ネタを思いついた僕が悪いです。
球磨川くんは悪くありません。
第1箱「たった一人の同族」
未来は退屈だ。
現実は適当だ。
はい。僕だ。
えっ?誰だお前、って?いやだなあ、僕だよ僕。朴念仁で有名な僕だよ。
えーっ、まだ分からない?まったく、しょうがないなあ。それじゃあ一つだけ、大ヒントをあげよう。いいかい、一度しか言わないからその小さいお耳の穴をかっ開いてよーくお聞き。
──僕は悪くない。
どう? これで分かるんじゃない? ……うんうん、やっぱりそうだよね。僕といえば今のセリフだもんね。
そう! 僕の名前は
いや、やっぱ無しで。
「はぁ、頭の中で一人でこんな事してても虚しいだけだよな……」
ごめん、嘘ついた。そもそも『僕』なんて一人称でもなければ、まして球磨川禊でもない。あまりにも意味の無い大嘘だ。もしかすると、嘘をつくというジャンルにおいて、かの球磨川禊に比肩せしめるかもしれない。
したところで何なんだよって話ではあるが。だってそうだろう? 人間の最底辺と肩を比べるって事は、自分も最底辺ってことじゃんか。最低最悪のどんぐりの背比べだ。肩を比べるっつってんのに背を比べるのもどうかと思うが。
肩を比べるといえば──話の転換としては些か無理があるが──さっきの演説……新生徒会長である、完璧かつ究極な超人の
改めて明確に思い知らされた。
彼女とは生きるステージが違う。
「はあ……虚しい……」
「おうどうしたよ
「んや、やっぱめだかくんは、私みたいな一市民の小市民とは格……というか、核が違うのかなって思って。いやまあ、格も違うんだろうけれど」
「まあ、言葉を選ばず言うなら概ねその通りだろうよ。あいつは昔っからそうさ! 何てったって、
おう、中々言うじゃん善吉くん。その歯に衣着せぬ言い方は中々に私好みのものだけれど、しかし善吉くん。あまり幼馴染を悪く言うもんじゃあないぜ……なんて。今はまだ影も形もない奴の真似をしてみたり。
一応紹介しておこうか。
一見すると不良のように見える、極めて普通な人間である彼の名前は
そして私の名前は
やっぱ現実は適当だよ。もっと夢見せてくれ。
「はあ……箱庭学園に来れば冒険的で冒涜的で暴力的な日々を送れると思ったのに……平和そのものじゃん、この学園……虚しい」
「普通そこは喜ぶべきところだろうが……」
「でも確かにもーちょっと刺激が欲しいかも? 食堂大爆発とか! あひゃひゃひゃ!」
たった今突然現れて、ぽきゅぽきゅと音を鳴らしながら楽しげに笑う彼女の名前は
「ちょーっと私が求めてる刺激とは違うかなー。ほら、私ってば週刊少年ジャンプの愛読者じゃん? だからこう、さ。血湧き肉躍るバトルをしてみたいわけよ」
「そんなに戦いたいなら剣道部にでも入ってこいよ……」
「私が剣道やったら
「いや流石に冗談だろ……え、冗談だよな?」
「嘘嘘、ほんのジョークだよ……ね、半袖くん」
「ん? あーそーだね。そもそもさ、私とおんなじくらいの身長しかない杵築が剣道やって勝てるとは思えないし、それに、
半袖くんは心底楽しそうに「あひゃひゃ!」と笑ってはいるが……私としては面白くない。私にとって剣道は、言わば昔取った杵柄だ。昔取ったと言ってはいるが、暇な時には素振りをしている。なんだかんだ、体の動かし方とかの訓練にはなるしね。
と、まあそんな風に女3人姦し……じゃない。男2人と女1人で嬲……でもなく。女2人と男1人で
ああ、そうそう。さっきから人の名前の後に「くん」を付けているが、まあ、なんだ。所謂キャラ付けって奴だ。普通にしてると薄味になっちゃうし、もしかしたら原作に絡めなくなるかもしれないからね。
とりあえず、原作の流れに持っていくか。
「そういえばさ、善吉くん。めだかくんが生徒会長になったって事は、当然君も生徒会に入るんだよね?」
「カッ! なわけねーだろ! これ以上あいつに振り回されてたまるかっての」
「確かにしつこく誘われちゃーいるが」と言いながら、善吉くんは勢いよく立ち上がり、そして大声で宣言したのだ。
