【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】 作:いる科
五条玲珠が、個性によって自分の――オールマイトの抱える秘密を見抜いた。
……それはもう、心臓が飛び出るほどの衝撃だった。
どうしたものか。
どのように接すればいいものか。
他でもない自分の話だ。
いくら強いとはいえ、彼女の意志を聞くことなくこちらの話に巻き込むなど、教師としてあってはならない。
いや、待て。そもそも彼女が味方である保証など、何処にも――。
……。
……。
そんな事を考えている内に、遂に放課後になってしまった。
「私が――来た!! やぁ、五条少女。して、しておきたい話というのはなんだい?」
実際には五条の方から赴いた形だが、五条はそれに突っ込みを入れることなく。
もっと言えば、トゥルーフォームのままでいるオールマイトに一切の驚きを見せることなく――。
彼の座る方とは反対のソファへと向かった。
「や、俊典先生。……えっと、話の前にさ。出久からはどの程度聞いてる?」
「HAHAHA!! その呼び方をされるのは慣れないな!! ……うん、そうだね……君の個性についてはおおよそ聞いた。しかしだね、一つ疑問があるんだ。そうだ、君のお話の前に聞いてもいいかな?」
「ん。いーよ」
「君は何故、OFAの名を知ることが出来たのかな。個性を視ることができるといっても、そもそも個性の名前は人間によって後天的につけられたものだろう? 実際、個性の実態を間違えられて後から個性届をし直す……なんてケースも多々あるわけだ。それが分かるということは――」
生徒にこのような疑念を抱いてよいものか、と。
言い淀んだ箇所を、五条は代わりに続けた。
「ボクの個性とは関係なく、OFAについて元から知っていたに違いない……と?」
「……すまない」
「いーよいーよ! しんみりしないで。疑うのは当然だし……それに、実に正しいぜ。むしろその反応を望んでやった事だしね」
「ふむ……?」
「ボクの【六眼】は難儀でね。名前が分かる、個性が分かる、個性の使い方がわかる……それはただの副次効果に過ぎないんだ。この目を通して実際に視ているのは、個性因子――ひいては因子の内包する記憶」
「記憶、だって……?」
「ん。それを通じてボクが見たのは――」
そこからの話は、正に想像を絶するものだった。
オールマイト自身、そしてお師匠様であるグラントリノ。
他には友人の塚内などしか知らぬはずの情報が、ぽんぽんと彼女の口から出てきたのだ。
「そうか……つまり五条少女――君は、お師匠様……グラントリノと同じだけの情報を既に持っているんだね」
AFO。
かつて存在したという事実そのものがこのヒーロー社会を揺るがしかねない、史上最悪の魔王。
その記憶を視た、と話す彼女は終始笑顔を崩さなかったが――。
その顔に、どこか疲労の色があるのをオールマイトは見逃さなかった。
(……無理もない。いくら強いとはいえ、年頃の少女があのような者の存在をいきなり知らされたのだから……)
しかもそれは国家機密の情報ときたものだ。
世界そのものを信じられなくなってもおかしくはない。
そして、その情報を知ったことを国に知られたら消される――などというように、恐慌に陥る可能性だってある。
そこからのヴィラン化――実にありうる、というよりもそうなって然るべき話だ。
それでも、彼女は――。
(……そんな子を、私ははなから疑ってかかったのか……Holy shit! なんたる愚行……!!)
立場上仕方なかった?
五条もそれを見越していたのだから問題はない?
違う。
確かに今、自分は一度――少女の信頼を裏切ったのだ。
考えが至った数秒後。
オールマイトは思わず、頭を下げていた。
「ちょ……どうしたの俊典先生」
「……疑ってすまなかった。伝えてくれて――私たちを信じてくれてありがとう。賢い君のことだから、伝えることで発生する疑念などのリスクも踏まえての事なのだろう」
ふざけるなとなじられても、嘘つきだと蔑まれても。
汚い大人だと罵られても……仕方のないことだ。
だというのに、この少女はこうして真摯に向き合ってくれている。
これでは、どちらが大人かまるで分からないではないか。
「……ボクは、出久の力になりたいだけだよ。彼はきっと……誰よりも強いから。強く在れてしまうから……」
「……!」
何かを憂う彼女の、どこか寂しげな瞳の中に――あの日の彼を見たような気がした。
サー・ナイトアイ。
オールマイトが平和のための犠牲になることを、ただ一人良しとしなかった男。
「……緑谷少年は、良い友人を持ったな」
「……君もだよ、俊典先生。ボクは今年中にはヒーローになる。君がまともに立っていられなくなる、いずれ来るその日の前に……必ず間に合わせる。そして、君を超える。そうしたら……君には引退してもらって、ゆっくり休んでもらう」
「え?」
「夢物語なんて言わないでよ? こっちは本気で目指してるんだからさ。俊典先生、君の真実を知った五年前から――ボクはずっと、それだけを夢見てる。何よりも――ボク自身が、平和の中で好きな事をやって生きていたいから」
「…………五条少女。君は――」
五年前、だって?
