今回は最後にアンケートがあります。
が、以前みたいにルートが分岐するような事ではないので気軽に投票お願いします。
「人吉先生、
八月十五日の昼下がり、生徒会戦挙副会長戦を終えた現生徒会メンバーと、日之影の戦いを応援しにきた生徒達は、戦いの舞台となった新校舎建設予定地の残骸の中にいた。
半袖の『
「怪我なんて生易しいものじゃないわよ、これは……日之影くん、それでよく生きていられるわね?」
「は……頑丈さだけが取り得でしてね。今は無くなっちまいましたが、『
そこまで日之影が語ったところで、名瀬が日之影に食ってかかった。一体どのようにして
「あー、それな……説明しなきゃいけねーけどなー、口止めされてんだよなー……おっと、そうだ。一つ思い出したことがあった」
そう言うと日之影はめだかの方を向き、再び口を開いた。
「これは殆ど確定事項だと考えてくれて構わない。今から俺が言うことは100%その通りになる。突然だが、信じてくれるか?」
「無論です。貴方ほどの人がそこまで断言するのであれば、信じない者など居ないとは思いますがね」
「そうか……ありがとう、恩に着る。これは
「……成程、分かりました。会長戦までは一週間しかありませんし、早急に候補を決めておくことにします。ありがとうございます、おかげで助かりました」
めだかはそれを聞き、日之影が驚くほどの理解力をもって、情報が誰からのもので、マイナス十三組がどのように動くのかを瞬時に理解し、勝利の余韻に浸ることなくすぐさま会長戦へと意識を向けた。
「……お前は強いな、黒神」
「貴方ほどではありませんよ。それに、私より強いものなど星の数ほどいます。身近な例を挙げるとすれば……
「球磨川妹がか? 俺みたいな隠居生活真っ最中の老人からすれば、あいつがお前に勝っているところなんて……いや、違うな。
「ええ、そういうことです──」
「はっはっは!
突然二人の会話に横から割り込んできたのは、つい先ほど『狂犬落とし』のルールに敗れた蛾々丸だった。彼の持つ
「いやー見事でした、完敗でした! この蝶ヶ崎蛾々丸! 一片の悔いなく敗北を認めます! で──それがどうしました? あなたは瀕死なのに私はピンピンしていて、
負けたはずである蛾々丸は、勝ったはずである日之影に向かっていっそ清々しく、まるで勝ち誇るかのように言ってのけた。
「あなたはルールを利用してこすく勝っただけでしょう。それでどうやって
そんな蛾々丸のあまりにもあんまりな台詞を聞いた一般生徒達は、志布志と蛾々丸をこぞって攻撃し始めた。
「お前らこそ思い上がってんじゃねーよ! 盗人猛々しいとはこのことだぜ! 改心しようがしまいが関係ない! 次の会長戦で負けて! お前達は箱庭学園から出て行くんだよ!!」
「そうよ! あんた達なんてもう怖くないわ!!」
それを聞いて志布志と蛾々丸は肩をすくめていた。彼ら彼女らにとって、忌み嫌われることなんて日常茶飯事だから。
(んー……ちょっとまずいかもなこの空気……こうも罵られているところを見ると、めだかちゃんのモチベーションが下がっちまうかも……)
善吉がそんな風に、半ば杞憂じみた憂いを頭の中で巡らせていると、騒ぎの中心に向かって来る、二つの足音が響き──そして一言、たった一言を口にした。
それだけで、人の海は簡単に割れた。先程まで騒がしかったというのに、まるで声を奪われてしまったかのように、皆一様に口をつぐんでいた。
一声だけで場を支配してしまった球磨川禊は、そのまま割れた人の海の中を進むと、めだかの前で足を止めて、格好付けずに、括弧付けずに挨拶をした。
「……ああ、そうだな。貴様の言葉に──貴様の心に、ようやく会えた気がするよ。
めだかは禊の背後にそう声をかけた。しかし、そこに
そこには球磨川
「……ああ、そうだな。貴様の言葉に──貴様の心に、ようやく会えた気がするよ。
「めだかくん! ぼっ、ぼくは、
「当然覚えている……というより、忘れるわけがなかろう。貴様は私の友なのだぞ。見た目や性格が変わった程度で気付けなくなるなんてことはない。安心しろ、しっかり覚えている」
「そっか……それならよかった」
球磨川
「……ああ、そうだな。貴様の言葉に──貴様の心に、ようやく会えた気がするよ。
「うん。みんなみんな、本心を曝け出して戦ってるんだ。ぼくだけ仲間はずれになるのは、少し嫌だなって思って」
「ふっ……そうか、それは何よりだ。これからは存分に! やりたいことをやりたいようにするがいい!」
めだかは学園の敵であるはずの
「ちょっと待てよめだかちゃん。まさかそんな事はねえと思うが、まだ会長戦がある事を忘れちゃいねえだろうな?」
「む? そんなわけがなかろう。折角あの
「相変わらず
善吉はめだかの言葉にやれやれしょうがないなといった感じで返しながら、
代わりに向けていた感情は、怯えだった。
「……そっ、それ以上近づかないで……! お願いだから……近づいたら、斬っちゃうからっ……斬るから!! だから……」
「悪いんだけど善吉ちゃん、それ以上近づかないであげてくれないかな。
「……てめーに言われなくても、
(
そんな考え事をしながら善吉が一歩後ずさると、
「そうかい、それならよかった。今ここで君を殺しちゃったら、会長戦とか勝ちとか負けとかそれどころじゃなくなっちまうからね。あまり
「カッ……まあそこまでするつもりがねえってことは分かり切ってるけどな。お前は飽きっぽい性格だし、
善吉は禊の突然すぎる豹変と、凄まじい剣幕に呆気に取られ、怖気付いた。先程までめだかに向いていた敵意が善吉に向いた為である。
(ぐっ……おいおい冗談じゃねえぞ……!? 球磨川の野郎、前よりもよっぽど
「『分かり切ってる』だなんて分かったような口を聞くなよ。君たちは
「待て球磨川、それは違うだろう。私達が
「いいや、違くなんてないさ。だってめだかちゃんが一緒に過ごしたお友達は、球磨川
禊はそこで一度息を継ぐと、
「そして、今までの球磨川
「っ……!」
「だから、そうだな……ここを逃せばチャンスが無くなるから、今のうちに言っておきたいことがある」
「……何を」
「僕の妹を傷付ける奴は、誰であろうと何があっても絶対に許さない。ただ、それだけだ」
そう言って禊は、辺りに居る全員を睨みつけた後、
「──なんだよ、てっきり妹にも同じような接し方なのかと思ってたが……球磨川の野郎、ちゃんとお兄ちゃんじゃねえか……」
去って行く球磨川兄妹の背中を見ながら、善吉はそんな風に独りごちた。そしてそれは、その場にいた全員の総意でもあった。
そして、来たる八月二十二日。
生徒会選挙を締め括り、箱庭学園の命運がこれにより決まる──一世一代の大勝負、会長戦が始まる。
ここまで球磨川くんがマイルドな小説ってあんまり無い気がします。完全に主観ですけどね。
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