未成年の飲酒は法律で固く禁じられています。
またアルコールの強要、暴飲、
宴会での破廉恥な行為についても
それらを推奨する意図はありません。
あくまでギャグ物としてお読み下さい。
十九杯目 チケット争奪戦
side アクア
ルビーが来てからしばらく経ったある日のこと。俺はCMの撮影を終えて、大学に登校すると………
「「「「「古手川千紗さん、青女祭一緒に行きませんか⁉︎」」」」」
そこには何百人もの野郎どもが、古手川に土下座するという珍妙な光景が広がっていた。
「なんだ、この光景は?」
「なんか青女祭のチケットが1枚で4人行ける仕様でね。」
「それでコイツらが一緒に行きたがってるのか。」
「そういうこと。」
なるほどな。普段女との交流が無いコイツらにとって、青女祭のチケットは砂漠に現れたオアシスのようなものか。そして青女側からすると、コイツらみたいな治安の悪い連中を排除するためのチケット制。両者の思惑が、この惨劇を産んでるというわけか。
「とりあえず千紗と交流が無い奴は帰れ‼︎」
「「「「あぁん⁉︎」」」」
「出入り口を固めろ‼︎」
「無関係な奴は入ってくんな‼︎」
そして、北原らが無関係の男どもを追い出す。これで部屋の中は俺、古手川、北原、今村、野島、山本、御手洗、藤原だけになった。ちなみに御手洗と藤原は合コンにこそ参加しなかったものの、その後はずっと野島や山本とつるんでいるから仲良く?なった。もちろん立派なクズだ。
「姫、衆愚どもは追い払いました。」
「いや、まだいっぱい残ってると思う。」
「それでもこんなにいるのか?」
「多いな。」
そして、チケットで行けるのは1枚で4人………。普通に考えたら、古手川、吉原、有馬、ルビーの4人になるはず。有馬とルビーが仕事あって来れないなら古手川、吉原、俺、あと1人。しかしここで3人を募集してるってことは、吉原らは既に別でチケットを持っているな。
となると、普通に考えて妥当なメンツは古手川、俺、北原、今村。だがそれだとつまらない。ならば古手川と俺は確定として、あと2人を古手川本人に選ばせるか。
「お前ら、ここは古手川に選ばせるのはどうか?」
「なるほど。」
「道理だな。」
「古手川の同行者なわけだからな。」
「私は1人で行きた………」
「OKだそうだ。」
ということで、同行者選抜面接が幕を開けた。
「ねえマリン。私帰りたいんだけど。」
「まあまあ。俺も面接官一緒にやるから、ちょっとだけ付き合ってくれよ。」
「星野貴様ァ‼︎」
「何食わぬ顔で面接官になるんじゃねえ‼︎」
もちろん俺は選ぶ側。こうすることで、自動的に同行者の枠に選定される仕組みだ。後はコイツらの醜態を見せてもらおうか。
「そっか、マリンは彼女持ちだから青女祭行けないもんね。」
えっ…………?
「「「「「ぎゃはははは‼︎」」」」」
「そっかぁ、お前彼女持ちだもんなぁ‼︎」
「女いるのに女子大の学祭とか、彼女が嫉妬するもんなぁ‼︎」
「おい古手川、どういうことだ?」
「最初から行かないつもりなら、皆を公平にジャッジ出来ると思って。」
「そ、そうだな…………」
嘘だろ?こんなことがあっていいのか?許されるのか?せめて道連れを………っ!
「ならお前もダメだろ、北原!」
「俺は千紗の同行者にむしろ相応しくないか?彼氏なんだし。」
「くっ、確かに………っ!」
くそっ、北原はダメ………
「いや、要らないと思う。」
「千紗ぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「「「「「ぎゃはははは‼︎」」」」」
じゃなかった。秒で断られてるじゃねえか。しかも本人に。
そして、俺はもう1人知っている。道連れにすべき人間を‼︎
「そういや御手洗、お前は彼女と行かないのか?」
「「「「「は?」」」」」
その名は御手洗、非リアに擬態したリア充だ。
「いや、俺彼女居ないし。」
「それじゃあこの動画はなんだろうなぁ?」
「お前…………っ‼︎盗撮じゃねえか‼︎」
「海を撮ったらたまたま映ってたんだ。青女から出てきた彼女と歩く、お前がな‼︎」
シラをきっても無駄なこと。なぜなら証拠があるから。自分のミスは逃しても、友の失態は逃さない。これが俺のポリシーだ。
「テメェ、まさか俺らに内緒で*1彼女作るとは⁉︎」
「恥ずかしいと思わなかったのか⁉︎」
「よくもまあのうのうと、青女祭のチケット欲しがりやがって!」
「うるせえクズ共‼︎」
「「「「「「君、死にたまえ。」」」」」」
ということで、俺たちはまず御手洗を殺した。そして御手洗をボコボコにした後、改めて同行者選抜会議が幕を開けた。
まずは、
「では俺が行かせてもらう!」
童貞王、山本だ。
「やけに自信ありげだな。」
「何か策でもあるのか?」
恋愛経験の無いくせに、やたら自信に満ち溢れている奴の表情。コイツは一体何を考えているんだ………?
