【WR】僕のヒーローアカデミアRTA 雄英HERO%【五条チャート】【有料DLC:呪術廻戦パックvol.01使用】 作:いる科
「私の個性は人の治癒力を活性化させるだけ……治癒ってのは体力が要るんだよ。大きなケガが続くと体力消耗しすぎて逆に死ぬから気をつけな」
「逆に死ぬ!!?」
物騒な話だ、と声を張り上げた緑谷に対し、返事をよこしたのはリカバリーガール……ではなく。
「ん……ふぁ……っ」
可愛らしく、それでいてどこか扇情的な欠伸だった。
声の主は言わずもがな――五条玲珠だ。
どこからか香り立つ良い匂いと体の柔らかい感触――何よりその寝顔の美しさに脳がやられそうになったのは記憶に新しい。
というか、やられた。
正直、ドギマギしすぎて指の痛みなどとうに忘れてしまっていた。
いやいや寝ている間にそんなことを考えるなんて失礼だろ……っ! と、緑谷が自己嫌悪に陥ったのは言うまでもない。
(あ……寝てたのに、声大きすぎたかな……)
反省だ、と緑谷は口を手で覆うも、時すでに遅し。
五条はベッドから飛び起き、地に足をつけた――と思えば、いつの間にかリカバリーガールの真横にいた。
(……今の、しゅ、瞬間移動!? というか明らかに物理法則無視してたぞ!?)
五条の個性は、あのテストから察するに引力とかそんな所だ――と緑谷は予測する。
でも正直なところ、それだけではないように思える。
個性を発動した結果としてその重力が現れているだけで、母のそれとは恐らく根本的な本質が異なるはずだ。
長年ヒーローを観察し、分析して養ってきた勘――緑谷の数少ない、自分で信じられる武器のうちの一つだ。
(……うわーー、五条さんの個性気になる。気になるけど――っ)
(本人に直接聞くってのも、ハードル高いなぁ……かっちゃんとあんだけ喧嘩してたし……死ねとか言ってたし……ボクなんかが馴れ馴れしくしたら怒るだろうなぁ……怖いなぁ……)
そもそも普通に女子に話しかけることすらまともに出来ないのだ。
それよりも遥かに恐ろしく――爆豪と同じ気質を感じさせる五条玲珠に。
当人の個性の話を自ら振ることなど、今の緑谷に出来るはずがなかった。
(で、でも知りたい……っ)
オタクのそんなささやかな葛藤もつゆ知らず、五条はとびきりの笑顔でリカバリーガールに抱きついた。
「ん〜〜っ、体力全開だぁ! あんがとねー、保健室のお婆ちゃん」
「礼ならここまで運んできたその子に言いな。あたしゃあんたにゃ個性使ってないよ。全く、不思議な子だねえ」
「それは知ってるけど、その子……? あぁ、出久かあ! いずくーー!!」
(女子に!!!! 五条さんに!!! 名前呼びされてしまった――――ッ!!!!?)
