【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】 作:いる科
おにいさんゆるして……。
あいつは、走っているのにじわじわと追いついてくる。
むしろどこか、もうずっと先にいるような気さえする。
いつの間にか、あいつの背中を――。
……思えば、ずっとそうだった。
何か自分に足りないものを持っているあいつが、気持ち悪い。
そう思って、ずっと遠ざけてきたのに、どれだけ殴ってもどれだけ叩いても――アイツは後ろに張りついて来て。
同じ人に憧れて、同じ道で走っているはずなのに。
あいつは。
まるで、全てを見下ろし俯瞰しているようで。
気持ち悪い。
(なんなんだ……ッ!! 何なんだクソが……ッ!!)
苛立ちの原因は、あいつだけではない。
――五条玲珠。
五条玲珠が何かする度に――否応なく、自分が特別な主人公などではないのだと気付かされる。
緑谷出久、轟焦凍、耳郎響香の覚醒。
何より自分自身も。
――全員が、何かしら強い思いを五条玲珠に対して抱いている。
あの女には、どれだけ走っても追いつけない。
いつの間にか幼き日に憧れた頂点と同じ――いや、それよりも高い場所にいて。
だからなんだ?
だったら、もっと爆発的に自分が輝けばいい。
心のどこかに――もう仕方ない、と諦めている自分がいるのが、爆豪にとって最も腹立たしい事実だった。
とてもじゃないが――認められない。
個性【無限】。確かにとんでもない個性だ。
生まれつき、最高のヒーローになる事が決まっているかのような最強の個性だ。
あのクソを煮詰めたような記事を見る限り――どうやら、本当にそうらしいが。
だが、そんな事はどうでもいい。
自分より強い奴がいるだなんて、当然のことだ。
そもそも――。
No.1に憧れて。
それを超えるために、ここへ来たのだから。
「右……フェイント――ここで【瞬間移動】――【蒼】。……違ぇ。最適解じゃねぇ……アイツ……わざと隙作ってやがる……オールマイトも気づいた上でノってんのか」
頭をフル回転させて、奴の思考を動きから逆算する。
たどり着いた答えは――釣り。
あれは……わざとだ。
そしてそれは、概ね正解だった。
――五条玲珠は、化け物ではない。
戦闘の組み立てや考え方、その精神性も――人の延長線上にあるものだ。
それなら、諦めるわけにはいかない。
(何もかもが遠いわけじゃねえ。……一つ一つだ。一つ一つ追いついて――必ず追い越してやる……追い越して……)
刹那、雑念が闘志に水を差す。
だって、このやり方は――あいつと、まるで同じではないか。
「勝つよ、かっちゃん……今度こそ……ッ!!」
「なぁオイ、デク――テメェ、オールマイトとどんな関係だ?」
「――え?」
「半分野郎も言ってただろうが。……白髪女の依怙贔屓も受けてるよな、お前」
「……えっと――」
「――言えねぇならそれでいい。オールマイトに迷惑かけてぇわけじゃねェ……ただ、確かめさせろ。……お前の何がそうさせるのか――俺は何処で間違えたのか」
「まち……そんな事……」
「あンだよ!!! あるはずなんだ……ッ!! テメェばっかりオールマイトに認められて――俺が見向きもされねェ理由ッ!! デク――ガチで来いや」
それを確かめて、先へ行く。
これまでの全てを――爆豪勝己の道を、肯定するためにも。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「ケロッ……どっちが勝つと思う?」
あまりに直球で、かつ答えづらい質問を投げかけたのは、蛙吹梅雨だった。
思ったことをなんでも言う、と自負するだけはある。
そして。
その隣に座る耳郎響香は、うーんと逡巡した後に、こう答えた。
「爆豪……かな」
「何故かしら?」
「自分が全力出して何も出来ずにやられた……やっぱアイツすげー。ってのもあるけど。――緑谷、なんか爆豪みたいな動きするようになったじゃん? ……オリジナルに勝てるのかな」
「あー、アレな。アイツいきなり凄くなったよな」
「努力の結晶――漢だぜ!! でもそれ言うならさ、耳郎も凄かったよな!!」
「……別に。フツーだし」
「……私はデクくん応援したいなあ……」
「……もしかして麗日って――」
そこまで言って、耳郎は言葉を飲み込んだ。
「ん?」
「――ごめ。なんでもない」
――皆の前で言うのは、流石に公開処刑というものだろう。
もし自分だったら恥ずかしさで五回は死んでしまう。
