この前ネットで調べて知ったのですが、「
時はほんの少し遡り、めだかと禊が互いに殴り合い始めた頃。相も変わらず善吉は
「諦める?」
「……まだだ」
手を伸ばせば手を。足を伸ばせば足を。一息つこうとしたなら喉を。目を瞑ったなら目を。頭を使ったら頭を。心が折れそうなら心臓を。斬って斬って斬り刻む。
「諦める?」
「…………まだだ」
頭から爪先に至るまで、ありとあらゆる部位を斬って斬って斬り落とす。血飛沫が飛ぶ。教室は赤く染まるが、「
死んでは生き返り、生き返っては逝き還る。冒涜的で暴力的な最高速の輪廻から善吉は抜け出せなかったが、
生き返った直後で周りの状況を把握出来ていない善吉の首を目掛けて
(……やっぱりそうだ、あまりにも一瞬すぎて気づかなかったが……
再び生き返った善吉の首に刃が振り下ろされる。が、今回は以前までのように首を落とされることはなく、首の薄皮一枚を斬っただけで終わった。
「途中からなんとなく気付いちゃあいたが……
「……バレたか。まあいいや、丁度いい。ぼくだってこんな借り物のスキルを使うのにも飽きてたしね」
そんな風にあっけらかんと
「そうだね、使ってないよ。今までのは幻覚を見せるスキル『
「
そうして互いに戦闘態勢をとっていたのだが、突然
「──もう勝負とかどうでもよくない? どうせめだかくんが勝って終わるんだしさ、ぼくたちはもうやめにしようよ」
暗い言葉だった。雪のように真っ白な髪の毛や、一見凛としている表情立ち振る舞いからは想像もできないほどに、軽薄で重い、薄暗く湿った言葉。
なるほど確かに
対する善吉は、すでに斬られた回数を数えるのをやめていた。それ程までに、二人の間には実力差がある。努力の差がある。才能の差がある。
善吉が血反吐を吐くほどの努力を重ねる凡人だとすれば、
だから善吉は、その言葉を聞いてこう返すのだ。
「……どうして? 半袖くんは確かに言ったよ、『全力出してみろ』って。でもさ、善吉くん。ぼくは君の心を折りたいとか壊したいとか、そういうことがしたいわけじゃないんだよ」
訝しげな表情を向けながら、
「どうしてって、そりゃあ……俺はお前の親友だからな。だからお前を救ってやりたい。めだかちゃんのようにはいかないかもしれないけど、それでも
「善吉くん、さっきから勘違いしているようだけどさ……ぼくは一度でも君に『助けて欲しい』なんて言ったかな。自分勝手に人を助けて、自分が勝手に悦に浸りたいだけでしょ」
「否定はしねえよ。極論この世界ってのは自己満足で成り立ってんだからな。めだかちゃんだって『人を愛している』って理由で生徒会やってる側面もあるし……俺だって大体同じだよ」
善吉は構えた拳を下に下ろすと、
「
「余計なお世話っつうんだよ、そういうのは。ぼくは救われたいなんて思ってないし、そもそも悲しんでも苦しんでもいない。だから善吉くんがやってるのは無駄なことだ」
「救われる準備のできていない奴は、逆説誰にも救えない──そういうことが、つまりお前は言いたいわけだな?」
「……お好きなように捉えなよ。どうせ、そのうちそんな甘いことを言ってる余裕もなくなる──」
直後、善吉の目の前から
「……意外と、やれるもんだな……
「んなっ……!? どうして無刀取りを……いやそれより、なんで
無刀取りついでに
「いや、さっきからずっと考えてたんだ。お前が言うには幻覚を見せられるスキルである『
「……で、だから? 何が言いたい……いや、言わなくていいよ。どうせぼくにとってはどうでもいいこと──」
「……どんな顔って、普通の顔だよ。いつもみたいにすました顔して善吉くんの首を斬っているだけさ。ぼくにはそれくらいしか能がないから」
「……ああそうかよ、そうか。それならこっちにだって考えがあるぜ。それもとびきりのやつがな。これはちょっと揚げ足取るみてえで言いたくなかったんだけどな」
善吉はそこで一度息を吸い込み、そして吐き出し、何度か深呼吸をすると、意を決したかのように言葉を放った。
「
「ッ……そうか、そうだね、そういえばそうだった……卑怯だね、善吉くん。君の言葉のおかげで、ぼくは罪悪感に押しつぶされそうだよ」
「ごめんな、
一呼吸、その後、一言。
「……分かったよ。剣士として、一度吐いた言葉には責任を持たなくちゃならない」
