「もしもし?」
『もしもし、楽郎さん!?』
「紅音! そっちはもう着いたんだな」
『はい! 私は明日が本番ですから!』
「ははっ、そうだったな!」
「俺はこの後だが……紅音、大会頑張れよ!」
『はい! 楽郎さんも頑張ってください! あっオイカッツォさんにもよろしくとお伝えください!』
「ああ、確かに伝えておくよ。そっちも朝乃さんによろしくな。そんじゃ、行ってくるよ」
『はい! いってらっしゃい!』
「……ふぅ」
恋人とのひとときの時間を終え、一つため息を吐いた。
朝乃さんが瑠美と出会った、あの日から何年かが経った。
俺は高校を卒業した後、当初の予定通り来鷹へ進学し、カッツォ……もとい
家族会議で報告した時は、大学卒業後だったら好きにしろとの事だったので、きちんと大学を卒業してプロゲーマーの道を選んだ。
紅音とは、あれからも交際が続いている。
紅音の大会の応援に行ったり、一緒にゲームしたり、週末を俺や紅音の家で過ごしたり……今では同棲しているが、恋人らしい普通の日常を過ごしていた。
ちなみに朝乃さんは、趣味で書いてた小説がヒットして、卒業後は小説家になった。あ、小説家で思い出したが、雑ピの奴も暁ハートの名前で詩集を出した。やっぱり才能はあったようで、大ヒットしてたぞ。もちろん買ったぞ
「
「どした?」
「そろそろ決勝だろ? 調子はどうだ?」
「ああ、そうだな。絶好調だよ」
「そうやって油断して、シルヴィに負けんなよ?」
「はっ! お前が初めて全米一に勝った後のジョンソン戦じゃあるまいし」
「まだ覚えてたか」
「当たり前だろ、あれは歴史に名を残すべきだと俺は思うんだよ」
「ほざけ なら、お前がもしシルヴィに負けたら、向こう半年は煽ってやるよ」
「上等だよ」
「
「ああはい。そんじゃ行ってくるわ」
「おう。あっ、コレやるよ!」
「ありがとよ。でもそれはシルヴィアを倒した後に貰うわ。ちなみにそれ何?」
「リボルブランタン」
「なんでよりにもよってそれなんですかねぇ……?」
「まあまあ、それより飲んでかないのかよ?」
「ああ、今回ばかりはライオット・ブラッド飲んで勝っちゃ意味がないんだよ」
「どういうことだよ?」
「時間無いしまた後で、そうだ! 紅音がよろしくってさ」
「あっ、オイ!」
* * *
「うるさ……」
選手入り口から入場して聞いたのは、観客達からの黄色い悲鳴だった。 確かテレビで放映されてるんだっけか? 紅音も見てるって言ってたから間違いないだろう。
「ハロー
相対したのは、決勝戦の相手……全米一 シルヴィア・ゴールドバーグだ。準決勝でアメリアをボコボコにして上がってきたみたいだが、全然消耗してないな。
「よう、今日こそは絶対に勝たせてもらうぜ。シルヴィア・ゴールドバーグ いや……ミーティアス!!」
俺は今日までコイツからラウンドを取ったことはあっても勝利したことはない。だから、俺の全てを出し切って勝たせてもらう!
「ははっ!! イイね
* * *
『世界大会決勝戦 スターレイン所属 シルヴィア・ゴールドバーグ選手vs
試合が始まった。
使用キャラは言わずもがな ヤツがミーティアスで俺がカースドプリズンだ。
今回の試合は、1on1の3ラウンド制で2ラウンド先取で決着がつく。万が一3ラウンドでドローだった場合は、GGCの時みたく4ラウンドまでだ。
今回はエナドリをキメてないので短期決戦で終わらせたいところだが……そうは問屋が下さないってか。
「そんじゃ、やりますか……」
ヴィラニックゲージを稼ぐべく、まず手始めに近くにいた警察達を襲撃した。
* * *
「ラストラウンドだねカースドプリズン」
「これで終わりだよ」
「チッ……もう来やがったか……。だけどな、俺が勝つ!!」
「そう。再会のシルシにこれどうぞ! ハァッ!!」
「ぐっ……」
現在、第3ラウンド 戦績は1対1でラウンドを取っている。勝負はこのラウンドで決まる。
そして俺を見つけたミーティアスから、駆け付けいっぱいと言わんばかりの中国拳法らしき技を放ってきた。これがヤツと初めて戦った時の俺ならそのまま食らってたかもしれない。だが、今は違う!!
