TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 今回、過去一で独自設定が暴走します。
 お気に入り数が減りそうで怖いですが、思い斬って投稿しちゃいます。お覚悟願います。




第22箱「球磨川(そそぎ)だよ?」

 

 

「OK! 負けていいなら過負荷(わたし)修羅場(みせば)だ!!」

 

「なっ……『致死武器(スカーデッド)』の効果が……ここまで届っ……!?」

 

「私達にも見境なく……いや! どころかこれは──倉庫の壁や床にまで見境なく亀裂が走っている!? なるほど、10年ぶりのあのスキルですね!」

 

 志布志が気合を入れて叫んだ直後、その場にいた全員の体と、決戦場である倉庫全体に亀裂が走った。『致死武器(スカーデッド)』によるものではなく、『憎武器(にくしぶき)』バズーカー・デッドという過負荷(マイナス)によって。

 

 ──通常であれば、この後名瀬が『凍る火柱(アイスファイア)』によって倉庫全体と全員の傷口を凍らせて事なきを得るのだが……生憎、そうもいかなかった。

 

 

(そそぎ)の上半身と下半身が真っ二つになったから。

 

 

「…………は? いや、いやいや、()()()()()()()()()()? あくまであいつの過負荷(マイナス)は古傷を開くものであって、こんな、大怪我をさせられるはずが……うっ──!」

 

 善吉は隣にいた(そそぎ)の腰から下だけが地面に崩れ落ち、上半分を支えているのが自分の腕だけであることに気づき、地面に這いつくばりながら胃の中身をぶちまけた。

 

「はっ……はっ……!! おい球磨川テメェ、まさか(そそぎ)にとんでもねえことしてるんじゃ……ッ!?」

 

 善吉は一通り吐き終えてから禊に向かって疑いの目を向けたが、肝心の禊は驚愕の表情を隠すことをしなかった。

 

『……いや、そんな、そんなことが、あるわけが……あの(そそぎ)ちゃんに限って、そんなはずは……』

 

「球磨川ッ!! 貴様、考えるより先にする事があるだろう!! (そそぎ)は貴様の妹なのだろう!? 自失している場合じゃないだろうが!!」

 

『……それもそうだね。そもそも大体昔の僕とは違って、今の僕には『大嘘憑き(オールフィクション)』がある!』

 

 めだかの叱責によって一瞬の自失から復帰した禊は、(そそぎ)の体に螺子を捻じ込み……(そそぎ)の死をなかったことにするため、『大嘘憑き(オールフィクション)』を使用した。

 

 

改稿。

(そそぎ)と安心院は同じ体を共有できる。

 

改稿。

(そそぎ)以外は安心院が関わっていることを確信できない。

 

 

 起き上がってきたのは球磨川(そそぎ)という黒髪童顔の、箱庭学園の制服を着用した少女ではなく──白髪と黒髪が混ざり合った、身長は150cm半ば程の、巫女服と制服を折衷したかのような衣服を纏った少女だった。

 

「なっ……(そそぎ)じゃない……だと?」

 

『……誰かな、君は。僕の知人にかなり似ているが、妹の面影もあるみたいだけど』

 

「おっとこれはいけない、僕とした事がどうやって名乗るか決めていなかったぜ。いやー失敬/ごめんねー。私もどうかと思うけど、何せ急拵えの後付け設定だからさ、少しの不備は見逃して欲しいかも!」

 

 突如として現れたその少女の在り方は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。口調もバラバラ、立ち振る舞いも滅茶苦茶。だけどなんだか、()()()()()()()()()

 

『なんでもいいんだけどさ、僕の妹の体で好き勝手しないでくれるかな? どこの誰だか知らないけど、僕だって妹の体を好き勝手されれば怒るんだぜ?』

 

「いや待ってよお兄ちゃん。姿形は変わったし/話し方や立ち振る舞いも変化することはあるけれど、それでも僕は/お兄ちゃんの妹の球磨川(そそぎ)だよ?/ま、要するに気が変わった……みたいなものさ」

 

『……どうやら、あながち嘘でもないらしいね。ちゃんと過負荷(マイナス)で、しっかり負完全(マイナス)だ。それも一度……いや、二度死んだ事が原因かな?』

 

「うーん、どうしようかな。今ここでネタバラシしちまうってのも、まあありといえばありだけれど……/まあ大体そんな感じだよ。後々お兄ちゃんの『大嘘憑き(オールフィクション)』で蘇るとはいえ、痛いものは痛いし……/わざわざ痛い思いをする趣味もないからね、戦挙戦の期間中はこのままでいようかと思ったってわけさ」

