12/12 内容及びあとがきを編集しました。
あれから大体1週間が経った。
その間いろんな出来事が…と言いたいところだが、ほぼ毎日同じだ。
紅音と瑠美の勉強を見て、シャンフロで紅音と一緒にクエストしたり、便秘で対戦をしたりした。
そんな1週間だったけど、紅音と過ごす時間はとても楽しかった。
そして明日はついに紅音がウチに泊まりに来る日だ。そして俺が紅音に返事をする日でもある。
そんな事を言ってるけど、緊張するな…。
俺の恋愛経験はラブクロックのみだからなぁ…。唯一の経験がクソゲーだけとは…。
まあ…なんとかなるだろう…。
「ん…?あれは…」
学校が終わり家に帰る途中、見覚えのある…というか知ってる後ろ姿があった。
「おーい紅音ー」
「楽郎さん!」
やっぱり紅音だった。もし万が一にも人違いだったらどうしようかと思ったけど…。
「トレーニング帰りか?」
「はい!テストは明日で終わりなんですが、勉強の息抜きで走ってきました!」
「そうかテストも明日で終わりか。手応えはどうだった?」
「ぼちぼちです!ですがいつもよりは出来ました!」
「そうなのか!結果が楽しみだな!」
「楽郎さんが勉強を教えてくれたおかげです!ありがとうございました!」
「いやいやそんなことはない。それは紅音が頑張ったからだ。その調子で明日のテストも頑張れよ」
「はい!」
紅音が頑張る姿を見ると、俺もやらなければって気持ちになる。トレーニングにしろ、ゲームにしろ。……もしかしたら俺は……
「あの、楽郎さん」
「うん?どうした紅音」
「えと……すみません。やっぱりなんでもありません。」
「?それならいいけど…。」
紅音が何か言いたそうな表情であったが、本人が何でもないと言ったのでこれ以上は聞かないことにした。
* * *
「今日か…」
ついに訪れた当日。そして…選択の日…。
「おはよー」
「お兄ちゃんおはよう」
「おう。そういや瑠美も今日テスト最終日だよな?手応えはどうだ?」
「紅音との勉強してたからまあ…多分大丈夫」
「えぇ…俺も教えたじゃん」
「お兄ちゃんが教えてくれたから助かったよ。ありがとう」
「そうかい」
「あ、そういえばお父さんから伝言があるよ」
「父さんから?今釣り行ってるのに?」
「昨日連絡が来てね。マグロを釣って帰るから待っていろだってさ。」
「えぇ…またあのマグロ地獄を…?」
「お泊まりの件の交渉した時に、お父さんから大物釣り上げてくるって言ってたからねぇ…。お母さんも虫料理出すって言ったけどそれは私とお父さんで止めた。」
「ああ…。紅音がなんて言うかはわからないけど虫はな…」
「うん…。まあでもマグロと言っても前みたいなサイズでは無いと良いね」
「だな。もうあの食卓に鎮座したお頭は思い出したくない…。」
「まあ、そういうことだから。あ、夕食後に紅音のファッションショーやるからそのつもりでいてね。」
「マジ?」
「マジ。あと紅音も承諾してるから逃げないでね」
「いやまぁ俺がやるわけじゃ無いから逃げないけどさ…。」
「あっ…!ヤバい、もうこんな時間!じゃあ私は学校行ってきます」
「はいよ。いってらっしゃい。テスト頑張れよ」
「わかってる!お兄ちゃんも紅音とのこと頑張ってよ!」
「ちょ…!おい!」
バタン
「なんちゅう事言い残してんだアイツは…。」
そうだな……今日だもんな。俺が紅音に告白の返事をするのは…。
今からとんでもない緊張する…。そりゃそうか。リアルでこんな事するのは初めてだもんな。
「夜までどうしよう…」
学校に行くのは当然なんだが…今日に関しては授業に集中出来る気がしない。あと雑ピ達に尋問食らってもまともに受け答えできる気がしない。
「いざという時は、ライオットブラッドか…?」
何故ここでエナジードリンクなのかはわからないが、最悪の場合GG:Cのようにカフェインでテンションを上げようなどと考え始めていた。
「ってヤバい!俺も遅刻する!」
「いってきまーす!!」
そんなことを考えながらふと時計を見ると、遅刻ギリギリの時間になっていたので、俺は朝から全力疾走するハメになった。
持ってくれよ俺の脚!!
