【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】   作:いる科

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10―裏 轟焦凍:オリジン

 皆がもうずっと、遠くにいるような気がする。

 

 当たり前だ。

 皆は夢に向かって走り始めているのだから。

 その間――自分は何をしていた?

 

 そうだ。

 ただ過去と向き合えず、己が大切なものを壊した理不尽に対し癇癪を起こして――立ち止まっていた。

 ずっと、足踏みをしていた。

 

「焦凍――お前は――もう、好きにしろ」

 

「…………は?」

 

「お前のやりたいようにすればいい……俺は――もう。もう……いい……」

 

「――お、前……自分が、何言ってんのか……分かってん、のか……?」

 

「ふ、ふざ――ふざけんな……っ!!! お前が――母さんを――ッ。なのにいきなり、いきなりなんなんだよっ!!? もういい、って……どういう意味だよッ!!? 俺たちは――母さんは、燈矢兄は、姉さんは――夏兄はッ!! もう、どうでもいいって言うのか!!?」

 

「――――あぁ。そうかも……しれない」

 

「ふざけんな……!! ふざ、けんなよ――ッ!!」

 

 父は、何故か勝手に結論を出してしまった。

 勝手に諦めてしまった。

 

 轟がこれまで積み重ねてきた"否定”が望んだ結果。

 なのに――それが、酷く理不尽に感じられた。

 もう自分が、何を望んでいるかなんて……。

 

 ――否。

 

 分かっている。

 もう分かっているはずだ。

 だって、気づかせてくれた。

 

 ……掴んで、離すな。

 大切なものを、ようやく取り戻したばかりなのだから。

 

――「それは、君の個性だろ?」

 

 そうだ。

 

(俺の――原点を、思い出せ)

 

 ――父になどもう、惑わされるな。

 

(お母さんと……仲直り、するんだ)

 

 謝るんだ。精一杯。

 これまでのことを、全て。

 それが――。

 

「お、い。轟……やりすぎだろ……熱ィ……寒ィ……痛ェ……」

 

「――わ、悪ィ……。力みすぎた……」

 

 氷はともかく、炎は如何せんコントロールが効かない。

 ……長い間使ってこなかったのだから、当然だ。

 

 自然と沸き起こる瀬呂範太へのドンマイコール。

 その中で俺は――。

 

(これで…………いいのか?)

 

 どこか、自分の行いに違和感を感じていた。

 これが正解では――ないような。

 

 自分だけスッキリして、後からどうこうなんて。

 それで本当に良いのか?

 今の自分に、皆の背中を追う資格は本当にあるのか?

 

 ――やっぱり、母に会うまでは。

 この炎は、使わない方が……。

 

 ……大丈夫だ。氷だけでも……戦える。

 そういう風に、特訓してきたのだから。

 だが、それでは結果がさっきまでと――。

 

 

 葛藤に答えが出ないまま、緑谷戦がはじまった。

 

「OFAフルカウル――スマァッシュ!!」

 

「自分が凍らされる前に、凍る傍から壊していったか。それにしても……個性の制御が出来るようになってからのアイツの成長には目を見張るものがあるな」

 

「うちの出久凄いでしょ!! ボクが育てましたっ」

 

「……嘘つけ」

 

「嘘じゃないしい!!」

 

「HAYHAY!! 脳筋かよ緑谷!! でも好きだぜそういうのォ!! 盛り上がるしな!!」

 

「くっ……!!」

 

 ダメだ。氷は避けられるか壊される。

 何故だ? 

 緑谷の動きが格段に良くなっている。

 確かにセンスはあると思っていたが――あんな動きを出来るやつではなかったはずだ。

 

 あれではまるで、爆豪の――。

 

「攻め方が単調だよ、轟くん……ッ!! デトロイト・スマッシュ!!」

 

「カハ……ッ!!」

 

「生々しいの入ったァ!! 緑谷すげーなオイ!!」

 

「轟はどこか調子崩してんな……このままだとジリ貧だぞ」

 

「うーん……何か悩んでるっぽいねー。まぁ思春期だしねー」

 

「タメのお前がそれを言うか……」

 

「HEY!! 俺抜きで漫才してんじゃないよ解説コンビィ!!」

 

「「別にしてない」」

 

 ジリ貧――そんな事は分かっている。

 

 でも、分からない。

 もしここで炎を使うことが――母への裏切りになってしまったらと考えると、力が出ない。

 

「行くぞ、轟くん……ッ!! 君に勝って――!! 期待に、応えるんだッ!!」

 

「――」

 

「だから君も――――全力でかかってこいッ!!!」

 

「……っ! お前、は――」

 

 そうだ。

 全力で、勝ちたい――そう願う皆の気持ちに、応えなければ。

 

(……五条)

 

 そうだ。

 

(……最初に気づかせてくれたのは、お前だったよな)

 

 ……聞きたい。

 どうしてあの時のあんなどうしようもない自分に、手を差し伸べてくれたのか。

 

