目指すは初期めだかボックスのトンチキ部活バトル。近づけられてればうれしい。
そういえば言い忘れてたけど、この作品の
つい先日、お兄ちゃん……球磨川禊から突然電話が掛かってきて何事かと思っただろうが、特筆して何か重要な事件があったというわけでもなく。
強いて挙げるのであれば『最近友達とは上手くやってるかい?』みたいな、案外『普通の人間』みたいなことを聞いてきただけだった。
どうやらお兄ちゃんは水槽学園を殆ど掌握したらしく、そのことを私に自慢する為だけに電話をかけてきたらしい。妹大好きかよお前。大好きだったわ。私も大好きだぜ。
なんて事があったのが、つい先日──ではなく、既に2ヶ月前。日向くんはしっかりすっかり改心して剣道部を設立し、善吉くんは無事に生徒会庶務に就任した。半袖くんは相変わらずラーメンを飲み物のように飲んで(食べて?)いるし、めだかくんは今日も今日とて完璧だ。
生徒会としても業務は順調にこなせているようで、既にいくつかのお悩みを解決しているらしい。内容はスニーカー破壊犯探しと犬探しに、ラブレター代筆、極め付けは水着でデッサンモデル。その他諸々。
半袖くんに教えてもらったことなのだが、大きめの犬に善吉くんの内臓が食われかけたらしい。おもろ。やっぱり無理してでも見に行くべきだったかな。
あとはそうだ。阿久根高貴くんが生徒会の書記になり、加えて喜界島もがなくんが会計になったらしい。喜ばしいことだ。私がよく知る生徒会へと段々近づいている。本当に素晴らしいことだ。
でだ。そんな風に日々が過ぎていく中、私は何をしているかというと。
「はい次ーっ! 追い込み稽古ーっ!」
「「「はいっ!」」」
剣道部に稽古を付けていた。うん、折角活かせることがあるんだし、出来ることをやるのは人間として当然だよな。
「日向くん! 抜けが遅いよ! そんなんで全国クラスとか笑わせんな性悪メガネ!」
「うるっせえなこれでも精一杯出来る限りの速さで抜けてんだよ!!」
「あ? 私から一本も取れねえ癖に口答えか?」
「……ッスー……サーセンした……」
「よろしい」
全くもう、守破離の守も出来てないくせに生意気言われても困っちゃうよ。そういうことは私より強くなってから言いなさい。ビバ、恐怖統治。
「……そんで、善吉くんは何で一緒に稽古してるの? 生徒会で忙しいんじゃないの?」
「カッ! そりゃあお前、剣道がデビルかっけえからに決まってるだろうが。お互いの武士道精神に則ってタイマン張って勝負ってのは男の憧れだしな」
なるほど、分かってるじゃないか善吉くん。いかにもそれっぽい理由だし。だけど、それで私を騙せると思うなよ。
「そっかそっか、それは何より……で、本当は?」
「ちょっと杵築と剣道で試合してみたくて……ハッ!?」
正直というか、馬鹿正直というか……いや、違うな。
これは単に馬鹿なだけだ。お口が緩いぜ、善吉くん。
けど……それはそれとして、善吉くんが剣道に興味を持ってくれたのは嬉しいよ! 早速やろう!
「なーんだ、そういうこと? それならそうと言ってくれたら
「杵築? 響きが不穏なんだが俺の気のせいだよな?」
んふふ、善吉くんが私と試合したいだって! 原作キャラの方から絡みにくるとか、私みたいなファンからすればほんと涎ものだよ! あー顔あっつ。
「んふ、んふふ……もう善吉くんったら熱烈なんだから」
「お前そんなキャラだったっけ?」
黙ってろ日向。一本取れるようになってから喋れ。
ぶっすー。
「な、なあ、杵築……騙し討ちみたいな形になったのは謝るが、な? めだかちゃんの指示で俺もしょうがなく……」
「しょうがなくじゃないよっ! 何でこんな大勢の前で
剣道場には、大勢の人、人、人……群衆と言うよりは、群衆の群れと言った方が正しいくらいの人数が集まっていた。そして、もれなくその全員が私と善吉くんの……否。私vs生徒会メンバーの試合を見に来ていた。
「えっと……初めましてだよね? あたしは喜界島もがな……って、知ってるか」
「ああ、公衆の面前でめだかくんとキスしてた……知ってるよ、有名だもんね」
「ぐふっ!?」
「喜界島ーっ!?」
まだこのいじりが有効な時期か。って事はそろそろ風紀委員会とバチバチにやり合い始める頃かな……と、それより今はこの状況について正しく認識する事からだ。
正直な話、
「あの、さ、善吉くん。まさかそんな事は万に一つも無いことであるという事は分かっているんだけどさ、それでも一応、本当に念のために聞かせてもらいたいんだけど……この試合には生徒会の副会長の座は掛かってないよね?」
「あー……うん、掛かってないぞ?」
「絶対掛かってんじゃん!!」
それはダメだろそれは! 原作崩壊どころの騒ぎじゃないし、そもそも理由も訳も何もかもが理解不能だ! おいめだかくん、どう言うつもりだマジで!
