TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 12時間遅れで更新です。
 課題が忙しかったんです。本当にすまない。




第18箱「受け入れることだ」

 

 

 (きた)る七月二十五日……つまりは生徒会戦挙庶務戦当日だ。夏休みなのに学校来てドンパチやってるのは全国広しと言えども、私達くらいのものだろう。

 

 さて、本日はお日柄もよろしく……めんどくさ、以下省略。どうも、球磨川(そそぎ)だ。今私はどこにいるかというと、生徒会戦挙受付会場となっている教室に、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「もう集合時間はとっくに過ぎてるんだけど……これってあれみたいだよね、一人だけ早めの集合時間伝えられてる的な」

 

『まあまあ、気楽に待とうよ。開始時間までに間に合わなかったら僕達の不戦勝になるわけだしね』

 

「んー……釈然としないなあ。()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 そうなのだ、なんとなんと私が庶務戦に出る事になった。つまりめでたく原作を破壊できたわけだが……本当に条件が分からない。まあ今考えてもしょうがないことだけれど。

 

 ……おや、やっと来たか、生徒会ご一行。

 

「もー! すごくすっごく待ったんだけど! 詫びの言葉の一つくらいよこしてくれてもいいんじゃないかなー!?」

 

『まったくだよ。プリントには時間厳守って書いてあったじゃない』

 

「……球磨川兄妹。貴様ら、まさか二人だけか?」

 

 無視かよ。まあいいや、別に謝られたところでなんも嬉しくないし、戦挙には関係ないもんな。

 

「そーなんだよねー。いやなんかさ、私達人望無いみたいでね」

 

『他の過負荷(マイナス)はみーんな海水浴さ。いけないよね、真剣味が足りなくて』

 

 ………………あれ? 瞳くんに絡みに行かないのかな? 小声で話しかけてみるか。

 

「ねえねえお兄ちゃん? 瞳くんいるけど……話しかけに行かなくていいの?」

 

『いや別にいいよ。妹の前で変な事言いたくないし』

 

 じゃあ終業式のあれはなんだったんだ。時代が時代ならセクハラ……いや普通にセクハラだよあれ。

 

「ちょっと待て、まさか庶務戦から貴様達のどちらかが出馬するつもりか?」

 

『ひょっとしなくてもそのつもりさ。ただまあ、僕の昔からの夢は会長になることだからね。それに、庶務戦は剣道で言えば先鋒戦だ。だったら適任がいるだろう?』

 

「そーゆーこと! どうも私達のチームは真剣味に欠けるからね、だったら私が! 正々堂々! ()()()()で生徒会戦挙の火蓋を斬って落としてやろうということさ!」

 

 ふふん、驚け驚け。だって私元々は副会長代理だもん。まさか庶務戦で出てくるとは思うまい。さ! 善吉くんのお顔は……不敵な笑み? あるいは不適な笑み……。

 

 まさか。

 

「師匠の読み通りだぜ(そそぎ)!! 絶対にお前は庶務戦で出ると思ってたさ!!」

 

「……お兄ちゃん、今からチェンジとか……」

 

『ま、無理だろうね。ほら、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それでは定刻になりましたので──」

 

 ──もしかして、やっちまった?

 

 


 

 

 長者原(ちょうじゃばる)融通(とけみち)は選挙管理委員会の副委員長だ。彼の厳格さは折り紙付きであり、かの雲仙冥利の唯一の男友達であるということが、それを証明してくれている。

 

 ルールを人より上に置いているため、彼はどんな圧力にも屈しない。徹底的にフェアに、ありえないほど公平に戦挙を取り仕切ってくれる。それは負けてしまった場合、取り返しがつかないということでもあるが……。

 

 善吉とその師匠……まあぶっちゃけてしまうとくじらの読みの的中により、流れは完全に現生徒会側の背中を押していた。

 

 めだかと禊は戦挙中に生じた負傷や死亡に関しては、全て事故として処理されるというとんでもない規則に同意し、そうしてようやく生徒会戦挙庶務戦が開幕する。

 

 挑戦者である(そそぎ)の前には十三枚のカードが並べられた。干支の文字を記したカードと、それとは別に「人」の一文字を記したカードが並んでいる。それぞれのカードには全て別々の決闘方法が用意されていた。

