自分なりのアリウスモブ救済です。これは公式がまだお出ししてない今だからそこできるネタですね。
皆さんおはようございます、夢月リュウカです。
この間の“先生”の件は色々衝撃的でしたけど、ママとマーヤのおかげで気持ちの整理はつきました。
私よりもルシア先生の方がよっぽど辛いのは明白ですし、うじうじしていられません。
ところで皆様、メタな話になってしまいますが本作13話でのママの言葉を覚えているでしょうか?
『アリウス分校の件といい、むしろ明らかに良い方向に向かってるじゃない』
アリウス分校、これです。
原作では『エデン条約編4章 忘れられた神々のためのキリエ』の舞台となり、同校はアリウススクワッドとミカによる“生徒会長”ベアトリーチェの討伐、トリニティの総攻撃によって『浄化』されました。
ですがそれっきりです。
トリニティは地下都市にも思える*1アリウス自治区をあの後どうしたのか?
何百年も自治区に住んでいる、外部との公な交流*2をせずに存続するほどの人口をどうしたのか?
残念ながらそれらに一切触れることなく、エデン条約編は終わってしまいました。
最終編での断片的な描写を見る限り、ユスティナ聖徒会を源流に持つシスターフッドが主導となって調査をしているとは判明しています。
ママがこの間持ってきた『ブルーアーカイブ オフィシャルアートワークス2』*3に掲載されていたスタッフインタビューには『企画が先行する最終編ではミカを尺内で深堀りするのが難しかったため、予定されていた『アリウス自治区攻防戦』ストーリーを『エデン条約編4章』へと仕立て直した』と記されています。
……つまりミカを描くため話が大幅に増やされたのが幸いして、トリニティがアリウスへ介入するというシナリオが誕生した可能性があります。
もしかしたら『サオリたちにベアトリーチェが倒されました、ハイ終わり』という雑な結末の世界線もあったかもしれませんね。
最終編でサクラコがアリウス自治区で≪色彩≫に関する情報を手に入れたり、
現状、原作で『アリウス分校のその後を深堀りしないのは、当面の間そのつもりがない』事をメタ的に示すのみ留まっています。
有名税とばかりにミカの処遇に反発する方が現実の
『私』が生前読んだ二次創作小説のなかには、オリ主を挟む事でアリウス分校全体を救済する歴史改変を行う作品がいくつか存在しましたし。
ではルシア先生はどうしたのでしょうか?
そう思ってネットとトリニティ方面の警察学校のデータベースを漁ってみました。
……あなたが原作の先生のような放任主義的な性格ではないのは、昔からよく知っています。
間違いなく『原作』からはかけ離れていますけど、ここはまぎれもない現実ですしね。
それにしては……さっき読んでいたこの記事といいアリウスの記事といい、クロノススクールの記事とは思えません。
この『
数週間前。ミレニアムサイエンススクール、スタディーエリア。
その一角にある倉庫の丸ごとひとつが『エンジニア部』の部室だ。
実力はミレニアムの中でも折り紙付きだが、どんな物にでも自爆装置やBluetooth機能を付けたがり、基本的に『普通のもの』を作らない事に定評がある変態技術者の集まり。
そんな彼女たちの元へ珍しい客が訪れた。
「はじめまして。新聞部社会班所属、夢野メグムといいます」
キヴォトス
「私は部長の白石ウタハ。ようこそエンジニア部へ」
メグムは差し伸べた手を握り、握手で挨拶を交わす。
「ウタハさん、お会いできて光栄です」
「先生の紹介で来たお客様だからね、私が出ないと失礼にあたるよ」
クロノスの生徒がミレニアムに取材に来ることはたまにある。
しかし同校はイエロージャーナリズムの権化、捏造曲解なんでもござれの“マスゴミ”としても有名である。
