シャボンディ諸島に着いた。
新世界に行く為にはこの島を通る必要があるが、ここは海軍がそこそこの数常駐しているほか、治安も悪く、はっきり言ってあまり長居したい場所ではない。
さっさと顔を隠し、適当な職人にコーティングを頼み、船の準備を終わらせる。ただまあ、せっかく来たのだしいつでも出られるようにしておいて観光しようと、街へ出た。
海軍の動向に気をつけつつ、ショッピングを楽しむ。
中々に品揃えの良い店が多く、色々なものを買い揃えられる。夢中になって、長いことショッピングを続けた。
そして、いざ帰ろうという時に、事件は起きた。
◆◇◆◇◆
帰り際、私はその店を見つけた。
【ヒューマンショップ】。有り体に言えば奴隷商。
色々な人間を攫っては上流階級に売りつける。胸糞悪い商売である。
別に偽善のつもりはないが、ここで見過ごせば明日の目覚めが悪くなりそうだ。それは私の自由に反する。
ヒューマンショップの中に入る。中ではまだ競りが始まっていないようで、観客達が今か今かといった様子で、スタートを待っていた。
奴隷商を利用するようなゴミが、こんなにも沢山いる。
こんなゴミの為に、昔の私のように苦しまなくてはならない人々がいる。
胸糞悪い、ああ胸糞悪い。理不尽だ。吐き気すら感じる。
「全員眠ってろ」
覇王色で観客を全員気絶させる。いちいち殺す時間がもったいない。
「大変おまた―――何だお前は!?」
「うるさい。死ね」
「な―――」
ポスターに顔が書いてあった店のオーナーが出てきたので迷わず首をはねた。
苦しめずに殺してやる事に感謝してほしい。時間があれば奴隷達に始末を任せたのだが……仕方がない。
奴隷達の檻に着いた。格子と奴隷の首輪を外し、外に出してやる。
「お前達はもう奴隷じゃない。何処へなりとも逃げるといい」
そう言い残し、外に出る。
身寄りのない彼ら彼女らはこれから相当苦労することになるだろう。また奴隷に戻されてしまうかもしれない。
ただ、それは私の知ったことではない。そもそも私が胸糞悪かったのは、眼の前でそういう事をされると自分と重ねてしまうからだ。私の知らない所で何があろうと、あまり興味は無い。
この世界は弱肉強食の世界。勝者だけが自由になれるのだ。
外に出ると、今中に入ろうとしていたのか、黒服の男達に囲まれた、宇宙服のような格好のブサイクがいた。ガタイのいい鎖に繋がれた男に乗っている。
「……天竜人か」
初めて見たが、やはり醜い。
「ん~? 何だえこいつ。わちしの通り道に立つなんて、ムカつくやつだえ。おいお前達、こいつを――」
天竜人が何か言おうとした瞬間、私は口を開く。
「オークションならもうないぞ」
「下地民が口を―――ん? 何故だえ?」
「奴隷が居なくなったからな。」
「んんん~! もう終わったのかえ!?――この! お前のせいだえこのノロマ!! この! この!」
的外れな文句を言いながら奴隷の男を何度も蹴る天竜人。
「もういいえ。良く見たら顔はいいし、こいつで我慢するえ。お前達、こいつを奴隷にするえ」
「「は!」」
私を確保しようと私を取り囲む黒服達。
「……貴様、今なんて言った?」
私は自由を阻害されるのが一番嫌いだ。ただでさえムカつくこいつから、次そんな事を言われたら自分でも何するか分からない。
「んん〜? 何だその目? ムカつくえ!! お前は今からわちしの奴隷になるんだえ〜!! その目をやめるえ!!」
「……そうか。」
瞬間、黒服の男達が全員倒れた。
私が覇王色を使ったのだ。天竜人には向けないように調整したが。
