酒の子   作:スピリタス3世

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この物語はフィクションです。
未成年の飲酒は法律で固く禁じられています。
またアルコールの強要、暴飲、
宴会での破廉恥な行為についても
それらを推奨する意図はありません。
あくまでギャグ物としてお読み下さい。



第五章 青海女子大学祭編
十九杯目 チケット争奪戦


  side アクア

 

 ルビーが来てからしばらく経ったある日のこと。俺はCMの撮影を終えて、大学に登校すると………

 

「「「「「古手川千紗さん、青女祭一緒に行きませんか⁉︎」」」」」

 

 そこには何百人もの野郎どもが、古手川に土下座するという珍妙な光景が広がっていた。

 

「なんだ、この光景は?」

「なんか青女祭のチケットが1枚で4人行ける仕様でね。」

「それでコイツらが一緒に行きたがってるのか。」

「そういうこと。」

 

 なるほどな。普段女との交流が無いコイツらにとって、青女祭のチケットは砂漠に現れたオアシスのようなものか。そして青女側からすると、コイツらみたいな治安の悪い連中を排除するためのチケット制。両者の思惑が、この惨劇を産んでるというわけか。

 

「とりあえず千紗と交流が無い奴は帰れ‼︎」

「「「「あぁん⁉︎」」」」

「出入り口を固めろ‼︎」

「無関係な奴は入ってくんな‼︎」

 

 そして、北原らが無関係の男どもを追い出す。これで部屋の中は俺、古手川、北原、今村、野島、山本、御手洗、藤原だけになった。ちなみに御手洗と藤原は合コンにこそ参加しなかったものの、その後はずっと野島や山本とつるんでいるから仲良く?なった。もちろん立派なクズだ。

 

「姫、衆愚どもは追い払いました。」

「いや、まだいっぱい残ってると思う。」

「それでもこんなにいるのか?」

「多いな。」

 

 そして、チケットで行けるのは1枚で4人………。普通に考えたら、古手川、吉原、有馬、ルビーの4人になるはず。有馬とルビーが仕事あって来れないなら古手川、吉原、俺、あと1人。しかしここで3人を募集してるってことは、吉原らは既に別でチケットを持っているな。

 

 となると、普通に考えて妥当なメンツは古手川、俺、北原、今村。だがそれだとつまらない。ならば古手川と俺は確定として、あと2人を古手川本人に選ばせるか。

 

「お前ら、ここは古手川に選ばせるのはどうか?」

「なるほど。」

「道理だな。」

「古手川の同行者なわけだからな。」

「私は1人で行きた………」

「OKだそうだ。」

 

 ということで、同行者選抜面接が幕を開けた。

 

「ねえマリン。私帰りたいんだけど。」

「まあまあ。俺も面接官一緒にやるから、ちょっとだけ付き合ってくれよ。」

「星野貴様ァ‼︎」

「何食わぬ顔で面接官になるんじゃねえ‼︎」

 

 もちろん俺は選ぶ側。こうすることで、自動的に同行者の枠に選定される仕組みだ。後はコイツらの醜態を見せてもらおうか。

 

「そっか、マリンは彼女持ちだから青女祭行けないもんね。」

 

 えっ…………?

 

「「「「「ぎゃはははは‼︎」」」」」

「そっかぁ、お前彼女持ちだもんなぁ‼︎」

「女いるのに女子大の学祭とか、彼女が嫉妬するもんなぁ‼︎」

「おい古手川、どういうことだ?」

「最初から行かないつもりなら、皆を公平にジャッジ出来ると思って。」

「そ、そうだな…………」

 

 嘘だろ?こんなことがあっていいのか?許されるのか?せめて道連れを………っ!

 

「ならお前もダメだろ、北原!」

「俺は千紗の同行者にむしろ相応しくないか?彼氏なんだし。」

「くっ、確かに………っ!」

 

 くそっ、北原はダメ………

 

「いや、要らないと思う。」

「千紗ぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

「「「「「ぎゃはははは‼︎」」」」」

 

 じゃなかった。秒で断られてるじゃねえか。しかも本人に。

 

 そして、俺はもう1人知っている。道連れにすべき人間を‼︎

 

「そういや御手洗、お前は彼女と行かないのか?」

「「「「「は?」」」」」

 

 その名は御手洗、非リアに擬態したリア充だ。

 

「いや、俺彼女居ないし。」

「それじゃあこの動画はなんだろうなぁ?」

「お前…………っ‼︎盗撮じゃねえか‼︎」

「海を撮ったらたまたま映ってたんだ。青女から出てきた彼女と歩く、お前がな‼︎」

 

 シラをきっても無駄なこと。なぜなら証拠があるから。自分のミスは逃しても、友の失態は逃さない。これが俺のポリシーだ。

 

「テメェ、まさか俺らに内緒で*1彼女作るとは⁉︎」

「恥ずかしいと思わなかったのか⁉︎」

「よくもまあのうのうと、青女祭のチケット欲しがりやがって!」

「うるせえクズ共‼︎」

「「「「「「君、死にたまえ。」」」」」」

 

 ということで、俺たちはまず御手洗を殺した。そして御手洗をボコボコにした後、改めて同行者選抜会議が幕を開けた。

 

 

 

 まずは、

 

「では俺が行かせてもらう!」

 

 童貞王、山本だ。

 

「やけに自信ありげだな。」

「何か策でもあるのか?」

 

 恋愛経験の無いくせに、やたら自信に満ち溢れている奴の表情。コイツは一体何を考えているんだ………?