『ブルーアーカイブ』に触れた者なら、風巻マイと川流シノンがレポーターとして登場する『報道部』がいかにヤバい存在かを必ず目の当たりにする。
そもそもミレニアムは
その秘密主義ゆえに外部との連携に難を抱え、基本的に排他的な対応を取る。
本年度の晄輪大祭の主催を務めた際には、会場警備のため連邦生徒会からの命令で出動したヴァルキューレ警察学校を『ここではミレニアムの自治権が発生する』と主張し、非学園自治区内にもかかわらず締め出したほどである。*4*5
ゆえにクロノスとの相性は最悪で、悪質なデマを撒き散らされてはたまらないと門前払いすることも多い。
あの
ところがメグムという生徒が書く記事は、そのシャーレの先生が記事の公平性・信憑性を保証している。
“クロノスらしい”記事を決して書かないがために、同期生の記事がクロノス発行の新聞や週刊誌に載るなか、同校のブログサイトに細々と掲載しているような“日陰者”をだ。
否、記者として正しい仕事をしていたがために先生の目にとまったのだ。
現にシャーレがミレニアムへアポを取り付け紹介状まで渡しているのは、彼女がいかに先生から信用されているかがうかがえる。
そしてそこまでしなければならない程、この取材はセンシティブな内容を取り扱う事も示している。
普段は飲食に使われている壁際のテーブルと椅子、ここが即席の応接室となった。
元は試作の冷凍睡眠装置だった冷蔵庫、その中でキンキンに冷やされた缶コーラがメグムの目の前に置かれた。
「ありがとうございます」
早速封を開けて飲みだす彼女を、ウタハは失礼にならない程度に観察してみる。
髪は栗色のロング、人種は純ヒト。
身長はヒビキ*7と同程度だが、どちらかといえば小動物的な印象を覚えた。
かけているメガネはレンズの形から伊達のようだが、ブルーライトカット処理が剥がれかけている。
靴はトレッキングシューズに近い頑丈なもので、自らの足であちこちを渡り歩いて取材を行っているのが想像できる。
大ぶりのウエストポーチのベルトにヒップホルスターを通しており、ダットサイトが載った小型の自動拳銃が収められていた。
「さて、取材内容は『アリウス分校の隠れ里』に関してだったね?」
「けぷっ、失礼。……はい、その通りです」
……
遡ること数百年前。
創設間もないトリニティ総合学園は政治的対立からアリウス分校を徹底的に弾圧し、地図上から文字通り消し去ってしまった。
だが『アリウス分校はいまだ健在である』という都市伝説は、驚くべきことに真実である事が判明した。
当時存在した分派“ユスティナ聖徒会”はアリウスの弾圧を主導する傍ら、密かに『ある場所』へとアリウス生徒やその関係者を逃していた。
その地で外界との大規模な接触を絶ったアリウス分校は、内紛を繰り返しながら細々と生き長らえていた。
一〇年前、キヴォトス外から突如として現れた怪人“ベアトリーチェ”がアリウス分校を掌握。
『大人』でありながら生徒会長に居座った彼女は、『
そしてトリニティ・ゲヘナ間で結ばれようとしていた『エデン条約』の締結式を、他ならぬ
本件に関してはトリニティの複雑な内部事情とベアトリーチェという
事件の全貌を知るのはシャーレの先生を始め、当事者の中でもごく限られた人数のみ。
あとはリュウカのように
その後、アリウス分校の『自治区』はトリニティの総攻撃により陥落した。
ここまでは二〇二三年までの『ブルーアーカイブ』内で描写されているものだが、ここから
……
「あそこの調査にミレニアムが関与している事は公表されている。けれど、私たちエンジニア部が関与しているとまでは言われてないね?」
ウタハは確認するような問いかけをすると、メグムはそれを肯定しつつ“簡単な推理”を語り始めた。