 

「……はあ、腹括るか……えっと、この中から一枚選べばいいんだよね。それなら私が選ぶのは『()』のカードで。裏切りといえば蛇だもんね」

 

 ブラックすぎるジョークは全くと言っていいほどウケず、結局そのまま決闘は「巳」のカード、『毒蛇の巣窟』に決定した。

 

 この選挙形式のルールは、縦十メートル、横十メートル、深さ十メートルの大穴の中に毒蛇であるハブを大量に仕込んだフィールドで戦うというものだ。足場となるのは、四隅にあるポールに嵌め込まれた()()()()()()()()()()である。

 

 動いていても動いていなくても、固定されていない金網は当然徐々に落下していく。そんな極限状態の中で、善吉が腕につけている腕章を奪えば(そそぎ)の勝利、守りきれば善吉の勝利となる。なお奪取や守防の際、いかなる手段を用いようが構わない。そしてルール上ギブアップは認められているが、宣言した瞬間に敗北が確定する。

 

 一見すると善吉にとって不公平なルールに思えるかもしれないが、実際その通りである。現生徒会は、挑戦者を圧倒的な実力で打ちのめさなければならないのだから、多少の不利は跳ね除けなければならないのだ。

 

 そして今、舞台の準備は整った。あとは善吉と(そそぎ)が金網の上に進めば、庶務戦の開始である。

 

 ただまあ、普通であればこんなフィールドに足を進められるわけがない。善吉は未だ、金網の直前で二の足を踏んでいた。

 

 (そそぎ)はそこに近づき、肩を組んで声をかけようとして……身長が足りず肩を組めないことに気づき、善吉の袖をちょいちょいと引いた。

 

「ねえねえ善吉くん。この庶務戦なんだけどさあ……」

 

「ん? なんだよ(そそぎ)……もしかして『この前助けてやったお礼に勝たせてよ』みたいなこと言うつもりじゃねえよな? 確かにいつかあの恩は返したいとは思ってるが──」

 

()()、わざと負けたげよっか?

 

「──ッ!? なっ、(そそぎ)お前ッ!!」

 

 (そそぎ)は先ほどまでの人畜無害さを脱ぎ捨て……否、人畜有害さを被って善吉に語りかけた。当然善吉としては、予想だにしない方向から不意打ちのように最も忌み嫌う負完全(マイナス)を喰らったのだから、たまったものではない。

 

「……なーんてね、冗談冗談。私をお兄ちゃんと一緒にしないでよ、私は私だぜ? それより善吉くん、そんなに怒んないでよー。それに、そんな風にお兄ちゃんを、そして()()()()()()()()()()不快に思ってるようじゃ、百年かけてもきみには私達を止められない」

 

 (そそぎ)は善吉に背を向け、金網へと向けて進み出す。その足取りに迷いはなく、また後ろを振り向くこともしない。さらに追い打ちをかけるように禊まで話し始め、球磨川兄妹は口を揃えて語り始める。

 

「受け入れることだよ、善吉くん」

『受け入れることだよ、善吉ちゃん』

 

不条理(ふじょうり)を』「不道理(ふどうり)を」

理不尽(りふじん)を』「理不合(りふごう)を」

嘘泣(うそな)きを』「嘘偽(うそいつわ)りを」

()(わけ)を』「()(のが)れを」

『いかがわしさを』「いぶかしさを」

『インチキを』「イカサマを」

堕落(だらく)を』「堕罪(だざい)を」

混雑(こんざつ)を』「混沌(こんとん)を」

偽善(ぎぜん)を』「偽計(ぎけい)を」

偽悪(ぎあく)を』「偽証(ぎしょう)を」

不幸(ふしあわ)せを』「不仕合(ふしあわ)せを」

不都合(ふつごう)を』「不自由(ふじゆう)を」

冤罪(えんざい)を』「冤屈(えんくつ)を」

(なが)(だま)を』「(なが)()を」

見苦(みぐる)しさを』「息苦(いきぐる)しさを」

『みっともなさを』「どんくささを」

風評(ふうひょう)を』「風説(ふうせつ)を」

密告(みっこく)を』「密計(みっけい)を」

嫉妬(しっと)を』「傲慢(ごうまん)を」

格差(かくさ)を』「格付(かくづけ)を」

裏切(うらぎ)りを』「裏斬(うらぎ)りを」

虐待(ぎゃくたい)を』「虐遇(ぎゃくぐう)を」

()()えを』「()()みを」

二次被害(にじひがい)を』「二次災害(にじさいがい)を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(した)しい友人(ゆうじん)のように()()めることだ

