青い春、死の境界 作:ニゴリエース
「ただいま帰りましたよっと」
「おはよう累。やっぱり朝帰りだったか」
「げえっ夏油!……まさかテメエ今まで起きてたのか?」
「いや、そういうわけじゃない。今起きたところさ。夜の間は悟と交代で番をしていたのさ」
「あ〜あそういう?んで結局五条は昼間も含めてそれなりに寝れたんだよな?」
「ああ、間違いなく寝ていたよ。おそらくそれなりに休息は取れただろう」
「あ〜あよかったよかった。これなら俺もワンナイトして来た甲斐が──」
「見栄を張るのは良くないよ累。……何人やってきた?」
「なんのことやら、俺は──」
「惚けるなよ、結局寝てないだろ。夜通し駆け回ってただろうに」
「……バレてたか。心配させまいと思ってたんだが……」
「余計な世話だ、全く」
「へいへい申し訳。最初は2人の予定だったんだがな、予想以上に多くて結局13人だ。誰だよ沖縄は
「そうか、ちなみに──」
「ああ心配すんな、忠告は守ってるよ」
「……そうか。だが結局疲労は溜まっているだろう。だから──」
「あ〜そこはご心配なく、機内でぐっすり寝させてもらうさ」
「……なら、いい」
▼▼▼
結局沖縄に長いこと滞在する羽目になったが、なんやかんやで護衛三日目の15:00、俺たちは高専に戻ってきた。
「みんなお疲れ様、高専の結界内だ」
「これで一安心じゃな」
「ですね」
皆はようやく安全な場所に着いたからか、安心しきっている様子。まあ実際高専の結界内は安全なので問題ないとは思うが……
「悟、累、本当にお疲れ」
そういって笑う夏油に俺も思わず苦笑いする。五条も肩の荷が降りたようだ。結局長い睡眠は取れていなかったようだしな。……まあそれは全員そうだが、無下限呪術の性質上五条が一番疲労が溜まりやすいのだ。
「夏油こそ、お疲れさま」
「ったく、二度とゴメンだ、ガキのお守りなんて──」
──!!!
「ごじょ」
ドシュッ!
「な……!」
瞬間、俺は猛烈な怖気を感じ、術式を切った五条に警告を行おうとするも……時すでに遅し、何者かの凶刃が五条を貫いた。あまりの出来事に、俺や夏油はおろか、五条すら硬直する。
しかしそれは仕方のないことだ。ここは高専の結界の内側、呪詛師が入ってくることは不可能な筈。
その上、いくらなんでも速すぎる!俺が気配を察知したのとほぼ同時の攻撃、凄まじいスピードか気配を隠すのが上手いのか……いや両方か。なんにせよこの状況はマズい!
「……アンタ、どっかで会ったか」
「気にすんな、俺も苦手だ。男の名前覚えんのは」
明らかに震える声で襲撃者に問いかける五条と答える襲撃者。襲撃者はガタイのいい男、明らかに今までの呪詛師とは風格が違う。
瞬間、五条が術式を起動、蒼を用いて男を吹き飛ばすと同時に、夏油が芋虫型の呪霊を用いて追撃をかける。俺も吹き飛んでいく男に投げナイフを数本投げたものの、体勢を崩しているにも関わらず、男は難なく弾いてみせる。やはり手練れだな……
しかし、俺の投擲が功を奏したのか、夏油の呪霊が男を捕食することに成功する。だがこの程度ではそう時間をおかずに出てくるだろう。
「五条!どうだ!」
「……問題なし、術式は間に合わなかったけど内臓は避けたし、呪力強化で刃は引かせなかった」
なるほど問題大有りってとこか。痩せ我慢しやがって。
「傑と累は天内を頼む!あいつの相手は俺がする……!先に天元様のところへ行ってくれ!」
「委細承知、行くぞお二人さん!夏油も足を止めるな!急げ!」
「チッ、油断するなよ!行きましょう」
そう言って俺と夏油は2人を連れて天元様の元へ走り出した。
▼▼▼
エレベーターを使い天元様のところへ降りていく。五条が負けるとは思わないが、しかしそれでも焦る感情は湧く。エレベーターの遅さに思わずカツカツと踵を鳴らした。
