……はい、毎度のごとくすみません。
感想、高評価大変励みになります。ありがとうございます。
「……なるほどな」
覇王色の覇気を纏えるようになってからしばらく。ようやく感覚が分かってきた。
「だが、流石に全ての攻撃に使っていては覇気を消耗し過ぎる、か。制御がまだまだ甘い。無駄が多いから消耗が増える。コレは要改善だな」
そう言って覇王色の覇気を解くと随分次の島に近づいていたことが分かった。
「……いけない、熱中しすぎたな。あの島の住民を気絶させてしまうところだった。それに、今腕利きの敵に奇襲されていれば殺られていたかもしれない。気を引き締めないと」
いくら船を改造して遭難の危険がなくなったとはいえ、新世界ではこうした気の緩みが命取りなのだ。
「――まぁ、それはそれとして酒が切れてきたところだ。次の島は確か珍しい酒があると聞いたことがあるし、海軍に気づかれるまで少しゆっくりしていくか」
酒の誘惑に抗うことなく、頬を緩ませて私は目的地へ上陸した。
◆◇◆◇◆
「ふぅ……美味い」
島の名物である酒に舌鼓をうつ。
それほど高価ではないものの、程よい甘さで味わい深い酒。保存状態もよく、他の島まで噂になるのも納得の酒だ。
「ぷはぁー!! やっぱ美味えなぁここの酒は!」
隣の席のヤツがデカい声を出しながら酒を飲み干している。随分いい飲みっぷりだ。
「いい飲みっぷりだな」
「お? おう! ここの酒はいい酒だからな!」
ブラッドレッドのコートを身に纏い、特徴的な口髭を着けた男は、笑顔でこちらに振り向いた。
「ん? ん~~? お前、何処かで見たな」
「…そう言うお前も、見覚えがあるぞ」
さて、何処だったか。如何せんかなり酒を飲んでいるせいで思考が……む?
「「あぁー!!」」
思い出した。あまりにも自然と場に馴染んでいるから気づかなかったが、コイツは――
「ゴールド・ロジャー!!」
「【泣跡】のアマナ!!」
どうやら向こうも私の正体に思い至ったらしい。
「何故貴様のような大物がこんなところにいる?」
「ん? 酒を飲みに来ただけだぜ? お前は違うのか?」
「まぁ……そうだが……」
随分と、なんというか掴めない奴だな。
「それはそうと丁度いいぜ! お前に会いたかったんだよアマナ!」
「お前程のやつからの話なら聞いてやってもいいが、後にしてくれ。今は酒を楽しみたい」
「おう分かった! なら用が済んだら東の海岸から渡れる橋で隣の無人島まで来てくれ。そこに船を止めてるからよ」
「いいだろう」
そうして、未来の海賊王は意気揚々と酒場から出ていった。
◆◇◆◇◆
「来てやったぞ」
しばらくして、酒を十分に堪能した私は約束の島までやって来た。
「おお! 待ってたぜ!」
そこでは立派な海賊船とロジャー海賊団の面々が待っていた。もうロジャーの名前と主人公とその仲間の名前以外はほとんど思い出せないのでこいつらが原作でどんな立ち位置だったのかは分からない。だが、一人ひとりが鍛え上げられた精鋭である事は分かった。弱い気配も混じってはいるが、見習いか何かだろう。
「で? 話とはなんだ?」
「まずひとつ聞きたい。ポーネグリフを読めるってのは、マジか?」
真剣な面持ちとなり、そう聞いてくるロジャー。
「あぁ。読めるぞ」
特段隠す必要のある相手でもないので正直に答える。
「ハハハ、そうか!! 読めるのか!!」
心底嬉しそうに笑うロジャー。何がそんなに………ん?
まさかこの流れは―――
「よし!! 俺の仲間になってくれ!!」
「断る!!」
チッ! また勧誘か!
