実は6月25日が誕生日でした。
いぇーい。
やあみんな、俺私だ、球磨川
いやー、あの後は色々大変だったよ。くじらくんをマイナス十三組に勧誘してみたんだけど「意外と生徒会の奴らが好き」って気づかれちゃって……いやまあ私としては気づいてもらわないとものすごい困ることになってたんだけどさ。
まあその後志布志くんとくじらくんが喧嘩をおっ始めちゃって……くじらくんは書記戦に出馬することになった。原作通りに。
そして私たちは今……巨大な冷凍倉庫の前にいた。
零下48℃を誇るこの冷凍倉庫で行われるのは『冬眠と脱皮』という形式だ。前回とは違い、相手の身ぐるみを全て剥いだ方の勝利となる。
おっ、くじらくんさっすがー。こんなもん見せられたら初見は絶句して逃げ出したっておかしくないんだけどな、もうルールのこと考えてるよ。凄まじく肝が据わってるね。それでこそ……いや、やっぱやめとこ。
この前善吉くんに押し付けはやめろって言われたばっかだしな……私は散々押し付けるなって言っておいて、他人には理想像を押し付けてたとかどんな笑い話だよ……笑えない。
笑えないといえば……もう一つ。
この書記戦の時って、めだかくんとお兄ちゃんが手錠で拘束されて±0にされてるんだよな。だから途中まで二人とも大人しいんだが……。
「なーんで俺たちまで一括りにされてんだろうな?」
……善吉くんと私も一括りにされてんだよな。なんで? いやマジで、罪悪感と恥ずかしさで直視できないぞ顔を。さっきから顔を真っ赤にしたまま借りて来た猫みたいに縮こまってる。
「長者原先輩、どうして俺と
「黒神さまと禊さまを一纏めにしておくのが最も効果的であるように、人吉さまと
「だってよ
善吉くんさあ、私は一応マイナス十三組側なんだけど? その辺のことわきまえてから話してくれよ。
「……っあ、ぜんき……ひと……善吉くん、あの、私はほら、一応、さ? ね? ほら……ね?」
「えっと……どうしたお前? 熱でもあんのか?」
……殺してくれ。これのどこが効率的なんだ。私はもう善吉くんとまともに話せないんだよ!! だってそうだろただでさえ好きなキャラクターで大好きな親友なのに抱きしめられながら生きてるうちに仲直りできてよかったとか親友のお前となら一緒に死ぬのも悪くないとかそんなこと言われたら誰だってこうなるだろならない奴もいるかもしれないけど私はなるの!!!!
「はぁっ……はぁっ……熱じゃ……ない……!」
「いや
「──────ッ!?!?!?」
おっ、おでこっ!? ひと、善吉くんに、おでこ触られっ……顔近い! 顔近い!! んだこのやろーてめえ何でそんな顔近づける必要がああ顔の赤み見るためねなるほどね!! それ意味ないよだって現在進行形で赤み増してるからそれやめろ!! ほら後ろ見ろめだかくんとお兄ちゃんが苦虫みたいな顔してる噛み潰したみたいな顔してるからぁ!!
「あの……善吉くん? そのくらいにしておいてあげた方がいいんじゃないかな……」
「……まあ、お母さんがそう言うなら大丈夫なんだろうけどよ、なんか困ったことあったら言えよ? 今は敵だけど、それ以前に親友なんだから」
「……うん」
この女たらし……私がもともとぼくじゃなかったら終わってたぞ今ので。落ちるところだった危ない危ない。セーフセーフ。
「そろそろいいか? アツアツのお二人さん。さっさとおっ始めてさっさと終わらせたいからよ」
「俺は構いませんよ。そもそもアツアツでも何でもないですし……もっとも、ここにいるだけで身も心も凍りそうですがね」
「あー、それは確かに言えてるね。零下48℃とか……想像しただけでも凍え死にそうだよ」
だから志布志くんもくじらくんも中々イカれてるんだよな。志布志くんに至っては何の対策もしないで突っ込んで行くし……おや、めだかくんがやけに静かだね。これこそまさに絶句ってやつ?
