ダンジョン、世界三大秘境とも呼ばれる場所であり、無限の資源を生み出す宝庫とも言われる場所である。
ダンジョンは下に降りれば降りる程にフロアが広くなりモンスターも強くなる、ダンジョンには安全階層が幾つか存在しておりモンスター自体は生まれないが、他の階層からモンスターがやって来ることもある為完全に安全な場所はダンジョンには無いに等しい。
ただしダンジョンの壁などを傷付けるとダンジョンは修復を優先しモンスターが一時的に生まれなくなり一時的な安全地域を作ることも可能だ。
ダンジョンは主に四つの階層に分けられておりそれぞれ上層、中層、下層、そして深層と分けられている。
そして現在ジューダスはというと。
「これで依頼された量は集まったか。」
階層全域が白濁色で天井は視認する事はできないほど高く、植物などが一切ない白の世界。
ここは37階層白宮殿、深層とされる場所。戦士系のモンスターが多く存在し、中には非常に厄介な毒を使用するモンスターもいる。
しかし、ジューダスはそんな事はお構いなしに襲い掛かるモンスターを切り捨ては晶術にて吹き飛ばし、何ら問題なく迷宮を進んでいた。
ジューダスが37階層に居るのはギルドを統括する神ウラノスからの依頼だった。
ヘファイストスの伝手によりウラノスと対面したジューダスとヘスティア、ジューダスのステイタス表を見たウラノスは普段殆ど変化する事のない表情が驚きに染まっていた。
新興ファミリアの最初の眷属が都市最強と並ぶレベル7、神々が騒ぐのは目に見えている、そんな彼が天界きっての善神ヘスティアの眷属になったのはギルドとしても幸運だった。
そんなヘスティアファミリアからギルドへの要望はこうだった。
・ギルドへの納税の免除(期限付き)
・情報の秘匿
・ダンジョンに関する情報や知識
・ジューダスの情報開示はヘスティアファミリアが組織として十分成長した際には開示する
・上記以外の理由で情報を開示する場合はヘスティア、ヘファイストス、ウラノスの三名の合意が必要。
最後のもの以外はヘスティアファミリアからの要望だった、最後のものはウラノスからの提案だった。
そんなこんなでギルドに貸しを作る事となったヘスティアファミリア、しかし。ウラノスも自身の部下であるノイマンの性格は把握している。
あのノイマンが自由にレベル7の冒険者を扱き使えると知れば面倒な事となるのは間違いない、ギルドからすれば都市最強の一角になるジューダスとは良好な関係を築きたい。
その為ウラノスはヘスティアファミリアの要望を叶えつつ良好な関係を築く為適任者を探した、そして見つけた。
同僚や先輩からも評判が良く真面目で勤勉であり、ダンジョンについてのレクチャーも行っているハーフエルフの職員が。
「はぁ・・・。」
「どうしたのエイナ?溜め息なんかついて」
「えっ?ああ、ちょっとね?」
「ふーん?・・・あっ!わかった、あの新人の冒険者君のこと考えてたでしょ?」
「まあ・・・そんなところかな?」
同僚のミィシャの問い掛けに曖昧に答えつつ流す、私の悩みの種はミィシャの指摘通りとある新人の冒険者についてである。
事の始まりはおよそ一ヶ月前、突然ウラノス様から名指しで呼ばれた事が始まりだった。同僚や先輩からは心配され、私は恐る恐るウラノス様がいらっしゃる祈祷の間に行く。
するとそこには私以外に三人の人物がいた、一人はヘファイストス様で残りの二人は初めて見る人物だった。
私が到着した事でウラノス様が話しだし、私はその話の内容に只々困惑する事になった。
曰く目の前の二人は新興ファミリアのヘスティアファミリアの主神であるヘスティアとその最初の眷属であるジューダス。
そのジューダスはレベル7である。
ジューダスはレベルこそ都市最強を担っている、だがダンジョンに関する知識は持ち合わせていない為担当する人物が必要になる。
その人物として私が選ばれたという事。