「トリニティは長い歴史を持ち各種産業も自治区内で完結していて、そして常に自分の利益“だけ”を考えて行動を起こします。自分たちの土地の中での話ですし、普通は『外国』に頼るはずがない」
「ですが本件にはシャーレを介してミレニアムが関わっていま──げふぉ」
手で口を押さえるも人前で汚いゲップを出してしまい、顔を真っ赤にしながら話を続ける。
「シャーレの部員として登録されているミレニアムの生徒のうち、機械工学に長けているのは現状ではエンジニア部の皆さんだけです。関与する外部の人間を最小限にしつつ、かつ情報に疎い出資者も名を知っているほどの人材は……あなた達しかいないでしょう?」
「正解」
ウタハは拍手を数回すると、メグムの前に図面を開いて見せた。
「守秘義務もあるから話せる範囲で説明するけど……メグムさんは『スペースコロニー*8』を知っているかい?」
「ずいぶんと話が飛躍しましたね?」
……
世間が間近に迫る晄輪大祭へ向けて準備を進めている頃、
聴聞会をどうにか切り抜け退学は免れたものの、聖園ミカはティーパーティーを追放された。
百合園セイアは紆余曲折を経て今度こそ復活したが、まだ万全な状態ではない。
こういう事情から生徒会長としての仕事は、引き続きほぼすべてをナギサが請け負う事となった。
俗に『エデン条約事件』と呼ばれる一連の騒動でティーパーティーの権威は失墜し、『外部からの補佐』としてシスターフッドの歌住サクラコはもとより『政治には興味がない』と言っていた救護騎士団の蒼森ミネすら口出ししてくるようになった。*9
新・三頭政治と言えるだろうが、問題はティーパーティー内部だ。
これまでミカを神輿に担いで狼藉を働いてきたパテル分派の抑制、シスターフッドだけでなく三大分派を蹴落とそうとする派閥争いの活発化……。
表に出てくる時は常に優雅な振る舞いを忘れない彼女だが、セイアが公務に復帰するまでは社畜のような日々を送っていたとも言われている。
晄輪大祭開会の挨拶に『公私ともに忙しい*10』と代理を立てたのは、あながち嘘ではなかったのだ。
……代理の人選に関して、明らかに悪意を感じるが。
そんなナギサはある日『アリウス分校の今後に関して』の相談のため先生に一日予定を入れてもらい、シャーレの始業時間に合わせてオフィスを訪れると……過労でバッタリと倒れてしまった。
シャーレの先生ことルシアは当然ながら焦った。
ナギサが数日でも執務が出来ないと知られれば、間違いなくトリニティが大混乱に陥る。
そこで自身の異能や『外』より持ちこんだアレコレを駆使して、本日中にナギサが回復するよう必死に看病するハメになった。
ルシアの“生まれ故郷”で作られた紅茶を飲みながら、ベッドに腰かけるナギサはふぅとため息をついた。
「お恥ずかしながら、こうなる事はセイアさんが予想しておりました」
予知能力を失った代わりに異様に感が冴えるようになったセイアが『先生をトリニティへ呼び出す』のではなく、『双方とも一日予定を空けて、ナギサがシャーレへ向かう』よう進言していたのだ。
無論スケジュールの調整に難儀したが、おかげで最悪の事態を回避することができた。
だいぶ時間がズレはしたが、予定通り『アリウス分校の今後に関する相談』が行われた。
「実は『新生アリウス分校』への出資者の集まりが悪く、予算計画が難航しておりまして……」
“旧”アリウス自治区。それはトリニティ自治区外縁部にある、人里離れた無人地帯の地下に存在していた。
ロボットや純獣人の市民がいないため、人口はトリニティ側の想定よりも少なくはあった。
それでも突然住民が数千人も増えるとなると、まず行政機関が混乱するのは当然の流れである。
第一の問題は『アリウス生徒と住人の処遇』。
まずエデン条約締結式の会場が巡航ミサイル攻撃を受け爆散する様が、現場で中継を行っていたクロノスが放送電波に乗せてしまった。