「俺の熱い想いをぶつけて理解してもらう‼︎」
「直球勝負か。」
「小細工無しは好感度高いかもな。」
なるほどな。経験無いなら無いなりに、捻らずストレートか。それはいいかもしれん。本音で言った方が相手の心に響くからな。
「古手川さん。」
「な、何………?」
「俺、青女祭に賭けてるんだ。きっと絶対彼女が出来るって。」
「そ、そうなんだ………」
いや、無理だろ。顔も大してよくない素性の分からん奴に惚れると思うか?
「でも、どうしてもダメだと言うなら諦める。」
いや、諦めるんかい!
「けれども、その代わりに…………」
その代わりに………?
「俺の彼女になって下さい。」
奴の熱意は、あまりにも卑劣だった。
「それ脅迫じゃねえか⁉︎」
「古手川が可哀想だろ‼︎」
「渡すな、千紗‼︎」
「チンスピして死ぬかアナルスピリタスして死ぬかの2択と同じだぞ‼︎」
「こっちはなりふり構ってられねえんだよ‼︎」
「私、一応彼氏がいるから………」
「やめろ千紗。この場で俺の処刑が始まりかねん。」
あまりにも酷すぎる選択肢を出すことによって、本来の要求を呑ませようという狙い。確かにそれ自体は賢いが、普通に考えて古手川が可哀想なので無しだ。
山本を退場させた後、次の出番は………
「よし、俺が行こう。」
シスコンでオタクの今村だ。コイツは水樹カヤのライブがある以上、相当必死に来るだろう。さて、どうする?
「俺は不器用で口下手だ。多くは語らない。男の背中ってやつで語ってみせるさ。」
なるほどな。確かにコイツは喋りが下手だ。しかし背中で語る?お前ハードボイルドなキャラじゃねえだろ?一体どうやるんだ………?気になったので、奴の背中を見ると…………
そこには万札が貼り付けられていた。
「どこが男の背中だ⁉︎」
「男らしさのかけらもねえ!」
「綺麗事で声優ライブに行けるかぁ⁉︎」
男らしいとは真逆の、金で古手川を買収しようという卑屈さ。一番芸能界に居そうなタイプだ。
「お金とかはちょっと………」
「よく言った、千紗。」
「なら命だ‼︎この命を捧げる‼︎」
往生際の悪さも相まって、悪徳なPがやらかして泣き寝入りしようとしているように見える。しかもなまじ池越に似ているだけあって、池越が恥を晒しているみたいだった。
その後は野島が甘い言葉で誘惑、もといクソキモいセリフを連発して古手川をドン引かせ失敗。その後復活した御手洗が女心をくすぐる軽いトークを放つも、彼女に頼めと突っぱねられて失敗。しかも御手洗自身は浮気がバレて彼女と喧嘩中とのこと。アホの極みだ。
更には北原が挑んだが………
「千紗………お前も同じ家から死人と殺人犯を出したくないだろう?」
「待って、それどういう事?」
「詳しくは言えない。」
「じゃあ伊織はダメ。」
あえなく惨敗。というか何故それで行けると思った?意味が分からな過ぎるだろ。むしろ行った方が死ぬと思うんだがな。
さてと、次はいよいよ俺の番か。
「よし、じゃあ行ってくるか。」
「彼女がいるのに?」
「別に女漁りに行くわけじゃない。ただ祭りに参加するだけ。そこにたまたま女が多いだけだ。」
「真性のクソ野郎じゃねえか‼︎」
北原になんて言われようが、俺は参加する。別に彼女が欲しいわけでもない。ただ遊べれば充分だからだ。そのための策は練ってある。古手川千紗、彼女の人間性に着目したこの手でやらせてもらおう。
「なぁ古手川………」
「どうしたの、マリン?」
「一緒に連れてってくれたら、今度沖縄にダイビング行こうぜ。」
「えっ、いいの………⁉︎」
古手川千紗はダイビングが好きだ。それも異様なほどに。暇な時間はだいたいダイビングの本しか読んでないし、酔ったらダイビングの話を早口で捲し立ててくる。それはまさにダイビングオタクと言っても過言ではない。その上チョロい。ならばダイビングの話で釣るまで。まあ本当に沖縄行かせるつもりだから大丈夫だろ。
「くそっ、あのチャラ男め……っ‼︎」
「このままだとマズいぞ‼︎」
「完全に奴のペースだ‼︎」
そして、後ろで喚く非リア共。お前らとは経験値が違うんだよ。大人しく家でAVでも観とけ。
「なぁアクア…………」
「どうした、北原?」
そんな中で、北原だけが策がある様子。奴は一体何を考えているんだ?まさか古手川奈々華を仕向けるというのか?