「俺は絶対! 生徒会には入らない!!」
善吉くんはビシッと人差し指を立て、そう宣言する。
後ろにいためだかくんも、同じポーズを取った。
「あっ、やっほー、めだかくん」
「うむ、今日もいつものように気怠げだな雪。ところで善吉……そうつれないことを言うな。さあ、生徒会室へ行こうか」
「なっ!? ちょっ、おいっ! 鷲掴みはやめろ鷲掴みは……話聞けって!」
「ねえめだかくん。私も着いてっていーい?」
「ああ、構わん。生徒会は来る者拒まずだからな、いつでもどこでも、私の許可など取らずとも同行するが良い」
よっし原作合流……ついでに破壊。
それじゃ下見がてら、生徒会室にお邪魔させてもらうとしますか。『凛っ!!』見たいしね。
「あれ? 人吉と杵築どこ行った?」
「やぁ日向クン。人吉はこわーい生徒会長さんに連れていかれちゃってね、杵築はのこのこそれについて行っちゃったんだよん♪」
半袖は机の上に寝転がりながら、極めて怠そうに、そう口にする。
「……そーいや、なんか選挙活動も手伝ってたみたいだけど、あの2人と例の新会長ってどういう関係なんだ?」
「んー、いわゆるひとつの幼馴染って奴と……うーん、そうだな……」
「……で、なんで杵築まで着いてきてんだ?」
「だってさ、考えてもみなよ善吉くん。私って別に半袖くんとサシで仲良いってわけじゃ無いんだぜ? 君が間に入ってくれてるから辛うじて話題が保ってるんだよ」
よくあるだろ、こういうの。「あんまり話したことないけどお互い共通の友人がいるからギリ顔見知り」みたいな。
善吉くんは「なるほどな」みたいな表情を浮かべた後、めだかくんに向き直って、喧嘩を売っているのではないかと勘違いしてしまうほどに、彼女の顔面を睨みつけていた、が……当の本人はどこ吹く風だった。
「ったく……普通に連れてくるって事ができねーのかよ、生徒会長さん」
「ふん、私の誘いをすげなくし続ける貴様が悪い……それによそよそしい呼び方をするものではないぞ。昔のようにめだかちゃんと呼ぶがよい!」
めだかくんが言い終わると同時に、凛っ!! とした風が吹いた。字面の上では暑苦しいが、実際感じてみると、心地よい涼風といった感じだった。折角なのでここいらで拍手でもしておくか。ぱちぱちぱち。
「見ろ善吉! 雪は私の熱烈な誘いを歓迎しているぞ! 貴様はどうなのだ善吉、私の熱意に応える気はないか?」
「これっぽっちもねえし欠片の一つだってねえよ! 仕事がキツいのは分かるけどな! だからって俺を巻き込むなよ! お前って奴は昔から……」
善吉くん、ストップストップ。
「ちょい善吉くん、そんなに青筋立てると脳漿が大爆発して見るも愉快な現代アートになっちゃうよ」
「あ? ああ、ごめん……じゃなくて! 杵築からも何とか言ってやってくれよ! 一言、たったの一言だけ『善吉くんを生徒会に巻き込まないで』って言ってくれるだけで良いんだ!」
「ちょっとうるさいな。めだかくんの至高の肉体を舐め回すように見てるんだから黙っててよ」
「んなっ!? あっ当たり前みてェに人の後ろで着替えんじゃねえ!」
あー騒がし。でもここが善吉くんの良いところだよな。実際彼は貴重なツッコミ役だし、幸いなことに体力切れの心配もない。こちらも安心してボケ倒せる。
「いやーそれにしても……いつ見ても惚れ惚れするボディだねめだかくん。女の私でこうなるんだから、善吉くんとかそれこそイチコロじゃないの?」
「いや、私と善吉は小六まで一緒に風呂に入っていたからな。この程度で恥じらいを感じるほど
「破茶滅茶に恥じらってるように見えるのだけれど」
「気のせいだ」
気のせいかあ。ならしょうがない。顔を真っ赤にしてあたふたと慌てふためく善吉くんの姿は忘れておいてやろう。
「ところで善吉よ。別に私は仕事を手伝ってもらう為に貴様を引き込もうとしている訳ではないぞ」
「ああ?」
「私は仕事がキツいと思ったことなど、生まれてこのかた一度もない」
