【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】   作:いる科

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週間ランキング2位ありがとナス!!
結局三話投稿してるバカがいるらしいっすよ!!
ホモは嘘つきってはっきりわかんだね。


9裏―2 だから俺はヒーローを辞めた

「……なんで、そこまで」

 

 腹の底から零れた、純粋な疑問。

 それが思わず――口をついて出ていた。

 

 個性婚。

 熾烈な虐待。

 唯一の拠り所であった母の死亡。

 犯人である父の逮捕。

 

 己の境遇と重なった――などと、口が裂けても言えない。

 お前に自分の何がわかる、と癇癪を起こした過去の自分が恥ずかしい。

 

 五条玲珠は自分のそれよりも、遥かに辛く、苦しい過去を背負っていた。

 比べることすら烏滸がましい。

 

 ――それでも彼女は、笑顔のまま。

 太陽のように輝いている。

 

 あのオールマイトと、互角以上の戦いを繰り広げて。

 それでも尚、確かな未来を見据えて笑っている。

 

 轟には、理解ができなかった。

 彼女はどうして、あんなにも真っ直ぐでいられるのか。

 彼女はあの時、一体何を自分に伝えようとしたのか。

 

「…………」

 

 もう何も分からない。

 

 ――自分が、何をするべきなのかも。

 ――自分が、何をしたいのかも。

 

 ただ父を否定するためだけにここにいる自分の姿が――鏡を通して、酷く惨めに見えてしまった。

 

 自分の行動は正しいと、思っていたはずなのに。

 

 思い出せない、母との記憶。

 母はあの時――なんと言っていただろう。

 それを思い出せば、自分も彼女のようになれるのだろうか。

 

 

「……会いてぇ」

 

 

 会って、話したい。

 

 ――違う。

 

 会うべきなのだ。

 自分の母は今も――狭い病室の中で、孤独に生きているのだから。

 父の否定。父への復讐。

 そんなものより大切なものが、ずっと傍にあったのに。

 

 どうして、気づけなかったのだろう――。

 

 

「なるんだ。ヒーローに――」

 

 五条の言葉。魂の発露。

 彼女の声がどうしてこんな遠くまで聞こえるのかは分からない。

 

 ただ――ただ。

 あの日の母の姿と――彼女が重なる。

 

「オマエを超えて!! ボクがボクでいるために……ッ!!」

 

 あぁ、そうだ。

 ――あの時、母は。

 

――「でも…………ヒーローにはなりたいんでしょ?」

 

――「なりたい自分に……なっていいんだよ」

 

(……ん、で……なんで、忘れて、たんだ。こんな……大事なこと……)

 

 ずっと忘れていた、あの日の憧憬。

 いつかなりたいと憧れて。

 それでも、父のようにはなりたくなくて。

 

 幼い日の己が抱いた複雑な思いを、葛藤を――。

 丸ごと肯定してくれた、母の言葉。

 

(そうだ。……なりたいんだ……俺だって……ヒーローに――)

 

「轟、くん……? 泣いてるの……?」

 

 泣く――?

 心配そうな緑谷の声に、ハッとして目元を拭う。

 ……気づかなかった。

 

 まるで、今まで我慢してきていたもの全てが、洗い流されていくかのように――溢れて、止まらない。

 

「…………悪ィ。今は……見ないでくれねェか……」

 

「――うん」

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

「なんだ、アレは」

 

 なんだ。

 ――なんだ? 

 あの――少女の皮を纏った怪物は。

 

「やめろ…………それ以上は、やめてくれ」

 

 唯一無二、最強の個性。

 それを扱えるだけの頭脳と技術、センス。

 それを――あの歳で。

 

 本当に――同じ、人間なのか?

 

「やめろ…………!!!」

 

 初めて一位(オールマイト)を目の当たりにした時と、同じだ。

 これまで積み上げてきたものを、そんなものは無駄だと嘲笑われるような。

 自分を構成する全てを、否定されるような無力感――。

 

 燃やし、掲げてきた虚栄が、ハリボテのようにガラガラと崩れていく。

 

 ……とうに知っていたことだ。

 轟炎司は、超人には決してなれない。

 

 弱き者は、何も守ることは出来ない。

 ヴィランからか弱き少女を救おうとして――共に肉塊と化した、父のように。

 無意味に、弱者は淘汰される。

 

 だから、己に"努力(エンデヴァー)”などと名付けた卑屈な性根を――常に自らの弱さを呪い続けてきた。

 

 だから、つくったのだ。

 

 自分の弱さを踏み台に、おおよそ弱点のない完全無欠の個性を持って。

 (できそこない)の限界などいとも容易く突破し、やがてNo.1をも超えるヒーローになる息子を。

 