「何だえ!? お前達! しっかりするえ!! 何をやってるんだえ!! 役立たずだえ!! さっさと起きないと殺すえ!!」
「はぁ。うるさい、汚い、醜い」
「何だと!! わちしを怒らせたら―――」
首をおとす。
『ボトリ』
あっさりと、神は死んだ。
瞬間、あたり一帯から音が消えた。
この瞬間を目撃した誰もが、思考を停止させる。海軍も、民間人も、海賊でさえ。
そして数秒後、
「「「ギャーー!!!」」」
大混乱が起きた。
民間人は逃げ惑い、海賊でさえこれから起こる事柄に恐怖し、走り去る。
海兵も海兵で、混乱して何も出来ない者、逃げる者、大罪人である私を討ち取ろうとする者など、さまざまで統率がまったくとれない状況となった。
◇◆◇◆◇
「おうおう! 騒ぎを聞いて来てみれば、大変なことになってんじゃねえか!!」
一際強い気配とともに、そんな声が私の耳に入る。
向かって来ようとしていた海兵を全員覇王色で気絶させ、振り返る。
「このゴミクズを殺したのは、お前か?」
天竜人を指さしながら、男は尋ねる。
「ああ。お前は海兵の癖に随分な物言いだな。一応こいつらに絶対服従なのが海兵だろう?」
「まあな。だが、立場と感情は別ってことよ。あ、今のはナイショな?」
頭を掻きながらそんな事を言って笑う男。
「フン。私は自由にやらせてもらうだけだ。それで? 用はそれだけか?」
その質問が、カギだった。
男は心底愉快そうに笑った。
「ハッハッハ!! それだけってお前、海兵の海賊に対する用事なんて――」
瞬間、男の姿が視界から消える。
「――一つしかねえだろ!!」
放たれた男の拳を受け止める。そんじょそこらのやつの攻撃とは違う、覇気と重さが乗っかっていた。
「っ!! それはそうだな!」
直ぐに刀を抜く。素手で相手できるような男ではない。
「やるじゃねえか!! だが、まだまだぁ!!」
また視界から消える男。凄まじい【
私の未来視に、背後をとる男の姿が映る。
「【
背後を斬り裂く。
「うおっと危ねえ! おもしれぇ、そんな若さでもう
チッ。流石にすぐにバレるか。
「【
次はこっちから仕掛ける。
『ザン』
「ぬっ!!」
私の刀が、男の肩に少し傷をつける。ただ、男の武装色が硬すぎて深手を与えるには至らなかった。
「俺の武装色を貫通してくるか! 強えな!」
「ダメージのない分際でよく言う……!」
男は相変わらず笑っている。それだけまだ余裕があるのだ。
「次は俺の番だ!! それ、げんこぉつ!!!」
男の拳を刀で止める。
「くっ!! 馬鹿力め!!」
重すぎる! 受け止めても勢いを殺しきれずに押しこまれる!
「ハッハッハ! その程度で俺に勝てるのか?」
「ほざけ!!」
こちらから攻めていきたいが、男の武装色はかなり硬い。生半可な攻撃では傷一つつけられない。どうしても攻めきれない。
「戦いの最中に悩み事か?」
男が既に拳を構えている。
「チッ!!」
「甘い!!」
男は、すんでのところで構えを解き、武装色で硬めたタックルを繰り出してきた。
『バキィ』
「がはっ!!」
身体から嫌な音が鳴り、吹き飛ばされる。
「どんどん行くぞぉ!!」
追撃をしようと迫る男。私は何とか態勢を整え、刀を鞘に戻す。
「む? 諦めたか?」
男が首を傾げる。
「くらえ!!【
私は迫る男へ向けて流桜を使い、衝撃波を発生させた。
「何!? ぐおぉ!!」
男が吐血する。内部を攻撃され、ようやくまともにダメージが入ったようだ。
「畳み掛ける!! 【
男が怯んでいる隙に、一気に直接叩く!!
――は?
