなかったが、どこからか情報が漏れたらしい。まぁコレは私の自業自得だし、万一バレても仕方がないとは思っていた。

問題は、これら二つがいっぺんにバレてしまった事。世界政府にとって、私は厄ネタでしかない存在となった。本格的に狙われる事になる。

その証拠に、懸賞金もとんでもない事になっていた。

 

 

【泣跡の鬼神 モード・アマナ 懸賞金 22億8000万ベリー(生存) 18億4000万ベリー(死亡)】

 

 

10歳の子供にとんでもない値段つけやがって…!

捕まったら何されるか分かったもんじゃない。絶対に捕まらない。私は自由に生きるのだ。

 

 

さて。これからの事を考えると、もっと成長しなければならない。

ぬるま湯に浸かっている今の状況ではいくら修行しても、成長率が悪い。

海軍の戦力次第では、捕まってしまうかもしれない。私みたいな厄ネタをいつまでも放っておく程、海軍も馬鹿じゃない。かなり強い戦力を送ってきてもおかしくない。このままじゃダメだ。

 

「よし。新世界行こう」

 

手っ取り早く強くなるには、厳しい環境に身を置くのが一番だ。

そもそもジジイは私を新世界でも通用するレベルまで仕上げたって言ってたし、懸賞金的にも新世界でも十分やっていける。うん。そうと決まれば、早速行こう。

私は早速、シャボンディ諸島へ向けて舵をきったのだった。




シャボンディ諸島へ到着するアマナ、何も起こらぬ筈もなく……。
次回、天竜人死す!デュ○ルスタンバイ!
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