全ては元に戻る。
先ほどまでの強気な姿勢は消え去り、
「……笑ってよ。散々偉そうなことを言っておきながら、自分のことを傷つけなければ満足に戦えないぼくを笑いなよ。全部自分のせいなのにぐだぐだと自分の心に嘘をついて、善吉くんに八つ当たりしてるぼくを嘲笑ってほしいんだ」
「……ありとあらゆる全ての事象を塗り潰し、書き換え、自分の思い通りにしちまう
「その通りさご名答!! 『
あまりにもテンションの落差が激しすぎる
「いいやダメだ、こんな形じゃ終わらせてやらねえ」
「善吉くん……もういいよ、もういいんだよ。君のことを何百何千と斬り刻んだぼくが言うのもなんだけれど、ぼくはもう誰とも戦いたくないんだよ。本当はぼくなんかいない方がいいんだから」
「……聞き捨てならねえな。誰がいない方がいいって?」
「ぼくだよ。球磨川
「そうかよ、
善吉は
勢いよく肩を掴んだ善吉はそのままの勢いで思い切り息を吸い込み、やや怒鳴り気味に、大きい声で心の内に潜む本音をぶちまけた。
「いいか
「っ……い、いいやいるね!! ぼくがそうだ!! このぼくが生き証人だ!! ぼくがいるせいでお兄ちゃんは強くなっちゃったし、めだかくんは他人に頼る頻度が増えてる!! 阿久根くんと喜界島くんに至っては仕事が減っちゃって忙しくなくなってるし、善吉くんだって身体能力が上がっちゃって……」
「……お前、それ本気で言ってんのか? どう考えてもいいことづくめじゃねえかよ」
その言葉を聞いた
借り物の、前世の知識。
「っ、本気も本気だよ!! だって、だって、ぼくはいちゃいけないんだよ!! みーんなそう言ってたんだ!! 『いなくなれ』『さっさと消えろ』って!!」
「いいやここにいなきゃダメだね!! 絶対に許さねえよ勝手に消えるとかそんなの!! 俺だって悲しむしめだかちゃんだって阿久根先輩だって喜界島だって悲しんじまうぜ!! それに何より、お前の兄貴はそれこそ絶望に沈んじまうだろうが!!」
「なんで!? なんなのもう、なんでだよ!! ぼくはもう生きていたくないんだよ!! さっきから言ってるでしょずっと!! なんでぼくを否定するんだよ!?」
「お前が!! 俺の大好きな、親友の球磨川
「──意味が、意味が分からない! どうして」
「意味が分からねえんだったら何回だって言ってやるよ! 俺の大好きな親友の球磨川
「いや、でも──」
「そもそもお前は自己肯定感が低すぎるんだよ。それだったらこっちにも考えがある。お前が
あまりにも滅茶苦茶な物言いに、戦うなんて空気ではなくなってしまった。というより、戦うことを考える余裕がなくなっただけなのだが。
「いや、でも、ほら、ね? ……『大好き』だなんて他の人に聞かれたら、誤解を招くかも」
「誤解? いや、誤解もなにも、本心だけど。俺はお前に、嘘をつきたくない」
「──ッ!?」
「お前がいなくなっちゃうとさ、生きていけない……ってのは大袈裟だけど、だけどさ──俺は寂しいよ。お前には生きていて欲しいんだ」
「……でも、ぼく、ぼくは……生きて──生きていても、いいのかなあ。中学校の頃からずっといなくなれって言われ続けていたけど、こんなぼくでも、いるだけで話が拗れて、何でもかんでも好き勝手にできちゃう化け物でも──/──こんな僕でも、この世界に生きていていいのかな」
「生きてていいんだ。生きていて欲しいんだ。だから
ぐさり、と。
善吉は背中からお腹にかけて何か熱いものが通り抜ける感覚を感じ、自分のお腹の辺りを凝視した。
何かは分からないが、
──刀。恐らくは、
「ッ……
「当然。視覚的情報がないと変わったことが分かりづらいだろうからね、僕の優しさの表れさ。さて、善吉くん。君は
いつの間にか
「物事の一つの面しか見ないで事を決めようとするのは君の悪い癖だぜ、善吉くん。ちょっとした小細工みたいなものだけれど、ぜひ自分の目で体験してみるといい。
「っおい待て、お前は一体どこの誰なん
人吉善吉は球磨川
以下、回想。
真実だけで語られているとは、限らないがね。
二週間書かないと文章能力って落ちるもんですね……なんとかリハビリしなければ。
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