「何故か? それは勿論、貴様が唯一、この学園で私に比肩し得る女だからだ! 雪、貴様には是非とも我が生徒会の副会長になって欲しい!」
「横暴だあ!」
ちょっと待ってよ冗談キツいぜ勘弁してくれ! 確かに原作に関わりたいとは思っていたけどさ、こりゃあマズイぞ!お兄ちゃんが箱庭学園に来た時の居場所が無くなる!!
どうする? どうする? どうする? ここからどうにか、原作と同様の流れに……するのは無理だ……! それなら……原作と
「めだかくん、騙された側としては、ここは一つだけ条件を設けさせてもらいたいのだけれど」
「うむ。4対1となると、確かにややこちらに有利すぎる条件だものな。いいだろう、どんな条件でも受け入れてやる!」
言ったな。
「仮に生徒会に入った時、私の役職は
「……? 雪以上の適任が箱庭学園に居るとは到底思えんし、どんな理由があっての事かは知らないが……まあ構わん!」
よーっしファインプレー!! これでお兄ちゃんにいつでも副会長の座を譲り渡せるな。いやーマジで危なかった……ん、あれ?この条件さえ取り付けちゃえば、もう試合する必要なくない?
「ってことでどうだろう、ここは一つ、私の不戦勝或いは不戦敗というのは」
「杵築、周り見ろよ。不知火のせいで滅茶苦茶な量の人数が集まっちまったし、それに今更ナシにするってのは剣士としてはどうなんだ?」
かちん。頭に来た。
「やってやろうじゃねえかよこの野郎!」
全員泣かせてやる。
今回の試合は4人制4分3本勝負、引き分け無しで延長有りの勝ち抜き戦……というか一度でも負ければ私の負けだ。
生徒会チームの先鋒は善吉くん。次鋒はいないので私の不戦勝。中堅は喜界島くん。副将は阿久根くん。そして大将がめだかくんだ。実況解説は無理やり連れてこられた半袖くん。ドンマイ。
「よし、強くなりたいんなら私の剣道ちゃんと見とけよお前ら」
「あの……日向以外は一応三年生……」
「私から一本取ってから喋れ」
(((こっちの方がよっぽど横暴だ……)))
ふぅ。まずは先鋒の善吉くんから……なのだが、正直言って勝てるかどうかは五分だ。なんてったってここは
よし……準備OK。私は審判に目配せをして……っておい審判って長者原くんなの!?この人も大概暇人だよな。
長者原くんが両手に審判旗を構えたのを確認してから、私と善吉くんはタイミングを合わせて15度の礼をし、腰の辺りに竹刀を当てて大きく3歩前に進み、ちょうど開始線の上でゆっくりと抜刀、互いに蹲踞の構えを取った。
そして長者原くんの「始めっ!」という合図と同時に立ち上がり、善吉くんが定石通りに発声し──たところを狙って面の突き垂を突く。
「突きィッ!!」
「……突き有り!」
「はあっ!? 今のありかよ!?」
善吉くんから、観客達から、そして生徒会のメンバーから困惑の声が上がる。なお、剣道部の連中は驚きながらも、しっかり拍手をしていた。と、そこで実況解説の半袖くんからの説明が入る。
「ぶっちゃけ剣道って礼儀正しいのは稽古の時だけだからね。大方杵築を倒すために秘密の特訓でもしてきたんだろうけれど、これは実践で、実戦なんだよ? 稽古でやったことしかできないようじゃまだまだだね人吉! あひゃひゃひゃ!」
随分楽しげだが、まあ半袖くんの言う通りだ。この程度で躓いているようでは一生勝てない……んだけど、
「……めだかちゃんにカッコ悪い所なんて見せられねえ! 悪いがなり振り構わず行くぜ、杵築!」
うんうん、それでこそ善吉くんだ。試合の途中に私語を挟んだのは減点だけど、好きな女の子にかっこいいとこ見せようと頑張る君は最高にかっこいいぜ!