夏油がジトリとした目でコチラを見てくるが、どうせ夏油も同じ思いだろう。
そう時間はかからずエレベーターは到着するが、俺には凄まじく長い時間のように思えた。
エレベーターから降りたところで、黒井さんは立ち止まる。あくまでお付きの人でしかない彼女がついてこられるのはここまでだ。
涙ぐみながらも別れを告げる黒井さんに抱きつく星漿体。今生の別れだ、仕方ないことだとは思うものの急ぐ感情が湧く。五条が戦っている上、ここは間違いなく安全だという確信もある。だが嫌な予感は拭えない。それどころか増している気すらする。
そうして黒井さんと別れた俺たちは、ついに天元様のお膝元、
夏油が星漿体にここの説明をしているのを尻目に、俺は大きく息をついた。ここまで来れば護衛任務は達成だ。あの男が気がかりであることだし、五条が負けるとも思えないが一応援軍に行くべきだろうか。
そんな俺のぼんやりとした思考は、夏油の一言によって打ち砕かれた。
「──それか、引き返して黒井さんと一緒に家に帰ろう」
……何?
「……待て夏油、何を言っている」
思わず詰め寄ろうとしたところで、夏油の放った呪霊が現れる。先ほど以上の不意打ちに、俺はあっさりと拘束されてしまう。そして動きが止まったところに、さらに追撃で無数の呪霊が絡みつき、完全に動けなくなってしまった。
「夏油、何を」
「すまないね累。悟と話し合いは済んでるんだ……星漿体が同化を拒んだときは同化はなし、ってね」
マジかよ、いつの間にそんな話を……星漿体のところに向かう途中で俺一旦用を足すために席を外したな、その時か。嫌な予感の正体はこれだったのか?
「……随分と信用されてねえのな、俺」
「すまない、だが信用も信頼もしているさ。しているからこそ、君は理子ちゃんを確実に同化させる人間だと思い、話さなかった。理子ちゃんに絆されるような性格でもないし、実際この三日間理子ちゃんのことを一度も名前で呼ばなかったしね。……本当にすまないと思っている」
そう言いつつ、夏油は星漿体の方へと向き直る。星漿体は突然の出来事に当惑しているようだが、夏油と俺の間で視線を彷徨わせたのち、夏油の方に向き直る。ッチ、信頼度の差か。
どうにか動こうとするも、呪霊が何重にも絡みついていてまともに動くことができない。こういう時に戦闘用の術式が欲しいとつくづく思うぜ全く。
「とは言っても、これは結局理子ちゃんが決めることだ。理子ちゃんがどんな選択をしようと、その未来は私と悟が保証する。」
その言葉を聞いた星漿体は、しばし黙り込んだのち、ポロポロと涙をこぼし、思いの丈を口にした。
「やっぱり……もっとみんなと一緒にいたい!もっとみんなと、もっと……!」
「……帰ろう、理子ちゃん」
──!!!!
「うん!」
「げと──!」
パァン!
瞬間、五条が刺されたとき以上の悪寒を感じた俺は警告をしようとするも……またしても、時すでに遅し。
一発の銃声とともに、星漿体は頭から血を吹き出し倒れた。……間違いなく即死だ。
「……理子ちゃん?」
呆然とした夏油の声。それでも現状を正しく理解しているのか、それとも呆けすぎたせいかは知らないが、呪霊による拘束が緩んだため、即座に脱出する。そして星漿体の状況を確認するが……やはり即死だ。
「はいお疲れー。解散解散」
奇妙な静寂の中、星漿体を撃った主……五条を刺した男が、余裕の表情でこちらへと歩いてくる。なぜここに入れたのか、いやそれ以前に、この分だと、五条は──。
「……なんでお前がここにいる」
「ああ?なんでって……ああ、そういう意味ね」
「五条悟は俺が殺した」
「──そうか、死ね」
五条にも夏油にも信頼されてるけどされてないオリ主。人でなし(天内談)だからね、仕方ないね。
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