 

「俺の熱い想いをぶつけて理解してもらう‼︎」

「直球勝負か。」

「小細工無しは好感度高いかもな。」

 

 なるほどな。経験無いなら無いなりに、捻らずストレートか。それはいいかもしれん。本音で言った方が相手の心に響くからな。

 

「古手川さん。」

「な、何………?」

「俺、青女祭に賭けてるんだ。きっと絶対彼女が出来るって。」

「そ、そうなんだ………」

 

 いや、無理だろ。顔も大してよくない素性の分からん奴に惚れると思うか?

 

「でも、どうしてもダメだと言うなら諦める。」

 

 いや、諦めるんかい!

 

「けれども、その代わりに…………」

 

 その代わりに………?

 

「俺の彼女になって下さい。」

 

 奴の熱意は、あまりにも卑劣だった。

 

「それ脅迫じゃねえか⁉︎」

「古手川が可哀想だろ‼︎」

「渡すな、千紗‼︎」

「チンスピして死ぬかアナルスピリタスして死ぬかの2択と同じだぞ‼︎」

「こっちはなりふり構ってられねえんだよ‼︎」

「私、一応彼氏がいるから………」

「やめろ千紗。この場で俺の処刑が始まりかねん。」

 

 あまりにも酷すぎる選択肢を出すことによって、本来の要求を呑ませようという狙い。確かにそれ自体は賢いが、普通に考えて古手川が可哀想なので無しだ。

 

 

 

 山本を退場させた後、次の出番は………

 

「よし、俺が行こう。」

 

 シスコンでオタクの今村だ。コイツは水樹カヤのライブがある以上、相当必死に来るだろう。さて、どうする?

 

「俺は不器用で口下手だ。多くは語らない。男の背中ってやつで語ってみせるさ。」

 

 なるほどな。確かにコイツは喋りが下手だ。しかし背中で語る?お前ハードボイルドなキャラじゃねえだろ?一体どうやるんだ………?気になったので、奴の背中を見ると…………

 

 

 

 そこには万札が貼り付けられていた。

 

「どこが男の背中だ⁉︎」

「男らしさのかけらもねえ!」

「綺麗事で声優ライブに行けるかぁ⁉︎」

 

 男らしいとは真逆の、金で古手川を買収しようという卑屈さ。一番芸能界に居そうなタイプだ。

 

「お金とかはちょっと………」

「よく言った、千紗。」

「なら命だ‼︎この命を捧げる‼︎」

 

 往生際の悪さも相まって、悪徳なPがやらかして泣き寝入りしようとしているように見える。しかもなまじ池越に似ているだけあって、池越が恥を晒しているみたいだった。

 

 

 その後は野島が甘い言葉で誘惑、もといクソキモいセリフを連発して古手川をドン引かせ失敗。その後復活した御手洗が女心をくすぐる軽いトークを放つも、彼女に頼めと突っぱねられて失敗。しかも御手洗自身は浮気がバレて彼女と喧嘩中とのこと。アホの極みだ。

 

 更には北原が挑んだが………

 

「千紗………お前も同じ家から死人と殺人犯を出したくないだろう?」

「待って、それどういう事?」

「詳しくは言えない。」

「じゃあ伊織はダメ。」

 

 あえなく惨敗。というか何故それで行けると思った?意味が分からな過ぎるだろ。むしろ行った方が死ぬと思うんだがな。

 

 

 

 

 さてと、次はいよいよ俺の番か。

 

「よし、じゃあ行ってくるか。」

「彼女がいるのに?」

「別に女漁りに行くわけじゃない。ただ祭りに参加するだけ。そこにたまたま女が多いだけだ。」

「真性のクソ野郎じゃねえか‼︎」

 

 北原になんて言われようが、俺は参加する。別に彼女が欲しいわけでもない。ただ遊べれば充分だからだ。そのための策は練ってある。古手川千紗、彼女の人間性に着目したこの手でやらせてもらおう。

 

「なぁ古手川………」

「どうしたの、マリン?」

「一緒に連れてってくれたら、今度沖縄にダイビング行こうぜ。」

「えっ、いいの………⁉︎」

 

 古手川千紗はダイビングが好きだ。それも異様なほどに。暇な時間はだいたいダイビングの本しか読んでないし、酔ったらダイビングの話を早口で捲し立ててくる。それはまさにダイビングオタクと言っても過言ではない。その上チョロい。ならばダイビングの話で釣るまで。まあ本当に沖縄行かせるつもりだから大丈夫だろ。

 

「くそっ、あのチャラ男め……っ‼︎」

「このままだとマズいぞ‼︎」

「完全に奴のペースだ‼︎」

 

 そして、後ろで喚く非リア共。お前らとは経験値が違うんだよ。大人しく家でAVでも観とけ。

 

「なぁアクア…………」

「どうした、北原?」

 

 そんな中で、北原だけが策がある様子。奴は一体何を考えているんだ?まさか古手川奈々華を仕向けるというのか?