 そのため、に。

 そのためだけに、積み上げたというのに。

 

「…………ダメだ。あれは……"人”では勝てない」

 

 それさえも、無駄だというのか。

 

 自らを燃やし続けて――真の超人(オールマイト)の足元に、ようやくしがみついて。

 一歩一歩、着実に進むことしか出来ないが故に、そうしていたというのに。

 その道に限界を感じたが故に、人の道を踏み外したというのに。

 

 

 これだけやっても、通じないというのか。

 

 

 凡人の百歩は――超人の一歩に劣る。

 なのにいつも超人は、笑いながら千歩を進む。

 

 

「…………たの、む。やめろ――やめろ……っ!!」

 

 エンデヴァーの願いも虚しく、オールマイトは倒れた。

 少女は、立った。

 

「天上天下――唯我独尊」

 

 少女は嗤う。

 まるで、この世の全てが自分のためにあるかのように――空を仰ぐ。

 

 否応もなく、自分がただの傍観者であると気付かされる。

 

「――――おれ、は……なんの、ために……」

 

 その日、己の弱さと戦い続けていた一人の男の心が――ぽきりと折れた。

 

 

 

 その後…………恐らくは、エキシビションマッチから十分ほど経って、レクリエーションが行われている頃のこと。

 

「……親父? こんなとこで何してる……」

 

 廊下にて、己に話しかける声がした。

 よく知っている声だった。

 

「…………焦凍」

 

 振り返ると、やはり話しかけなければ良かったか――とでもいうような。

 明らかな後悔の色を浮かべた息子が、そこに立っていた。

 エンデヴァーは、気づけば声を発していた。

 

「焦凍――お前は――もう、好きにしろ」

 

「…………は?」

 

「お前のやりたいようにすればいい……俺は――もう。もう……いい……」

 

「――お、前……自分が、何言ってんのか……分かってん、のか……?」

 

 ――。

 

「ふ、ふざ――ふざけんな……っ!!! お前が――母さんを――ッ。なのにいきなり、いきなりどうしたっ!!? もういい、って……どういう意味だよッ!!? 俺たちは――母さんは、燈矢兄は、姉さんは――夏兄はッ!! もう、どうでもいいって言うのか!!?」

 

「――――あぁ。そうかも……しれない」

 

「嘘、だろ…………親父……親父!! 待てよ……待て!! せめて話をしろよッ!! 自分だけ納得して逃げてんじゃねえよ……ッ!言いてぇこと、沢山あんだよ……ッ!!」

 

 ――すまない。

 

 ――すまない。

 

 だがこれ以上、こんな所にいては、もう。

 ……もう。

 まともに呼吸など、出来る気がしない。

 

 

 逃げるようにして、その場を立ち去る。

 ひたすら、遠くへ――遠くへ。

 

 

 気がつけば、エンデヴァーはどこか見知らぬ路地で立ち尽くしていた。

 

 一体どこへ逃げるというのだろう?

 ――逃げ道は、とうに自分で塞いでしまったというのに。

 

 

「――可哀想にねぇ」

 

「誰だ、貴様は。――ヴィランか?」

 

 頭の中に直接語りかけてくるような――心の底をほじくり返すような、悪意を凝縮した声。

 

「君、頑張ったのにねえ。誰も認めてくれなかったねえ。誰も君を見てはくれなかったねえ」

 

 黙れ。――黙れ、黙れ、黙れ。

 

「――――貴様に……何がわかる……!!」

 

「分かるさ!! だって同じだもの。おかしいよねえ、生まれ持った才能がないってだけで、一番上に立つ男に負けたというだけで、まるで君はヒールだ。……だけど、もう大丈夫さ。これからは僕がいる。ほら、君の大好きな"力"がここにあるよ。さぁ共に掴み取ろう――No.1を」

 

 答えてはならぬと分かっていても。

 それでも――今のエンデヴァーに、正義としての気力など残ってはいない。

 

「――――」

 

 言っている意味は分からない。

 だが、もう……考えるのは疲れてしまった。

 いっそこの男に身を預けてしまった方が――楽に、なれるのかもしれない。

 

 

 そうだ。力だ。

 力さえあれば、自分だって。

 

 

「――分かった」

 

「いい答えだ、No.2! 僕と共に行こう――覇道を!!」

 

 

 エンデヴァーはこの日――。

 

 

 ――ヒーローを辞めた。

 

「強すぎる光は弱者を滅ぼす――。それくらい分かっていただろうに、五条玲珠――全く、薄情な子だ」




エンデヴァーはヒロアカ界のライナーなので、曇れば曇るほど味が出て……その……下品なんですが……下品なんでやめておきますね(素)
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