【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】 作:いる科
「オラァ!! 得意の読みはどうしたデクッ!!」
「ぐ……っ!!」
(かっちゃん……凄い……ッ、前と全然違う……ッ!!)
癖だったはずの右の大振りが、一度反撃して以降全くなくなった。
爆破を交えた変則的な動きは、もうまるで読めない。
いや――時間をかければ、あるいは可能かもしれないが。
期待はしない方が良いだろう。
少なくとも爆豪は、緑谷に考える隙を二度と与えないつもりだ。
(警戒してる……ッ!! 僕を……僕の力を認めた上で、冷静に……っ!! こんなかっちゃん、僕は知らないぞ……っ!?)
そう……爆豪は恐らく、変わったのだ。
緑谷の力の覚醒によって――ではない。
……五条玲珠。
それ以外に考えられない。
緑谷の知る限り、全力を尽くした爆豪に勝ち星をあげたのは五条が最初だった。
そのたった一回の敗北が……爆豪を大きく変えたのだ。
「ははっ……!!」
思わず笑ってしまう。
あんなに強かったのに――あんなに、凄かったのに。
まだ先へ行くのか。前へ前へ、走り続けるというのか。
「何笑ってんだクソデク!! 余裕かァ!? すっげぇなオイ!!」
「違うよ……ッ、余裕なんか微塵もない!!」
刹那の打撃の応酬。しかし、その間に行われた読み合いは――少なくとも、五回。
お互いに大きな負傷をする事なく、戦況は停滞する。
だが爆豪の爆破は、緑谷の攻撃よりも遥かに威力が高い。
このままだと――ジリ貧だ。
「そうだよ。君だって強くなるんだ……走り続けてるんだ。僕なんかが立ち止まってる暇なんか――何処にもないんだッ!!」
「あァ……!?」
(ごめんなさい、オールマイト。僕は今、あなたの事を考えてない。誰かを助けるなんて、誰かのために、なんて。……微塵も、頭にない)
如何ともしがたく、高揚する。
戦いを楽しむ……だなんて、そんな事今まで一度もなかったというのに。
憧れの人の覚醒。
それを目の当たりにした緑谷の思考が――湧き上がる純粋な闘志によって澄んでいく。
『ヒーローになる』以外で――人を助ける以外で、初めて見せる激情のうねり。
(一歩ずつ、前に、前に――進まなくちゃいけないんだ……。いつまでも出来ないじゃ、済まされないんだッ!!)
そうだ。何故なら――。
「君に……勝ちたいんだ……っ!! かっちゃん!!」
「…………ビビりながらよぉ、そういうとこが――ムカつくなァ!!!」
表面上は、憤っているように見える爆豪だが――。
あるいは気持ちとしては本当にそうなのかもしれないが、一切気を抜いていない。
むしろ……警戒を強めたようにも見える。
このままでは……無個性のままの緑谷では……決して勝つことは出来ない。
だから。
そうだ。あの校訓を思い出せ。
(更に向こうへ、Plus ultra――)
勇気と闘志を胸に、ただひたすらに前へ進め。
(行くぞかっちゃん……ッ、卵が割れないような感覚卵が割れないような感覚、卵が割れないような感覚――っ!!)
「……ッ!!? 上等だァ!! 使って来やがれ――その隠し球の個性をよォッ!!」
――OFA5% DETROIT SMASH。
一度も成功したことの無いそれを、躊躇なく放つことが出来たのは、何故だろうか。
自分で良かった、と言ってくれたから。
友達が、言ってくれたから。
この身に宿る呪いの意味を、変えてくれたから。
憧れの人が、変わったのを見たから。
自分も――変わりたいと、強く思ったから。
だから。
昨日までの自分とは……もう、サヨナラだ。
「……が、はっ!? てめ、ェ……ッ!!?」
「いつまでも――雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ……!! 僕は――ッ"頑張れ!!”って感じのデクだァッ!!!」
(なんだよ、緑谷少年――凄いじゃないか……カッコイイじゃないか……ッ!!)
行ける――渡り合える。
そう思った。思ってしまった。
その気の緩みが――命取りだった。
「……そうかよ」
すとん、と。
気が抜けたように、爆豪が呟く。
そして――次の瞬間。
爆豪の全力最速の爆破が、緑谷の顔面を捉えた。
「あ、れ……っ?」
弾けるような熱さを受けて、ぐらり、と刹那の酩酊。
気がつけば、緑谷は地面に伏していた。
(しまった……!! ヤバいヤバいヤバいッ!! た、立ち上がれ……っ!! クソ、バカか僕は……っ!! たった一回個性が使えた程度でいい気になるなんて――ッ!!)
