酒の子   作:スピリタス3世

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この物語はフィクションです。
未成年の飲酒は法律で固く禁じられています。
またアルコールの強要、暴飲、
宴会での破廉恥な行為についても
それらを推奨する意図はありません。
あくまでギャグ物としてお読み下さい。


三十三杯目 脱獄

  side アクア

 

 俺はあかねと地獄の遊園地に来る羽目になってしまった。

 

「着いたな………」

「うん、着いたね!」

 

 圧倒的絶望に打ちひしがれながら目の前の地獄を眺める俺とは対照的に、夢と希望を胸に抱きながら目の前の天国を眺めるあかね。よほど来れたのが嬉しいだろう。もう満足したのかな?

 

「よし、じゃあ帰るか。」

「ダメに決まってるでしょ。」グギギギ

「ちょっと待て、関節がイカれるから普通に入ろう‼︎」

「そうだね、アクアくん!」

 

 ということで帰ろうとしたが、いつのプロファイリングで覚えたか分からない関節技をキメられながら中に入る羽目になった。

 

 

 

 

 中に入ると、そこでは

 

「いらっしゃいませ〜!チケットはお持ちでしょうか?」ケバ〜ン⭐︎

 

 化け物が待っていた。どこかで見たことのあるケバメイクと、どこかで聞いたことのある声の女の子だ。間違いない。吉原だ。

 

「おい吉原、何してるんだ?」

「吉原って誰カナ〜?」

「しらばっくれても無駄だ。電話するぞ。」

「それで〜、早くチケットを見せてくださ〜い!」

 

 それにしても、予想以上にまずいな。吉原がいる上に北原がこのチケットを渡してきたとなれば、恐らく他の連中もいるだろう。知り合いにスタッフをやらせた方がより効率良く結婚できるという、如月グランドパーク側の策略に違いない。しかもこれがHPに載せられようもんなら、あかねとの交際を公表するのと同じ。

 

「これです!」

「おお!これは特別企画のペアチケット‼︎」

 

 しかもあかねも吉原だって気づいてるのに、敢えて気づいてないフリしている。コイツ、全力で楽しむつもりだな。だからなんとしても、ここから抜け出さないと………

 

『皆よく聞いて!ターゲットが遂に到着したわ!確実に仕留めるよ‼︎』

 

 いや、待て⁉︎なんだその不穏当な会話は⁉︎明らかに俺たちに何かするつもりじゃねえか‼︎

 

「おい吉原、俺たちに何をするつもりだ⁉︎」

「いえ、こちらの話です!」

「さっきターゲットって言ってただろ‼︎」

「そんなことより、特別仕様の記念撮影をしませんか?」

「話を逸らすな‼︎」

 

 くそっ、こうなったら強引に逃げるしかない‼︎

 

「はい、お願いします!」

「では撮りますね〜♪」

 

 あかねが吉原に目がいってる隙に………‥逃げるっ‼︎

 

「………グハァ!」

 

 なんだっ⁉︎またもや下腹部に衝撃……っ⁉︎くそっ、これは………っ⁉︎

 

「私、タックル習得したって言ってたよね?」パシャ

 

 こうして俺はあかねの霊長類最強タックルを喰らってるところを、写真に撮られてしまった。

 

「はい、いい写真が出来上がりました♪」

「どこが⁉︎」

「この写真は記念として、パークの写真館に飾られます♪」

「こんなもの飾って集客出来ると思ってんのか⁉︎」

「アクアくん、もしかして照れてる?」

「この写真のどこに照れる要素があるんだ、あかね?」

 

 しかもご丁寧に加工までされて。タックルしてる様子を撮って、私たち結婚します、とか正気の沙汰じゃないだろ。DVルートまっしぐらじゃねえか。何もかもが正気とは思えない。

 

 

 

 

 そんなことを思ってると、

 

「ねぇ〜!見て見て優お兄ちゃん!私たちも写真撮ってもらおうよ!」

「え〜、俺はちょっと………」

 

 まさかの御手洗とその彼女が現れた。恐らくデートに来たのだろう。見たところコイツらは例のプレミアムチケットを持ってない様子。だから写真は撮れないだろうな。

 

「えっと………」

『もしもし、ケバさん。その2人も特別に撮ってやってくれ。』

『承知しました‼︎』

 

 おい。今無線から明らかに北原の声がしたんだが。アイツ御手洗の不幸を予想して、敢えて許可したな。このクソ野郎が‼︎

 

「おい北原‼︎俺をどうするつもりだ⁉︎というか星野もなんでここにいる⁉︎」

「アイツにハメられたんだよ。御手洗、頑張って写真撮れ。」

「嫌だ!俺は逃げ………」

「逃がさないよ♪」グギギギ

「あがぁぁぁぁぁぁ‼︎」パシャリ

 

 こうして、御手洗は彼女に顔面鷲掴みにされてるところを写真に撮られたのだった。

 

「いい写真が出来ましたね♪」

「「どこが⁉︎」」

 

