ジューダスがダンまち世界へ   作:帰ってきた

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始まり

一体どれほどの時間がたったのだろう。時空間の狭間にたった一人漂い、死ぬ事もなく只々無意味に時間だけが過ぎていく。

 

 

(覚悟はしていた、リオン・マグナスではなくジューダスとして生きていくと決めた時から。)

 

 

思い出すのはマリアンやスタン、そしてカイルたちと過ごした短くとも劇的な日々。今思い返しても自分の人生というのは本当にロクな事はなかった。

 

 

けれど最後の最後でそのロクでも無い人生に鮮やかな色をつける事が出来た、後悔は無い。だが叶うのであれば。

 

 

(もっとあいつらと色々なことや色々な物を見てみたかったな。)

 

 

二度と訪れることのないそんな日々を思い描きながらジューダスは再び眠りにつくために目を閉じる、しかし・・・。

 

 

(んっ?なんだ?)

 

 

目を閉じていても解るほどの強い光が急に差し込んできた、今までこの時空間の狭間を彷徨い続けたがこんな事は一度もなかった。

 

 

(何が起こっている!この光は一体!?)

 

 

思わず目を開けるも強すぎる光に目を開ける事も叶わずジューダスはそのままその光に呑み込まれていった。

 

 

光が収まった時空間の狭間にはジューダスの姿は無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ、ここは・・・?」

 

 

光が収まり視界が回復するとジューダスが目にしたのは石造りの街並みと、武装をしている人々だった。

 

 

初めは別段珍しい光景ではなかった、しかしその中でジューダスの目を引いたのは頭に獣の耳を生やした者がいたことだ。

 

 

(なんだあれは?それにあいつだけじゃない)

 

 

辺りを見ると同じ様に頭に獣耳を生やした人、背が自分より低いが肉付きはコングマンに勝るとも劣らない低身長の男。

 

 

子供と見間違うほどの背丈と体付きであるが纏っている雰囲気は大人のそれである小人。

 

 

それ以外にも耳が尖っている人など目を疑うものばかりであった、しかしそれ以上の驚くものがジューダスの視界に入った。

 

 

「なんだ・・・あれは?」

 

 

それは塔であった、しかし、ただの塔ではなく天高くそびえ立ち見る者を圧倒する程のものであった。

 

 

リオン・マグナス、そしてジューダスとして世界中はおろか過去そして未来の世界に行った事のあるジューダスであったがあんな物は見たことが無かった。

 

 

一体ここは何処なのか、検討もつかなくなってきた。流石のジューダスも途方に暮れるしかなかった。

 

 

そんな時、何処からともなく強い視線を感じたのは。

 

 

(・・・っ!!誰だ!?)

 

 

今まで数多の戦いを乗り越えてきたジューダスであっても先ほど感じた視線は初めてであった、まるで心ではなくもっと根本的なものを覗き見られているような感覚だ。

 

 

しばらくして視線は感じなくなったが今まで感じたことのない視線だった、自分の気のせいではなければその視線は目の前にそびえ立つ塔からであった。

 

 

塔に目を向けるも先程の視線は既に感じられない、気にはなるが今はそんなことを気にしている場合では無い。

 

 

今自分が立たされている状況を理解できていないのだ、情報も何も無い状態で迂闊に動くわけにいかないが、動かなければ何も得れない。

 

 

(先ずは情報を集めるのが先か)

 

 

そう思い立つとジューダスは目に付いた人物に話しかける事にした、周囲を見渡すと。

 

 

「はぁーーーーーーーーっ、なんで誰も僕の眷属になってくれないんだよぉぉぉぉぉぉぉ。」

 

 

小柄な少女が何か喚いていた。周りの人々も少女の叫びを聞きながらも遠巻きに見ているだけだった。

 

 

(喧しいな、それになんだあの服装は?恥ずかしく無いのか?)

 

 

噴水で座り込んでいる少女の服装を見てジューダスは驚きやら呆れやらの表情でその少女を見ていた。まあ。コングマンに至っては常に上半身裸であったが。

 

 

なにやらまだ何か喚いているがジューダスは無視して歩き出そうとした、するとその時ふと気になる話し声が聞こえてきた。

 

 

「あーあ、ヘスティアのやつ惨めだねぇ。大人しく天界の神殿に引き篭もってたら良かったのによ」

 

 

「ホントホント、てかアイツこの前ロキにスゲェ啖呵きってたぜ」

 

 

「おっ、なんだなんだ聞かせろよ」

 

 

「ヘスティアのやつロキよりすごいファミリアになって鼻を明かしてやるって言ったんだぜ!傑作だろ!」

 

 

「アハハハ、そりゃ傑作だ!!オラリオ最強の一角を担うロキファミリア、片や未だに眷属ゼロのヘスティア。始まる前から勝負は決まってるじゃねぇか」

 

 

「まあ、俺たち神は不変の存在だし?何十年、何百年もあればワンチャンあるんじゃねぇか?」

 

 

「いや、ノーチャンだろ」

 

 

そう言って男たちは下品な笑い声をあげていた、会話の内容からすると噴水に腰掛けている少女に対する侮辱にもとれる会話であったがそれよりも気になる単語がジューダスの耳に入っていた。

 

 

(神だと!?今あの男たちは自分を神といったのか!?)