「奈々華なら来ても怒られても問題無い。別に手を出す気も無いし。」
「いや、そうじゃないんだ。」
「ん?」
「お前が千紗と一緒に青女祭行った時………」
そうじゃない?なら何をするというんだ?まさかあかねにでもチクるのか?しかし北原はあかねとは面識が無い。事務所のメアドに連絡しても、知らない人からのメールだから取り合ってもらえない。有馬にmemを使うなら、あの2人を口封じするまで…………
「俺はお前のチンスピをツイートする。」
「頼むからやめてくれ‼︎」
それだけはマズい‼︎俺のチンスピが全世界に広まったら、大炎上どころの騒ぎじゃない‼︎クール系毒舌キャラでやってるテレビ番組の仕事が全部無くなるし、俳優の仕事も消滅する‼︎そして、全世界にチンスピの元祖として広まってしまう‼︎
「ならば手を引け。」
「くそっ!悔しいけど仕方ない………」
流石に自分の痴態は晒せない。ここは諦めるしか無いな………
最後に残ったのは、
「トリは俺だな。」
影が薄いマッチョの藤原だった。コイツはこれといって特徴が無い。そこら中に漂う空気のような存在だし。だから古手川も選ぶ事は無いだろう………
「俺は連れて行って貰えたら………何もしません。」
「おお……!」
なん………だとっ⁉︎
「入場さえさせてくれたらすぐに別れるし、1人で悪さとかもしない。絶対古手川さんの邪魔もしないから。」
「そういう事なら………」
くそっ、そのアプローチがあったか!古手川は何をしてくれるかを求めていない。むしろ俺たちとの関わりを避けようとしている。ならば必要なのは、何をしないでいてくれるか。何もしないのは、その究極系!
しかも奴は影が薄すぎる‼︎特に問題も起こしてないし、女性との関係も何も無い‼︎だからこそ、突くべき痴態が見当たらなかった‼︎やられた、奴が一番の策士だったのか………。これは勝てない。
だがそう簡単に諦められるか。これくらいで挫折しているようでは、芸能界じゃ生きられない。どうやら北原も同じ様子。ならば協力するまで!
「おおっと、足が滑ってエルボーがっ!」ガシッ
「やはりな。お前のやりそうな事は、お見通しだ‼︎」
北原が藤原の背後から襲いかかる。しかしフィジカルの強い藤原は難なくこれに対処。しかし今こそが、奴の隙だ‼︎
「落ち着け、藤原。」
「なっ………!」バタン
薬品を染み込ませたハンカチを奴の口に当て、即座に気絶させる技。これが先日栞から教わったハンカチ落としだ。俺は正直パワータイプではない。だから物理的に勝てない相手には、化学的に立ち向かうのだ。
「よしっ、これで分かりやすくなったな。」
「要は全員ぶっ殺せばいいって事だろ‼︎」
「最初からこうすりゃ良かったぜ‼︎」
さあ、始めようじゃないか、バトルロワイヤルを。もう戻れない。この道を進むしかない‼︎
そんなことを思っていると、
「皆………」
「古手川、どうした?」
「やっぱりこういうのは良くないと思う。」
古手川が何か言いたそうにしていた。
「仲の良い友達同士が、こんな事で争うなんて。私ここの皆は友達同士で争うような人じゃないって、信じているから。」
10秒で泣ける天才子役ばりの泣き演技。なるほど、喧嘩を仲裁させにきたか。しかしそれは無駄な事。
「よし、じゃあ今から友達やめるか。」
「「「「「おう。」」」」」
友達じゃなくなれば良いだけのことだ。
こうして俺たちは喧嘩に明け暮れた挙句、
「やっぱり俺の幼馴染がチケットくれるって。」
「でかした、御手洗!」
「えっ、私の時間……無駄だった?」
「すまんな古手川、後でダイビング連れてってやるから。」
「マリンってすぐ自分は違うみたいなオーラ出すよね。」
「………そんなことはない。」
「目を見て話して。」
全員が青女祭に行けるという結末を迎えることとなった。