「この小説を読んで剣道を始めました!」
「これそういう小説じゃないから!」
そんな感じの第3話です。
ごめんなさい、冗談です。
さて、文句も言うし愚痴だって溢すが……正直めだかくんとまともにやり合える気がしない。剣道三倍段とはよく言ったものだけれど、めだかくんは言うなれば『無限段』みたいな強さだ。
陰険道であれば無限倍なので互角にやりあえるだろうが……あれをやってしまうとその先に待っているのは、めだかくんとのルール無用のガチバトルだ。それに、そもそも私に
……でもまあ、剣道ってもんは自分より強い相手とやってこそ、か。しゃーない、本気で剣道を遂行しよう。
「さ、めだかくん。もし私が勝ったら副会長代理の件は無しって事でいいんだよね?」
「当然だとも。こと勝負事、約束事において私たち生徒会執行部役員に二言は無い!」
「よっし、そんじゃあ本気でやろうかめだかくん! 四分間も試合場に立っていられると思うなよ!」
立ってられないのは多分私だけどね。しかしこういう盛り上げも少年漫画なら必須だろう。『めだかボックス』のキャラクターとしては、こうするのが正解なはずだ。
「さあ、私の胸を借りるつもりで来い!」
おっかしいなあ、本来胸を貸すのは私の方だと思うんだが……まあいっか。そんな事よりも試合だ試合、殺死合。
開始線まで進み、蹲踞の構えを取り……長者原くんの合図と同時に速攻! 二刀流相手にまともに取り合うだけ無駄だからな! 狙うは……二刀流で構える際、必然的に上がる左小手!
めだかくんは……反応が間に合ってない! よっし、まずはいっぽ……んんん!? 体が全く動かない!?
「雪、そんなに焦るな。四分と言わず、延長まで含めれば時間は無限にあるのだ。簡単に終わってしまってはつまらない……そら、
「……言えてるし、構わない……けどっ! 剣道は
少なくとも、今の善吉くんよりも速い私相手に、余裕綽々に合気道の技かけてくるとか正気の沙汰じゃ無いけど、この際正気なんて捨ててやる! 折角の試合なんだ、やりたい事だけやってやる!
「ほらっ! 胴がお留守だぜめだかくん!」
「んなっ!? 杵築のやつ、あんなに狭い隙間も打てんのかよ……!?」
「どうやら彼女、俺たちの時は手加減していたみたいだな……」
「えっ、嘘っ!? あたしなんて一分も保たずにやられちゃったんだよ!? 水泳ならあたしが一分以上の差を付けて圧勝するけど!」
長者原くんに動きは……ないな。くそっ、結構いい所に入ったと思うんだが……まあしかし審判が彼である以上、誤審など万に一つも無いだろう。大人しく次の策を考えるか。それと喜界島くん、張り合う所間違ってるから。
さて、どうする? 相手がめだかくんである以上、既存の攻めは通じないはず……一度見たものは覚えられてしまうし、出来れば一撃で仕留めたいが……あっ、そうだ。
そうと決まれば話は早い。早速やってみるに限る。幸いなことに、この技は相手を直接的に攻撃する技では無い。しかも、
すっと一歩入っていつでも打てる姿勢、どこからでも守れる心構えを意識させ……こちらが敢えて大きめに動き、相手の肩に力を入れさせて……よし、
「ほいっ」
「……なるほどな、そう来たか」
相手の小太刀を巻き落とす。ぶっちゃけ初見殺しだが、対策して来なかっためだかくんが悪いので私は悪くない。
そして剣道の試合では、
「──ッ! めだかちゃん! 杵築の狙いは反則を二回取っての一本勝ちだ! 早いとこ一本取らねえとかなりマズイ!」
まあ、そりゃあバレるよな。生徒会メンバーも全員分かってそうだし、目の前のめだかくんに至っては楽しそうな笑みを堪え切れていない。さて、気合い入れろよ私。本番はここからなんだからな。
長者原くんの合図で試合は再開する。と、同時にめだかくんが突っ込んできて、
いつもならね。
巻き落としってのは手首を使った技だ。腕全体の力で竹刀を支えているわけではないので、必然的に竹刀を掴む力は弱くなる。
だから巻き落としに来た瞬間に、
「反則二回! 一本!」
「……はははっ! これはしてやられたな!」
こういうことだ。よーし、ここからは試合時間いっぱい逃げ切るだけ……といっても、攻めはするけど。剣道って守りに徹すると絶対負けるからな。
「嘘だろ!?
「あの杵築って子、一組だろ!? もしかしたら十三組相手にも勝てちまうんじゃ……!?」
観客達が皆一様に盛り上がり、私に向けての歓声が上がる。やっべ、滅茶苦茶楽しいぞこれ。定期的にやろうかな。なんて考えていたその時、生徒会メンバーがめだかくんへの応援の声を響かせた。
「めだか
いやうるさっ。公式大会なら滅茶苦茶怒られるぞこれ……だけどまあ、そういうのは嫌いじゃない。剣道は暑苦しいから楽しいんだからな、これくらいの方が面白い。
それに……どうやらお仲間からの応援で、めだかくんの心も決まったらしい。こちらを凛っと見据え、やる気に満ち溢れている。ん? 提案? なになに……『一刀流に戻してもいいだろうか』?
