酒の子   作:スピリタス3世

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この物語はフィクションです。
未成年の飲酒は法律で固く禁じられています。
またアルコールの強要、暴飲、
宴会での破廉恥な行為についても
それらを推奨する意図はありません。
あくまでギャグ物としてお読み下さい。


三十九杯目 Third Round 脱獄

  side アクア

 

 その日は暑かった。昨日過ぎ去った台風の影響もあったのだろう。ウジのように汗がわいた。その中で二日酔いの中受ける講義。聞く、書く、その繰り返し。舌にはまだ気味の悪さが残っている。皆は知らない水の味。吐瀉物が大量に出てくるような。

 

 そして、事件は四限目に起きた。材料力学。例のクソ准教授が扉を開け、フィギュアスケートのように宙返りをしながら着地を決めようとしたら失敗。脚を捻った反動で勢いよく飛んでいき、そのままエアコンへと衝突した。もちろんエアコンは大破。そのため、俺たちは冷房の無い環境で授業を受けるハメになった。

 

「然るに、曲げモーメントの算出を………」

「「「「「やってられるかぁぁぁぁぁ‼︎」」」」」

 

 もちろん、しばらくしたら全員が我慢の限界に達し、准教授に不満をぶつけることになった。全て奴のせい。仕方あるまい。

 

「神聖な私の講義を妨害するな‼︎」

「うるせえ、万年准教授‼︎」

「このクソ暑い中エアコン壊しやがって‼︎」

「責任とって休講にしろ‼︎」

「ついでに単位もよこせ‼︎」

 

 ちなみに、助手であるカミキヒカルは今日はいない。事務所の仕事を冷房の効いた部屋でしてるのだろう。頼むから死んでくれ。

 

 そんなことを思ってると、

 

「休講?私は教授………教育者だぞ?」

「准教授だろ。」

「どさくさに紛れて出世を偽るな。」

「そんな私が私的な理由で休講なぞ出来るわけなかろう。」

 

 准教授が急にまともなことを言い始めた。突然常識人ぶってどうしたんだ?確かに一回休講することは、授業のカリキュラムを考えると厳しい。別の日に日程調整して代わりにやるのも、それはそれで面倒だろうし………

 

「私の評価に関わるからな。」

「「「「結局自分が可愛いだけじゃねえか‼︎」」」」

 

 やはりまともじゃなかった。ただのクズじゃねえか。

 

「私の評価のためにも、講義は敢行する‼︎」

「なんだと、このクソ野郎‼︎」

「そして今日の出欠は、講義の最後に取る‼︎」

「はぁぁぁぁ⁉︎」

「んなことしたら、途中退席出来ねえじゃねえか‼︎」

「黙れ黙れ黙れ‼︎私がサボれないのに、お前たちをサボらせてたまるかぁぁぁ‼︎」

「「「「このクソ外道がぁぁぁぁ‼︎」」」」

 

 しかも、講義にフル出席するハメに。この講義は必修だから、切ることも出来ない。つまり、絶対に出席しなければならないということ。しかも、このクソ暑い中。なんて最悪なのだろう。なんとかこの監獄を抜け出す方法は………?

 

「仕方ない。代返をするしかないか。」

 

 そんなことを思ってると、北原がいい案を言ってくれた。代返、誰かが代わりに出欠表に書いてくれるシステムだ。俺も医大生の頃よく頼んだり頼まれたりしてた。普通はそういうふうに持ちつ持たれつで使うものだが、コイツらは訳が違う。

 

「誰がそんなもん引き受けんだよ。」

「俺はやらんぞ。」

「俺も俺も。」

 

 絶対に別日の代返などしてくれない連中だ。友のために残るなど死んでも御免なのだろう。ならばやる事は一つ………

 

「ならこうしよう。最後まで残った奴がやる‼︎」

「「「「「なにっ⁉︎」」」」」

 

 一目散に逃げる事だ。こちとら、伊達にあかねに鍛えられていない。コイツらから逃げることなど、あかねから逃げることに比べれば赤子の如し‼︎さぁ、冷たい部屋でビールを飲みながら、B小町の動画でも観ようじゃねえか………っ‼︎

 

「………」ガシッ

 

 なにっ、もう追いついただと………っ⁉︎誰だ、俺の肩を掴む奴は………っ⁉︎

 

「代返争奪エスケープか。俺も混ぜてくれ。」

 

 影が薄くて名前が思い出せない。確か………藤原だったか。居たな、そんな奴。こうして俺は、コイツの手によって脱獄を阻止されたのだった。

 

 

 

 

 その後は、全員が様子を伺いながら脱獄をする戦いが幕を開けた。

 

「であるからして………」

 

 まずは准教授が黒板の方を向いた瞬間に…………

 

