ガープとの激闘から何とか生き残り、無事新世界に旅立つ事ができた。
やはり、あのレベルの猛者は強い。幸い生き残れたが、まだまだ実力的にキツい。
確か、センゴクっていう海兵もガープと同じくらい強かった筈だ。ていうか、大将クラスはあのレベルと考えるべきだろう。
海賊にもあのレベルの猛者はいる。まだまだ鍛錬が足りない。今新世界に行く事に決めて本当によかった。
私は、新世界へ向けて、気持ちを新たにしたのだった。
◆◇◆◇◆
新世界へ出てしばらく経った。地下海流で死にそうになった他、魚人島やその他の2つの島でも色々あったが、取り敢えず私は無事新世界を進むことができていた。
そして、今日の新聞にて、
「フッ。懸賞金もここまで来たら笑えてくるな」
私の懸賞金が更新されていた。
【泣跡の鬼神 モード・アマナ 懸賞金38億8000万ベリー(生存) 33億4000万ベリー(死亡)】
コレが、酒も飲めない一人の娘にかけられた懸賞金である。どんな冗談だと言いたい。
別に私は、懸賞金を高くしたい訳ではなかった。
何なら多少懸賞金をつけられるのは仕方がないと思っていたが、億一桁くらいが丁度よかった。賞金稼ぎに狙われにくく、大物の海賊や海兵に目をつけられない程度の額。一番自由を阻害されない額だ。
だが、今の額ではどう考えても強いのや腕試しの連中が寄ってくる。何なら己の自由に従った結果とはいえ、天竜人を殺したのだから、海軍大将も出張ってくるだろう。ガープレベルの猛者達が。
今は何とかなっているが、まだ私は覇王色を纏えていない。
武装色のレベルもまだまだ上げる必要があるだろう。
今の成長途上の私の身体能力では、一定以上の敵には遅れを取ってしまう。それらを補う力を、身に付けなければならない。
「……鍛錬するか。」
考えても、現状は変わらない。私は思考を中断させ、覇気の鍛錬を始めた。
◆◇◆◇◆
今日は晴天。絶好の釣り日和だ。最近は覇王色も纏えず、少し停滞気味で焦っていた。気分転換には丁度良い。適当な無人島に上陸し、木の枝などで簡単な釣り竿を作る。
「……ジジイと釣り対決した時以来か。」
思えば、あの地獄のしごきがなければ、この海で自由に生きるなんて夢のまた夢だっただろう。ムカつくが、ジジイには感謝しなければ。そんな事を思いながら竿を振った。
釣り糸を垂らして1時間後、自作の簡易水槽の中には数匹の魚が泳いでいた。そろそろ昼にするか。
「そこそこ釣れ―――」
強い気配。
見聞色に引っかかった。数は多いが強いのは一人だけだ。だがその一人、中々に覇気が強い。しかも、これ程の海賊団の船長だ。弱い筈がない。今得物は船の中だし、少し不味いかもしれない。
◆◇◆◇◆
私は得物を取りに行く暇もなく、あっという間に海賊に囲まれた。
眼の前の軍艦から、頭が異様に尖った男が現れる。
「ひやホホ。強い気配を感じて来てみれば、ようやく見つけたぞ。おのれが噂の【泣跡】か。」
この男、強い。覇気もそうだが、佇まいに経験豊富な強者独特の、まるであのジジイのようなオーラがある。
「誰だ?」
「私か? 私は八宝水軍十二代目棟梁、チンジャオ! おのれに会いに新世界に来た。」
何処か見覚えのある男だ。原作に出てきた気がする。
「そんな男が、私に何の用だ?」
「若返り薬というあり得ない薬すら作ってみせる技術、それに医術、更にポーネグリフを解読する知識、ここまで一人であんな船で航海できていたその航海術、そしてその年にしてその強さ。おのれの全てが私は欲しくなった。故に【泣跡】! 我が傘下に入れ!!」
自信たっぷりといった具合にチンジャオが言う。
その瞬間、私は覇王色を放った。その効果は、島全体に及ぶ。
「な!?」
チンジャオ以外の八宝水軍が気絶する。
私は額に青筋を浮かべながら、