……ごめん、今からこの甘ったるい腑抜けたラブコメみたいな空気をぶち壊すようなことを言うが、どうか寛大な心で許して欲しい。
「下着姿でそれ言ってもねえ……」
「本当だよ……」
「む? そうか……下着姿では被服面積が多すぎたか?」
「善吉くん善吉くん、めだかくんってもしやかなりの露出狂?」
「そうだよクソッ……自分の肉体に絶対の自信があるんだ」
善吉くん……よくこれと今までやってこれたな……ま、私も似たような物だが。
それから。
めだかくんが設置した目安箱……ま、簡単に言ってしまえば『めだかボックス』ってやつなんだが、この中に一通、早速お悩みの投函があった。
曰く『三年の不良達が剣道場を溜まり場にしていて困っています。どうか彼らを追い出してください──』と、いうものだ。そういや最初はこんなんだったな。
箱庭学園に存在する建造物の中でも伝統あるものである剣道場は、今や不良の溜まり場である。理由は簡単、
当然剣道場の風紀は乱れ、酒やタバコはお手のもの、薬に手を出していない事が唯一の救いではあったが、それ以外の悪事は大体何でもござれ。
それを聞いて、私は──
有体に言えば、物凄くブチギレていた。
だってそうだろう? 神聖な道場に土足で押し入った挙句に飲酒喫煙、その他道場を不必要に汚す行為。万死に、億死に値する。
「黒神、めだか。ぼくにも一枚噛ませろ」
「「ッ!?」」
ぼくが怒り狂う事が予想外だったのか、それとも何か他の要因があったのかは分からないが、2人の顔は一瞬にして真剣なものへと切り替わった。
──違う。真剣というよりは……
こんな弱っちい、剣道を下手の横好きでやっているだけの僕を? うーん……いや、ないな。うん、ないない。この2人を警戒させられるくらい強かったら、流石の
「いや、ごめん。少し取り乱しただけ……ほら、私ってば剣道がちょーっと人よりも好きだからさ、それで怒っちゃった。だからめだかくん、善吉くんと一緒に私も着いていっていい?」
「……ああ、構わん。善吉もそれで良いな?」
「……おう。杵築が怒ってるところなんて初めて見たからさ、少し驚いちまっただけだ。うし、そうと決まればさっさと行こうぜ。どうせやんなら早い方がいい」
……? いきなりやけに乗り気になったけど……ま、いっか。私としてもさっさと剣道場を明け渡してもらわねば困る。よーっし、張り切って行こうか!
「めだかくん。一つだけ言いたい事があるのだけれど」
「何だ? 一つと言わず幾つでも言ってみるがいい」
「道着袴を着崩すとか剣道舐めてんのか?」
本当さ、マジでふざけんなお前。おい人吉善吉、羽交締めにすんな手ェ離せ。
「いいや、舐めてなどいないさ。寧ろ最大限の敬意を払っている!」
「杵築、悪いこと言わねえから諦めろ。
うーん……私的には、この着崩しは到底容認できたものではないが……めだかくんの顔を見る限り、どうやら真剣に本気なようだ。
「はあ……できれば次からは袴と胴も着用してほしいな」
「検討しよう」
「着ないってことね……」
そうしてわちゃわちゃとしゃべくり倒している内に剣道場に到着したので、私は一度深呼吸をした。すぅーーっ、はぁーーっ……よし、表情は余裕たっぷりに、強者感マシマシで! あとは……そうだ、背中叩いてもらわないと。
「善吉くん。全力で背中叩いてくれない? やって貰わないと気合い入らなくて」
「ん? あーそういう事か。剣道では試合前に背中叩いて気合い入れる風習……っつーか習慣があるんだったか?」
「そそ。さ、幼気な少女を泣き叫ばせるくらいに強くぶっ叩いておくれ」
「人聞き悪いな!! だあクソッ、泣くんじゃねえぞ!!」
瞬間、「パシンッ」でもなく、「バチンッ」でもなく、「バコンッ」て音でもない……「ゴキッ」みたいな音が鳴り響いた。
「ぎゃあああぁぁああぁあぁああぁぁあああっっっっっっっ!?!?!?!?!?」
「うおおっすまねえミスったか!?」
折れた! 絶対折れた! 折れちゃダメなところが折れた! うわあぁん善吉くんの鬼! 悪魔! デビル! 鬼畜! デビ畜!!
