「どうしましょう! サンラクさん! どうやら、私はサンラクさんの事が好きみたいです!!」
「へあ?」
あれ?俺って今、ギャルゲーの世界にフルダイブしてたんだっけ…?いやでも俺がプレイしたギャルゲーといえばラブ・クロックぐらいだし……
「えっと…2人ってどういう関係なの…?」
やっべ…そういや目の前に瑠美居たわ…
「え、えっとな…俺と隠岐さんは、あるゲームの中で知り合って、別のゲームでは同じクラン…簡単に言えば同じ団体に所属してる仲間なんだよ。まさか、リアルで瑠美の友達だとは思わなかったけど…。」
とりあえず瑠美に簡単に説明する。
「ふぅーん。まぁいいや。紅音には、私の部屋で詳しく話してもらうから」
「え、」
「はい!お手柔らかにお願いします!」
やばいな…瑠美は、あの外道鉛筆の邪教徒だ…。最悪の場合、外道鉛筆どころか他のメンバーにまでこの事を知られかねない…そうなれば、この事を外道共から一生煽られ続ける事になる…。いや、隠岐さん…秋津茜があんなだから、打つ手なしなのか…?
「じ、じゃあ、俺は部屋に…」
「はーい。お兄ちゃんもあとで楽しみにしててね。」
瑠美の顔が外道共のそれになってる。
「くそっ…邪教徒め…」
「お手柔らかにお願いします」
そう言って、隠岐さんは瑠美の部屋に連れてかれた。
「……とりあえず京ティメットは天誅だ」
リアルバレと同時に告白され、混乱する中、とりあえず幕末で発散しようと心の中で決めた。
* * *
「ログイン天誅!!」
「甘い!!そんなもん食らうか!」
いつも通り、ログイン後のリスキル狙いのバカ共を天誅する。だって天がやれって言ったんだもの。
「さてと、京ティメットは…っと」
とりあえず京極を天誅すべく、その辺のやつを天誅しながら京極を探す。
「おや?」
「あ、」
やっべ…吹雪狩だ、逃げろ!!
「待て!!祭囃子!!大人しく天誅されなさい!!」
「やなこった!!俺は逃げる!!」
「チェストォォォ!!!」
「危ねッ!!」
ちょっ、新撰組なのに示現流使ってんじゃねぇよ!!
「おっ!!」
ちょうど良いところに…!!
「ん…?げっ!!祭囃子に吹雪狩!?」
「すまん!あとは頼む!」
「はぁ!?」
すまない名も知らぬ幕末志士よ…俺のために吹雪狩の犠牲となってくれ…
「チェストォォォ!!!」
誠意大将軍の声が響き渡る…名もなき志士よ…無縁仏に沈め…。いや、無縁仏だとレイドボスさんいるか。
「ふぅ……なんとか逃げ切ったか」
名も知らぬ幕末志士を犠牲にし、なんとか吹雪狩から逃げる事ができた。
「んじゃ、京極探すか。」
秋津茜にリアルバレと同時に告白され、いろいろ感情がバグってる中、一旦気持ちを落ち着かせる為に京極を天誅すべく、またもや襲いかかってきた奴らを天誅しながら京極を探す。
「おっ…いたいた…」
そんじゃあやるか。
「天誅!!」
「させないよ!」
不意打ちで京極を仕留めようとしたが、迎撃された。まぁ幕末汚染患者ならこれくらい防いで当たり前だが。
「サンラク!!この前はよくも僕を爆破したな!!」
「仕方ないだろ。天がやれって言ったんだから。だから俺悪く無い」
そう。今回のこれも天がやれって言ったから。
「天誅!!」
そう考えていると、京極が攻めてきた。まあそう簡単に天誅されるわけにはいかないんだがな。
「拍子撃ち!!」
技を借りるぜ銭鳴
「ッ…!」
「シャオラァ行くぜ!!」
『天誅!!』
「なにっ!!」
拍子撃ちを決め、京極を天誅しようとしたら、どこからともなく別の奴らが現れた…ってかさっき天誅したやつらだ。
「食らうか!」
「オラァ!」
「おいおいおい…どんどん増えてるじゃねぇか……」
さっき京極を探す時に天誅したやつらが次々と集まってくる。
「くっ…なんで僕まで…天誅!」
「天誅」
どさくさに紛れて京極を背後から刺した。
「なっ…サンラクゥゥゥ!!!」
「じゃあな京ティメット」