「だから潰す!」
「上等だこの野郎!」
再び互いに開始線へと戻り、中段に構える。そして長者原くんの「二本目ッ!」の合図と同時に、一足一刀の間合いへと入り……ぃっ!? マジか善吉くん!?
「めだかさん、人吉のやつは一体何を!?」
「ああ、あの構えか。薩摩辺りで発展した示現流の最も有名な構えであるところの『
「あひゃひゃ! 面白すぎるよ人吉! 練習もしてないのに実戦で初めて新しい構え使うなんて!」
なるほど……流石の私といえど、この状態から無理矢理間合いを詰めれば先に面か逆胴を打たれる事は確実……半袖くんめ、余計なこと言ってくれるじゃないの……!
だからって、対応できない訳じゃないが。
「あれっ、杵築さんも蜻蛉……いや、
はい、大正解だ喜界島くん。相手が蜻蛉なら、逆蜻蛉で対応すればいい。有利不利は無くなってしまうが、この状況であれば……。
「人吉と杵築さんは……
またもや正解だ、阿久根くん。全くもう、説明する前に全部紐解かれちゃうからつまんないな……さて、どうする、善吉くん。互角って事は、振りが速え方が勝つって事だぜ。
しかし、それでも、君が人吉善吉であるならば。
「うおおおぉぉぉぉッッッ!!!」
……うん、やっぱり君はそうでなくっちゃ。決してやぶれかぶれにならず、今の自分に最大限出来ることをやり切る……本当に、本当にかっこいいぜ、善吉くん。
君は絶対に、逆胴を狙って、最速で竹刀を振り下ろすと信じていた。一切の油断なしに、ただ『勝ちたい』という一心で。だから私も、君のその気持ちに誠意を持って応えよう。
善吉くん、面がガラ空きだぜ。
「めえぇぇんッッ!!」
「面有り! 勝負ありッ!」
「……だぁっ! くっそ、完っ璧に負けだ! 完膚なきまでに負けだ! うーわ悔しい! 悔しいけど、ありがとうございましたっ!!」
天を仰ぎながらそう叫んだ善吉くんに、観衆からは惜しみない拍手が送られた。いいねえ、青春だねえ。これこそまさに友情って奴だろう。
……所で、あの。私に拍手してくれてる人が剣道部の面子だけなんですけど。えっと、あれっ? 私今勝ったよね? ねっ? 日向くん、私勝ったよね?
「……いや、何つーか、負けてる方って応援したくなるじゃん。アンダードッグ現象……だっけ? とにかく、そういうことでしょ」
ふむ、なるほどなるほど……つまり強者であるが故に、応援してくれる人がいなくなってしまったと。ふむふむ、いいねいいね。これが『強者故の悩み』ってやつか。んふふ、人生初経験かも!
「後はまあ、杵築の剣道……っつーか剣術が強すぎてつまんないんだろ」
えっ? 私の剣道ってつまらないの? そーなの半袖くん?
「んー、
……中堅戦からは、ちょっと手加減しよう。
その後。
中堅戦の喜界島くんは声がでかいだけの初心者だったこともあり、なんとか鼓膜を破壊され、音圧で場外に押し出される前に二本勝ち。
続いて副将戦。
阿久根くんは武術の心得があった事もあり、中々決め手に欠けた……が、決め手に欠けるのであれば逆に決め手を少なくし、その分攻撃性を高めればいい。
なので上段の構えから本気の連打で何とか一本もぎ取って時間切れ、一本勝ち。阿久根くんの戦法が『後の先』だったのは非常に大きかった。剣道は『先の先』以外に殆ど勝ち目はないからな。
そして、大将戦。
「あの……やっぱやめにしない?」
「何を言っておるのだ雪! 剣道場が未だかつてないほどに盛り上がっているし、ここで止めるという選択肢は無いもの同然だろう!」
いやまあ、剣道が注目されるのは確かに嬉しいさ。だけどちょっとこれはヤバいだろ。みんなどんだけめだかくんの剣道が見たいんだ……あっ、平戸ロイヤルいる。あいつって結局何なんだ?
「てかめだかくん……本気で二刀流使うの?」
「当たり前だろう? 攻撃手段は多い方が断然いい」
はあ……そりゃあそうだけどさ……めだかくんの二刀流とか防ぎ切れる気がしない……。
はあ……虚しいな……。
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