「え!? いや頼む!! 俺の夢には、お前が必要なんだ!!」
「黙れ!! お前の夢など知らん!! 私は自由にやるだけだ!!」
大型海賊の船長、それも未来の海賊王とは思えんほど簡単に頭を下げるロジャーに、私も大声で断る。
「三、いや二年でいい!! 俺は何としても最後の島へ行きてえんだ!! それに、俺らだって自由にやってんだ。きっとお前だって楽しめ――」
それでもしつこく頼み込んでくるロジャー。
「くどい!! 私は誰の下にもつかんと言っているんだ!! それでも私を船に乗せるというのなら………」
刀を抜き、戦闘態勢に入る。そして渾身の覇王色を込めて、
「海賊の流儀で
島全体まで覆う程の覇王色を放ったが、ロジャーはもちろん、見習いらしき者が意識を失った程度でロジャー海賊団の船員達もほとんどが耐え切ったようだ。
ロジャーに関しては、ギラギラと野獣のような目をしている。
「ますます気に入った!―――じゃ、いっちょやるか…!」
瞬間、空気が変わる。まるで空気全てが重たい物体に変わってしまったかのような圧力。私の勘がビンビンと危険信号を発している。
「チッ………【
内に湧く恐怖を振り払うように突貫する。
出し惜しみなどできようはずもない。最初から全力だ。覇王色を纏った斬撃を放つ。
「ヌンッ!」
ロジャーは剣に覇王色を纏い、それを迎え撃つ。
衝撃音が響き渡り、2つの覇気が激突した。
「刀が、触れていない……?」
「ん? 覇王色同士でぶつかるのは初めてか?」
どうやら覇王色を纏ったものどうしがぶつかるとこうなるようだ。
そんな会話をしている間にも鍔迫り合いは続いていた。ロジャーは余力を残しているのか、笑みを浮かべている。先程のように、会話する余裕すらあるらしい。
「ガァアアア!!」
「ハァアアア!!」
こちらは懸命に刀を押し込むが、ロジャーの膂力に簡単に押される。
「フフフ……ハァ!!」
「っ! ぐっ……クソッ!」
ロジャーに弾き飛ばされ、なんとか受け身を取り、余裕綽々といった様子で仁王立ちしているロジャーに刀を構える。
「ここまで差があるか…!」
「どうした? もう終わりか?」
思わず漏れた心の声に反応してか、剣を肩に担ぎ、拍子抜けだとでも言うようにロジャーが宣う。
「ほざけ!!」
その一言で恐れは消し飛んだ。
瞬時にロジャーに肉薄し、連撃を叩き込む。
「ゼリャァ!!」
「へっ、そうこなくちゃな!!」
ロジャーも笑みを浮かべ、その全てを捌いていく。その全てが私の全力の一撃であると言うのに、10,20と繰り出す斬撃や打撃は、ロジャーにまったく通用してくれない。
「フッ! ハッ! くたばれぇええ!!」
「ハハハ! コイツ、どんどんギアを上げてきやがる!」
通用しないのなら通用するまで攻撃し続け、捌かれるならより強く叩き込むだけだ。
一太刀弾かれるごとにより重く、一太刀受け流されるごとにより鋭く、一太刀避けられるごとにより速く。
―――ふざけたこの男に何としても一撃を食らわせるために!!