さてと…本来の目的であった京ティメットは天誅したが…また人数増えてんなこれ…
「祭囃子!!大人しく天誅されろ!」
「そう簡単に天誅されてたまるか!」
ヤバいな…どんどん人数が増えてきたぞ…。
* * *
「じゃあ紅音、お兄ちゃんとの関係について洗いざらい話してもらうわよ。」
「えと…何からお話ししましょうか?」
「そりゃあ全部だよ。お兄ちゃんと出会ったとこから今日まで。」
「はい!では、お話しします!」
今日は親友の紅音と勉強する為に自宅に招いたのだが、まさか兄のゲーム仲間で、更にまさかの知り合いと発覚した瞬間に告白するとは思いもしなかった。なんだか面白そうなことになってきたな。
* * *
紅音から話を聞いてわかったこと。お兄ちゃんとは、ベルセルク・オンライン・パッションという、あまり人が居ない格闘ゲームの中で出会ったこと。そこで対戦しながらいろいろ教えてもらったこと。その時のお兄ちゃんは、尊敬すべき先輩だったこと。そしてシャンフロでお兄ちゃんの名前を聞いてもしかしたらと思い、走って会いに行ったこと。そして、そのまま強敵と戦って勝ったこと。その後も一緒に行動することが何度かあって、いつしか憧れのようなものを感じたこと。そして今日、お兄ちゃんに会ってその憧れを感じた人だとわかった瞬間にその憧れは恋愛感情なんだと気付き、気持ちが抑えきれなくなってああなったそうだ。なんというか…紅音が純情で可愛い…。
「これで全部だよ。」
「そんなことがあったんだ。それで、紅音はどうするの?」
紅音の覚悟を問う為に聞いてみた。
「えっと…どうするっていうのは…?」
「いきなりだったし、お兄ちゃんがなんていうかわからないじゃん。それでも諦めないなら、私も親友のために協力したいなって。」
「瑠美ちゃん…。さっきは気持ちが抑えきれずに言っちゃったけど、私は楽郎さんのことが好きなの。お付き合いしたいと思うほどに。だから…もしも楽郎さんに良い返事が返って来なかったとしても…簡単に諦めたくない!」
「うん。それなら紅音のことを全力でサポートするから!」
「ありがとう、瑠美ちゃん!」
それじゃあ早速協力しないとね。
「それじゃあ紅音、お兄ちゃんの部屋に行くよ」
「えっ!?」
「お兄ちゃんにも話を聞かないとね。あと紅音の告白の返事も聞きたいし。」
「うん…。頑張ります…!」
「頑張れ紅音!」
* * *
「ちくしょう」
あの後、京極を天誅し、奴を探す過程で天誅したやつらをまたもや天誅したは良いが、最後は乱入してきた紅蓮寧土の花火で全員爆破された。やっぱ幕末の天気予報はイカれてるぜ。
そして八つ当たりも兼ねてログインし目標の京ティメットの天誅も達成したので、幕末からログアウトした。
「えっと……なんで二人とも俺の部屋にいるの…?」
ログアウトしてベッドから起き上がったのは良いのだが、何故か部屋には妹の瑠美とつい先程、唐突の告白イベントをぶちかました秋津茜…もとい隠岐さんがいた。
「楽郎さん、お邪魔してます。」
「あ、うん。まぁ全然良いけど…」
「なんでって、そりゃお兄ちゃんにも話を聞きたいなって思って」
「だとしてもなんで当事者の隠岐さんも居るんだよ」
「紅音が居たらダメなの?」
「いや…まぁダメじゃないけど。」
「じゃあいいよね。」
押し切られた。くそッ…邪教徒め…。
「そんで、何を言えばいいんだ?」
「紅音から大体のことは聞いたし、お兄ちゃんが紅音のことをどんな風に思ってるのかとか。」
「本人の前で言うのかよ…。まぁいいや。」
「まぁ最初出会った時は、過疎ゲーに舞い降りた絶滅危惧種の初心者だった。んでシャンフロで走って戦いの場に来たって聞いた時はそりゃ困惑したさ。だって3つ目の街から最後の街まで走り抜けたなんて言うからな。んでもって、何度か一緒に行動しててわかったんだよ。隠岐さんは何事も諦めずに一直線に頑張ることが出来る人なんだなってさ。」