そして突然現れたアリウス生徒や、アリウススクワッドの指示で動くユスティナ聖徒会の
ヒトとは高い知能を持つ割に、ゼロか一で物事を考えやすい生き物だ。
諸悪の根源であるベアトリーチェはゴルコンダが連れ去ってしまったため、分かりやすい“悪役”を用意できなかったのは痛恨の極みといえる。
加えてアリウス分校そのものも書類上は数百年前に廃校となっていて、今の連邦生徒会に公認されていない『私塾』となっていたのが事態をややこしくした。
ゆえに『アリウス分校を名乗るテロリスト集団』を根絶やしにしろ、トリニティから永久追放しろという過激な意見も多く出た。
だが自治区を追放したところで、“凶悪な犯罪者”を違う学園の土地に追いやるにすぎず、結局はトリニティの責任問題となる。
このままでは愚かな歴史をまた繰り返す事となる。
いま自分たちが先祖が犯した罪を清算しなければ、負の連鎖は永久に途絶える事はない。
少女たちは『アリウス分校を再興し、生徒たちが真っ当に生きられるように再教育する』方向で方針を固めた。
そうと決まれば話は早い。
まず住民の生活水準や教育はキヴォトス全土を見渡してもだいぶ発展が遅れており、ベアトリーチェによる支配下では音楽などの文化が弾圧されていたため、文明はむしろ後退してすらいた。
トリニティの都市へすぐさま移住させれば、先の『テロリスト』問題を含めて確実にトラブルとなるだろう。
幸いなことに旧自治区は最寄りの町から遠く離れた場所にあったので、すぐ近くに『新生アリウス分校』の用地を確保。
校舎や住居など生活に必要なものを挙げていき都市計画をたて、各種産業の誘致活動も行う。
そして街を建設したり店を開くための労働力は、可能な限りアリウスの住人から確保して仕事と金を回してゆく。
自衛にあたり『アリウスに対して敵意を抱く者』からの攻撃に対して、アリウスの風紀委員会との間に立つ仲裁者が必要になった。
しかしリソースの問題で正義実現委員会を常駐させる訳にはいかず、シスターフッドは戦闘員ではないため尚さら不向きである。
そこで連邦生徒会に掛け合って、最寄りにヴァルキューレ警察学校の警察署を設置することになった。
生徒に関してはアリウス生徒から希望者を募り、早い段階で一般常識と警察官として必要な教育を開始している。
……さて、世の中には『絵に描いた餅』『無い袖は振れない』という言葉がある。
ここで今回シャーレに相談が持ちこまれた『出資者不足』問題が浮かび上がるのだ。
「お金お金……予算に悩まされるのはどこも同じだね」
そう言いながら自身も紅茶を一口。ルシアはミルクも砂糖も入れない無糖ストレートを好む。
「シャーレはどうなさっておられるのですか? 今期の連邦生徒会の財政は、あまり良い状況ではないと聞きますが」
「……」
「失礼しました」
ルシアが真顔で黙りこんだのを見て察したナギサは、それ以上の追求をやめた。
いくら生徒の多くが文字通り湯水のように金を使う程の金持ちでも、トリニティ学園そのものの運営費は有限である。
連邦生徒会長失踪と時を同じくして治安が急激に悪化し、正義実現委員会の出動件数も例年とは比べ物にならないほど増えている。
ヒフミとアズサが戦車を強奪し暴れた件*11のように建物が破壊される事もあるし、エデン条約締結式襲撃事件の際に被害を受けた市街地の復興にも少なからず予算を割かなければならない。
そんなご時世で都市ひとつ作るのにトリニティ学園が全額自腹を切るのは、さすがに反対多数で否決された。*12
建物がポンポン破壊される世界なので、建設にかかる時間も費用も地球とは比べ物にならないほど少なくて済む。それでも人が住める環境を一から整えるには相応のお金がかかるのだ。