そうか。
まさか、テレビ等を通してもその目は使えるというのか。
……返す言葉が見つからない。
ずっと一人で、どうしようもないハリボテの平和と向き合って――それを支えるヒーローになるために。
この少女は走り続けてきたのだ。
想像など、最早追いつかない領域。
一言で表すとするならば……それは地獄だ。
それが――彼女のオリジンだったのだ。
虚構に塗れた世界の中で、幼き日の少女がどうしてこうも真っ直ぐ、強く育つ事が出来たのだろう。
……真っ直ぐというには少々性格に難があるような気もしないでもないが――。
……それはさておき。
自分を等身大の人間として見てくれる者など、いつぶりだろうか。
因子の記憶さえも視るという彼女の前では、No.1ヒーローの自分でさえも、ただの人なのだろうか。
……本当に、それでいいのだろうか。
窪んだ瞳から溢れ出しそうになる涙を、なんとか抑える。
泣きたいのはあちらだろう。
生徒より先に教師が弱みを見せるなど、あってはならない。
いやしかし、この精一杯の強がりもお見通しなのだとしたら、最早何も敵うまい。
「……本当にありがとう、五条少女。勝手な話だが、君と緑谷少年が共に平和の象徴として並び立つ姿を……幻視してしまったよ」
「ふふっ――何それ、歳じゃん」
「HAHAHA!! 辛辣ッ!! ゴボォッ!」
「ちょ、俊典先生吐血やば!!? リアクションのために体張っちゃダメだって、コミックじゃないんだから!!」
「ゲホゲホッ……気にするな、いつもの事さ。……あ、そうだ。AFOのことはいずれ時期を見て私から少年に話す。黙っておいてくれ、などとは口が裂けても言えない立場だが――」
「ん、その辺は全部君に任せるよ。めんどくさいし。……ボクはあくまでサポートするだけ。特訓とか特訓とか特訓とかね」
「……何から何まですまないね。助かるよ」
「そこはありがとうでしょー。ほらほら、スーツに着いちゃった血拭きな〜?」
「……そうだね。ありがとう」
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「玲珠」
帰り際、耳郎は校門から出てきた五条の元へと猪突猛進した。
【アキレスと亀】など発動しているはずもないので、勢いのまま五条の豊満な胸に飛び込む形になった。
「ちょ、どしたの響香……んっ……くすぐったいよ」
「好き」
「……ん?」
「好き」
「あ、うん、ええと、その……ボクも好きだよ?」
世にも珍しい、呆気に取られたような五条の表情。
これを見れただけでも僥倖だ、と耳郎は思う。
「じゃあなんでウチと一緒にご飯食べてくれないの……」
こんな執着は良くない。
将来ヒーローを志すものとして、自らを削り他者を救うものとして、あってはならない話だ。
好きならば尚更、自由を愛する五条を尊重するべきだ。
まだ学校は始まったばかりなのだから、元からあった交友よりも、新しい交友関係を結ぶことに尽力すべきだ。
……だとしても。
分かっていても。
止められない。
どうしてなのかは、耳郎本人にも分からなかった。
もう、拒絶されるなら、それはそれでいい。
そしたらもう、スパッと諦めてやる。
だって、ありったけを思いのままにぶつけるのがロックなのだから。
……その結論に至るまでに、随分時間を使ってしまった。
もうこれ以上は……耐えられない。
「……なるほど? 分かった。じゃあ明日一緒に食べよっか」
「……絶対分かってないじゃん……」
ズレた回答を持ち出す五条に――もしや、わざとやっているのではと疑念を抱く。
(いや……でもこの顔は……ホントに分かってない顔だ……嘘でしょ……マジで? あんなんやっといて鈍感なの……?? テロじゃん……)
五条は、嘘をついたり人を弄んだりする時は必ず笑う。
天使のような、とびっきりの笑顔を見せる。
だが――今はただ、こちらを心配するような、困惑した表情だ。
ああ。
これよりももっと直接的な言い方をしなければ、もっと露骨にアタックしなければ伝わらないのか――と。
絶望しながらも、そこが五条らしいと安心してしまう耳郎であった。
走者「はやくヒーローにならなきゃ(使命感)」
れずちゃん「はやくヒーローにならなきゃ(使命感)」