「…それで、さっきの返事なんだけど…」
「は、はい…!」
隠岐さんがとても緊張した顔でこちらを見つめている。言う方の俺もめっちゃ緊張してきた…。
「返事はまだ保留にさせてほしいんだ。シャンフロの中でなら兎も角、リアルではまだ会ったばっかで、どう返せば良いのかわからない。でも、いつか必ず答えを出すから待ってて欲しい…。」
流石にいきなり過ぎてビックリしたのと、気持ちの整理が付いてない。だから今回は答えを出さなかった。
「はい…。ですが私は…諦めずに待ち続けます!」
俺の言葉を聞いた隠岐さんが悲しそうな表情をしているが、その言葉の通り、諦めないという意志も感じた。いかん…なんか申し訳なくなってきた。
「お兄ちゃんのヘタレ」
「ウッ…」
こればかりはなんとも言えない…。
「あの…楽郎さん」
隠岐さんが口を開いた。
「は、はい…!」
「これから私の事は隠岐さんではなく、紅音と呼んでほしいです!」
「え?」
「私は楽郎さんと呼びます。ですから、楽郎さんも私のことを紅音と呼んでください。」
「え、でも…隠岐さ…「紅音です」」
「わかったよ……あ、紅音……」
「はい!」
紅音の顔に笑顔が戻った。
これってどうなっちまうんだろうなぁ…紅音が瑠美の友達ってことは、多分これからもリアルで会うことが増えるわけだろ?下手すりゃあ旅狼の連中にまでバレる可能性があるわけだ。そうなれば間違いなくあの外道共から弄られる。でもまぁ、だからと言って紅音がどうこうするってわけでもない。そん時はそん時だ。
* * *
あれから結構な時間が経っただろうか。あの後、瑠美にめっちゃ尋問された。シャンフロでの紅音との関係とかいろいろ聞かれた。黙秘権を使おうと考えたりもしたが、紅音がいるためほぼ無意味なのと瑠美があの外道鉛筆に聞くと言い出したので結局全て白状した。
そんでもって結構良い時間になり紅音が帰るため、俺は途中まで送る事になった。
「じゃあお兄ちゃん、紅音のことよろしくね」
「わかってるよ。ちゃんと駅まで送り届けるよ」
「よ、よろしくお願いします。楽郎さん」
「ん。じゃあ行くか。」
「は、はい…!」
やべぇ…こういう時って何話せば良いんだ…。ラブ・クロックでも一緒に下校イベントはあったけど、でもあれ帰り道にピザ屋を見ただけでピザ留学に分岐するんだよなぁ…だから絶対にピザ屋が無い道を選ばなければならなかったっけか…。
いや、ラブ・クロックの下校イベントは今の状況に対して、なんも参考にならないわ。
なんて事を考えてると、紅音が話しかけてきた。
「あの…楽郎さん」
「うん?どうした紅音」
「今日はありがとうございました!」
「へ?」
「サンラクさんが実は楽郎さんだってわかった時、憧れのようなものが実は恋なんだって気づいて…思わず告白してしまいました。その後瑠美ちゃんと話している時に、もしかしたら断られるかもしれないって思ったんです。でも…私はそれでも諦めたくないって瑠美ちゃんに言ったんです。それで楽郎さんが必ず答えを出すから待ってて欲しいって言ってくださって…私のことを紅音って呼んでくれて…とても嬉しかったんです。好きな人に名前で呼んでもらえることがこんなにも嬉しいことなんだって。だから…そのお礼なんです!ありがとうございました、楽郎さん!」
そう言った紅音の表情は、とても嬉しそうな笑顔だった。やばいね…眩し過ぎる…。
「あ、ああ……って駅着いたな」
「では、失礼します!楽郎さん」
「あ、紅音…!その…またな…!」
少し緊張しながらも紅音の名前を呼んで別れを告げた。
「……多分、俺今、顔真っ赤だろうな……」
またしてもなんとも言えない感情になってきた。
「……帰ってクソゲーでもやろうかな」
この気持ちを落ち着かせるために帰ったらゲームをすることにしたが、シャンフロだと恐らく秋津茜と再開した時にまたさっきのようになるので、とりあえずクソゲニウムを摂取することにした。