* * *
「あっぶねー…なんとか間に合った…」
朝から全力疾走の末、なんとか間に合った。
「よう、楽郎…って朝から大分お疲れのようだな…」
「よう雑ピ…そりゃ遅刻しそうになったからな…」
「また朝までゲームでもやってたのか?」
「まあそんなとこ」
「ふーん」
学校にギリで到着した俺は、既に登校している雑ピに下手なことを言って尋問されないよう適当に躱しつつ学校での一日を過ごした。
* * *
「んじゃ帰るか。」
今日もいつも通りに授業を受け、ロックロールは岩巻さんの乙女ゲー攻略期間で閉まってるので特に寄り道をする事もなく家に帰宅した。
「ただいま」
「おう。楽郎おかえり」
「あれ、父さん帰ってきてたのか」
「ああ。なんとか間に合ったからな」
「え?間に合ったって…え、マジか」
家に帰ると釣りに行っていたはずの父さんが帰ってきていた。デカいマグロと一緒に…
「本当にマグロ釣ったのかよ…」
「もちろんだ!瑠美の友達が家に来るって聞いてたからな!なんとかお前たちが帰ってくる前に釣れてよかったぞ!」
「もう捌くのも終わってるのかよ…。んで、何作ろうとしてんの?」
「ん?ああ、漬けマグロだ」
漬鮪!?おっといけない…ピザの悪夢が…。
「どうした楽郎?」
「い、いやなんでもないよ」
「そうか。まあ後は刺身にして漬けるくらいだがな。あ、終わったら俺はまた釣りに出るからな。次は日曜の朝に」
「そういや母さんは?」
「いつも通り虫の世話」
「あ、でも今日の夜は行くところがあるらしくて出るそうだ」
「そうなんだ。」
「うし、じゃあ楽郎、瑠美の友達にもよろしくな」
「わかったよ父さん。」
* * *
ピンポン
「はーい」
チャイムが鳴った。紅音かな…?瑠美はバイトって聞いてるし
「はいはい」
ガチャ
「どうも宅配です。陽務瑠美さんへお荷物のお届けに参りました」
「あ、ご苦労様です。ハンコでいいですか?」
「はい。こちらにお願いします。」
「はい」
「はい。大丈夫です。ありがとうございました。」
紅音かと思ったら宅配かい!ていうか瑠美が通販って珍しいな。
まあ何が届いたのとかは知らないので、とりあえず部屋の前に置いておくことにした。
ピンポン
またか。
「あーはいはい」
ガチャ
「昨日ぶりです!楽郎さん!」
「うぉっ…!紅音か!いらっしゃい。昨日ぶりだな」
次の来客はまたもや宅配に見せかけて、待ち人である紅音であった。
「はい!楽郎さん、今日はよろしくお願いします!」
「ああ、よろしくな。あ、多分瑠美から聞いてると思うけど荷物とかは瑠美の部屋に置いといて。」
「わかりました!ではお邪魔します!」
* * *
「あの、楽郎さん」
「うん?どうした紅音?」
リビングで俺の対面に座る紅音は、真剣な顔つきで話しかけた。
「私は…やっぱり楽郎さんの事が好きです!」
「ッ…!!」
「こちらで初めてお会いした時は、サンラクさんが楽郎さんだってわかった時、嬉しくなって…思わず告白してしまいました。」
「あれから2週間になりますけど…。あれから何度も考えました。それでも私は、楽郎さんの事が好きです!」
「そ、そうなのか…。」
変わらない…か。そうだな…。
今俺の目の前に居る、隠岐紅音って女の子はそういう子なんだ。
ただひたすらに真っ直ぐに進み続けることが出来て、失敗しても、諦めずに努力し続けることが出来る女の子なんだ…。
シャンフロでもそんな姿を見ていたから…だから俺は…。
「なぁ、紅音」
「はい!」
今日まで悩んだ。どう言おうか悩んだ。いつ言おうか悩んだ。悩んで悩んで悩み続けた。それでも……自分の気持ちを伝えよう。俺は、紅音のその真っ直ぐな姿に惹かれたんだって事を。
「俺は…紅音の事が好きだ…!!」
「……楽郎さん!」
「…伝えるのが遅くなってごめんな。ずっと、悩んでたんだ…。俺が紅音と居る時間を大切にしたいって思ってから。いつ告白の返事をするのかとか。いろいろ悩んだ。」
「だけど、瑠美からお泊まり会やるって聞いて…それだけの期間がありゃ、この悩みにも決着が着くって思って…。そんだけ紅音と過ごす時間が楽しいんだって自覚してから…!!俺は…!紅音が好きだ…!だから…俺と付き合ってほしい…!」
ただひたすらに、紅音への想いを告げた。
これは返事だけじゃなく、俺からの告白でもある。
「楽…郎さん…」
名前を呼んだ紅音の目からは、涙が溢れていた。
「あ、紅音…!?うわっ!?」
「楽郎さん…!」
次の刹那、俺は紅音に抱きつかれていた。
「ちょっ!?紅音!?」
「はい…」
「あの…これはどういう…」
「ごめんなさい楽郎さん…私…私…ヒグッ…」
「あの…泣いて…」
「私…嬉しいんです…!大好きな人から好きだって言ってもらえて。」
「付き合ってほしいって言ってもらえて…!」
「楽郎さん…!私も…!楽郎さんが大好きなんです!こちらこそよろしくお願いします…!お付き合いしてください!」
「ああ…。よろしくな。紅音」
そう言って、涙を流す紅音を落ち着かせるように優しく抱擁を返した。
「楽郎さん…」
「紅音…」
「……あのさぁ…ここリビングってわかってる?」
「青春してるわね。二人とも」
!?