 

 理由を説明されて禊は納得行ったようだが、それ以外の面々からすれば訳が分からない。見知った顔が、突然見知らぬ顔になってしまったのだから。

 

「ところで貴様……いや、(そそぎ)か。善吉に何か言うことがあるのではないか?」

 

「あー……ごめんね善吉くん。バズーカー・デッドを受けると私の体はヤバいことになるって説明し忘れてたよね。ごめんなさい。色々ぶちまけちゃった」

 

「……いや、お前が無事なら、俺は別に何だろうが構わねえんだけど──色々ぶちまけたのは俺も同じだし──ただ、なーんかお前のその感じ、身に覚えがあるんだよな……

 

「……へえ、なるほど。多分それは善吉くんの勘違いだと思うぜ? 僕は今も過去も未来もこんな感じだからね。/だからあんまり気にすることないと思うよ? 私と善吉くんが親友だってことだけ分かってれば十分だよ!」

 

 (そそぎ)はそう言って、見下すように/人懐っこく笑った。

 

 


 

 

 遡ること数分。いつもの教室で安心院さんと私は、お菓子をつまみながら駄弁っていた。

 

「君も難儀だねえ。まさかたったの一週間で二回も死ぬ羽目になるなんて」

 

「本当にねー。あっそうだ、この前お礼言い忘れてたよね、スキルの。ありがとう。有効活用させてもらうね」

 

「いやいや、別に気にしなくてもいいよ。あんなのは僕にとって容易いことだからね、寧ろもっと頼ってくれたっていいんだぜ?」

 

 いやー、そういうわけにもいかないでしょう。そもそもといえば、私がバズーカー・デッドの存在を忘れていたのが悪いんだから。

 

「まあ君がそれでいいなら、僕から言うことは何もないさ。ただひとつ、聞きたいことはあるけどね」

 

 聞きたいこと? いーよいーよ、答えちゃう。私に答えられることならね。恩返しというか、借りを返せるならそれくらいへっちゃらよ。

 

「そうかい、それじゃあ遠慮なく。まあ何となく僕も分かっちゃいるんだが……(そそぎ)ちゃん、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 えっ。

 

 あー……。

 

 えっと……。

 

「……分かんないや。たびたび斬ってるから……」

 

「まあそんなことだろうと思ったぜ。古傷が開いたにしては、あまりにダメージが大きすぎたからね」

 

 確かにそうだけど……そんな一瞬で気づかなくてもいいじゃん。みんなには一生内緒にするつもりだったのに……。

 

「ちなみに、どんな感じの事を斬り込んでたか聞いてもいいかな。恩着せがましいかもしれないが、まあスキル代としてね」

 

 それを言われたら私は断れなくなるんだが……はあ。

 

「まあいいや。取り乱した時にパッと気持ちを斬り変えたり、怪我をした時に斬って治したり……あー、あとは何かやらかした日に、自戒の意味も込めて切腹したりとか」

 

 他にも「(そそぎ)は転生者であることを他人に口外できない」とか「(そそぎ)に前世の記憶がある事は本人以外知る事ができない」とか「(そそぎ)の記憶を他者が覗き見ることはできない」とか「(そそぎ)はトイレに行く必要がない」とか斬り込んでるが……これは流石に言えない。というか、言うわけにはいかない。

 

「へえ。球磨川くんとは違って(そそぎ)ちゃんは傷をなかったことにしてるわけじゃないし、そりゃあ古傷を開かれたら死んじまうよな。で、僕に何か言うことは?」

 

「黙っててごめんなさい……」

 

「よろしい」

 

 言い訳をするのであれば、どうせ安心院さんは気づいてるだろうしいっかって思ってたんだ。だけど流石にこれは私が悪い。素直に謝るが吉だ。

 

「で、これからどうするんだい?」

 

「え? どうするって言うと……」

 

「これから先会計戦、副会長戦、会長戦が控えているわけだが、その度に君は死ぬつもりかい? 心の片隅を間借りしている僕が言うことでも無いと思うが、毎回死なれると流石に迷惑なんだよね」

 

 えーっと……本当にお前が言うことじゃないなそれは。ただ……確かにこれ以上死ぬ意味もないよな。というかそもそも今回は死ぬ予定なかったんだけどね。

 

「そう言われてもなー……今はまだ、死ぬのを避けるためだけに過負荷(マイナス)を使うとかはしたくないんだよね。だから──」

 

