TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 前回やたらここすきした人が多かったです。
 やっぱりみんな先輩が好きなんですねー。




球磨川(くまがわ)事件(じけん)(へん)
第13箱「また明日とか」


 

 

 ──結局。

 黒神めだかはラスボスであるところの都城王土を倒し、そして許した。

 ()()()()()()()

 

 地下研究所自体は宣言通りに『叩き潰した』ものの、ラスボスにとどめをしっかり刺していない以上……善吉達は、どこかスッキリしないままの心持ちで、地下研究所を後にすることとなった。

 

 そして一行は、全員揃ってエレベーターに乗って地下一階へと向かっていた。その途中で、真黒が声を発した。

 

「……どうしたんだい善吉くん。さっきから黙りこくってるけどこの結末に何か不満でもあるのかな?」

 

「不満? ねーですよそんなの。おなか減ったんで夕食のメニューを考えてただけでして」

 

 実際のところ、ほんの少しの不満はある。しかし善吉とて、一件が落着した後にわざわざ場がささくれ立つような事を言うはずもない。というか、言えるわけがない。

 

 その後、エレベーターも地下一階に近づいてきたというところで、思い出したかのようにめだかが口を開いた。

 

「ところで! すまんが都城三年生。後一回だけ『言葉の重み』を使ってもらうぞ」

 

「ん? 俺としては別に構わんが……」

 

「一階で戦っている連中を制圧するためにだ。貴様も知っているだろうが、雲仙二年生は途中で戦いをやめるようなタイプではないのでな」

 

「……ああ、そうだな。『裏の六人(プラスシックス)』も止めてやらねばならんし。よかろう、普通なる俺が承ったよ」

 

「うむ……あ、そうそう。(ゆき)がまだ眠っているかもしれんからな、使う時は細心の注意を払って──」

 

 と、めだかがそこまで話した所でエレベーターの扉が開く。そこで一同が目にしたのは、今なお激しい戦闘を繰り広げる十二人──。

 

 ではなく、血まみれのまま日本刀を右手に持った(ゆき)と、螺子で串刺しにされた『裏の六人(プラスシックス)』とチーム負け犬の姿だった。

 

「……え? 何……何これ?」

 

「杵築ちゃん……もう起き上がって大丈夫なのかな? それより、この場で一体何が起きたか……ッ!?

 

 真黒はいち早く自失から立ち直り、この中で唯一自力で立っている(ゆき)の前に進んで話しかけた……が、(ゆき)からは特に反応が無かった。

 

「あの……お兄様? (ゆき)が一体どうしたというのですか?」

 

「……いいかい、落ち着いて……決して取り乱さず……落ち着いて、冷静を保って聞いてくれ……」

 

「いや、落ち着けっつったってまずは杵築の治療が先じゃ」

 

()()()()()()

 

「えっ?」

 

()()()()()()()()()()()()

 

 そして真黒は次の瞬間、残酷な真実を告げた。

 

 

 

「杵築ちゃんは、死んでいるから」

 

 

 

「…………は? いやいやいやいや、そんな冗談、真黒さんらしくないですよ……ははは……大方あれでしょう? 『裏の六人(プラスシックス)』の誰かの異常(アブノーマル)の影響とかで、相打ちになったけど、そう見えるだけとか……」

 

『いいや、相打ちじゃあこうはならないね』

 

『十五人全員が同じように串刺しにされている』

 

『どんなアブノーマルであろうと自分で自分を串刺しにするなんて不可能だよ』

 

『これは明らかに第三者の仕業に違いない』

 

『一体どういう目的があってこんな面白半分の惨状を演出したのかはさっぱり分からないけれど──』

 

「ッ!! 誰だ!」

 

『おおっと! 早とちりしないでおくれ』

 

『僕が来た時にはもうこうなっていたんだよ』

 

『だから』

 

 

『僕は悪くない』

 

『だって』

 

『僕は悪くないんだから』

 

 

 何食わぬ笑顔でそう言ってのけたのは、箱舟中学校元生徒会長──球磨川(くまがわ)(みそぎ)だった。

 