「なっ…!?る、る、瑠美!?それに…母さんも…」
「るっ…瑠美ちゃん…!?えっ…これは…その…!」
声が聞こえ我に返ると、そこには懐かしいモノを見るような目をした母さんと、バイトから戻ってきた瑠美がニヤニヤしながら仁王立ちしていた。やべえ…二人の世界に入っていて完全に忘れてたが、ここは家の中で、更に言えば俺の部屋ではなくリビングだった…。
「楽郎」
「は、はい…」
「おめでとうと言いたいところだけど、場所は考えてね。」
「はい…。」
「えっと、紅音ちゃん…だっけ?」
「は、はい…!」
「瑠美と仲良くしてくれてありがとうね。あと、話は瑠美から聞いてたけど、ウチの楽郎を選んでくれて。ウチは家族全員が各々の趣味に生きてるから、あまり顔を合わせることは無いかもしれないけど、私は楽郎との恋を応援してるからね!」
「は、はい!ありがとうございます!」
「紅音、おめでとう!」
「瑠美ちゃん…!ありがとうございます!」
「あっ、そうだ。私はちょっと用事で今日は居ないから。瑠美、二人の事よろしくね。二人は節度を守ったお付き合いをするように。」
「はーい」
「わ、わかってるよ!」
「はい!」
* * *
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした!」
母さんが出かけてから少し経ち、俺たちは少々早い夕飯を摂った。
まあ、晩飯の漬けマグロを見たことにより俺は漬鮪サンラクの悪夢を思い出してしまい紅音に心配されたのだが…。ああ…ピザの悪夢…ピザ留学…おっといけない。
「じゃあ、紅音。学校でも伝えたけど、紅音のファッションショーやるわよ」
「は、はい!お手柔らかにお願いします!」
そう言い残し、紅音は瑠美の部屋に連れて行かれた。
* * *
「ほい!」
「ど、どうでしょうか楽郎さん…!!」
「可愛いぞ紅音!!」
もはやヤケクソだ。てかどうしてこうなった。いや紅音が可愛いのは事実なんだけど…。ショーが始まって瑠美から言われた一言。これには動揺せざるを得なかった。
瑠美曰く
「紅音が似合ってて可愛かったらちゃんと可愛いって言ってね。」とのことだった。
そりゃあね…恋人になったんですからそりゃ可愛いですよ。でもね、流石に身内も居るのにそんな惚気っぽいのも恥ずかしいでしょうが!
あーでもよく考えたら、俺その身内が居ることに気づかずに告白とかぶちかましてたわ。
それに気づいちゃったらもうヤケだ。
身内が居ようが可愛いもんは可愛いって言ってやるよ!
こんな感じでファッションショーが進んで行った。
「じゃあ、次はラスト!ラストは普通のやつじゃなくて、紅音にはコスプレをしてもらいます!」
「え!?あの…瑠美ちゃん…?初耳なんですけど…」
「サプライズだよ。見つけたのは本当に偶然だったけど、紅音にこれ着せたらとっても似合うなって思って。」
「あ、もしかして紅音来る前に宅配来たけどアレが…?」
「そうそう。私の部屋の前に置いてもらったやつね。じゃあ、紅音そういうことで。」
「は、はい!」
え、アレ何が入ってたんだ…瑠美のやつ何買ったんだ…?
side紅音
「えと…瑠美ちゃんこれって…」
「うん!紅音なら絶対に似合うって」
「わ、わかりました…!」
* * *
「はーいお待たせ!これがラストだよ!」
「あの、どう…でしょうか」
「なっ…!?」
瑠美の部屋から出てきた紅音の姿は…なんとびっくりメイド服だった。
「あ、あの…楽郎さん…?」
「…あ、ごめん、ちょっとロード入ってた。とても可愛いぞ紅音…!今日一可愛いぞ!」
「〜〜〜!?」
あまりの可愛さに思わずローディングが入ったが、すぐに再起動して素直な感想を伝えると、紅音は耳まで真っ赤にしていた。
「ら、楽郎さん!!」
「あのさぁ…私居るのに甘い空気漂わせるの辞めてもらっていい?」
「だって可愛いだろ、メイド服の紅音って」
「まぁそれはそうだけど」
「あ、あの…楽郎さん、瑠美ちゃん…恥ずかしいです!」
「あ、ああ…ごめん…」
「恋人から可愛いって言ってもらえて良かったね〜紅音」
そう言った瑠美の顔はとてもニヤニヤしていた。クソ…!鉛筆の邪教徒め…!
