「岩巻さーん!!」
翌日、学校が終わりとりあえず紅音の事を相談すべく、ロックロールに向かった。
「はーい陽務君いらっしゃい」
「それで、ここに来たってことはクソゲー?それとも恋愛相談?」
「相談ですよ」
まあいつもだったらこの店のクソゲー在庫を処理をするんだが、今日に関しては来週の金曜の事もあるので相談だ。
「あらそうなの。じゃあ聞かせてもらえるかな?」
「はい。まぁ…簡潔に言うと、来週の金曜に紅音がウチに泊まりに来ます。」
「よし!私からのアドバイスは1つ。そこで気持ちを伝えなさい!」
即答であった。
「え…マジですか…?」
「マジよ。」
「だってここに来たってことは、そういう事でしょう?」
「確かに…そうですが…」
なんだかんだ言って紅音への返事をいつまでも保留にする訳にはいかない。
俺自身が答えを出すから待ってほしいと言ったんだから…筋は通さなければならない。
「泊まりに来るのは来週の金曜日なんでしょ?妹さんの友達なんだし多分それまでに何度か一緒に過ごす機会ってのはあるはずよ。」
「ええ…まあ」
確かに勉強と称して瑠美が紅音を家に呼んでそうだな…。
「私が昨日言ったことだけど、一緒に居る機会を無駄にしないこと。君は紅音ちゃんに少なからずそういう気持ちがあるんでしょ」
「…」
そうだな…でもどうすりゃ良いんだろ
「まだ数日だけど、ウジウジしてないで来週の金曜に決着をつけなさい!」
決着…か。
「わかりました。ありがとうございます!」
「ええ。良い顔になったわね。あ、来週は新作の攻略でウチ閉まってるから。次は、その紅音ちゃんも連れてウチの店に来なさい!相談にも乗るしクソゲーの在庫処分もしてもらうから」
「はい。岩巻さん、本当にありがとうございました!」
まだ迷いがあるかもしれない…。でも、それも来週の金曜で終わりだ。
覚悟を決めよう。
* * *
「ただいま」
ロックロールでの岩巻さんへの相談を終えて我が家へ帰宅した。
「今日もか。」
靴を脱いで下駄箱を見ると見慣れない靴もあった。まあ、紅音なんだが。
多分今日も勉強だろうな。テスト近いみたいなことを瑠美が言ってたし。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
「楽郎さん!おかえりなさい!お邪魔してます!」
とりあえず部屋に戻ろうと階段を上がったところで、瑠美と紅音に見つかった。やっぱり勉強をしてたみたいだ。
「おう。いらっしゃい紅音」
「お兄ちゃん、紅音に勉強教えてもらえない?」
「え?まあいいけど…お前も成績がアレなんだしついでに教えるぞ?」
紅音の成績は知らないが、瑠美はまぁ…母さん達に服を売られたりしない程度の成績だ。
「せっかく紅音がいるんだし、私は後でもいいからさ」
「お前…成績大丈夫なのか…?今年受験だろうが」
「まあなんとかするからさ」
「紅音が帰ってから教えて」
「はぁ…わかったよ。そういえば瑠美と同級生ってことは紅音も受験だったよな?どこ受けるの?」
「はい!実は陸上で推薦を受けましてこの学校を受験します!」
そう言って紅音は携帯端末で受ける高校の写真を見せてきた。てかちょっと待て、この校舎は…
「俺が行ってる高校じゃん。」
「え!?そうなんですか!?」
なんとびっくり、紅音が推薦で受ける高校というのはウチの学校だった。てか陸上部強かったのか…。
「推薦とはいえどウチの高校って結構な進学校だけど、勉強大丈夫なのか?」
「えと…かなり不安定です」
「えぇ…でも、紅音もウチの学校を受けるんなら俺が一肌脱ぐか。」
もしかしたら1年だけではあるが一緒の学校に行くかもしれないしな。
「本当ですか!ありがとうございます!」
「じゃ、そのためにはまずテスト勉強からだな」
「は、はい!よろしくお願いします!」
とりあえず紅音に勉強を教えることになった。
「紅音はどこを苦手としてるんだ?」
俺は紅音の成績を知らないからどう教えようかね…
「は、はい…こことか…ここですね…」
あっ、ギリなんとかなりそうだわ
「えっとな、そこはこれで…」
紅音にわからないところを聞き、俺はヒントを与える。そこから紅音はヒントを基に答えを書いていく。