 

「奈々華なら来ても怒られても問題無い。別に手を出す気も無いし。」

「いや、そうじゃないんだ。」

「ん?」

「お前が千紗と一緒に青女祭行った時………」

 

 そうじゃない?なら何をするというんだ?まさかあかねにでもチクるのか?しかし北原はあかねとは面識が無い。事務所のメアドに連絡しても、知らない人からのメールだから取り合ってもらえない。有馬にmemを使うなら、あの2人を口封じするまで…………

 

 

 

 

「俺はお前のチンスピをツイートする。」

「頼むからやめてくれ‼︎」

 

 それだけはマズい‼︎俺のチンスピが全世界に広まったら、大炎上どころの騒ぎじゃない‼︎クール系毒舌キャラでやってるテレビ番組の仕事が全部無くなるし、俳優の仕事も消滅する‼︎そして、全世界にチンスピの元祖として広まってしまう‼︎

 

「ならば手を引け。」

「くそっ!悔しいけど仕方ない………」

 

 流石に自分の痴態は晒せない。ここは諦めるしか無いな………

 

 

 

 

 最後に残ったのは、

 

「トリは俺だな。」

 

 影が薄いマッチョの藤原だった。コイツはこれといって特徴が無い。そこら中に漂う空気のような存在だし。だから古手川も選ぶ事は無いだろう………

 

「俺は連れて行って貰えたら………何もしません。」

「おお……!」

 

 なん………だとっ⁉︎

 

「入場さえさせてくれたらすぐに別れるし、1人で悪さとかもしない。絶対古手川さんの邪魔もしないから。」

「そういう事なら………」

 

 くそっ、そのアプローチがあったか!古手川は何をしてくれるかを求めていない。むしろ俺たちとの関わりを避けようとしている。ならば必要なのは、何をしないでいてくれるか。何もしないのは、その究極系!

 

 しかも奴は影が薄すぎる‼︎特に問題も起こしてないし、女性との関係も何も無い‼︎だからこそ、突くべき痴態が見当たらなかった‼︎やられた、奴が一番の策士だったのか………。これは勝てない。

 

 だがそう簡単に諦められるか。これくらいで挫折しているようでは、芸能界じゃ生きられない。どうやら北原も同じ様子。ならば協力するまで!

 

「おおっと、足が滑ってエルボーがっ!」ガシッ

「やはりな。お前のやりそうな事は、お見通しだ‼︎」

 

 北原が藤原の背後から襲いかかる。しかしフィジカルの強い藤原は難なくこれに対処。しかし今こそが、奴の隙だ‼︎

 

「落ち着け、藤原。」

「なっ………!」バタン

 

 薬品を染み込ませたハンカチを奴の口に当て、即座に気絶させる技。これが先日栞から教わったハンカチ落としだ。俺は正直パワータイプではない。だから物理的に勝てない相手には、化学的に立ち向かうのだ。

 

「よしっ、これで分かりやすくなったな。」

「要は全員ぶっ殺せばいいって事だろ‼︎」

「最初からこうすりゃ良かったぜ‼︎」

 

 さあ、始めようじゃないか、バトルロワイヤルを。もう戻れない。この道を進むしかない‼︎

 

 そんなことを思っていると、

 

「皆………」

「古手川、どうした?」

「やっぱりこういうのは良くないと思う。」

 

 古手川が何か言いたそうにしていた。

 

「仲の良い友達同士が、こんな事で争うなんて。私ここの皆は友達同士で争うような人じゃないって、信じているから。」

 

 10秒で泣ける天才子役ばりの泣き演技。なるほど、喧嘩を仲裁させにきたか。しかしそれは無駄な事。

 

「よし、じゃあ今から友達やめるか。」

「「「「「おう。」」」」」

 

 友達じゃなくなれば良いだけのことだ。

 

 

 こうして俺たちは喧嘩に明け暮れた挙句、

 

「やっぱり俺の幼馴染がチケットくれるって。」

「でかした、御手洗!」

「えっ、私の時間……無駄だった?」

「すまんな古手川、後でダイビング連れてってやるから。」

「マリンってすぐ自分は違うみたいなオーラ出すよね。」

「………そんなことはない。」

「目を見て話して。」

 

 全員が青女祭に行けるという結末を迎えることとなった。

*1
本作では焼き討ちの話をまだやってないので、そもそも御手洗が彼女持ちなのを皆知らない。

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