 最後尾でうだうだ足踏みしている自分に、一番前で走っているお前が、どうして。

 

(……緑谷)

 

 差し出された手を取れない自分を、どうしてここまで。

 自分も、勝ちたいだろうに――。

 

 聞きたい。

 話がしたい。

 友達に、なりたい。

 

 そのためには――。

 

 ……なりたい自分に、なるために。

 ……気づかせてくれた皆に、報いるために。

 ……全てを清算して、皆の隣に立つために。

 

 今全力で戦うことを――どうか、許して欲しい。

 後でいっぱい、謝るから。

 絶対、毎日会いに行くから。

 

(……五条……緑谷――お母さん。……ありがとな)

 

 ――炎を燃やせ。

 憎み続けてきた父の炎ではなく。

 自分の中で燻り続けてきた――己だけの炎を。

 

「俺だって、ヒーローに……ッ!!」

 

「ははっ……!! 凄っ……!!」

 

「何笑ってんだよ、緑谷――。どうなっても知らねぇぞ……!!」

 

 ――【膨冷熱波】。

 氷結で周りの冷気を下げた後、左の炎で急激に温度を上昇させる事で空気を膨張させ超強力な爆風を引き起こす――現時点での、最高火力だ。

 

 直後。

 

「ははっ…………痛ぇ。……凄ぇな」

 

「轟くん場外!! 緑谷くん、三回戦進出!!」

 

 ――轟は、場外の壁に叩きつけられていた。

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 時を戻して――心操戦。

 

 緑谷は【洗脳】の効果を受けた先に――何か、ぼんやりとした……それでいて確かな存在感を放つ、光を見た。

 

 心の奥底に沈んでいくような、緩い感覚の中で。

 誰かが言葉を交わしている。

 

「五条玲珠が生まれて、世界の均衡が変わったのだ」

 

(…………五条、さんが? どういう、ことだ……)

 

「違ぇねぇ。OFAは――全く新しい、別の力になりつつある」

 

(……ちがう。いまは、それよりも――大切な、ことが)

 

 勝たなくては。

 約束したんだ。

 

――「君が来たってことを、知らしめてほしい!!」

 

 約束、したんだ……!!

 期待、してくれてるんだ――ッ!!

 

「……おい、聞いてんのか。テメェの話だぞ――緑谷出久。さっさと――起きろ!!」

 

「…………はっ」

 

 気づけば、緑谷は心操に勝っていた。

 何が起こったのかは――今でも分からない。

 

 

 轟戦でも、同じことが起こった。

 

「どうなっても知らねぇぞ……!!」

 

 吹き荒れる炎と冷気。

 今までのような弱点は最早そこにはない。

 

 その刹那。

 脳を直接がっしりと掴まれるような、明らかな虫のしらせに従った。

 理由は分からない。ただ、なんとなく――繰り出すべきタイミングが分かった。

 

(今、だ……!!)

 

 ――【危機感知】。

 これがOFA覚醒の兆しであることを、今の緑谷は知る由もない。

 

(ただのパンチじゃ足りない……!! 合わせ技で、相殺――OFA100% デラウェア・デトロイト・スマッシュ――ッ!!)

 

 指による衝撃波と、パンチによる二段構え――威力は、単純計算でも二倍。

 

 腕は壊れた。

 だが――足が残っている。

 

「たま、ごが……っ、われっ、ないっ感覚!! OFA5%――フルッ、カウル――!!」

 

 轟は膨大な出力の余波と、遮られてしまった視界のせいで動けない。

 

 緑谷の繰り出した蹴りは――轟の顔面をそのままぶち抜いて。

 遥か外――場外の壁まで叩きつけた。

 

「ゲホッ! ゲホッ! ……ははっ…………痛ぇ……ッ。……凄ぇな」

 

「轟くん場外!! 緑谷くん、三回戦進出!!」

 

「勝っ…………た。――――やった……オールマイト――ッ!!」

 

 

 

 ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 リカバリーガールに治療して貰った後。

 ――先生に無理を言って、病院に直行した。

 どうしても今、会いたかった。

 会わなければ、と思った。

 

 自分の存在が母を追い詰めてしまうと思って、今まで会えなかった。

 怖かった。

 またあの時のように――拒絶されたらと思うと、足が竦んだ。

 

――「怖い時、不安な時こそ、笑っちまって臨むんだ!」

 

 テレビの先で、いつも彼が言っていた言葉。

 ヒーローを目指す者なら、誰だって知っている言葉。

 

 ――いっぱい、話をしないといけない。

 会って、沢山の話を。

 

 父に囚われた過去を、今もきっと引きずってしまう母を……救けるために。

 

 たとえ、望まれていなかったとしても。

 

――「君の個性だろ」

 

――「全力でかかってこいッ!!」

 

 彼らのように――。

 なりたい自分に、なるために。

 

「……焦凍?」

 

「――お母さん。……久しぶり」

 

 これが――轟焦凍の、スタートラインだ。

 

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