 

(いと)しい恋人(こいびと)のように()()れることだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「そうすればきっと」』

『「()達みたいになれるよ」』

 

 

 ──この二人は、どこか欠けているとか、人間として欠落しているとか、そういうレベルではなかった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()。故に負完全(マイナス)

 

 (そそぎ)は何事でもないかのように金網へと乗り、善吉の方を振り向いて手招きをしてみせた。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ただ、それでも。

 

「……人吉、あんたさっきから心底あいつらを怖がってるようだけどさ。別に逃げたっていいんだよ? 逃げることは恥じゃない。むしろ、負けると分かってるのに意地で逃げない方が……」

 

「……いえ、ご忠告ありがとうございます、古賀先輩。だけど俺は恥知らずでいるより、恥ずかしがり屋でいたいと思う。それに──」

 

 それでも善吉は古賀の忠告を聞いた後、ごく普通に怖がりながら、ごく普通に怖気付きながら、ごく普通に一歩を踏み出しながら言い放った。

 

 

()()()()()()()()()()()()()

「間違ってあんな危ない所に行っちまった」

 

「だったら! 俺が安全な所まで

 連れ戻してやんねえとな!」

 

 

 善吉は自分を奮い立たせるためにも、友に本心をぶつけるためにも大きな声で叫んだ。そしてごく普通に、金網の上へと進んだ。

 

「さあおっ始めようぜ庶務戦……おい、(そそぎ)? どうしたんだよ顔押さえて。とっとと終わらせて一緒に帰ろうぜ」

 

「い……っや、なんでも、なんでもないけど? んふ、んふふ……友達……おっと、いけないいけない。善吉くんなら頼めばいくらでも友達って言ってくれるだろうしね。今は悪役ロールに集中っとさ、やろうか」

 

 突然態度を急変させた(そそぎ)が善吉に飛び掛かる。その手には当然の権利のように日本刀が握られており、振るわれた刃は速度を緩めることなく善吉の首元まで到達する。

 

 が、しかし。善吉もこの一週間暇を持て余していたわけではない。くじらの下で対(そそぎ)用の特訓を積んで来た彼は、(そそぎ)が繰り出した一太刀を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。善吉の渾身の踵落としによって(そそぎ)の体は金網に叩きつけられ、金網は目測五センチほど沈んだ。

 

「うわー、いったーい。右腕がぐちゃぐちゃだあ。それになんだか呼吸も苦しいぞー。善吉くんのせいで傷物になっちゃったよー、責任とってよー。あれっ、でもあんまり痛く無くなってきたなー。治る兆候? それとも壊死したのかなー? 腕は剣士の命なのになー」

 

 叩きつけられた(そそぎ)は、薄気味悪さ(マイナス)全開で立ち上がる。見ているだけで心は折れそうになるし、聞いているだけで吐き気を催すような邪悪な声色だ。

 

 だがしかし、それらは今の善吉にとって、メリットではあってもデメリット足り得ない。なぜなら目を瞑って音を頼りに戦っているからだ。

 

 何度(そそぎ)が手を変えて攻撃しようとも、普通異常(以上)に怖がりな善吉は、全ての攻撃に完璧に対応してその都度カウンターを決めてみせた。

 

「カッ! これで分かったかよ(そそぎ)! お前の攻撃は、もう今の俺には通用しねえんだぜ!」

 

「酷いなあ酷いよねえ。140センチとちょっとしかない幼気な女の子を足蹴にしまくるなんて、週刊少年ジャンプだったら規制されかねないいじめの描写だよ」

 

 とはいえ(そそぎ)は剣士である。技が通用しないからといって簡単にギブアップを宣言するはずもなく。要するに、どうやらまだまだ庶務戦は終わらなそうであった。

 

 






 さすがにちっちゃい女の子蹴るのはどうなんだろう。ちなみにちゃんと骨とか折れてるしちゃんと血とか吐いてます。やりすぎ。

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