「……いい威力だが、俺の方が上だ……!! だがよォ……ッ!! もうテメェを……道端の石っコロなんて思わねぇぞ、デク!! 真正面からぶっ潰したらァ!!!」
そこからは――蹂躙だった。
一度大崩れしてしまった緑谷は、満足に運動をすることが出来ない。
そんな状態では――いくら動きを読んだところで、カウンターをする事など出来るはずもなく。
「がは、ァっ……!! ダメ、か……ッ!! ごめん、麗日さん……っ!!」
「……!! ヴィランチーム……WIN!!」
――悔しい。本当に……悔しい。
八百万は、緑谷が爆豪に固執しすぎていたと言った。
だけど、あの場面で試合に勝つために勝負を投げ出すことなど、出来なかった。
そこから逃げ出したら、自分に何も残らなくなる気がしたからだ。
そうまでして自分を追い込んだというのに。
チームメイトの麗日まで巻き込んだというのに。
それなのに――。
心のどこかで、よくやったよと思っている自分がいる。
爆豪にここまでやるなんて充分頑張ったじゃないか、と思っている自分がいる。
「緑谷お前すっげぇな!! 本番の土壇場で覚醒とか主人公かよ!!」
「漢だったぜ緑谷!! これからも皆で頑張ろうな!!」
「よく避けたよ〜っ!!」
「出久、よく頑張ったね。出久はきっと、もっともっと――ずっとずっと、強くなれるよ」
クラスメイトの優しい声に、甘えそうになっている弱い自分がいる。
(甘えるなバカ……ッ!! 頑張る以外に、今の僕が出来ることなんて何もないんだ……ッ!!)
だから――伝えよう。
己の誓いを、他でもない爆豪本人に。
こう言ってしまうと気持ち悪く思われるかもしれないが……。
その思いが、あの殴り合いを通して爆豪にも届いたのかもしれなかった。
放課後、五条をオールマイトの元に連れていった後――珍しくも、爆豪が冷静に話しかけてきたのだ。
「デク。ツラ貸せ」
「――うん」
思えば、こんな風に話すのはいつ以来だろう。
いつも爆豪は怒鳴ってばかりで、話し合いなんてとてもじゃないが成り立たない。
彼の静かな声を聞くのは……本当に、いつ以来だろう。
暫く、廊下をお互い無言で歩いて――。
先に口を開いたのは、爆豪の方だった。
「……俺ァ、あの白髪女に勝てねえ」
「……五条さんのこと? ……凄いもんね、五条さんは……」
白髪女、という言い方はどうかと思うが――爆豪のネーミングセンスについては最早何も言うまい。
「あの半分野郎にも……勝てねぇんじゃねえか、って……思っちまった」
「……轟くん、だよね」
確かに彼も凄かった。
【半冷半燃】――負けこそしたものの、あれは相手が悪かっただけだ。
他のチームと当たっていたならば、あの先制の氷結によって試合が終わっていたに違いない。
「それでも、だ。俺ァ一位を取らなきゃいけねェ……そうじゃねぇと。前につっ走ってねぇと、俺ァ俺を嫌いになりそうだ……!!」
「……うん」
その気持ちは、よく分かる。
だって……自分だって同じだ。
勝ちたかった。どれだけ差があっても。
四歳の頃から、ずっとそうだ。
どれだけ現実を突きつけられても――夢を諦めるなんて、有り得なかった。
……そうか。
同じだったのだ。
同じ人に憧れて、同じ場所に来て。
緑谷と爆豪は――同じように、努力を重ねている。
積み上がっている前提が、違うだけなのだ。
「そしたらよ……テメェの顔が浮かんできやがった。なぁ。テメェもそうだったよな――おい、デク。何の根拠もねェのにヒーロー目指して、こんなとこまで来て――俺すら知らねぇ個性いきなり出してよォ……ッ!! あァ、イライラして仕方がねェ」
「それは――」
言えない。言いたいけれど、誠実でありたいけれど――。
これはオールマイトとの……約束だから。
平和の象徴が象徴のままであるために、必要な秘密だから。
「……かっちゃん。僕は……個性の制御が出来なかった。君は隠し球って言ってくれたけど……ただ、使いたくても使えないだけなんだ」
「……」
「皆当たり前にできることが僕には出来なくて。個性のテストでも最下位で……だから……何倍も頑張らなくちゃいけない。勝ち取らなくちゃいけない」
そう。何倍も――何倍も。
「あの時――制御出来るか分からなくても、自分を信じて個性を使えたのは……相手が、君だったからなんだ。君だから……僕は、立ち止まらずにいられたんだ」
「あ……?」
「次は……次は勝つよ、かっちゃん。僕だってこのままじゃ終われない」
「……ケッ。ワケわかんねぇ事ばっか言いやがって……!! テメェが一歩進んでる間に……俺ァ百歩進んでンぞ。テメェが俺に勝つなんざ生涯有り得ねェ」
「――それは、困るなぁ」
「ンで笑ってんだよ……気持ち悪ィ。……言いてぇことは全部言った、帰る――じゃあな、デク」
「……うん。またね、かっちゃん」
……じゃあな。
……またね。
「…………」
本当に……いつぶりだろう。