 故に、めだかがついうっかり彼の存在に狼狽(うろた)えてしまったのも致し方ないだろう。何せ相手は()()()()()()

 

「球磨川禊……!! なぜここに貴様が……」

 

 めだかがそこまで話した瞬間、球磨川は人差し指をすっと立てて、めだかの間違いを指摘した。

 

『いいや違う、僕は球磨川禊じゃない。彼の双子の弟の、球磨川(くまがわ)(そそぎ)だ』

 

「「ッ!?」」

 

『……なーんてね嘘嘘っ! 引っかかったあ? だいじょーぶ正解正解っ! あってるよ大正解! そーです僕が球磨川禊でーーっす! いやんっ!』

 

「……いつだって縋り付きたくなるような嘘をつくよな、貴様は……!」

 

 この一瞬で、場の空気は完全に球磨川に支配された。その影響力たるや、あのめだかをも凌駕する強度である。

 

『ちなみに言っておくと、(そそぎ)ちゃんは双子の弟じゃなくて、普通に妹ね。すごくかわいらしいんだぜ』

 

「そんなことはどうでもいい……落ち着け善吉。奴がやる気ならば、今こうやって話すこともできていないだろうからな」

 

 めだかは球磨川を前にして震える善吉の肩を抱き、善吉を安心させようとした。しかしそんな絶好のチャンスを球磨川が逃すわけもなく、球磨川は善吉に歩み寄りながら口を開く。

 

『やーだ善吉ちゃんってば、女の子に庇われちゃって情けなーい! でもいーんだよそれで。落ち込まないで元気出して! 情けなくてみっともなくって恥ずかしい、なーんにもできない役立たずの弱い奴。それがきみのかけがえのない個性なんだから!』

 

「っ……」

 

『無理に変わろうとせず、自分らしさを誇りに思おう! きみはきみのままでいいんだよ』

 

 球磨川の常套手段、先制精神攻撃である。肉体面も精神面も絶えず鍛え抜いてきた善吉であるが、球磨川相手となると恐怖が勝つようだ。

 

 その後も精神攻撃は続き。

 阿久根には『破壊した人のことを忘れて幸せになれたようで何より』、喜界島には制服を直しながら『君の大切な人の名前、屋久島と種子島は覚えたよ』、真黒には失った内臓を治しながら『思い入れとか心がけとか誓いとかわかんないんだよね』と言いつつ、球磨川がやりたいことだけ、球磨川にされたくないことだけをした。

 

 いいも悪いも一緒くたにかき混ぜて、全てを一瞬で台無しにする感じ──球磨川は結局のところ三年前と同じで、1ミリたりとも成長などしていなかった。

 

『めだかちゃんには特に何もないけど。えー、まさか僕が君たちのことをここで待ち伏せしてたとか考えてるー?はっずかしー』と言った球磨川は続け様に追い打ちを仕掛け、善吉達をさらに驚かせる。

 

『実は僕、今日付けでこの箱庭学園に転校してきたんだ。だから妹に学校を案内してもらおうと思ってここまで来たんだけど……』

 

「待て球磨川……まさか貴様、()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

──ご名答♪」

 

 

 

「「「「ッッ!?」」」」

 

「ありゃ? どうしよ、防がれちゃった」

 

 めだかの質問に答えると同時に切り掛かったのは、生徒会副会長代理……杵築(ゆき)だった。

 

「馬鹿な! 杵築ちゃん、君はさっきまで、ついさっきまで確実に()()()()()()()()()()!!」

 

『おや真黒ちゃん、ついさっき見せてあげたってのにもう忘れちゃったのかい? 心臓が止まってるくらい、僕にかかればすぐに治せるのさ』

 

「そんな事はどうでもいい! 球磨川! 貴様、(ゆき)に一体何を……」

 

(そそぎ)

 

「……え?」

 

「だから、(そそぎ)。私の名前。(そそぎ)

 

「いや、そんなはずがないよな? な? これも……これもきっと、球磨川がついた嘘なのだろう? な?」

 