 

 

ジューダスにとって神に対して良い印象は無い、初めて出会った神があのフォルトゥナであるからだ。

 

 

人々の幸福になりたいという願いによって生まれた神、フォルトゥナ。そしてその手先ともいえる存在、エルレイン。この二人に多くの人々が人生を弄ばれ狂わされていた。

 

 

(だが、元を辿れば人間の身勝手な願望によって生まれた彼女たちも、ある種被害者なのかもしれないが。)

 

 

しかし、たとえそれが仮初の神だとしても神は神。ジューダスの神様に対する印象はあまり良く無い。

 

 

先程会話をしていた男たち、会話の内容から察するにあの男たちも神なのだろう。そしてあの噴水の縁で項垂れている彼女も彼らと同様に神なのだろう。

 

 

項垂れている彼女を横目にジューダスはその場を後にした。

 

 

広場を後にしたジューダスは大通りを歩いていた。彼方此方から聞こえてくる声に耳を傾けながら。

 

 

素直に街の人に話を聞く方が早いのだがジューダスの被っている骨の仮面のせいか街の人たちから若干避けられていた。

 

 

それでも人の話は絶えず聞こえてくる、その中で有益な情報もいくらか手に入った。

 

 

この街の名前は『オラリオ』。世界の中心とも言われており、そのオラリオの中心に聳え立つ塔の名は『バベル』。そしてその地下には『ダンジョン』が存在する。

 

 

このオラリオに来る人々の殆どがダンジョンにて富や名声などを手にする為にやって来る、そうだ。

 

 

更にダンジョンに挑むにはオラリオに居る神々から恩恵をもらい、恩恵を与えた神のファミリアに所属する必要があるそうだ。例外もあるらしいが。

 

 

そしてそのファミリアは主神によってファミリアの方針は様々な分野に分かれており、武具の生産や農業、更には医療等多岐にわたる。

 

 

しかし、その中で最も多いのが探索系ファミリア。つまりはダンジョン攻略を主な活動としているファミリアである。

 

 

命の危険は途轍もなく大きい、その上リスクに対してリターンは決して大きくないことの方が多い。

 

 

ダンジョンには常に危険が伴う。故に殆どの探索系ファミリアはある程度強くなると安定を重視して危険な橋は渡らなくなるそうだ。

 

 

そしてそんな探索系ファミリアにおいて有名でオラリオ最強と謳われているファミリアが二つ存在しており、それがロキファミリアとフレイアファミリアだ。

 

 

そんなこんなで街を練り歩き、情報を幾つか入手したところで一つ大きな問題に直面していた。そう、お金が無いのである。

 

 

(1ガルドも無いが・・・可能性も考慮すべきだったな、まさか通貨が違うとはな。)

 

 

そう、ジューダスの世界の通貨はガルドであったが、今この場この世界の通貨はヴァリスであり、仮にジューダスがお金を持っていたとしてもそのお金はここでは使えないのだ。

 

 

 

無一文のジューダス、金が無ければ食事も宿も取れない。流石にヤバい状況に追い込まれたジューダス、最悪適当な神から恩恵をもらいダンジョンでお金を稼ごうかと考えるが。

 

 

(いや、急いで結論を出すのは良くない。)

 

 

そんな考えが頭をよぎった為ジューダスはあと一歩を踏み出すことに躊躇していた、一応大手のロキファミリアの拠点地をチラリと覗いてみたが入団希望者を門前払いしていた。

 

 

その際に希望者にかけた言葉はまあ、酷いものばかりだった。所属しているだけで偉ぶっていた彼らを見てジューダスは回れ右をしその場を後にした。

 

 

どうしたものかと頭を悩ますジューダス、あてもなく歩いていると気が付けば最初にいた噴水広場に戻って来ていた。

 

 

先程よりも人の数が減ってはいるがそれでも多くの人が行き交っていた、そんな中視界に入ったのは。

 

 

「はーはっはっは!!この僕にそう簡単に勝てると思わない事だね!!」

 

 

「え〜またヘスティア様の勝ち?」

 

 

「ちょっとは手加減してよ、大人気ないよ」

 

 

「ええっ〜さっきは手加減なしって言ってたじゃ無いか。仕方ないなぁ〜。」

 

 

先程噴水の縁で落ち込んでいた女神?が子供と遊んでいた。

 

 