「ふう……」
「急に落ち着くな!!」
よし、落ち着いた。痛みもスッと消えていくのを感じる。
「……なあ、おい、あの、思いっきりぶっ叩いた俺がいうのも何だけどよ、その、大丈夫なのか? 骨とか、ゴキって言ったし……」
「ん? へーきへーき、気にしないで。剣道やってるからね。耐えれるよ」
「剣道ってそんなに万能じゃねえから!!」
何を言うか。剣道は万能なのだよ。
前世で先生も言ってたぞ。「病気だろうが骨折だろうが剣道やれば治る」って。初めは与太話かと思っていたが、実際治ったからあれはマジだ。ソースは私。
「善吉、雪。仲がいいのは結構だが、今日の目的はあくまで生徒会の執行だからな、間違えても履き違えるなよ」
おっと、ごめんねめだかくん。推しと触れ合いまくれてちょっと舞いあがっちゃった。あれっ、気づかない内にめだかくんが黒檀の木刀持ってる……確か……。
「無刀取りだよ。技っつーか、もはや奥義だけどな」
「あーそれだ。善吉くんありがと」
「こんくらいなんて事ねえよ……それに、今日は俺の仕事は無いみたいなもんだしな」
まあ確かに、これくらいならめだかくん一人で十分終わるよな……おっと、囲まれてしまった……あっそうだ、ちょっとやりたいことできたし、やってみるか。
「えーっと確か、無刀取りは……両手をクロスさせて……」
この状態で相手に素早く近づき……反応される前にクロスさせた手を相手の手に添えて……。
「とりゃっと捻じる……ありゃ、出来ちゃった」
なんだ、意外と簡単じゃん。ん? どしたのみんなして驚愕して。めだかくんの動きを真似しただけでなんで驚かれなきゃいけないわけ?
「……ふっ、雪。やはり貴様は面白いな。私の予想など簡単に飛び越えてしまう」
「えっ? いやー、言ってもめだかくんの動きを真似しただけだからねえ……。けど、面白いと思ってもらえたならよかった。友達が嬉しいと私も嬉しい」
「いやいやいやいや!! それはいくらなんでもおかしいだろオイ! 確かに杵築、お前は一般生徒にしちゃあ運動ができるやつだったが、
めだかくんと同じ? いやーないない。だってあのめだかくんだぜ? 完全無欠で完璧超人のめだかくんだぜ? 私がそれに張り合えるとか、それこそ戯言だよ、善吉くん。
「さあ、雪。この調子で、
「いいねそれ賛成! 流石に私には無刀取りしか出来ないから、
「やはりそこまで気づいていたか! つくづく面白い奴だな、雪!」
さあ! レッツ更生タイム!!
「……目の前で起きてる出来事があまりに現実離れしてるな……」
善吉くん、君もそのうちこれくらいできるようになるから落ち込まないで。
その後。
無事全員の心を稽古で叩きのめした私は、校舎裏へと一人で向かっていた。そこにはなんと、クラスメイトの日向くんが居るではないか!!
うん、正直な話、面倒くさくなってきたからさ。別にこいつを一人で倒しちゃっても、話の大筋変わらないし大丈夫かなって。
「つーわけで痛い目見てもらうね」
「はっ?」
ぼこり。
うーん、我ながら素晴らしい面打ち。背面からなので一本にはならないが、とにかく気絶させたのでヨシ。反省してくれ。
まだ何もしていないのに……と思うかもしれないが、恨むんなら史実の自分を恨むんだな。私は悪くない。
と、自己弁護を繰り返している時に、丁度誰かから電話がかかって来た。私はすぐさま通話ボタンを押し、電話に応答する。その電話口の先にいた人物は──。
「当たり前でしょう、お兄ちゃん」
──実の兄、球磨川禊その人であった。
改めて、自己紹介をしよう。
『設定上いてもおかしくないキャラ』だ。
──はあ……なんでよりによってそこなんだよ……。
もっとあっただろ……善吉くんの弟になるとかさ……。
はあ……虚しい……。
「……善吉よ、気づいているか?」
「……おうよ。中学時代、嫌というほど味わったあの雰囲気……杵築の気配は間違いなく、球磨川のものだった」
「しかし、だ。彼女は……雪は、どうにも球磨川と同族だとは思えん。現に、先ほども私の動きを真似て見せたしな」
「いずれにせよ、
「雪……貴様は気づいていないようだが、唯一私について来られる貴様を私は、存外快く想っているぞ。故に、そちら側に身を任せることなどさせない」
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