女海賊【泣跡の鬼神】   作:なゆさん

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6話

チンジャオとの1件から2年経った。

相変わらず覇王色の覇気は纏えないままであるが、覇気そのものは順調に強くなっていっている。

ついでに12歳になった。身長は180cmになり、スタイルも中々のモノになってきた。顔立ちもだんだん大人っぽくなっている。

明らかに12歳の姿ではないが、ワンピースの世界での身長と年齢なんて、合わなくてもまったく不思議じゃない。前世の常識など通用しないのだ。

 

 

さて、最近の私は鍛錬の他にハマってる事がある。

――それは、科学技術の研究である。前世でも知識としては持っていた科学知識、それにこの世界の色々な島で蓄えてきた知識。最初はその知識を使い、船を自動で動かしてみようという思いつきから始まった。

自動操縦が完成すれば、次は掃除ロボ。次は船を制御するAI。次は……と、どんどんハマっていってしまったのだ。

 

 

そして遂には―――

 

「できた……!」

 

私の眼の前にはジジイのおさがりの船とは別の、少し小さめの船があった。

私の新しい船だ。今私が持っている全ての技術を駆使し、点検要らずの自動操縦船を完成させた。

外から見れば普通の船だが、ボタン一つで潜水艇にも、車にもなれる。空を飛ぶことだって出来る。まぁ燃料を馬鹿みたいに食うから、殆ど普通の船として使う予定だが。

とりあえずジジイの船は、土産を詰めて自動操縦でジジイの家に送った。途中で誰かにやられるかもしれないが、その時はその時だ。土産ごと爆破するように仕込んである。

この船なら点検は要らないし、ジジイの船のように余計な心配をしなくていい。帆船でもないので、自動操縦の誤作動の確率も下がる。更には潜水艇として機能させれば港に置かなくてもいいから上陸後も安心だ。ポケット端末ですぐに私の元まで持ってこれる。

私以外乗れないようにプログラムしているので、完全に私専用の船である。

 

「これで、私は船に縛られなくなった…!」

 

今まで感じていた不自由が消え、私がより自由になる。

私は、その私にとって最も価値のある宝ともいえる感覚を噛み締めたのだった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

船を作り上げてしばらくして、

 

「はぁ。最近、海に物足りない奴らしか居ない。」

 

私は、ある島の酒場で買った酒を飲みながらため息を吐いていた。ん? 酒を飲んでるのかだって?

実はこの身体、お酒に強かったのだ。先日、間違えて一度飲んでしまったのだが、いくら飲んでもまったく酔わないどころか、普通に美味しいと感じた。齢12にして立派な酒豪である。

―――話は戻るが、最近、敵船に張り合いのあるヤツが中々居ないのである。少し覇王色飛ばしたぐらいでほぼ終わり。

残ってても一発殴れば意識が沈み、一太刀放てば簡単に死ぬ。

別に私は戦闘狂って訳でもないし、命をかけた勝負をいつも求めているような死にたがりでもないのだが、少しくらい、強いヤツと戦いたい。戦闘でしか得られない興奮や、ギリギリの戦いでしか出来ない成長があるのだ。こうも張り合いが無いと、ため息の一つでもつきたくなる。

 

「ジハハハハハ! そいつは俺も同意するぜ。最近は骨のねぇ馬鹿共ばかりがこの海にしゃしゃり出て来やがる。ムカつくったらありゃしねぇ」

 

「そうだな―――は?」 

 

声の方へ振り返ると、金色の長い髪をなびかせ、和風の服装をした男が宙に浮いていた。

 

「――!? 何者だ!!」

 

刀を抜き放ち、構える。 

明らかに只者ではない。何より、これ程の存在感を私の見聞色で感知出来なかった。この男は危険だ。

 

「ジハハハハハ! いい反応だ。鍛えられてるな」

 

「何者だと聞いている。……答えなければ斬るぞ?」

 

「おっと、随分気の強え嬢ちゃんだな。俺ぁシキ。【金獅子のシキ】だ。ああ、自己紹介は不要だぜ【泣跡】。俺は質問に来ただけだ。中々クレイジーなヤツだと聞いてな」

 

「……何だ?」

 

「嬢ちゃん。嬢ちゃんは、何の為に海賊になった? 金か? ロマンか? それとも力か?」

 

シキの目が真剣になる。気に入らなければ即殺すとその目は訴えていた。

私はそんな視線に晒されながら、落ち着いて口を開く。

 

「【自由】だ」

 

私にとっては簡単な事だ。私の原点にして中心。信念なのだから。

 

「――自由だと?」

 

「私の人生を、どんなものにも縛られずに生きる。その為に海賊になった。その為に強さを求めた。その為にここまで来た。私は、私が死ぬまで私の不自由の元を殺し続ける。海軍だろうと、海賊だろうと、天竜人だろうと。―――そして、お前であろうと」

 

覇王色を放ち威圧する。シキは、動じることもなく笑みを深めた。

 

「―――ジハハハハハ!! いい【信念】、いい【覚悟】だ、気に入った! 嬢ちゃんはそこらのミーハー共とはわけが違うらしい。――嬢ちゃんはホンモノの海賊だ!!」

 

興奮し、高笑いするシキ。

 

「お前からの評価など興味はない。用が済んだなら帰れ。」

 

「つれねえなぁ嬢ちゃん。せっかく会えたんだ、もう少し話そうぜ?」

 

「さっきの返答が気に入らなければ私を殺していた男が何を言っている。さっさと帰れ」

 

「ジハハハハハ! まだ帰らねえよ。聞きてえことができたからな」

 