「ガァアアア!!」
「いい気概だ! 俺も負けてられねぇ!」
戦いはより速く、激しくなっていく。
「おいロジャー!! 少しは周りのことも考えろ!!」
ロジャー海賊団の船員だろうか。何かヤジを飛ばしているのが聞こえる。――まぁ、関係ないが。
「ロォォォジャァアア!!」
「俺もギア上げてくぞ!! アマナ!!」
上段の一太刀、躱される。
それを読んだ払い蹴り、剣で防がれる。
そのままロジャーの剣により反撃を食らう。吹っ飛ばされるが剣を地面に突き立ててなんとか耐える。
何度仕掛けても結果は似たりよったりで、全てを簡単に捌かれる。
「ヌゥアアア!!」
「オリャア!!」
バリバリと雷鳴が轟く。
この戦いによってより高みへと至った私の覇気をもってして、ようやく拮抗状態。さらに目の前の男には、未だ余力が存在している。
「私は自由に生きるんだ!! 負けてたまるかぁ!!」
「俺の夢のため、お前には船に乗ってもらう!」
私の覇気が最大級に高まり、それに合わせてロジャーの覇気も開放されていく。
「【
「【
放たれた両者の一撃は共に凄まじい威力をもって、衝突した。
「「ハァアア!!」」
その一撃は余波だけで地を砕き、そして―――
「天が、が割れてる…!!」
誰かがそう呟く。その技のぶつかり合いは、雲すら斬り裂き天を割ったのだ。
「ふぅ~! 今のはヒヤッとしたぜ」
土煙の中からロジャーが姿を現す。未だ傷一つ負っておらず、覇気も余裕があるようだ。―――その一方、
「ハァ、ハァ、ぐっ……」
まさに満身創痍の状態のアマナが両の足で力強く立ち、ロジャーを睨みつけていた。
「まだやれそうだな」
「当たり前だ……!」
傍から見れば既に勝負はついている。しかし、両人にとっては、未だ決着ではないようだった。
二人が得物を構え、技を繰り出そうとして―――
「船長!! 海軍の軍艦が一隻、こっちに向かって来てる! 乗ってるのは多分ガープだ!」
「何!? 派手にやり過ぎたか」
「ほれみろロジャー!! 言わんこっちゃない!!」
「すまんレイリー。そう怒るなよ」
ロジャー海賊団の会話を黙って聴き流す。というより、正直ダメージが溜まりすぎて気を抜けば意識を失いかねなかった。
「アマナ。この勝負はお預けだ。また会ったときに決着を着けよう。――絶対だぞ!!」
「……チッ。ああ、分かった」
「――よぉし!! 野郎ども!! 逃げるぞぉ!!」
急いで出港するロジャー海賊団を見送り、私は自らの船へと帰っていった。
そうして、ロジャーとの初対面は、戦闘、そして引き分けという結果に終わったのだった。
◆◇◆◇◆
「嬉しそうだな、ロジャー」
ロジャー海賊団副船長【冥王】シルバーズ・レイリーは、先程の戦闘から随分と上機嫌である己の船長に話しかける。
「ああ。あいつはおもしれぇやつだ。しかも、あの文字を解読できるんだ。ぜってぇ仲間にしてぇ…!」
「とは言っても、アイツは仲間になるのを断ったんだろう?」
「……あいつはまだ仲間を知らねぇんだ」
そう。ロジャーがアマナに断られても片意地に仲間に誘う理由は、自らの夢のためだけではなかった。
「一目見た瞬間分かった。あいつは、心の根本的な部分で、誰も信用できていないんだ。他人を、自分には不必要なものだと思ってる」
圧倒的人間不信。決して自分の心の内を誰かに明かすことなく、誰にも頼らず生きていく。それがアマナの生き方だった。
「確かにそりゃ自由だ。それに本人も満足してる。俺が首を突っ込むことじゃないかもしれねぇ。……けどな」
ロジャーは笑みのまま言った。
「そんなの、寂しいじゃねえか。俺も、お前らが居てこその冒険だと思ってる。俺の冒険はもうすぐ終わっちまうけどよ、あいつはまだガキだ。賢くて強えだけのガキなんだ。ならよ、俺はあいつには『仲間』を教えてやりてえ。あいつを孤独にはしたくねぇんだ。」
決して大きな声ではなかったが、力強く、重みのある言葉だった。
「……そうか」
レイリーは微笑を浮かべ、件の子どもを思った。
(うちの船長に目をつけられたんだ。残念だが、逃げられねぇよ)
なんせ、海賊は狙った宝は逃さないのだから。