「傘下だと? 断る!! 私は自由の為に海賊となったのだ!! 私が欲しいのなら、力ずくで奪ってみろ!!」
「……ひやホホ!! その年でそれ程の……。ますます気に入った!! おのれの言う通り、打ち倒して傘下に加えるとしよう!!」
チンジャオも、覇王色を放ちながらそう言った。
そして、
「「行くぞ!!」」
同時に私達は地を蹴った。
互いに真っ向から向かっていく。
チンジャオが拳を振るう。私は、余裕を持って受け止めた。――しかし、
「っ!? ぐぅ!!」
武装色で受け止めたにも関わらず、身体にダメージが入った。
「ひやホホ!! 我が八衝拳は衝撃を操る。武装色があろうと、鎧を着ていようと、私の拳は防げない!!」
なるほど。衝撃が内側に響く。確かに武装色も突破されてしまうだろう。だが、内部破壊は、こっちだってできる。
「こっちも行くぞ!【
「ぬ、ぐっ! おおお!!」
私の拳がチンジャオの腹に突き刺さる。
「がはっ!……まさか、その年で【流桜】を使えるとはな…!」
チンジャオが吐血する。しかし、ダメージを感じさせずすぐさま立ち上がる。
「ひやホホ! まだまだ行くぞぉ!!」
「うるさい! さっさと倒れろ!!」
私とチンジャオの拳が激突する。
「はぁ!!」
「ぐっ! ぬおおお!」
私の拳がチンジャオの拳に押し勝つ。
「【
「ぐおぉ…!」
「【
「ぐふッ!」
すかさず追撃を叩き込む。
チンジャオの巨体に何発もお見舞いした。
「……ひやホホ!!」
当然のように立ち上がるチンジャオ。
「……タフだな。面倒臭い」
「この程度で倒れていては、棟梁は名乗れんよ! さて、そろそろ私も本気を出すとしよう。ドイサ【武頭】!!」
チンジャオはそう言うと、その尖った頭を武装色で硬め、頭突きを繰り出してきた。
私はそれを受け止めようとして……未来視で腕を壊される自分の姿を見た。
「な!?―――くっ!!」
慌てて躱す。
「む? 中々に勘が鋭いな。当たっていれば腕の一本砕いていただろうに。――だが、まだまだ終わらんよ!! はぁ!!」
ロケットのように飛びかかってくるチンジャオ。
「そんな攻撃が2度も効くか!! はぁ!!」
今度は避けつつ、カウンターを食らわす。だが、
「ッ!! 硬っ!?」
その頭に、私の拳が弾かれる。
頭の武装色だけが、異常に硬かったのだ。
「ひやホホ!!どうだ私の錐は!!この世に、私の頭より硬い物は無い!!」
自信たっぷりにチンジャオが言う。
自分の頭に誇りを持っているようだ。
「その頭を砕き割ってやればお前でも耐えられんだろう? 自慢の頭凹ませてやる!!」
「ひやホホ、威勢がいいな。やってみろ小娘が!!」
チンジャオがまた頭突きの構えをとる。
「【武頭】!!」
凄いスピードで向かって来る。迎え撃つ構えをとる。が、
「ふん!!」
チンジャオが拳を使い無理矢理方向転換する。
「食らえぃ!!」
構えを崩された私は、未来視のお陰でその一撃をギリギリ躱す。
「くっ!!」
「ひやホホ! あれを躱すとは、やはり中々やりおるな。ならば、これはどうだ?【武頭回・転】!!」
するとチンジャオは、頭を地につけ、コマのように回りだした。
「そんなもの技と呼べるか!! 馬鹿にするな!!」
「ならば止めてみろ!! 弾き飛ばしてくれる!!」
回転しながら拳や蹴りを繰り出すチンジャオ。
「【乱舞】!!」
更に回転力を上げ、縦横無尽に動き回る。
「ひやホホ!躱すので精一杯ではないか!!」
チンジャオは嘲笑う。私がこの技を止める手段を持たないと判断し、私の間合いに入った。
「【
私は、間合いに入ったチンジャオをぬるりと受け流す。
「何!?」
「【
回転の威力すら利用した拳を、チンジャオの腹にめり込ませる。
「ぐほぉ!!」
白目をむき吐血するチンジャオ。