「こうですか?」
おっ正解
「そうそう。紅音の普段のスタイルから多分これでいけるかなって思ったけど、行けそうだな」
紅音のゲームスタイルはRTA型だ。少しのヒントさえ与えれば後は勝手に試行錯誤していくだろう。
「あの、楽郎さん!ここってどうすれば良いんでしょうか!」
「ああ、それは……」
「ッ…!?」
紅音を見た瞬間、紅音の後ろで束ねた髪の下に白く光るうなじが目に入り、俺は思わずドキッとした。
「あの…楽郎さん?顔が真っ赤になってますがどうしましたか?」
「あ!?え、あぁ…うん…」
どう返せば良いんだろう…。まさかバカ正直にあなたのうなじが目に入って赤面しましたなんてクッソ恥ずかしい事を言えるわけがない。
そんな事を考えていると、どこか外道鉛筆を連想する笑みを浮かべた瑠美が口を開いた。
「紅音、今お兄ちゃんが顔を赤くしたのはきっとねぇ…紅音耳貸して」
「はい」
理由を察した瑠美が紅音の耳元でコソコソとその事をを伝えた。
「!?」
すると紅音の顔が真っ赤に染まった。
「あ…あの…楽郎さん…?」
「は、はい…」
「わたし…その…!」
紅音は恥ずかしそうにしながらも満更でもなさそうにしていた。
ちなみにこの時、この場で兄と親友のやりとりを見ていた妹の瑠美の心情は
「早く二人ともくっつけばいいのに」
と思っていたそうだ。
* * *
「それでは刑を執行する」
「おい」
「なんだ?」
「いやなんだじゃねぇよ。なんだよこれ」
紅音との勉強の後、一昨日のように紅音と駅まで歩いた翌日、またもや登校と同時に雑ピ達に椅子に拘束されてしまった。
「?お前を処刑するのだが」
「裁判も無いのかよ!」
条約に違反してんじゃないの?
「それでどうしたんだよ暁ハート」
「その名前で呼ぶなぁ!!……昨日の夕方は随分と楽しそうだったみたいだなぁ…!」
え、なんで知ってるんだよ
「なんで知ってるんだよ雑ピ…。夕陽で黄昏れながら『雨の日の君と僕』に続く新作でも書いてたのか?」
「………」
いや書いてたんかい!
「とりあえず暁ハート先生の新作は置いといて、まずはお前からだ陽務」
くそっ!逃げられなかった!
「そんでそこの雑菌ピアスハートも言ってたが、その子と仲良さげらしいし付き合ってるんじゃないのか?」
「ブフッ…!!」
おいバカ思わず吹き出したろうが!!モルドしちゃうだろ!!
「何笑ってんだよ!!」
「だ、だってそりゃ笑うだろ」
「ええいうるさい!この際はっきりさせよう!楽郎、お前は斉賀さんと昨日の子とどっちが本命なんだよ!」
「だからどっちも付き合ってないから本命もへったくれもないっての。」
斉賀さんはあくまで同じクランに居るってだけで特にそんな事ない。うん。 それでまぁ…紅音の事は…ってまだ答え出してないからな。
「じ、じゃあ…昨日のはなんなんだよ…。妹の友達ってのは聞いたけど、それにしても結構親密そうに見えたぞ」
またこの雑菌ピアスは…
「確かに仲が良いのは認める。アイツとはゲームで知り合った仲だからな。それにまだ付き合ってない。」
「…ほう?まだ…だと?」
あっ…やべっ
「今、まだだと言ったな陽務容疑者よ。それについてはどう弁明するつもりだ?」
「あ、い、いや…それは…」
やっべ口滑らしちゃったよ…。
「だがまぁ、実際のところどうなんだよ楽郎」
「何がだよ。」
「斉賀さんとの事は否定してるけど、その妹の親友との事は本気なのかって事。」
「もしもお前が本気なら、俺らも協力するぞ!」
「協力すると称して弄って遊ぶの間違いじゃないのか?雑ピのポエムみたく」
「今俺のポエムは別に良いだろ…まぁ相談くらいだったら俺らも乗るしな。」
「本当かよ…」
「付き合ったら教えろよ。みんなで盛大に祝ってやる」
そう言った雑ピ達の顔が、外道共が外道行為を働く時のそれだった。信用ならねぇなオイ…。
「わかったよ。そん時は頼むわ」
「おう!任せとけって」
「それはそれとして、暁ハートの新作読もうぜ」
「なっ!?おい待てやめろ!!やめてくれ!!やめ…あーーー!!!」
この魔女狩りの制裁と純粋に気になったので、夕陽に黄昏て書いたポエムを朗読の刑に処することにした。あとなんだかんだ言って雑ピは才能があるんだなと思った。