何が起こったのか。先程までよろめいていた男が、目の前から消えていた。
そして、何故か私の顔に掌が迫り―――
「中々効いたぜ。次はコッチの番だな!!【
私は、いつの間にか男に頭を鷲掴みされていた。
そして、投げ飛ばされる。
黒い稲妻が発生し、凄まじい威力で地面に叩きつけられた。
『ドォン』
「がはっ!!」
地面が割れ、周りの家屋が崩れ落ちる。
正に、隕石の衝突でも起こったかのような惨状だった。
「あ、やっちまった。……まぁいっか。センゴクあたりが何とかするだろ。住人の避難は完了してるしな。」
男が何か言っているが、それどころではない。
ダメージがデカ過ぎる。恐らく、今の黒い稲妻は覇王色だ。
覇王色って纏えるのか? たったの一撃で身体がボロボロだ。耐えきれたのは奇跡だろう。
「さてと、後はこいつを連行して―――む?」
「ハァ、ハァ、ハァ。ま…だ、終わってない……!」
何とか立ち上がり、男を睨む。
「あの攻撃から立ち上がるか…! ハッハッハ!! 面白い!! 海賊でさえなかったら、海軍に欲しかったな!!」
「…生憎と、私は自由が好きなんだ。」
「…………天竜人の事か?」
「ハッ。自覚はあるんだな、海兵にも」
会話で時間を稼ぎつつ、体力を少し整える。
「威勢がいいのは良いことだ。だったら俺に勝ってみろ!! さもなくば、ここでお前の自由は終わりだ!!」
「来るか!!」
次は真正面から拳をぶつけ合う。
「ぐっ! クソッ!!」
やはり押されるか…!
「フンッ!!」
『バキィ』
「ぐぁ!」
私の身体が宙を舞う。
「そぉれ、もう一発!!」
そこに追撃を叩き込まれる。
「がっ!!」
『ミシッ』
骨が軋む音を聞きながら、地面に叩きつけられた。
それから、何度殴られただろう。
もはや、身体を動かすだけであちこちが痛む。満身創痍、ボロボロの状態だ。身体に鞭打って何とか立ち上がる。
「……まだ立つか」
「あたり……前だ…!」
「…お前の名は覚えといてやる。名は?」
「……ハァ、ハァ、『モー・D・アマナ』」
「お前が【泣跡】か。確かに顔に傷があるな。こうしてみると、涙の跡に見える」
男が、拳を構える。
「覚えてけ。俺の名はモンキー・D・ガープ。お前を―――お?」
男―ガープが私に拳を振り下ろそうと迫っていた時、ガープの眼の前に、ボロボロの服を着た者達が数人立ち塞がった。
「海兵殿! どうか、この方だけは見逃して貰えないか!? この方は、我々を救ってくださったのだ!」
「私達を奴隷商から開放してくれたのよ!!」
「俺達の命の恩人なんだ!!」
「そこの天竜人から俺を守ってくれたんだ!!」
どうやら、先程助けた奴隷達と、さっきの天竜人の奴隷のようだ。皆口々に私の助命を乞う。
「むぅ……。おい【涙跡】。」
「――何だ?……ハァ、ハァ…ガープ」
「こいつらに免じて、一度は見逃してやる。ゴミクズの件も気分がいいからな。だが、俺達は海兵と海賊。次会ったら確実に牢屋にぶち込むから覚悟しておけ!」
ガープはそう言い残し、私に背を向け去っていった。
「助かった……。いや、助けられたか。ありがとう、お前達」
元奴隷達に礼を言う。
「いえ!私達は一生分の恩を貴方から受け取っていますので!少しでも返せて良かった!」
奴隷達の言葉に嘘はなかった。
「私はもう行く。達者でな」
「「はい! 貴方もお達者で!!」」
息ピッタリな元奴隷達と別れ、コーティングされた船へ向かった。
幸い、船はまだ海軍の手に渡っておらず、すぐに出航できる状態だった。
「さっさと行くか。新世界へ」
まだ痛む身体に薬を塗りつつ、私は新世界へ船を進めた。
ハイ。無事ジョーノウチ聖が首チョンパされました。ザマァ!!原作中のクズ全員首チョンパされて欲しい。チャルロス中々死なないよね……。