その様子をしばらく見ていると、その一団に近づいてくる人たちがいた。全員が女性であったため恐らく子供達の母親だろう。

 

 

「すみませんヘスティア様、子供達の面倒を見ていただいて。」

 

 

「いやいや、大丈夫だよこのくらい。丁度暇してたからね」

 

 

「すみません、この子達落ち着きが無くて。」

 

 

「あはは、子供はあれくらい元気なのが丁度いいんだよ。また何か困った事があれば遠慮なく僕に頼ってくれよ。」

 

 

「はい、ありがとうございますヘスティア様。ほら皆んな帰るわよ。ヘスティア様にお礼を言って。」

 

 

「「「はーい。」」」

 

 

親子たちはヘスティアと呼ばれた神に別れを告げるとその場を後にした。それからしばらく見ていたがあの女神の元には多くの人が訪れていた。

 

 

その誰もがあのヘスティアという女神にとても好意的であった。敬う者、友のように接する者、揶揄う者。その全てがだ。

 

 

どうやら人望はあるようだ。スタンやカイルとは違う人を惹きつける何かがあの女神にはある。そう感じさせる。

 

 

少々不粋だがしばらくヘスティアという女神を観察する事にしたジューダス、そんな中でも彼女を訪ねてくる人々は絶えない。唯一糸目で赤髪の神?がからかいには来て一悶着はあったが。

 

 

それ以外は特に何事も無く時間だけが過ぎていき遂には日も暮れ夕方になっていた、今彼女の周りには人はおらず彼女が一人佇んでいた。

 

 

半日にも満たないが彼女を見てわかったのは悪いやつでは無い、いやむしろ良いやつであるのは見てわかった。

 

 

自身の眷属を募集はしていても無理な勧誘はやってはいない、演技かもしれないと思ったが喜怒哀楽が激しくコロコロと表情や感情が変わる様は何処ぞの親子を彷彿とさせる。その姿は素のものだろうと思われる。

 

 

(彼女なら問題ないだろう、街中にいた他の神やエルレインとは違う。)

 

 

そう結論づけジューダスは一人佇む女神に近付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜、今日も勧誘失敗かぁ〜。一体いつになったら僕は自分のファミリアを起こせるんだぁ〜。」

 

 

下界に降りてはや二ヶ月。最初は神友のヘファイストスの元に厄介になっていたが、自堕落に過ごす僕の姿を見て流石に堪忍袋の緒が切れ追い出されてしまい、その結果僕は眷属集めに精を出す事となった。

 

 

最初は楽勝だと思っていた眷属集め、しかし。現実は非情であった、手当たり次第に子供たちに声をかけるも全部断られる。

 

 

やはり新興ファミリアというのが大きな枷となっているようだ、今のオラリオではあらゆる分野のトップとも言えるファミリアが存在している。

 

 

つまりは新興のファミリアより其方のファミリアに所属した方が多くのメリットを得ることができる為、子供たちは其方に流れていくのは当然の事だった。

 

 

ヘファイストス曰く新興のファミリアにはあらゆる知識が不足している為敬遠されるとの事だった。鍛治なら鍛治の知識、冒険者なら冒険者の知識。

 

 

特に冒険者ならダンジョンの階層の知識、モンスターの情報、大手のファミリアならギルドより詳しくモンスターの情報を持っていたりもするそうだ、フレイアやあの憎っくきロキのとことかが例に上がる。

 

 

あの暇神め、僕が此処で勧誘をしていると知るや否やちょくちょく揶揄いに来ては僕のことを馬鹿にして!!

 

 

(見てろよロキの奴、僕も凄いファミリアを作って絶対見返してやるぅぅぅぅぅぅ!!)

 

 

そう僕は心に誓った、けど僕としてはやっぱりファミリアに迎える子供は誰だって良いんだ。強く無くたって良い、臆病でも良い。

 

 

僕はただ眷属ではなく家族が欲しい、唯本当にそれだけの事なんだ。まあ?ロキを見返したいという気持ちも嘘ではないんだけどね。

 

 

(はあ、日も暮れてきたしそろそろ帰ろう。今日も一人寂しくあの廃教会で眠るんだね。ボクは・・・。)

 

 

流石にいつまでも一人は心細いし寂しい、天界にいた頃はこんな事あまり感じなかったんだけどねえ。

 

 

しかし、出会いというのはいつも突然で不意にそして思いがけないものだった。

 

 

「すまない、少し良いか?」

 

 

「えっ?」

 

 

これが僕の最初の家族であるジューダス君との出会い、へそ曲りで誰であろうとズケズケとものを言う遠慮の無い子でその上無愛想、けど。

 

 

誰よりも仲間を、家族を大事にする優しい子でもある。そんな不器用で優しい子との出会いだった。

 

 

その後彼に恩恵を刻んだ際に僕の頭をおおいに悩ませる事となるのをこの時の僕は知る由もなかった。




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