そんなチンジャオの腹に私は掌を添え、
「【
前世の技術と流桜を合わせた発勁を放った。
「がはっ!!」
チンジャオは、身体の内部に多大なダメージを受け、吹っ飛んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
少し、息が上がっている。一連の攻撃は、全て全力で放った。それだけ、あの男はタフだった。
だが、あの攻撃を受ければ流石に―――
「……ひ、ひやホホ!…ま、まさか、ここまでとは、な…ハァ、ハァ……覇気も体術も私の上をいっている……」
土煙の向こうから、満身創痍といった様子のチンジャオが、呼吸を整えながら現れる。
「まだ倒れないのか…!」
流石に予想外だ。
「正直な所、私は体力の限界だ。そちらも限界だろう?」
「何故お前に言わなければならない。」
「提案だ。これから、お互いの最高の一撃にて決着としよう。」
「……諦めるという選択肢はないのか?」
「ない! 我が生涯、我が財宝にかけて、私は一度狙ったものに背は向けん!」
「……分かった。それで良いだろう―――ハッ!!」
私は、空高く跳ぶ。
「ひやホホ! 我が奥義、おのれに見せてやろう!! 八衝拳奥義――」
チンジャオは手を合わせ、脚に力を込める。
「【
拳を構え、
「【
武装色を纏い、
「――
「――
互いの最強が、激突した。
「ぐっ!!」
右腕の骨にヒビが入る。
右手に覇気を集中させたというのに、やはりチンジャオの頭の硬度には届かない。だが、
「ああああ――!!!」
腕が砕けようとどうでもいい。今はただ、この男を、
「――超える!!」
瞬間、力が拮抗し、両者とも弾き飛ばされた。
「ぐあ!!」
「ぬお!?」
私は墜落し、地面に激突した。チンジャオは驚いた顔のまま動かない。
「「………………。」」
動けない私と、固まったチンジャオ。沈黙が場を支配した。
◆◇◆◇◆
「ひやホホ!!まさか、おのれに我が奥義を止められるとはな!!」
私達は今、宴会をしていた。
私が動けない内に、勝手にチンジャオが仲間の海賊を起こし、宴会の準備を始めたのだ。
訳が分からずチンジャオに聞くと、
「ひやホホ! 我が奥義をたった10歳の小娘が止めたのだ。驚いたと同時に、素直に称賛したくなった。だから宴会を開こうというのだ。結局おのれに負けを認めさす事はできなんだが、それは次の機会にとっておこう」
と言っていた。
勝手に10歳の女を囲んで酒盛りを始めるというこの字面のインパクトよ。私、酒飲めないんですけど。
「ひやホホ。おのれのオレンジジュースだ」
なんと、チンジャオがオレンジジュースを渡してくれた。以外と気が利くのかな?
「それで? おのれに関しての新聞記事、アレは全て本当の事なのか?」
「どこまで言っているのか分からんが、ポーネグリフは読めるし、若返り薬も作れる、天竜人を殺したのも私だし、ガープとやりあったのも事実だ」
「ひやホホ。ガープから逃げ切るとは、流石と言っておこう」
「……これからどうするんだ? 私のスカウトに新世界まで来たのだろう?」
「とりあえず、おのれに私のビブルカードを渡して、花の国へ帰るつもりだ」
私はチンジャオを見る。今、少し原作を思い出したのだ。今はまだ頭がちゃんと錐状になっているが……。
「ん? どうした?」
「……これを持っていけ。」
私は、懐にあった塗り薬をチンジャオに渡した。
「これは?」
「土産代わりだ。自慢の頭がかち割られた時にでも使え」
「ひやホホ! それは永遠に使うなという意味でいいのか?」
「好きに考えろ」
宴会は朝まで続き、二日酔いでダウンした船員達を連れて、チンジャオは去っていった。
しばらくして、チンジャオはアマナに一生分の恩を感じる事になるのは、言うまでもない事だろう。