女海賊【泣跡の鬼神】   作:なゆさん

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5話

ガープとの激闘から何とか生き残り、無事新世界に旅立つ事ができた。

やはり、あのレベルの猛者は強い。幸い生き残れたが、まだまだ実力的にキツい。

確か、センゴクっていう海兵もガープと同じくらい強かった筈だ。ていうか、大将クラスはあのレベルと考えるべきだろう。

海賊にもあのレベルの猛者はいる。まだまだ鍛錬が足りない。今新世界に行く事に決めて本当によかった。

私は、新世界へ向けて、気持ちを新たにしたのだった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

新世界へ出てしばらく経った。地下海流で死にそうになった他、魚人島やその他の2つの島でも色々あったが、取り敢えず私は無事新世界を進むことができていた。

 

 

そして、今日の新聞にて、

 

「フッ。懸賞金もここまで来たら笑えてくるな」 

 

私の懸賞金が更新されていた。

 

【泣跡の鬼神 モード・アマナ 懸賞金38億8000万ベリー(生存) 33億4000万ベリー(死亡)】

 

コレが、酒も飲めない一人の娘にかけられた懸賞金である。どんな冗談だと言いたい。

別に私は、懸賞金を高くしたい訳ではなかった。

何なら多少懸賞金をつけられるのは仕方がないと思っていたが、億一桁くらいが丁度よかった。賞金稼ぎに狙われにくく、大物の海賊や海兵に目をつけられない程度の額。一番自由を阻害されない額だ。

だが、今の額ではどう考えても強いのや腕試しの連中が寄ってくる。何なら己の自由に従った結果とはいえ、天竜人を殺したのだから、海軍大将も出張ってくるだろう。ガープレベルの猛者達が。

今は何とかなっているが、まだ私は覇王色を纏えていない。

武装色のレベルもまだまだ上げる必要があるだろう。

今の成長途上の私の身体能力では、一定以上の敵には遅れを取ってしまう。それらを補う力を、身に付けなければならない。

 

「……鍛錬するか。」 

 

考えても、現状は変わらない。私は思考を中断させ、覇気の鍛錬を始めた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

今日は晴天。絶好の釣り日和だ。最近は覇王色も纏えず、少し停滞気味で焦っていた。気分転換には丁度良い。適当な無人島に上陸し、木の枝などで簡単な釣り竿を作る。

 

「……ジジイと釣り対決した時以来か。」

 

思えば、あの地獄のしごきがなければ、この海で自由に生きるなんて夢のまた夢だっただろう。ムカつくが、ジジイには感謝しなければ。そんな事を思いながら竿を振った。

 

 

釣り糸を垂らして1時間後、自作の簡易水槽の中には数匹の魚が泳いでいた。そろそろ昼にするか。

 

「そこそこ釣れ―――」

 

強い気配。

見聞色に引っかかった。数は多いが強いのは一人だけだ。だがその一人、中々に覇気が強い。しかも、これ程の海賊団の船長だ。弱い筈がない。今得物は船の中だし、少し不味いかもしれない。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

私は得物を取りに行く暇もなく、あっという間に海賊に囲まれた。

眼の前の軍艦から、頭が異様に尖った男が現れる。

 

「ひやホホ。強い気配を感じて来てみれば、ようやく見つけたぞ。おのれが噂の【泣跡】か。」

 

この男、強い。覇気もそうだが、佇まいに経験豊富な強者独特の、まるであのジジイのようなオーラがある。

 

「誰だ?」

 

「私か? 私は八宝水軍十二代目棟梁、チンジャオ! おのれに会いに新世界に来た。」

 

何処か見覚えのある男だ。原作に出てきた気がする。

 

「そんな男が、私に何の用だ?」

 

「若返り薬というあり得ない薬すら作ってみせる技術、それに医術、更にポーネグリフを解読する知識、ここまで一人であんな船で航海できていたその航海術、そしてその年にしてその強さ。おのれの全てが私は欲しくなった。故に【泣跡】! 我が傘下に入れ!!」

 

自信たっぷりといった具合にチンジャオが言う。

その瞬間、私は覇王色を放った。その効果は、島全体に及ぶ。

 

「な!?」

 

チンジャオ以外の八宝水軍が気絶する。

私は額に青筋を浮かべながら、

 

「傘下だと? 断る!! 私は自由の為に海賊となったのだ!! 私が欲しいのなら、力ずくで奪ってみろ!!」

 