行くぞ!! 大きく息を吸え!!
「
ミーティアスに追いつかれる前に吸収した火炎放射器の火力をご覧あれ!!
「
技を借りるぜ紅音!! 本場の
「どこかで見覚えのある攻撃だね! カースドプリズン!」
「ああ、そうだな! だがこんぐらいじゃ燃え尽きないのはわかってたからな、これでもくらいやがれ!」
俺は近くに落ちてた無数の瓦礫を蹴った。だが、相手は人力TAS 案の定避けやがった。
「トドメだよ! カースドプリズン!!」
「これで決着だ!!
* * *
───ワァァァ!!!
──勝者!!
「勝ったんだ……!」
シルヴィアとの試合を終え、ログアウトして現実に戻った俺は、あまりの歓声につい呟いた。
……本当に勝ったんだな……!
ついに勝ったんだ、シルヴィア・ゴールドバーグに!
「顔隠し!」
「よう、シルヴィア 良い試合だったぜ」
「優勝おめでとう
そう言うシルヴィアの顔はめっちゃ悔しそうだ。
「優勝おめでとうございます、
そう言った笹原エイト氏からマイクを手渡された。
正直、プロゲーマーなった今でもこれ苦手なんだよなぁ……
しかも今回は、ライオットブラッド飲んでないからダイマは出来ない。いや、今回はそのつもりは無かったんだが
「とても嬉しいです! 何年か前のシルヴィアと初めて戦った時は、力及ばず敗北しましたが、あの時のリベンジを果たすことが出来ました!」
それに今回は、俺がエナドリを使わなかったのは目的があったからだ。そのために素面で戦ったが、本当よく勝てたよな……。
目的のアレを叫びたいとこだが……明日の紅音が心配だからな……。次は俺が応援する番だぜ、紅音!
頑張れよ!
* * *
「楽郎さん……」
試合を目前にして、愛する人の名前を呟いた。
「見ててください……私の走り」
昨日は、楽郎さんの勇姿を見届けました。
次は……私が見せる番です!
「…………」
きっと今の私は、最高に集中しているのだろう。
それも今までの中で最も深い。
ゴールまで……全力で駆け抜ける。
周りの選手たちも周りの声援も入ってこない。
──極限まで
──駆け抜ける
* * *
「楽郎さん!」
「紅音!」
空港で再会した俺たちは、一目散に抱き合った。
「紅音、優勝おめでとう」
「楽郎さんこそ、優勝おめでとうございます」
紅音の勇姿はテレビで見ていたが、それは途轍もない接戦だった。そして優勝する瞬間も見逃さなかった。流石は紅音だ
「……なぁ、紅音」
「はい?」
「実は俺、紅音に伝えたい事があるんだ」
「なんでしょう?」
やっべ……緊張してきたな。でも、このためにエナドリ使わなかったんだが
「紅音」
「は、はい」
「俺と……結婚してくれ!」
「はい! ……はい!?」
紅音は顔を真っ赤に染めて慌てていた。
「え、えと!? 楽郎さん!? ほ、本気ですか?」
「もちろんだ。実は、優勝した時のインタビューで答えたかったんだが……ほら、あの格好だったからな」
「なるほど……」
あのインタビューの場で堂々と宣言したかったんだがな……。だがそれは今後に影響する気がしたので断念した。身バレとかな……。
「楽郎さん」
紅音が真剣な顔つきになる。
「私も……楽郎さんと結婚したいです!」
!!
「本当か……! 紅音」
「本当です! 私は、あの時からずっと……楽郎さんと一緒に人生を歩みたかったんです!」
「紅音……ありがとう。俺もこれからの人生を紅音と一緒に送りたいんだ」
「はい。楽郎さん、よろしくお願いします!」
「こちらこそ、紅音」
紅音と、これからの人生を共にできるんだ そんな幸せな未来を過ごすんだ。
「帰ろうぜ、紅音」
「家に……俺たちの家に」
「はい!」
俺たちは、手を絡めながら同棲するアパートへ向けて歩き出した。
次回 本当の最終話【エピローグ】