(いや、でも……)
もし緑谷と麗日がくっつくのなら、耳郎の悩みのタネが一つ減ることになる。
緑谷と玲珠。
二人の関係性がそういうものでない事は見ていれば分かるものの――。
やはり、ああも仲良くしているのを見ると嫉妬心は湧いてくる。
(――そんな理由で人の恋応援するとか、不純ってレベルじゃないなあ、ウチ……)
どんどん思考が良くない方向に行っている気がする。
(……仕方ないじゃん……。好きなんだもん)
こんなに頑張って、態度に出して伝えているのに――。
いつまで経っても察してくれない、あの子が悪いと思う。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
緑谷と爆豪――二人の決勝戦は、切島vs鉄哲に並ぶほどのシンプルな。
お互いの機動力を立体的に活かした、三次元での殴り合いとなった。
(右!? いやちがう、それは前に破ったはず――修正も早かった!! それならこれはブラフ――)
「考えるよなァテメェは!! その一瞬が命取りだクソがッ!!」
「がっ……!!」
強打をモロにくらいつつも、緑谷は距離をはかり直す。
しかし――爆豪はそれを予測していた。
「考えさせねェよ――仕切り直しなんざクソ喰らえだァッ!!!」
「マジか……ッ!!」
その後の攻撃の応酬も――パッと見では互角に見えたが、最後には必ず爆豪の攻撃がクリーンヒットしている。
(動きを予測して行動を決める僕のやり方じゃ間に合わない……ッ!! 見てから動かれる――これじゃ後出しジャンケンをしてるのと変わらない……ッ!! っていうか――)
緑谷出久は、違和感の正体に気づく。
(前より早い……ッ!! この短期間に――強く、なってる……!!)
どれだけ思考を巡らせても、追いつけない。
緑谷が一手繰り出している間に――爆豪は二手。
(この、ままじゃ――ッ)
そして、刹那。
再び――覚醒。
「!?」
本来なら受ける他に選択肢のなかった爆豪の一撃を――間一髪で、受け流した。
そしてそのまま、流れるようにカウンターを繰り出す。
「スマッシュ!!」
「ぐァっ……!?」
(――ま、ぐれか……? いや、違ェ……!! あいつまた、何かしやがった――ッ!!)
――【危機感知】。
ただし……制御不能。
(な――アイツ、ギアいきなり上がって――ッ)
(いた、い――ッ!! あたま、が、割れ、ぞうだ……ッ!!)
緑谷は、OFAの示すその感覚に従って――ただ、脳内で弾き出された最適の動きをトレースし続ける。
「あ゛あ゛ああああッ!! ズマァ゛ッシュ゛!!!」
「がっ……!? ふざ、け――ぐああああっ!!?」
爆風で衝撃を和らげた爆豪は、場外ギリギリの所で膝を突いた。
「はァ……ッ!! はァ……ッ!! まだ、まだッ、これから――。…………は?」
そして――緑谷の脳はキャパシティを超え。
その意識を飛ばした。
「緑谷くん失神!! よって――爆豪くんの勝ち!!」
「ふざ、け――。お、い。お゛い゛ッ!! 何やってんだ……勝手にぶっ倒れてんじゃねえよ゛……出久……ッ!! こんな、こんな……勝ち方――!! 意味、ねェだろォが――ッ!!」
気絶した緑谷に、泣きながら掴みかかった爆豪は――ミッドナイトによって、眠りへと誘われた。
雄英体育祭、優勝。
爆豪勝己にとって――この上ない、屈辱の上での勝利だった。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
雄英体育祭、終了後。
生徒たちは各々の疲れを癒すため、そそくさと帰宅していく。
それは雄英体育祭優勝者、準優勝者である二人も――同じことだった。
「……待って。待って――かっちゃん!!」
「――――ンだよ……」
「オールマイトと……どんな関係、って」
「……あぁ。話せねェんだろ……」
「……ううん。話すよ――オールマイトに、許可も貰ったんだ。……君になら、大丈夫だって」
「……そうかよ」
緑谷は――どうしても、爆豪だけには話したいと思った。
母にも伝えていないオールマイトとの秘密。
世間には絶対にバレてはいけない、平和の象徴のルーツ。
それでも。爆豪には――。
それでも。爆豪だけには、伝えなければ――。
オールマイトは緑谷の必死の願いと――爆豪の精神状態。
そして五条玲珠の助言を受けて、特別に許可を出した。
息を、吸って――吐く。
「僕の力は――オールマイトから、授かったものなんだ」