『どうしたのめだかちゃん、黙りこくっちゃって。脱衣という自分の専門分野を取り逃して残念なの?』
「……黙りたくもなるわ。私達は貴様達に勝とうと命懸けで躍起になっておるのに、貴様達は勝ち負けを度外視して嫌がらせみたいな戦法ばかり取ってくるのだからな」
『あー、そりゃそうだね。でも勝ち負けを度外視してるって決めつけられるのは心外だな、こっちはこっちで真剣なんだから。よし! じゃあこうしよう』
めだかくんの苦言に、むしろお兄ちゃんは甘言で返した。
『もしもこの試合で飛沫ちゃんが名瀬さんに負けたら、僕はその時点で箱庭学園から手を引くよ』
あっちゃあ、言っちゃった……ってほどでもないんだけどね。当然これもお兄ちゃんの策略だ。だってほら、ここでこのままお兄ちゃんが退学していったら、
そうやってめだかくん達を腐らせようっていう作戦だ。意地が悪いし、趣味も悪い。だけど私はそんなお兄ちゃんが大好きだ。
『
「いや、別にいいよ。お兄ちゃんがしたいことが、私のしたいことだから。そりゃあ多少は名残惜しさもあるだろうけど……うん、平気だね」
『ということで、僕達は本気と書いてマジだぜ。そんなわけで飛沫ちゃん、マイナスに言うことじゃないけど……頑張って絶対に勝ってね』
「……ひひひ、無茶言うなあ球磨川さん、あたしの弱さを知ってるくせに! 勝つとか! 99%無理に決まってんだろそんなこと──」
まるで諦めたかのようなことを言う志布志くん。
しかしその顔には、
「だけど! 1%でも可能性がある限りあたしは諦めない!!」
うわー、寒そう……私だったら少しは尻込みしちゃうだろうけど、志布志くんからすればこの程度の逆境は日常茶飯事だろうしね。マイナスの年季が違う。おっ、くじらくんも倉庫に入っていく……が、既に書記戦は始まっている。
だからまあ、油断してたくじらくんが悪いよな。
くじらくんが倉庫に足を踏み入れた瞬間、全身から血が吹き出してその場に倒れ込んでしまった。
「なっ……おい
「あー、まあ想像の通りだよ。言うまでもなく、見たまんま志布志くんの
「……お前、普通に話せてるな」
「ん? ああ、
「………………俺は何も見てねえ」
あらまあ、意外と純情。そんなこと言ってるとここから先は目を逸らしっぱなしになっちまうぜ。
さて、そんなことを話しているうちに、くじらくんは解いた覆面にこびりついた血液を凍結させて作ったハンマーで、志布志くんの顔面を強打していた。うへー、痛そう。
それに対抗してカミソリの刃で服どころか皮を剥ぎに行った志布志くんだったが……当然、くじらくんもその辺りは考慮してる。衣服の下に着込んでいた、特殊な防刃タイツである『
しかも無効化ついでに注射器を大量に志布志くんに投擲し、全身を針の
ノーマライズ・リキッドは言うなれば、
だからほら、全身に怪我を負うことになる。
「なっ……
「はいはい、解説役の
「解説どうも、
……カッコ良すぎるな、マジで。「血飛沫」と「致死武器」の掛け言葉が最高だ。
とか、そんなことを考えていた折。
どう考えてもダウンしていなければおかしいくらいの傷を負ったくじらくんは、しかし未だ零下の世界で動き回っていた。
「へぇ……今のを食らってもまだ動けんのか。だけど無駄だぜ名瀬先輩。聞いた話によるとあんた、幸福になるために不幸を追い求めてたらしーじゃん? だったら心の古傷の方を開いてやれば決着だよなああぁぁぁ!!」
「っ……ひっ、ひいいいいいいいっ!!」
うわー、珍しいくじらくんの情けないシーン……いやまあ、これも彼女の策略の内なんだが。相当な精神的ショックを受けているはずなのに、その直後にリカバリー案を考えつき、すぐさま実行に移すってとんでもない胆力だよな。私にもそんなことはできない。
志布志くんに追撃を入れられつつもくじらくんは倉庫のブレーカーの元に辿り着き、ニヤリと不敵な笑みを浮かべると、ブレーカーを落として停電した一瞬の隙に、パンツ以外全ての服を脱いで身を隠した。
「ほら善吉くん善吉くん、パンイチのくじらくんが見られるチャンスなんてこれ以降ないぜ? 今のうちに網膜に焼き付けておきなよ」
「嫌だね、断る。第一そんなことをしたら、俺は命を懸けてくれている名瀬先輩に顔向けできねえ。だから無理だ」
「……それもそうだね。私もそろそろ茶化すのはやめようか。どっちにしろ、もう少しで決着はつきそうだしね」
よし、えーっと……この後どうなるんだっけ? くじらくんにめだかくんが理想を押し付ける所までは覚えてるんだけど……あっそうだ、めだかくんがお兄ちゃんの頭をガラスに叩きつける……いや人のお兄ちゃんに何しようとしてくれてんの?