「いやいや、僕が言いたいことが分かってないみたいだからこの際はっきり言うけど、(そそぎ)ちゃん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ──はえっと、それは? つまり、どういう事? ドラゴンボールのフュージョン(あるいはポタラか)よろしく、私と安心院さんが融合するって事?いやまあ、面白そうな試みではあるけど……。

 

「……乗っ取ったりしない?」

 

「しないしない。そもそも大体、乗っ取れるんだったらもうやってるさ。だから安心してくれよ(安心院さんだけに)」

 

 こっわ。そういう事さらっと言わんでくれ、悪平等(ノットイコール)。そんなんだからラスボス候補なんて呼ばれるんだぞ。

 

「まあ、言いたい事は分かったよ。つまりあれでしょ?私の身に危険が迫った時、安心院さんが約一京のスキルで助けてくれる、的な」

 

「その通りさ。危なっかしくておちおち昼寝もできないからね」

 

「お前、私達が命削ってる中で昼寝してんのか……」

 

「睡眠の導入に丁度いいんだよ、みんなが頑張って鎬を削ってる様子は」

 

 こいつ……悪魔か?

 

 いやまあ、悪魔か。

 

 ドラゴンボールならブロリーだよ。

 

「つってもなあ、そもそも私達で身体を共有するってどうやってやるの? 安心院さんのスキルでどうにかするの?」

 

「いや? どうにかするのは君さ、僕じゃない。ほら、独自設定を押し通すのにピッタリな過負荷(マイナス)が君にはあるだろう? この前返したやつ。蘇った瞬間にあれを使えばいいのさ」

 

 あー、なるほど……でもそんなことしたら、私の過負荷(マイナス)が更に退化(強化)されてるのがバレちゃう──まさか。

 

「この前もらった異常性(アブノーマル)! この時のため!?」

 

「いや別に? いらないからあげただけだけど」

 

「違うんだ……」

 

 それより今さらっと「いらない」っつったか? 流石人外、このレベルのスキルくらいならいくらでも持ってるってわけか。

 

「つまり蘇った瞬間に異常性(アブノーマル)過負荷(マイナス)を同時に使用して、上手いこと誤魔化すと……そういうことだね」

 

「大正解。僕の思いを汲んでくれて何よりだぜ。さ、(そそぎ)ちゃん。方針も決まったことだし、さっさとやろうか」

 

 こうして、私と安心院さんの愉快な二次会は終わった。結局最後までお菓子は食べきれなかった。もったいない。

 

 


 

 

 というわけでどうも、球磨川(そそぎ)だ。起き上がった私達を見てお兄ちゃん達はびっくり仰天していたようだが……そりゃそうだよな。お兄ちゃんがいきなり安心院さんと融合してたら私だってビビる。

 

 結局あの後私達は戦う前の約束を守って箱庭学園から出て行こうとしたんだが……古賀くんがめだかくんを説得して、くじらくんが自分の負けを宣言して、結局出て行く事は出来なくなっちまった。まあこれでいいんだけどね。

 

 で、今私は何をしているかというと……螺子を捩じ込まれて尋問されていた。

 

『さて、悪い事は言わないからさ、早めに吐いたほうが身のためだと思うぜ?』

 

「えっと、何のこと……」

 

(そそぎ)()()()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

「…………」

 

『僕は寛容な兄だから妹の交友関係にとやかく言うつもりは無いけどさ、もし妙なことをするようだったら──』

 

 

『もう一度面の皮を剥いであげる』

 

 

「──ふーん、そいつは魅力的な提案/大丈夫だよお兄ちゃん! 主導権は私の方にあるから! だから、ねっ! いい加減お腹が痛いから螺子を引っ込めて欲しいなー!!」

 

『うん、それならいいんだ。妹に友達が増える事は喜ばしい事だからね、おめでとう(そそぎ)ちゃん。素直に祝福するぜ』

 

「あはは……ありがとね……」

 

 一瞬でバレたな……ってことは、お兄ちゃんが大嘘憑き(オールフィクション)を使ったせいか、私の過負荷(マイナス)が効いてないってことか……うっかり口を滑らせないように気をつけよう。バレたら取り返しがつかないからな。

 

 特に、安心院さんには。

 

 






 はい。『(そそぎ)ちゃん負安心モード』です。
 独自設定タグがあって良かった。

 ちなみに、安心院さんと(そそぎ)ちゃんは思考までは共有してません。あくまで身体だけです。安心ですね。

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