 しかし御手洗までいるとは………。これは逆に都合がいいな。御手洗も今までの言動からすると、俺と同じようにゴローしたいはず。いいや、それも圧倒的に俺以上に。だったら結婚を無理矢理させられるこの遊園地は、奴にとっても墓場でしかないだろう。だとすると………ここは協力するしかないな。ちなみに例の呪いのイヤリングは、近すぎてハウリングするとのことなので外しているため、俺たちでコソコソ話してもあかねには聞こえないという仕組み。

 

「御手洗、こっち来い。」

「どうした星野?」

「………俺と協力しないか………」

「………なんでだよ?………」

「………ここはやってきたカップルをあの手この手で結婚させる、いわば俺たちにとっての刑務所みたいな場所だ……」

「………なんだと!?それは逃げるしかないな!………」

「………話が早くて助かる………」

 

 よし、これで御手洗を味方につけることが出来た。後はここから脱獄するだけだ‼︎

 

 

 

 俺とあかね、それから御手洗とその彼女はしばらく一緒に歩いていた。

 

「く、黒川あかねです!よろしくお願いします!」

「えっ、あの黒川あかねさんですか⁉︎こんな有名人と会えるなんて……っ!」

「いえ、私はそれほどでも……っ!」

 

 どうやら女同士では仲良くなった様子。さてと、ここで作戦と行きますか。

 

「ちょっとトイレ行ってくる。」

「りえ、ここで待っててくれないか?」

 

 まずはトイレ行ってくる作戦。その名の通り、トイレに行ってくるフリをして、そのまま遊園地から出ていく作戦だ。帰ってくるとは言ってないのがポイント。もちろんトイレにも寄るのだから、嘘は言ってない………

 

「優お兄ちゃん、男2人でトイレって……‼︎」

「アクアくん、まさかそういうことするつもり……っ⁉︎」

「「違えよ‼︎」」

 

 なんかあらぬ誤解を受けたんだが⁉︎なんで俺が御手洗とそんなことするんだよ⁉︎嫌すぎるだろうが⁉︎

 

「ただうんこするだけだ。」

「安心してくれ、2人とも!」

 

 とりあえず、誤解を解いて………っと。さてと、トイレに行くフリをして………

 

「「じゃあトイレの入り口で待ってるね!」」

 

 行くフリが出来なくなった…………。この女ども賢すぎるだろ………

 

「「おう………」」

「優お兄ちゃんの考えてることなんて、大体わかるんだから!」

「アクアくん。変なことしないでね?」

「「はい………」」

 

 こうして、俺たちはただただ連れションをするハメになった。

 

 

 

 

 その後便所の中で、部屋の中に小便の音をこだまさせながら、俺たちは作戦会議をしていた。

 

「んで、どうするよ御手洗?」ジョロジョロ

「あの女2人を欺く方法なぁ〜。」ジョロジョロ

「被り物とか出来たらいいのにな。」ジョロジョロ

「残念ながら持ってねえよ。」ジョロジョロ

 

 圧倒的強者達の前に早くも万策尽きたという無念感が、ただ無常に流れ出る小便の香りとともに部屋の中を漂っていた。今後全ての行動にあの2人がついて来るんじゃ、控えめに言って勝ち目がない。少なくとも9vs2くらいの数の暴力を成さないと、あの2人には………待てよ?

 

「スタッフを呼べばいいんだ。」ジョロジョロ

「スタッフ?そいつらも敵じゃないのか?」ジョロジョロ

「流石に北原たち以外にも沢山いるだろ。そいつらを効率良く呼べばいいのさ。」ジョロジョロ

「呼んでどうするんだ?」ジョロジョロ

「それはだな………」ジョロジョロ

 

 いい作戦があるじゃねえか‼︎

 

 

 

 こうして俺たちは女子組と合流した後………

 

「アクアくん、逃げたら許さないからね。」

「安心しろ、あかね。俺たちは逃げはしないさ。」

「優お兄ちゃん、分かってるね?」

「分かってるよ、りえ!」

 

 ちゃんと逃げないと宣言した。そう、俺たちはこの2人からは逃げない。しかし、脱獄はする。どうやるのかと言うと…………

 

「「誰もが、服奪われてく‼︎君は、完璧で究極のアルコール‼︎」」

 

 野球拳からの出禁ルートだ。公衆の面前で野球拳すれば、自然とスタッフがやってきて出禁を言い渡される。これで晴れてあかねから逃げることなく、脱獄することが出来るのだ。さあやってこい、スタッフたちよ………っ‼︎

 

「「お客様、俺たちも混ぜてくれないか?」」

「「北原・今村(テメェら)は要らねえよ‼︎」」

 

 やってきたのは同類だけだった。こうして脱獄は失敗したのだった。

 

「ついでになんですが、お化け屋敷は如何ですか……?」

 

 そしてついでと言わんばかりに、バカどもからアトラクションを勧められたのだった。

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