* * *
「ふぃー…」
ベッドの上で、なんとなくため息を吐いた。
紅音と恋人になれたことはとても嬉しい。
何にも変え難いぐらいの幸せだと思う。
リアルで初めて会った時に好きって言ってくれて、答えを出すのを待ってほしいって俺の我儘を聞いてくれて、2週間も待たせてしまったのに…それでも気持ちは変わらないって言ってくれて…。
そんな紅音の事が、俺は好きになった。
だけど…本当に良いのだろうか…
俺が紅音と本格的に関わるようになったのは、シャンフロでラビッツユニークを秘匿するために旅狼に勧誘したからだ。
その後瑠美と同級生って事を知り紅音から告白してきた。
だが、そんな出会いだったのに、俺に紅音の恋人になる資格はあるのだろうか…。
もしかしたら、紅音にあったかもしれない可能性の芽を潰してしまったのではないのだろうか…。
「……紅音」
不安になり、彼女の名前を呟いた…。
コンコン
ん?
「はーい」
「紅音です!楽郎さん、入って大丈夫でしょうか?」
紅音…?どうしたんだろう…?
「あ、ああ。良いよ」
ガチャ
「楽郎さん!」
「うおっ…!」
ドアを開けると、紅音が勢いよく飛び込んできた。
「どうしたんだ紅音?」
「その…なんだか楽郎さんが悩んでいるように見えましたので…」
「それを瑠美ちゃんに言ってみたら、それなら部屋に突撃して話をするように言われました。」
「そうだったのか」
顔に出てたか…。今の俺の迷いが。
悩みが悩みなので相談しづらいが…。ここは紅音に相談するべきだろう。
「うん。まぁ、そうだな。」
言おう。悩みを伝えよう。相談をした事によって、この関係が無かったことになるかもしれない。だけど…それ以上に、俺は紅音の事が好きだ。だから紅音に余計な心配はさせたくない。
「じゃあ、俺の話を聞いてもらってもいいか?紅音」
「はい!楽郎さんのお話でしたら、どんな話でもお聞きします!」
「そっか。じゃあ、聞いてくれ。ふと思ってしまったんだ。俺は…」
俺は、紅音に今の自分の悩みを告げた。
それを聞いた紅音は、驚いていた。それから怒っていた。……そして、泣いていた。
それを聞いた紅音はこう言った。
「そんなことありません!楽郎さんがそう思っていたとしても…!私は…私が憧れた人がサンラクさんであり、それが楽郎さんだったから好きになったんです!」
「だから…資格が無いなんて…そんな悲しい事言わないでください!!」
「紅音…」
紅音の慟哭を聞いて俺は何を言ってるんだと後悔した。
何やってるんだよ俺は。
テメェの恋人にこんな顔させて。
それこそ恋人でいる資格が無いんじゃ無いのか?
確かに俺は資格が無いんじゃ無いかと考えた。
だが、そんな戯言は紅音が否定してくれた。
それ以上に、紅音に悲しい顔をさせた事に、俺は、罪悪感を感じ、後悔している。
「ごめんな…紅音」
そう言って、俺は紅音のことを抱きしめた。
これが、紅音へのせめてもの償いになると思ったからだ…。
「楽…郎さん…」
紅音は涙を流しながら、それに応えた…。
今この時、俺と紅音は、本当の意味で恋人同士になれた気がした。
紅音に悩みを相談する。この選択が、俺たちにとって正しい選択であったのかは、わからない。だがそれはきっと、俺たちが幸せになるための道筋の第一歩だったのだろう。
「ら、楽郎さん…!私を──────」
「っ…!?本気…?」
「は、はい…!」
「……」
「…!!」
その夜、空に浮かんだ月は、とても綺麗な満月だったそうな……
今回の話を持ちまして、アキアカネ共通ルートが終了します。
次回以降のアキアカネは、二つの可能性の片割れに向け分岐します。楽郎と紅音が辿る二つの未来を…どうか今後も楽郎と紅音の物語をお楽しみいただけると幸いであります。
最終話を迎えた際、この物語はもう一つの未来…というよりは作者の見たいアキアカネの歪な形を目指すために、この話の分岐点へ戻ります。
どうか幸せな未来を…。