「「「「「…………」」」」」ザッ

「……しまった………っ!」

 

 一斉に立ち上がって逃げる。最も窓側に座ってた北原が出遅れた様子。よしよし、これで代返はアイツの役割に…………

 

「オラァ‼︎」バシン‼︎

「「「「「ぐふぁ…………っ‼︎」」」」」

 

 アイツめ、飛び道具を使ってきたかっ‼︎北原は自分のリュックを講義室の扉に投げつけ、ドアを閉めさせることに成功。勢いで出ようとした俺たちは、閉まったドアに勢いよくぶつかるハメになった。その衝撃が頭に響き渡り、痛みと共に、

 

「そこ、どうかしたかね?」

「いえ、なんでもありません。」

「風でドアが閉まったみたいで。」

 

 准教授に気づかれるハメになった。こうして最初の脱獄は失敗に終わった。

 

 

 

 さてと、次はどうする………?ドアから迂闊に逃げるのは無理。だとすると………

 

「教授!」

「なんだね?」

 

 ん?北原が何か策がある様子。どうするつもりだ………?

 

「暑いので、窓を開けてもいいですか!」

「良かろう。」

 

 なんだと………っ⁉︎アイツめ、窓から脱出する気か‼︎しかも一番窓から近いから、有利になりやがった……っ‼︎そしてこの席順で、一番窓から遠いのは………山本か。

 

「教授‼︎」

「なんだ?」

 

 当然コイツも動くだろう。だがどうする?この暑さで、窓を閉めたいは通用しないぞ。どうやったら自然に脱走対策が出来るんだ…………?

 

「窓枠に剣山を置いてもいいですか?」

 

 不自然の極み………っ‼︎

 

「まあ構わんが。」

 

 構わないのかよっ‼︎どう考えてもおかしいだろ‼︎

 

「理由を聞け、理由を‼︎」

「窓枠が殺風景な気がしたからです。」

「そうか。」

「それでいいのかよ‼︎」

「いいのかも何も、だ。お前たちの脱走を防ぐのに有用ではないか‼︎」

 

 やっぱり気づかれてたか………。でないと、剣山の設置なんて許可するはずないもんな…………

 

 

 

 

 

 しばらく、俺たちは策を考えていた。だが、何も思いつかなかった。もはや諦めるしかないのか………

 

「ん?藤原のヤツが居ない⁉︎」

「「「「「なんだとっ⁉︎」」」」」

 

 は?嘘だろ⁉︎アイツ、いつの間に脱獄したんだ⁉︎全然気づかなかったんだが⁉︎

 

「あの野郎、許せねえ‼︎」

「自分の影が薄いのをいいことに………っ‼︎」

「どうする、北原⁉︎」

「どうするも何も…………教授‼︎」

「今度はなんだ?」

 

 影が薄すぎて、こんな状況でも全く気づかれない。心なしか顔も思い出せない。こんなスパイの天才みたいな奴に、どうやって対抗すればいいんだ?北原、お前はどんな対抗策を…………?

 

「藤原が脱走したので、捕まえてきてもいいですか⁉︎」

「もちろんだ‼︎」

 

 思ったよりストレートだった。躊躇ないチクり。これでこそ北原だ。そしてこの瞬間、俺はある事を思いついた。

 

「教授!」

「どうした、女装家?」

「貴方が頑張っているのに、部下である助手が居ないのはおかしいと思いませんか?」

「………まさにその通りだ‼︎今すぐ連れて来い‼︎」

「分かりました。」

 

 カミキヒカルの投獄だ。もちろん奴の居場所なんて分かりゃしない。だが、俺は奴を誘き寄せる方法を知っている。それはもちろん………

 

 

 

 

 

「また男を弄んでいるのか、星野マリン。リアルタイムの投稿とか、分かってないね。」

 

 SNSでのマリンとしての投稿だ。有馬が昔言ってた。リアルタイムの投稿はやめろって。こういう投稿から悪質なファンに追いかけられて、ストーカー被害に遭うこともある。その逆を利用すれば、悪質なファンが勝手に釣れる仕組みだ‼︎

 

「来ると思ったぞ。お前ら、確保しろ。」

「「「「「はっ‼︎」」」」」

「なにっ⁉︎」

 

 ということで、俺はカミキを確保し、灼熱の講義室へと戻ったのだった。ありがとな、有馬。後でどっか一緒に行ってやる。

 

 

 

 ちなみにその後は、北原らが持ってきたビールを准教授に差し出し、どんちゃん騒ぎに。私的な理由で休講じゃなきゃいいという方法だ。そして俺はカミキをここで酔い潰し、准教授の評価もダダ下がりにしておいた。やったぜ。ちなみにその後の記憶が無いのは、もはやいつものことだった。

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