「……ひやホホ!! その年でそれ程の……。ますます気に入った!! おのれの言う通り、打ち倒して傘下に加えるとしよう!!」

 

チンジャオも、覇王色を放ちながらそう言った。

 

 

そして、

 

「「行くぞ!!」」

 

同時に私達は地を蹴った。

互いに真っ向から向かっていく。

チンジャオが拳を振るう。私は、余裕を持って受け止めた。――しかし、

 

「っ!? ぐぅ!!」

 

武装色で受け止めたにも関わらず、身体にダメージが入った。

 

「ひやホホ!! 我が八衝拳は衝撃を操る。武装色があろうと、鎧を着ていようと、私の拳は防げない!!」

 

なるほど。衝撃が内側に響く。確かに武装色も突破されてしまうだろう。だが、内部破壊は、こっちだってできる。

 

「こっちも行くぞ!【天拳(てんけん)】!!」

 

「ぬ、ぐっ! おおお!!」

 

私の拳がチンジャオの腹に突き刺さる。

 

「がはっ!……まさか、その年で【流桜】を使えるとはな…!」

 

チンジャオが吐血する。しかし、ダメージを感じさせずすぐさま立ち上がる。

 

「ひやホホ! まだまだ行くぞぉ!!」

 

「うるさい! さっさと倒れろ!!」

 

私とチンジャオの拳が激突する。

 

「はぁ!!」

 

「ぐっ! ぬおおお!」

 

私の拳がチンジャオの拳に押し勝つ。

 

「【天打(てんだ)】!!」

 

「ぐおぉ…!」

 

「【天連打(てんれんだ)】!!」

 

「ぐふッ!」

 

すかさず追撃を叩き込む。

チンジャオの巨体に何発もお見舞いした。

 

 

「……ひやホホ!!」

 

当然のように立ち上がるチンジャオ。

 

「……タフだな。面倒臭い」

 

「この程度で倒れていては、棟梁は名乗れんよ! さて、そろそろ私も本気を出すとしよう。ドイサ【武頭】!!」

 

チンジャオはそう言うと、その尖った頭を武装色で硬め、頭突きを繰り出してきた。

私はそれを受け止めようとして……未来視で腕を壊される自分の姿を見た。

 

「な!?―――くっ!!」

 

慌てて躱す。

 

「む? 中々に勘が鋭いな。当たっていれば腕の一本砕いていただろうに。――だが、まだまだ終わらんよ!! はぁ!!」

 

ロケットのように飛びかかってくるチンジャオ。

 

「そんな攻撃が2度も効くか!! はぁ!!」

 

今度は避けつつ、カウンターを食らわす。だが、

 

「ッ!! 硬っ!?」

 

その頭に、私の拳が弾かれる。

頭の武装色だけが、異常に硬かったのだ。

 

「ひやホホ!!どうだ私の錐は!!この世に、私の頭より硬い物は無い!!」

 

自信たっぷりにチンジャオが言う。

自分の頭に誇りを持っているようだ。

 

「その頭を砕き割ってやればお前でも耐えられんだろう? 自慢の頭凹ませてやる!!」

 

「ひやホホ、威勢がいいな。やってみろ小娘が!!」

 

チンジャオがまた頭突きの構えをとる。

 

「【武頭】!!」

 

凄いスピードで向かって来る。迎え撃つ構えをとる。が、

 

「ふん!!」

 

チンジャオが拳を使い無理矢理方向転換する。

 

「食らえぃ!!」

 

構えを崩された私は、未来視のお陰でその一撃をギリギリ躱す。

 

「くっ!!」

 

「ひやホホ! あれを躱すとは、やはり中々やりおるな。ならば、これはどうだ?【武頭回・転】!!」

 

するとチンジャオは、頭を地につけ、コマのように回りだした。

 

「そんなもの技と呼べるか!! 馬鹿にするな!!」

 

「ならば止めてみろ!! 弾き飛ばしてくれる!!」

 

回転しながら拳や蹴りを繰り出すチンジャオ。

 

「【乱舞】!!」

 

更に回転力を上げ、縦横無尽に動き回る。

 

「ひやホホ!躱すので精一杯ではないか!!」

 

チンジャオは嘲笑う。私がこの技を止める手段を持たないと判断し、私の間合いに入った。

 

「【天静(てんせい)清流(せいりゅう)】」

 

私は、間合いに入ったチンジャオをぬるりと受け流す。

 

「何!?」

 

「【天紅(てんぐ)】!!」

 