青天の霹靂である。
五条玲珠は元来、誰であっても名前呼びから入る距離感のイカれた女なのだが、悲しいかな緑谷はそれを知る由もない。
「あ、ご、ご、五条さん!? おおお、起きたんだ……。えと、えと、体調は大丈夫……ですか?」
先程声の大きさを反省したばかりだというのに、我ながら救えないものだと緑谷は自嘲した。
ついでに言えば、何故敬語を使ってしまったのか。
麗日を相手にした時もそうだったが、やはり自分には社交性というものが絶望的に備わっていないらしい。
…………特に、女子相手には。
きっと不快に思われるだろう――そして爆豪の時のように言葉の限りを尽くしてなじられるのだろう。
……と、目を瞑ったのだが。
その予想は、良い意味で裏切られた。
「うん、れいじゅちゃんもうぐっすり寝て体力全開だよ〜。あんがとねー……っていうかさ。それ、人の体調心配してる場合なの?」
爆豪と喧嘩していた時とは打って変わって、思いやりのある優しい声。
心配そうにこちらを見つめる、青く澄んだ瞳。
つい、本当に同一人物なのかと疑ってしまうほどの……いや、これは流石に失礼だろう。
さて。
彼女の言うそれ、というのは恐らく個性把握テストの時に壊したこの指の事だ。
ああ、そうか、と緑谷は一つの可能性に思い至る。
今も包帯を巻いているので、もしかしたらまだ治っていないと勘違いをされてしまっているのかもしれない――と。
緑谷は、慌ててそれを訂正した。
「あ、う、ううん!! ぼ、ぼ、僕の怪我はリカバリーガールに治癒してもらった……ので、平気というか、その……なんというかぁ……」
どもってしまって、上手く言葉が出てこない。
女子と話すのはどうしても慣れないし、しかもあの五条だ。
怖いし、恐ろしいし……何より。
見た目も成績も――どうしても、別世界の住人のように思えてしまうというか。
オールマイトに個性を授かった以上は同じ立場で競っていかなければならない……と、頭では分かっているものの。
どうしても何処か、雲の上の人物のように感じてしまうのだ。
「ふうん? まぁでも……うん」
ところが五条は、緑谷のそういった態度についてはあまり何とも思っていない様子だった。
何を思ったのかは分からないが、ただ一瞬逡巡した様子を見せて――。
目を細め、頬を紅潮させて優しげに微笑んだ。
「優しいんだね、出久は」
キュン! と、不細工な顔になってしまいそうになるのを緑谷は全力で抑えた。
抑えたが――まぁ、抑え切れるはずもなく。
「ぷっ……何その顔! つかさ出久、タメでいいよ全然」
使いたくて敬語を使っているわけでもないのだが、これを拒否するのはそれこそ失礼の極みだろう。
不細工になってしまった顔を両手を使って全力で戻しながら、返事をした。
「あ、そ、そう……?」
「うん」
……。
……。
短く肯定の頷きを返されて、はてこれは夢か何かか、と頬をつねる。
(痛い……)
そうして緑谷は、これが現実であることを再確認し――酷く安心した。
何故自分に対してこれほど優しくしてくれるのか、という疑問は置いておいて。
「かっちゃんに凄い絡みに行ってたし、て、てっきり怖い人かとぉ……」
「ん? 勝己がどうしたって?」
「い、いやなんでもない!! なんでもないよ!!」
思い過ごしであったとはいえ流石に面と向かって怖い、などと言われてしまったら、五条でも傷つくだろう。
しかも、君は優しい、と言ってくれたばかりなのだ。
そうして信頼を寄せてくれている相手に対してやっていいことではない。
幸い聞こえてなかったから良かったものの、危ないところだった――と、緑谷は己の軽い口を憎み唇を噛んだ。
しかしそれすらも、どうやら間違った選択であったらしい。
「あ……また怪我しちゃうぞ? 癖ならやめときな?」
心配そうに此方を覗き込む五条――。
(いやいやいやいやいやいや距離近い近い近い近い近い!!?)
果たして生涯でここまで女子に近づいたことがあっただろうか――と、邪な気持ちに思考が傾きかける。
いや、そもそも抱き抱えてここまで運んだのは自分なのだから――いやいや、起きているのと寝ているのとでは話が違――。
「扱えないほどに大きな個性……君って不思議だよね」
不思議、というなら五条も負けず劣らずなのだが、そう皮肉めいたことを言うだけの余裕は今の緑谷にはなかった。
オールマイトとの秘密は決して話してはならない。
どのようにこの場を乗り切るか、明確なビジョンが浮かばないまま、ただしどろもどろに。
「い、いや、そのぉ、えっとぉ……」
そして――爆弾が投じられた。
「ま、オールマイトから貰った個性なら仕方ない、か……。OFA……凄い力だよ。体が追いつかないってのも無理ないよね」
……。
……。
(え?)
れずちゃんは悪い女ですね……