嫌な予感がする。

 

「……何だ?」

 

「【泣跡】……いやアマナ、俺の部下になれ。」

 

 

―――瞬間

 

「【(しょう)天龍斬(てんりゅうざん)】!!」

 

「おっと危ねえ!!」

 

私はシキに飛ぶ斬撃を放ち、それをシキが軽く躱した。が、シキの頰に微かに血が滲む。

 

「ん? 避けきれなかったか。やるじゃねえかアマナ!」

 

「私は自由に生きると言った筈だぞ?」

 

「ジハハハハハ! 俺ぁ欲しいもんは手に入れなきゃ気が済まねえタチでな!」

 

「うるさい! さっさと去ね!」

 

「おいおい。返事をまだ貰って―――」

 

「【天斬】!!」

 

『ガキン』

 

「中々いい太刀筋だ。」

 

私の太刀をいつの間にか抜いた剣でやすやすと受け止めるシキ。

 

「帰れ!!」

 

「チェッ、そこまで嫌われちゃしょうがねえ。お前を部下にするのは、ロジャーの後に取っておくとするか」

 

そうして、シキは高々と浮かび上がり、

 

「じゃあな嬢ちゃん!! その顔の傷も中々俺好みだし、俺の女にしてやってもいい!! 色の良い返事を待ってるぜ!!」

 

血管が切れそうな程怒り狂う私を横目に飛び去っていった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「あの男……次会ったらただじゃ済まさん…!」

 

しばらくして、ようやく落ち着いてきた私は、シキの事を考えていた。

【金獅子のシキ】、その名前はよく知っていた。

かなり大きな船団を率いており、本人も相当の実力派。その兵力は海軍にも恐れられているという話だ。 

実際、気配からして明らかに格上だったし、どういう手品か見聞色の覇気をくぐり抜けてきた。剣の腕も中々にたつようだ。能力も、自分が浮くだけとは考えづらい。

恐らくはガープレベルの猛者だろう。

そして、

 

「ロジャーの後、か。」

 

あの男は、未来の海賊王であるロジャーを仲間にしようとしているのか? 原作ではロジャーは誰の下にもついてなかった筈だ。ということは、あの男は結局、ロジャーを仲間にすることは出来なかったのだろう。そして、あの男は先程一切嘘をついている様子はなかった。つまり、ロジャーの後と言われた私があの男に狙われるのは、少なくともロジャー処刑後。十分に時間はある。

 

―――金獅子のシキ。次会ったら、目にもの見せてくれる。

 

 

◆◇◆◇◆

 

sideシキ

 

「ジハハハハハ!!」

 

雲の上を飛ぶ船の船首で、シキは笑う。

今、彼は本当に機嫌が良い。それは新たな宝を見つけたからでも無く、大物の海賊を支配下に収めたからでも無く、彼の嫌いなゴミのように湧いて出てくる骨のない海賊達を大量に海の藻屑に変えてやったからでも無い。

 

「ありゃあいい女だ。」

 

強者の気配を感じ、暇つぶしにと立ち寄った船。そこに居た女、最近度々事件を起こしているイカれた海賊と噂の【泣跡】アマナ。

実力はある。凄まじい覇気を持っている上、あのガープから逃げ切っているのだ。弱いはずはない。一人でこのグランドラインを渡れる技術や知識もある。更に興味深いのは若返り薬の調合やポーネグリフの解読の技能。支配下に置けば、必ず役に立つ。

そう思い、近づいた。

そして聞こえてきた。女は自分と同じく、今海に蔓延るミーハー共を目障りに思っていた。そう愚痴を零す女の目は、力強く、確かな芯があった。こいつは、本物かもしれねぇ。

興味が湧いた。こいつの利用価値ではなく、こいつ自身に。そして、尋ねた。何のために海賊となったか。こいつの芯にある物は何なのか。期待した。俺を驚かせるナニカが、この女にはある。予感がした。この女は本物だと。偽物だったなら、期待外れだったなら、その場で斬り殺すつもりだった。利用価値など関係ない。【信念】と【覚悟】、ソレがない海賊など要らない。

――だが、

 

『私の人生を、どんなものにも縛られずに生きる【自由】。その為に海賊になった。その為に強さを求めた。その為にここまで来た。私は、私が死ぬまで私の不自由の元を殺し続ける。海軍だろうと、海賊だろうと、天竜人だろうと。―――そして、お前であろうと』

 

いい啖呵だった。そして、この俺が気圧される程に力強く、意志の灯ったその瞳。覇王色の強さもそうだが、それ以上のナニカ、アマナという存在の可能性が見えた。

 

―――欲しい。この女を【支配】してえ。

 

ロジャー以来の高揚感だった。心の底から支配したい、絶対に支配すると思えた。俺の【信念】に、アマナという存在が火をつけた。

 

「ジハハハハハ!!」

 

笑う。ただただ、あの女を思い浮かべて。俺の支配を拒絶した強い瞳。そして、あの歳で既に練り上げられた覇気と剣術。かすり傷とはいえ、俺の顔に傷をつけた。一瞬の打ち合いだったが、その剣は重く、強かった。アレはまだまだ成長途上。可能性だけで言えば、ロジャーをも超えているだろう。

アイツの存在そのもの、実力、利用価値。それは、半端な宝なんぞよりも、よほど価値のあるものだ。

 

――必ず手に入れる。ロジャーを支配下においたら次はオマエだアマナ。

 

「俺ぁ狙ったものは必ず手に入れるんだぜ? アマナ。

――ジハハハハハ!!」

 

天空に、獅子の笑い声が響いた。

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