回転の威力すら利用した拳を、チンジャオの腹にめり込ませる。

 

「ぐほぉ!!」

 

白目をむき吐血するチンジャオ。

そんなチンジャオの腹に私は掌を添え、

 

「【天勁(てんけい)】!!」

 

前世の技術と流桜を合わせた発勁を放った。

 

「がはっ!!」

 

チンジャオは、身体の内部に多大なダメージを受け、吹っ飛んだ。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

少し、息が上がっている。一連の攻撃は、全て全力で放った。それだけ、あの男はタフだった。

だが、あの攻撃を受ければ流石に―――

 

「……ひ、ひやホホ!…ま、まさか、ここまでとは、な…ハァ、ハァ……覇気も体術も私の上をいっている……」

 

土煙の向こうから、満身創痍といった様子のチンジャオが、呼吸を整えながら現れる。

 

「まだ倒れないのか…!」

 

流石に予想外だ。

 

「正直な所、私は体力の限界だ。そちらも限界だろう?」

 

「何故お前に言わなければならない。」

 

「提案だ。これから、お互いの最高の一撃にて決着としよう。」

 

「……諦めるという選択肢はないのか?」

 

「ない! 我が生涯、我が財宝にかけて、私は一度狙ったものに背は向けん!」

 

「……分かった。それで良いだろう―――ハッ!!」

 

私は、空高く跳ぶ。

 

「ひやホホ! 我が奥義、おのれに見せてやろう!! 八衝拳奥義――」

 

チンジャオは手を合わせ、脚に力を込める。

 

「【(てん)―――」

 

拳を構え、

 

「【錐龍(きりゅう)―――」

 

武装色を纏い、

 

「――()】!!」

 

「――錐釘(きりくぎ)】!!」

 

互いの最強が、激突した。

 

「ぐっ!!」

 

右腕の骨にヒビが入る。

右手に覇気を集中させたというのに、やはりチンジャオの頭の硬度には届かない。だが、

 

「ああああ――!!!」

 

腕が砕けようとどうでもいい。今はただ、この男を、

 

「――超える!!」

 

瞬間、力が拮抗し、両者とも弾き飛ばされた。

 

「ぐあ!!」

 

「ぬお!?」

 

私は墜落し、地面に激突した。チンジャオは驚いた顔のまま動かない。

 

「「………………。」」

 

動けない私と、固まったチンジャオ。沈黙が場を支配した。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「ひやホホ!!まさか、おのれに我が奥義を止められるとはな!!」

 

私達は今、宴会をしていた。

私が動けない内に、勝手にチンジャオが仲間の海賊を起こし、宴会の準備を始めたのだ。

訳が分からずチンジャオに聞くと、

 

「ひやホホ! 我が奥義をたった10歳の小娘が止めたのだ。驚いたと同時に、素直に称賛したくなった。だから宴会を開こうというのだ。結局おのれに負けを認めさす事はできなんだが、それは次の機会にとっておこう」

 

と言っていた。

 

 

勝手に10歳の女を囲んで酒盛りを始めるというこの字面のインパクトよ。私、酒飲めないんですけど。

 

「ひやホホ。おのれのオレンジジュースだ」

 

なんと、チンジャオがオレンジジュースを渡してくれた。以外と気が利くのかな?

 

「それで? おのれに関しての新聞記事、アレは全て本当の事なのか?」

 

「どこまで言っているのか分からんが、ポーネグリフは読めるし、若返り薬も作れる、天竜人を殺したのも私だし、ガープとやりあったのも事実だ」

 

「ひやホホ。ガープから逃げ切るとは、流石と言っておこう」

 

「……これからどうするんだ? 私のスカウトに新世界まで来たのだろう?」

 

「とりあえず、おのれに私のビブルカードを渡して、花の国へ帰るつもりだ」

 

私はチンジャオを見る。今、少し原作を思い出したのだ。今はまだ頭がちゃんと錐状になっているが……。

 

「ん? どうした?」

 

「……これを持っていけ。」

 

私は、懐にあった塗り薬をチンジャオに渡した。

 

「これは?」

 

「土産代わりだ。自慢の頭がかち割られた時にでも使え」

 

「ひやホホ! それは永遠に使うなという意味でいいのか?」

 

「好きに考えろ」

 

 

宴会は朝まで続き、二日酔いでダウンした船員達を連れて、チンジャオは去っていった。

しばらくして、チンジャオはアマナに一生分の恩を感じる事になるのは、言うまでもない事だろう。

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