青い春、死の境界   作:ニゴリエース

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懐玉-④

 

 

 やれやれ、いっときは大喧嘩になるかと思ったが、黒井さんのおかげで惨事になる前にとめられたのはまあありがたいことだ。この俺の微妙なイラつきが消えてねえこと以外は。

 ……まあいいや。水に流すとしよう。俺は心の広ーい男なのだ。

 

 「んにしても、思ってたよりアグレッシブなガキンチョだな。同化でおセンチになってるだろうから、どう気ィ遣うか考えてたのによ」

 

 それは俺も同感。()()()()()ってのは死を恐れるものだ。自らの死がすぐそこまで迫っているという状況下なら、発狂してもおかしくない。しかしこの少女は気丈に(少なくとも見かけ上は)振る舞っている。

 だいぶメンタルが強いのかね?

 

 「ふっ、いかにも下賎な者の考えじゃ」

 

 「あぁ!?」

 

 あぁん!?今なんつったよクソガキ、しばいたろかほんま。

 

 「いいか?天元様は妾で、妾は天元様なのだ!貴様のように同化と死を混同している輩がおるが、それは大きな間違いじゃ。同化により妾は天元様になるが、天元様もまた妾になる!妾の意思、心!魂は同化後も生き続け──」

 

 「待ち受け変えた?」

 

 「井上和香ー。累は?」

 

 「俺フリーダムガンダム」

 

 「って聞けェー!!」

 

 あ〜あ、期待して損した。別になんてことはない話、死を恐れていないわけじゃないのか。なーんだ。

 

 「あの喋り方じゃ友達もいないじゃろ」

 

 「快く送り出せるのじゃ」

 

 「そもそも友達ができるような性格にも見えんしのう」

 

 「学校じゃ普通に喋ってるもん!」

 

 キャラ付けかよ、アホくさ。

 

 「……あ、学校!黒井、今何時じゃ?」

 

 「まだ昼前ですが、やはり学校は──」

 

 「うるさい!行くったら行くのじゃ!」

 

 マジかよめんどっちい、ワガママ少女の護衛は疲れるぜ本当。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 そんなこんなでやってきた星漿体の少女が通う学校。てっきり俺は顔出しだけして帰るものだと思い込んでいたのだが──

 

 「はあ!?さっさと高専戻った方が安全でしょ!?」

 

 五条の怒りと困惑の混じった声が聞こえてくる。どうも、天元様が星漿体の少女の言うことは全て聞けとのことで、少女が学校に行くことを希望している以上高専には戻れないらしい。なんだこのクソゲー。

 

 「チッ、ゆとり極まれりだな……」

 

 「そう言うな悟。ああは言っていたが、同化後彼女は天元様として高専最下層で結界の基となる。友人、家族、大切な人とはもう会えなくなるんだ。……好きにさせよう。それが私たちの任務だ」

 

 お優しいことで。まあ俺としてはさっさと高専に担ぎ込んで軟禁でもした方がいいんじゃねえかと思うんだが……まあ天元様の命令だし仕方ないか。

 

 「非効率な話だがな。まあ俺らは俺らで、為すべきことを為すしかあるまいよ。呪術師としてな」

 

 「……理子様にご家族はおられません。幼い頃、事故で亡くなって以来、私がお世話してまいりました。ですからせめて、ご友人とは少しでも──」

 

 「それじゃあ、あなたが家族だ」

 

 またこいつはそうお優しいことを……まったく、女誑しめ。

 

 「チッ、はあ……傑、監視に出してる呪霊は?」

 

 おっナイス五条。あんましんみりした空気を続けられても困るしね、いいタイミングだった。

 

 「ああ……冥さんみたいに視覚共有ができればよかったんだけどね。それでも、異常があればすぐに──」

 

 「っ!?」

 

 夏油が黙り込むと同時に、俺も妙な感覚に襲われる。これは……少々不味いな。数は……どうやら三つか!

 

 「邪気が来た!夏油!」

 

 「ああ、こちらでも確認した。悟は急いで理子ちゃんのところへ。三体、祓われた。累は私とともに来てくれ!途中で散開する」

 

 「あいよ!」 「っ、了解!」

 

 さてさて、ちっとばかり気を引き締める必要がありそうだ。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 「黒井さん、彼女は今どこに?」

 

 「この時間は音楽なので、音楽室か礼拝堂ですね」

 

 俺たちは4人揃って、可能な限り急いで廊下を駆ける。本気で走ろうとすると少しばかり目立ちすぎるからな……俺だけ先行してもよかったんだが、夏油が言う分にはまだわずかながらに時間的猶予はあるそうだ。

 

 「礼拝堂ゥ〜?」

 

 「音楽教師の都合で変わるんです。後ここはミッションスクールです」

 

 なるほどね……ミッションスクールといえば、幹也さんの妹さんがミッションスクール上がりだったかな。確か名前は……礼園女学院だったか?まあいいや。

 

 「悟は礼拝堂、黒井さんは音楽室。私と累はアンノウン3人を!」

 

 「OK!」「了解!」「承知いたしました」

 

 そうして、俺と夏油は黒井さんと五条と別れ、襲撃者の元へと走る。

 

 

 

 「……そうだ累、一つ言いたいことがある」

 

 「おん、なんだ?なんか警戒すべきことでもあるのか?」

 

 そこまでやばい相手なのだろうか、襲撃者は。そうであるなら気を引き締めて──

 

 「いやそうじゃない。累、君は──呪詛師集団Qの人間を殺したね?確かバイエルといったか」

 

 …………

 

 「あー……変な刃物飛ばしてくるやつか?まあ、殺したが。それが何か?」

 

 「やはりか。普段の任務では別にそれで構わないが、今回はできる限り殺しは無しだ。理子ちゃんに無用なストレスをかけたくはない」

 

 「ああ、なるほどねえ……別に見られなければ大丈夫じゃないか?殺気を殺すのなんて慣れてるぜ」

 

 あの程度のガキンチョに見破られるような柔な鍛え方はしていないつもりだが。返り血だって浴びないし、血の匂いだってほとんどさせねえ。気付かれる要素は皆無のはずだが……

 

 「それはもちろん知っている。ただ、念には念を、というやつさ、累。もし万が一見られてしまったときに理子ちゃんに与えられるストレスは想像がつかない。せっかく最後まで自由にさせてあげようという話なのにこれでは本末転倒だ。情報を聞き出すのにも支障が出るし……それに後処理も面倒だし」

 

 「最後のが本命じゃねえの、お前?……まあいいや、了解した。できるだけ殺しはしねえよ。ただ殺しを封印するとなると俺の性能は7割以下まで落ち込むが……いいのか?」

 

 あくまで殺しが生業だからね、俺。呪術師始めてまだ1年半、祓う取り押さえるよりも殺すほうが大得意だ。

 

 「もちろん無理はしなくていい。危険を感じたら殺しも解禁して構わない。あくまで“できる限り“だ」

 

 「あいよ了解。そんじゃサクッと襲撃者様を制圧しますかね……!」

 

 「ああ、手短にいこう」

 

 そこで俺と夏油は会話を打ち切り、アンノウンがいると思われる場所へと駆けていくのであった。

 

 ……殺し封印かあ、めんどくさいなあ……

 

 




 というわけでオリ主くんの内面ちょっとだけ掘り下げでした。本格的なのは多分結構長くなりそう……

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