TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 説明回……というよりは説明会ですかね、この場合。
 だらだら喋り散らかすだけの会です。悪しからず。




第20箱「またね」

 

 

「いやー、本当に久しぶりだね雪(そそぎ)ちゃん。もっとも君の方は、僕が君の心の中にいることを知っていたようだが」

 

 どうも、球磨川雪(そそぎ)だ。今何をしているかというと、教室みたいなところで奴と相対している。以上。

 

「らしくもない演技なんてしちゃって。まあお似合いだったけれども、やっぱり君は君らしくしているのが一番だよ」

 

「……そりゃどうも。で、善吉くんは無事なの? まあ無事だとは思っているけれど、念のためね」

 

 はあ……途中までは上手くロールプレイできていたのに、最後の最後でメッキが剥がれてしまった。本当は私だってあんなことしたくない。何が楽しくて大好きな親友を殺さなきゃいけないんだ。

 

「善吉くんなら無事さ……それよりだ、雪(そそぎ)ちゃん。女の子なんだから、あまりバカスカ蹴られに行くのは感心しないな。綺麗なお顔が危うく台無しだぜ」

 

「……顔、近くない? 何をそんなに覗き込んでるのさ」

 

「いや、本当に綺麗な顔だと思ってね。引っ剥がしてやろうか」

 

「怖すぎるからやめて!?」

 

 なんだこいつ怖いよ。お兄ちゃんにやられた事なんだからお兄ちゃんに返してくれ。私は悪くない。

 

「それはそうと、雪(そそぎ)ちゃん。なんだか善吉くんといい感じじゃないか。当然彼はめだかちゃんに気があるんだろうが、もしかしたら君にもチャンスが……顔真っ赤だね?」

 

「いやっ、その……だって、だってさ、私のせいで目も見えなくなってて、足の腱も斬られてるのにさ、それでもあんな優しくしてくれて……抱きしめてくれたりとか……」

 

「もう少し大きい声で、はっきり言ってもらおうかな。多分聞こえなかった……というより文字が見えなかった読者の人もいるだろうしね」

 

 

「抱きしめてくれたりとかやめろ!」

 

 

 まったく、油断も隙も全く無えなこいつ! 何のスキルだよ今の……一京のスキルは伊達じゃないな……。

 

「わっはっは、いや失礼。雪(そそぎ)ちゃんは本当にみんなのことが大好きだねえ。それで、大好きな善吉くんを自分の手で殺めた気分は……聞くまでもなさそうだね」

 

 よし、よくそこで止めたな安心院さん。それ以上言うようだったら私は自分で自分を斬り裂いてたぞ。自己嫌悪がヤバいからな。

 

「おーよしよし、泣かないでおくれ雪(そそぎ)ちゃん。まるで僕が泣かせたみたいじゃないか。そんなふうに思われたら、僕のキャラクター人気投票の順位が下がっちまう」

 

「泣いてないし……! それと順位については心配しなくてもいいさ。第二回では十位、第三回は七位だからね。安心院さんが心配することなんてないよ」

 

「そうかい、そいつは重畳。それで雪(そそぎ)ちゃん、早く涙拭きなって。今見てるのは僕だけ……だからさ。とりあえず一回、演技はやめてみなさい」

 

 ……ごめん、少し泣く。

 

 


 

 

「はあぁ〜……善吉くん怒ってないかなぁ……嫌われて当然だけどさ、嫌われたらぼく立ち直れないよぉ……」

 

「善吉くんも罪な男だねえ。出会った女の子殆ど惚れさせちゃうんだから。まあ雪(そそぎ)ちゃんの場合は少し違うようだけれど」

 

 やあ、僕だ。墨守で有名な僕だぜ。

 今僕に抱かれて泣いてるのは球磨川雪(そそぎ)。僕の同類……ってわけではないが、同胞だ。

 

 雪(そそぎ)ちゃんとは、実は彼女が中一の頃から面識があってね。いやー、あの時は驚いたぜ。何かに呼ばれた気がしてその辺をうろついてたら、雪(そそぎ)ちゃんに突然斬りかかられて、迎撃したら嬉しそうな顔をして、その後泣き始めたんだから。

 

 しかもどうやら悪平等(ノットイコール)……いや、善平等(イコール)とでも言うべきかな? 僕のような人外や、ただそこにいるだけの彼とは違って、この世界の全人物を愛しているからこその平等だからね。

 

 物事を上から俯瞰して、全ての事象にさながら神の不変の愛(アガペー)のように、遥か天から愛を注(そそ)ぐ……故に雪(そそぎ)。

 

 上手いこと名付けられたもんだぜ。てっきり罪を雪(そそ)ぐから雪(そそぎ)なのかと思ってたが……どうやら違うらしい。だ(・)っ(・)て(・)彼(・)女(・)の(・)視(・)点(・)は(・)僕(・)よ(・)り(・)も(・)遥(・)か(・)上(・)に(・)存(・)在(・)し(・)て(・)い(・)る(・)か(・)ら(・)。