ウラノス様の話を聞いても私は理解できなかった、いや、今考えると私は恐らく理解を拒んでいたんだろう。
だってそうだろう、新しい担当冒険者が都市最強であるレベル7など誰が予想出来ようか。しかも改宗したわけでもなく初めて恩恵を貰ってそれでレベル7とか誰が信じられようか。
とは言いつつもこれが現実である、私は初めて自分の真面目な性格を呪った。
だが実際は思ったよりも大変ではなかった、ダンジョンに関する講義も真面目に受けてくれるうえに質問などもよくして教え甲斐のある子だった。
書類を見ると私より歳下だったけど礼儀もしっかりしているしとても好感が持てる。
けどやはりそこは都市最強のレベル7、講義を終え翌日からはまさしく破竹の勢いでダンジョンを潜っていく、僅か三日で上層を踏破しそのまま中層に到達し。その二日後には下層までに至り。
それからまた二日で深層に到達、それからというものジューダス君は下層から深層を主な活動拠点としている。
その証拠にギルドの換金所にて深層でしか出現しないモンスターのドロップアイテムを持って来たりした。勿論周りからは駆け出し冒険者と思われているジューダス君だ、換金の際も私が担当している。
しかも装備している武器も態々変えてだ、ジューダス君がメインとして使っている武器はあのヘファイストスファミリア団長である椿・コルブランドの作品だ。
少しでもバレるリスクを減らす為そういったこともジューダス君は徹底的だ、ギルドから支給された武器も上層で使い使用しているように見せかけている。
その甲斐あってか一ヶ月経ったいまでもジューダス君のレベルはバレた様子もないし、疑っている人も居ない。
だがこの一ヶ月の間ヒヤリとする場面は多々あった、それは自分の知り合いかつ母がかつて仕えていたハイエルフの王族であるリヴェリア・リヨス・アールヴ。その人である。
リヴェリア様はロキファミリアの副団長にしてレベル6。流石にリヴェリア様とジューダス君が鉢合わせするのは不味いだろうし。
(あっ、そういえば近々ロキファミリアが遠征に行くって話があったはず・・・しばらくジューダス君には深層の探索を控えてもらわないといけないかな?)
単独で深層に行けるのは第一級冒険者のみだ、万が一にでも鉢合わせてしまえば一発でアウト、今までの努力が水の泡に帰すだろう。
(ジューダス君が帰って来たら伝えておかないといけないよね。)
そう考えながら私はギルドの業務に戻る、普通の冒険者より気を使うが存外悪くないと最近の私は思い始めていた。そして願わくば。
(ジューダス君のファミリアにも早く良い子が入ってくれないかな?)
そう思いつつ私は今日もギルドの業務に勤しむのだった・・・、しかし、この時の私は思いもしなかった。この後しばらくしてヘスティアファミリアに入団する一人の兎みたいな人間(ヒューマン)の男の子がオラリオにていくつもの偉業を成し遂げるのを。
この時の私はまだ知る由もなかった。
《スキットオブオラトリア》
「甘味」
「そういえばこの前ジューダス君がカフェでお茶してるの見たんだけど、休みの日はあんな風にカフェとかに行ってるの?」
「ああ、武器の手入れを終えたらな。」
「そうなんだ、そういえばテーブルの上の品物全部スイーツばかりだったけどジューダス君は甘い物が好きなの?」
「そうだな。」
「ふーん、あっ。じゃオラリオに来て一番印象に残ってるスイーツって何かな?」
「オラリオには他の街には無い物もたくさんあると思うし。」
「そうだな・・・ならあれだな」
「あれって?」
「ジャガまるの小豆クリーム味だ、塩味と甘味の組み合わせがあそこまで合うとは良い意味で期待を裏切られたな。」
「えっ、ああ。そうなんだ。ヘェ〜。」
「手頃な値段で買えて販売店も多いから何処でも買える利点もあるからな、僕的には有難い。」
(ヴァレンシュタイン氏以外にあれを好んで食べる人初めて見たかも。)