ゆえにこの計画にお金を出してくれる出資者を募ったのだが、残念ながら進捗はあまり芳しくない。
トリニティでもそこそこ有名な資産家や事業主が名乗りを上げているが、莫大な資金が必要になるので主体となるのはやはり大企業だ。
ここでもアリウスの『テロ組織』としての風評が足を引っ張ってしまう。
トリニティへの経済的侵略のための橋頭堡を築きたいカイザーグループ*13の系列企業が申しこんできたが、意図が丸見えだったので全て断っている。
都市設計は既に完了している。だが人を動かすための金が足りない。
『新しく都市を作るよりも、地下の旧アリウス自治区を再開発したほうが安上がりで済む』という意見も根強い。
確かにそれが現実的な案であるが、アリウスに対する『罰』『差別』と結びつける者が一定以上いるのがマズい。
それに建物を造り直している間、その建物に住んでいた人間はどうするのかという問題もある。
ベアトリーチェが街を攻撃基地に改造したせいで、居住空間のリソースはとっくに限界に達していたのだ。
行き詰まったナギサはいつものように『トリニティ学園あるいはティーパーティーの私利に利用するため』ではなく、一個人としてシャーレへ相談を持ちかけていた。
そもそも先生も本件の当事者であるし、彼女は水面下でアリウススクワッドの指名手配をどうにかしようと動き回っている途中だ。
『アリウスの救済』という点は共通している。
ルシアはモソモソ食べていた焼き菓子を紅茶で流しこみ、口を紙ナプキンで拭いてから口を開いた。
「……ようはアリウスの復興事業にお金持ちが喜んで飛びつくような『
「はい」
「心当たりがある」
あまりの即答に言葉を失うナギサ。
「だけど私ひとりじゃそれを“ダイヤの原石”と説明しても信じて貰えない。だからシャーレの権限でトリニティの外から専門家を呼びたいんだ」
……
「それがウタハさんたちエンジニア部だったと」
「その通り」
ウタハが広げた用紙には、いくつかの階層に分かれた緩いドーム上の構造物の概略図が描かれていた。
「先生の見立てだと、アリウスの旧自治区は自己完結型のバイオスフィア……宇宙都市と同じ技術が応用されているんだ」
「先生はどうしてそう思ったのかお聞きですか?」
「“似たようなものを見学したことがある”。……らしいよ?」
ルシアは学者として見識を深めるべく、様々な『もの』を見て回る旅を繰り返している。
ウタハが彼女から聞いた話の中には、公共事業として建設中の宇宙ステーションや“世界”同士を行き来するための“船”の見学や利用経験も含まれていた。
数か月前、ベアトリーチェの『儀式』の贄にされたアツコを助け出すべく、サオリたちと共にアリウス自治区へと向かったときの話である。
ミカの乱入によって記憶の片隅に追いやられたが、侵入経路として通った大規模な機械室にはどこか見覚えがあるものだったのだ。
「先生の手配で実際に中を見て回ったけど、まさに宝の山と言って過言じゃないね」
ルシアの推測は見事的中していた。
アリウスの地下都市はいくつかの階層に分けられており、人が住んでいるのは最上層部の天井が広く取られた空間だった。
その下の層には複合環境システム、地熱発電併用の動力源、鉱物資源の採掘場などが纏められていた。
高度な空気清浄機は大気汚染が深刻な地域の除染に使えるし、人工太陽灯は屋内での作物栽培に技術革新を起こせる。
地下水脈を利用した水循環器も見逃せない。自然環境との共存を実現しているミレニアムサイエンススクールですら、このレベルの効率と耐用年数を実現できていない。
加えて数百年の間ここで命を繋いできたアリウス自治区の住民という『実験動物』が、これらの安全性と実用性をこれでもかと実証してくれている。
これらの応用範囲は同じような