 

「めだかくんにも絶対嫌われたぁ……今考えるともっと良い手があった気がしてくる……絶対そうだよ嫌われずに済む方法あったよようやぐでぎだどもだぢがぁ」

 

「いやー見事な泣きっぷりだねぇ。僕としてもあやし甲斐があるぜ」

 

 ……こ(・)れ(・)の在り方は本当に歪だ。まあそれもこれも雪(そそぎ)ちゃんが持つ変数(ヴァリアブル)という性質のせいなんだが。ど(・)う(・)や(・)ら(・)特(・)定(・)の(・)個(・)人(・)に(・)向(・)け(・)た(・)想(・)い(・)が(・)突(・)出(・)し(・)て(・)強(・)く(・)な(・)る(・)と(・)、悪(・)平(・)等(・)性(・)は(・)失(・)わ(・)れ(・)る(・)ら(・)し(・)い(・)。これについて分かっていることといえば、それくらいしかない。

 

 ああ、それともう一つあった。めだかちゃん達はどうやら「変数(ヴァリアブル)」のことを「一番意識している人物の特性をコピーする」ものだと思っているらしいが……見当違いもいいところだよな。本当にそんなことができるなら、僕の一京のスキルをコピーしまくることだって出来ちまう。

 

「変数(ヴァリアブル)」の本質は代わりに入ると書いて代入だ。本(・)人(・)を(・)目(・)の(・)前(・)に(・)し(・)て(・)コ(・)ピ(・)ー(・)し(・)た(・)ス(・)キ(・)ル(・)を(・)使(・)用(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)は(・)で(・)き(・)な(・)い(・)。

 

 えっ? 「本人を目の前にして同じ動きをしてた時があるだろ」って? ああ、してたさ。ただし「変数」は関係なしに、身体能力だけで。

 

 つまり、だ。僕がこれの心の中にいる限り、雪(そそぎ)ちゃんは僕のスキルをコピーできないってことになる。そうしておかないと、あまりにも雪(そそぎ)ちゃん一強の展開になっちまうからね。

 

 おっと、もう一つ思い出した。

 最初出会った時、僕は雪(そそぎ)ちゃんのことを普通の異常(アブノーマル)だと思ってたんだが……ど(・)う(・)や(・)ら(・)彼(・)女(・)、ア(・)ブ(・)ノ(・)ー(・)マ(・)ル(・)っ(・)て(・)わ(・)け(・)で(・)も(・)無(・)い(・)ら(・)し(・)い(・)。

 

 いや、もっと厳密に言うと……普通(ノーマル)でもあり、異常(アブノーマル)でもあり、過負荷(マイナス)でもあり、悪平等(ノットイコール)でもある。故に、変数(ヴァリアブル)である。そういうことらしい。

 

 まあまだ異常(アブノーマル)になってないってだけさ。いつか異常(アブノーマル)になった時、雪(そそぎ)ちゃんはどんなスキルを得るのかな?

 

「ぐすっ……ありがどう、安心院ざん……ちょっどはおぢついだ」

 

「おや、もういいのかい? 僕の胸の内で涙を流すとか、生きてるうちには二度と経験できないかもしれないんだぜ? もったいなく無いかい?」

 

「生きでるうちにっで……ぼくはもうじんでるでしょ」

 

 違いないね。わっはっは。

 

 


 

 

 ふう、落ち着いた。いやー、みっともないとこ見せちまった……私っていっつもみっともないとこ見せてない? 気のせい?

 

「ほんとありがとね。演技しっぱなしってのもなかなかに疲れるものでさ、たまにはこうやって発散しないとだね」

 

「君もまた難儀なことだね。その生き方って余りに生きにくいと思うんだが」

 

「生きにくい? いや、そう思ったことはないかな。私がこの世界に生まれたのは、きっとみんなを笑顔にしてあげるためだ。そのためなら何だってできるよ」

 

「善吉くんは怖がらせてたのにね。とんだダブスタだぜ」

 

 それは言うな。また泣くぞ。すぐ泣くぞ。

 

「あっそうだ。そろそろ向こうに帰んなきゃだし、安心院さんには今のうちに言っておかないといけないことがあるんだよね」

 

「おや、珍しいこともあるもんだね。同胞の頼みだ、何でも言ってみるといい。一京のスキルでどうにかできる範疇ならどうにかしてやってもいいぜ」

 

「頼もしすぎる……えっとね、前(・)に(・)預(・)け(・)て(・)た(・)分(・)を(・)返(・)し(・)て(・)欲(・)し(・)い(・)な(・)」

 

「何だ、そんなことならお安い御用さ……ただ、それだけじゃ面白みがないな。よし決めた。お安い御用とは言ってしまったし、大(・)特(・)価(・)っ(・)て(・)こ(・)と(・)で(・)も(・)う(・)一(・)つ(・)あ(・)げ(・)ち(・)ゃ(・)お(・)う(・)」