しかもお兄ちゃんここに限って悪くないしな。完全にめだかくんの私情が挟まれてるし……。
よし決めた。秘密だぜ変えるか。
突然倉庫のガラスが割れる。
「なんだ!? ガラスがいきなり割れて倉庫内の冷気が一気にこっち側に……!?」
「……なんだ、丁度いい。聞こえますか、お姉さま。理不尽な敵の能力に追い詰められ、事前の準備は全て水泡に帰し、打つ手はもう残されていなくも見える。しかしめだかは、あなたを心配も激励もしません。何故ならあなたは! 黒神くじらという姉は! 逆境でこそ輝く人だから!!」
こんな演説を聞かされてしまっては、くじらくんも動くしかない。あの人はそういう人だ。イメージの押し付けや理想の押し付けではなく、単純に根が良い人だから断言できる。
だからほら、志布志くんへの対抗策は既に完成したようだ。血痕を辿ってくじらくんに攻撃を仕掛けた志布志くんの手は、一瞬のうちに凍ってしまった。
「ふうー、危ねえ危ねえ、自分自身の体を
「ってめぇ、まさか! 自分で自分を改造して、
「ああそうさ大正解その通り!
「素晴らしいものは地獄からしか生まれないと、俺は常々そう言ってきたけどよー、ちょっとばかし修正しなきゃいけねーなー。なにせこんなおぞましい
『
『……怯えてんじゃねーよ志布志! 聞けばそいつが『
うーわ陰湿……だからこそお兄ちゃんなんだが。それでこそだよ、マイナスっていうのは。おっと、勇気づけられた志布志くんが『
開いた傷口はすぐに凍らせて塞ぎ、それ以上の出血を防ぐ。心の傷を開こうとしても、頭を冷やしているのでクールになれている。
「……名瀬さんらしい解決策ね。ダメージを回避するのではなく、その上でどうやって戦い続けるかを目論むなんて……」
「そういう子なんだよ名瀬ちゃんは。無傷で何かを得ようなんて絶対に考えない」
「……そういう、人だったな」
古賀くんはこう言っているが……これって惚気だよな? 絶対そうだよなこれものすごい高度な惚気だよな。初見じゃ気づかないだろ。
『……はあ。がっかりだよ名瀬さん。ピンチになったら奇跡的に都合よく新たなるパワーに目覚めるとか、そーゆーのは週刊少年ジャンプの中だけにしてほしいよね』
うぐっ。やめてくれお兄ちゃん、その口撃は私に効く。ついこの前、都合のいいことにスキルを入手した私の前でそんなことを言わないでくれ。後生だ。
「……球磨川禊。漫画読みすぎ漫画脳なお前に、ひとつだけ常識を教えてやる」
『何かな?』
「努力が実を結ぶことを、
『……飛沫ちゃーん、いーやもう負けちゃって』
おっと、来るぞ志布志くんの全力全開の
「OK! 負けていいなら
敵味方・生物無機物の区別を付けず、広範囲に渡ってただ傷を開くだけの
…………ぁ? あれ、わたし、どうなってる? ぜんきちくん。どこみてる? どっちむいてる? ぜんきちくん? きこえてる? どこにいる? おにいちゃん。どこ? おにいちゃん、おにいちゃん。わたし、わたし、どうなってるの。どうなってるの? たってる? すわってる? あるいてる? とまってる? はしってる? しゃがんでる? ねころんでる? みてる? きいてる? かいでる? さわってる? かんじてる? いきしてる? とめてる? はなしてる? つかんでる? いきている? しんでいる? しんでいる? しんでいる? しんでいる? しんでいる? しんでいる。しんでいる。しんでいる。しんでいる。しんでいく。しんでいく。しんでいく。しんでいく。死んでいく。死んでいく。死んで、死んで、死んで、死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んだのはいつだったっけ。
もうおぼえてないな。
おぼえてるのは、死んだことだけだ。
人外と欄外、二次会開催。
大学が本格的に忙しすぎてですね、毎日投稿とかちょっと現実的じゃないのでやめておきます。身が持たない。
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