 めだかはらしくもなく懇願するように聞く。本当であってくれるなと、杵築(ゆき)は血を流して混乱しているだけなのだと、そう自分に言い聞かせながら。

 

 ──虚しい願いだが。

 

「つれないなあめだかくん。ここまで来たんだしさ、本当の名前で呼んでよー、ねっ?」

 

 杵築雪は──(そそぎ)は。

 笑った。

 

 

球磨川(くまがわ)(そそぎ)って名前でさ」

 

 

「……そんな、はずは……」

 

 めだかは再び自失した。中学三年生の頃から共に切磋琢磨してきた友が、まさか球磨川の妹であったなどと到底信じられなかったからだ。しかし、めだかが傷ついているのであれば、善吉が動かないはずがない。

 

「おい杵築……いや、(そそぎ)。お前は俺たちの事……どう思ってた?」

 

「んー? どうって……そりゃあ大切な友達で、大切な仲間でしょ」

 

「だったらどうしてそっち側に……!」

 

「いやいや、一旦よく考えなよ善吉くん。確かに私は善吉くん達のことを親友だと思ってるし、そこに確かな友情も感じているけどさ」

 

 呆れたようにしながら、しかし楽しそうに。

 

「親友との友情より、親愛と愛情でしょ?」

 

 (そそぎ)は微笑んだ。

 

「要するにさ、親友と家族、どちらか片方しか助けられないのなら、私は家族を取るんだよ。まあもしかしたら善吉くんは、その場合めだかくんの方を取るのかもしれないけれど」

 

「……ぐっ……でも、それでも! ()()()()()()()()()()()、球磨川(そそぎ)!」

 

「そうだよ。そんなこと私が一番分かってる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……? 杵築さん、それはどういう……」

 

「おい待て、勝手に話を進めるな」

 

 と、都城はそこまでの話を一旦無理矢理打ち切り、禊と(そそぎ)を睨みつけながら問いかけた。

 

「そこに張り付いてる連中の大半は普通なる俺のよく知る仲間なのだ。こんなものを見せられては王を引退した俺でも! さすがに仇を討たんわけにはいかんぞ

 

「だってさ、お兄ちゃん。どうする?」

 

『うーん、僕がやったわけじゃないって何回も言ってるんだが……』

 

「でもまあ? 気持ちは分からないでもないよね?」

 

『うん、確かに少しはわかるよ。じゃあ、これでおあいこってことにしよっか』

 

「おい待て球磨川、その手に持った螺子で一体何を……」

 

 次の瞬間禊は手に持った螺子を、自分の隣に立っている(そそぎ)の頭に螺子(捩じ)込んだ。

 

「ッ!? おい球磨川お前、杵築はお前の妹なんじゃ……」

 

「だから杵築雪じゃなくて球磨川(そそぎ)なんだって!もー、善吉くんってばうっかりさんなんだからー」

 

 頭に螺子が刺さった(そそぎ)は、何も無かったかのように善吉に向かってそう話しかけた。善吉はその時、何を感じていたかと言うと──。

 

(──気持ち、悪い! どう見ても、どこから見ても、絶対的に圧倒的に確定的に(そそぎ)は敵だってのに……あいつから好意を感じることが気持ち悪い!)

 

 いくら相手が友であっても、全てを好むことなどできないはずなのだ。人間である以上、どこかに一つは相容れない場所があるはずなのだ。

 

 (そそぎ)には、それがなかった。

 

『それじゃ! 僕たちはここらでお(いとま)させてもらうよ。さ、行こうか(そそぎ)ちゃん』

 

「うん、理事長室まで案内してあげる! そうと決まれば早速行こうか!」

 

『それじゃ、めだかちゃん』

 

「それじゃ、みんな!」

 

『「また明日、とか!」』

 

 禊と(そそぎ)は、そう言うと後ろを振り向いて歩き去ってしまった。その場にいた全員の心に、深い影を落としながら。

 

 






 他人を驚かせるためだけに命まで捨てる……どこかで見たことありますね?

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

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