これらは世界でもっとも優れた科学力と自然環境技術を持つミレニアムでもまだ有していない。
これを自家薬籠中の物とすれば、間違いなくキヴォトス社会でイニシアティブを取る事ができる。
ナギサが連邦捜査部
先行投資として莫大な金が動き、燃料を得たアリウス分校再興計画は急ピッチで進められた。
資材を運ぶための道路が敷かれ、雨後のタケノコのように様々な建築物が建てられた。
居住区の構築が進んだところで住民の転居が始まり、人々は天然の陽射しのもとへと還ることが出来た。
『アリウス特需』に乗り遅れるなと第三次産業系の企業の進出も始まり、作りかけの街は活気であふれるようになった。
打算こそあれど、弱い者をいたわり互いに助け合う心を持つからこそ人間として生きられる。
『全ては虚しい』という歪められた教え、それこそがもっとも無意味なのだ。
何十世代にもわたる閉鎖環境と争いに疲れて切っていた人々は、すっかり笑顔を取り戻し未来へ夢を馳せていた。
シスターフッドがユスティナ聖徒会の遺構の調査に入り、≪色彩≫の情報や聖徒会長が遺した礼装を発見したのは、住民の転居が概ね完了した事で大規模な調査チームを投入できるようになったからだという。
「ウタハさん、質問よろしいでしょうか?」
「なにかな?」
「本件におけるミレニアムは、どれだけ利益を得ているのでしょうか?」
「……それはセミナーに問い合わせるべきだよ? 私たちは調査に参加できればそれだけで“見返り”を得られるからね」
「ですよね。失礼しました」
メモ帳に話の内容をまとめ上げたメグムは、念のためウタハに確認してもらってから取材を終わらせた。
……
クロノスへ戻るための電車に乗ったメグムだったが、ここでふと疑問が脳裏に浮かび上がった。
「……アレ、誰が作ったんだろう?」
真っ先に浮かぶのはキヴォトスの各地で発掘されるオーパーツを作った存在、次にうさん臭いオカルトの範疇を出ない『名もなき神』を崇拝する旧人類の生き残り。
三つ目は『キヴォトスの外から来た存在』だ。
キヴォトス文明は異なる世界へ渡るための技術を持たず、また外部へ交信する術も持たない。
物語における宇宙人の来訪のように、向こうが一方的に出入りしているに過ぎない。
ならば『高度な文明を持つ何者かがジオフロントを作ったいいものの、何らかの事情で放棄し去っていった』と考える事も可能だ。
先生がひと目で看破したようにありふれた技術であるらしい以上、可能性は十分ある。
「じゃあなんのために?」
そう呟いて、この問いは見習い記者でしかない自分には荷が重い事に気付いた。
「……まあいいか」
“新”アリウス自治区への一般人の出入りが可能になったら、真っ先に行ってみよう。
いや、先生になんとか頼みこんで独占取材をするのも悪くない。
子供らしく無邪気に計画を練りながら、メグムはロングシートの背もたれに身を預けた。
本文で触れる必要がなかったので『アリウスの新生徒会』について軽く。
既存の生徒会はベアトリーチェとその手下(≒大人)によって乗っ取られ崩壊しています。
しかも結構な年数が過ぎていますのでノウハウも失われ、しまいには唯一残された正当な血統であるアツコが出奔しています。
こうなるとマトモな教育を受けていないアリウス生徒単独での自治は不能であるため、トリニティ本校から人を送り込んで新三頭政治をベースに新生徒会を立ち上げています
時間がかかるでしょうが教育の健全化と『現代化』が進めば、アリウス生徒主導での統治に切り替えられるでしょう。
血統主義のトリニティですので象徴としてアツコを据えたいでしょうけど、指名手配が取り下げられても彼女は望まないと私も考えております。
それだったらと血筋に関係なく優秀な人間が中心となる、一般的な生徒会への変革を目標とするだろうと想定しています。