 

 え? マジ? 普通に嬉しいぞ。これでまた目的の成就に一歩近づいた。ありがとう安心院さん……むぐっ。

 

「──はい、これで元(・)通(・)り(・)。それどころかアップグレードも込みで、僕みたいな美少女の口写し(リップサービス)も付いてくる。満足かい?」

 

「……………………いまならなんでもできるよ」

 

「そうかい、それじゃあさっきまでいた所に戻るといい。多分近いうちに再会することにはなると思うが、それでも一応、別れの挨拶くらいはしておこうか」

 

 

「またね、雪(そそぎ)ちゃん。」

 

 


 

 

「……またね、か……」

 

『おはよう雪(そそぎ)ちゃん。お目覚めの気分はどうかな?』

 

「……さいこう。いい夢見れたからね、夢見心地だよ」

 

 寝起きにお兄ちゃんの顔……最高だな。まんまるな目がチャーミングで愛くるしい。いつまででも見ていられる。

 

『うーん、その調子だとやっぱり雪(そそぎ)ちゃんも彼(・)女(・)に会ってきたのかな?』

 

「うん。あのねあのね、聞いてお兄ちゃん。わたし、ファーストキスもらわれちゃった」

 

『……………………………………………………?』

 

 あれっ? お兄ちゃんどうしたんだろ。急に固まっちゃって。おーい、お兄ちゃーん?

 

『えっとつまり、彼女が彼女になったってことかな?』

 

「展開すっ飛ばしすぎだよ!? 一回キスしたくらいじゃ恋人にはならないから! 少年漫画ばっかり読んでるからそんなことも分からないんだよ!? たまには少女漫画も読まないと!!」

 

 全くもう……困っちゃうな。一回キスした程度で恋人になっちゃうんだったら、幼少期のめだかくんとかどうなるんだよ。一妻多夫多妻とかいう訳のわからない状況になるぞ。

 

『うーん……釈然とはしないけど……まあいいや。僕(・)の(・)言(・)っ(・)た(・)通(・)り(・)、過負荷(マイナス)は(・)取(・)り(・)戻(・)し(・)て(・)き(・)た(・)み(・)た(・)い(・)だ(・)し(・)ね(・)』

 

「あー……そのことなんだけどさ……」

 

『口籠ることないさ。もし取り戻せなかったのなら、どこかでもう一回会いに行けば……』

 

「いや、過負荷(マイナス)は取り戻せたんだけど──」

 

 

「おまけでスキルも貰っちゃって」

 

『は???』

 

 

『……まあいいさ。妹にできることが増えたのなら、素直に喜んでおくべきだよね、兄としては。おめでとう……でいいのかな? この場合って』

 

「うん……? 多分、合ってるんじゃないかな……?」

 

 いやー、スキルを貸してもらえるなんてまさかまさかだよ。しかも私の過負荷(マイナス)と組み合わせると酷いことになる。なんつーか、多分ラスボスみたいになるんだよな。

 

「あっ、そういえばさ。善吉くん達は地下駐車場に向かったの? 志布志くん達はしっかり血の海で海水浴して、死体の山を築けたのかな?」

 

『ああ、その辺は心配しなくてもいいよ。雪(そそぎ)ちゃんの時間稼ぎのおかげでやることはやって来たらしいし、全員無傷だってさ。すごいよね』

 

 そっか。それなら良かった。ちゃんと原作通りに進んでいる……いやまあ、喜ばしい反面、やっぱり私がいても変わらないんだな、という虚無感はあるけどさ。

 

『いやー、それにしても……まさか善吉ちゃんがあそこまで強くなってるとはね。前見た時は普通の弱っちい男の子だったのに、今や漢って漢字(感じ)になっちゃって……あれ、どしたの雪(そそぎ)ちゃん、顔真っ赤っかにしちゃって』

 

「いや、あの、えっと……んふふ……いや、さっき、抱きしめられたのを……んふ、思い出して……んふ、んふふ……だめだよ善吉くん、君にはめだかくんという人が……」

 

『……相変わらず惚れやすいなあ。さすがは僕の妹って感じだぜ……どうしてくれるんだよ善吉ちゃん。雪(そそぎ)ちゃんが使い物にならなくなっちまった』

 

 善吉くんの体、おっきかったなあ……。

 んふふ、いつかまた抱きしめてくれるかな?

 

 なんちゃって。不埒すぎるぜ。

 

『それじゃあ雪(そそぎ)ちゃん。庶務戦敗北記念に、マイナス十三組のみんなでカラオケでも行こうか』

 

「えっほんと!? 行く行く! 歌いまくるよ今日は負けたからね!」

 

 久々お兄ちゃんとのカラオケだ! この三年でどれだけ上手くなったか見せてやるからな! 覚悟しとけよ!!

 

 






 なんか勝手に雪(そそぎ)ちゃんがどんどんヤバくなってくんですけど、どうしたらいいですか。

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