「いーよいーよ、そんなん聞かなくても! それよりさ、ようやく本気になる気になった?」
「うむ。ここからが黒神めだかだ! 雪、見逃すなよ。私は今、最高に滾っているからな!」
やっぱり生徒会からの応援が効いたらしく、ようやく手加減をやめてくれるらしい。それでこそ
長者原くんに一刀流に変えることを申し出て、無事受理されたのでここからは互いに中段でやり合うことになる。互角の勝負であれば、まだ勝ち目はあるはずだ。この千載一遇の機会を逃すわけにはいかない。
さて、長者原くんの「二本目!」の合図で速攻……は仕掛けなかった。否、
「なッ──!?」
「ふう。雪、見逃すなよと言ったであろう。面有りだ」
……おいおい嘘だろ? 目で追えないどころじゃねえぞ。
「どうしたのだ雪。まだ五分の勝負だろう? もしや、戦意を失ったのではなかろうな?」
「……中々言ってくれるじゃねえの……! 生憎だが、この程度で心が折れるほど柔な鍛え方はしてないね!」
「それでいい、それがいい。それでこそ私の
いつの間にか立場が逆転しているが、最早そんなことはどうでもいい。今はただ、めだかくんに勝ちたい!! 自分の大好きなことで大好きな人に勝ちたい!!
「いくぜめだかくんッ!!」
「先程よりも更に疾くなったな! ようやく体が温まってきたというのか、雪!」
「そうじゃないよめだかくん! 心の底から君に勝ちたいって思ったから、気持ちが乗って来たのさ!」
足を細かく動かして撹乱、小手先の動きで撹乱、目線で撹乱、声で撹乱、撹乱して、撹拌して、ズラして焦らす。何度も何度も繰り返してズレを積み重ね、ズラし切ってもなおまだズラす。
次にめだかくんが動いたタイミングが最大のチャンス。それまでは持ち前の忍耐と根性でどうにかする。焦らして焦らして、体感では試合時間の残りが十秒くらいになったタイミングで、ようやくめだかくんが動いた。
確かに疾い! けど、返せない速さじゃない! 軌道的には面打ちの軌道、それなら腰を落としてからの返し胴で一本取って私の勝ち──ぃ?
ちょっと待てよ、さっきまで完全に面の軌道だっただろ。
ちくしょう、もう少しだったのに。
「これは善吉の分の突きだ。」
──また、勝てなかった。
「……突き有り! 勝負あり!」
長者原くんがそう宣言した瞬間、剣道場のそこかしこから歓声が飛び交った。それは生徒会のメンバーを讃えるものだったり、めだかくんと善戦した私を凄い凄いと持て囃すものだったりと、多種多様三者三様十人十色の有様だった。
「あー、くそっ……剣道でなら勝てると思ったんだけどなあ。結局負けちまったよ。私の完敗だ、めだかくん」
「いいや、違うぞ雪。今回の試合、私一人なら貴様に最後の面を返されて終わっていただろう。しかし善吉が士気を高め、喜界島会計がその士気を継ぎ、阿久根書記が体力と根気を削ってくれていたからこそ勝てたのだ」
「言うなればこれは『生徒会の完勝』だ」と、めだかくんは自慢げにそう締めくくり、私に向かって手を伸ばして問いかけて来た。
「さて、雪。約束は覚えているな?」
「……あったりまえでしょ。心配しなくても、約束を破ったりはしないって」
「心配などしておらん。なぜなら貴様は、一度結んだ約束は絶対に反故にはしないからな」
「どうしてそんなに信頼してくれているのかは全くもって分かんないけど……うん、剣士に二言はない。約束通りにやるよ、副会長代理」
私がそう宣言すると、剣道場は先程よりも数倍騒がしくなった。みんなそんなに副会長の席が埋まったことが嬉しいのか? 代理だから一時的にしか埋まらないのにそれでいいのか?
うーん、何だか釈然としないが……ま、いっか! 一回でいいから生徒会に入ってみたかったってのもあるしね。そう考えると、今の私って最高の状況にいるな。推しに囲まれて推しと話せて推しとお仕事できる。
入ってよかった、生徒会!
「めだかちゃん、杵築を観察して何か分かったことはあったか?」
善吉は『副会長(代理)』という腕章を身につけて、目をキラキラと輝かせている雪を見ながら、めだかに問いかけた。
「うむ……善吉も気づいているだろう?
「やっぱりな……めだかちゃんが生徒会長に就任してからおよそ2ヶ月間、暇さえあれば杵築の事を調査していたが……もう
「私たちの杞憂……ということか。まあいい。今日の試合中、雪からは一度も球磨川のような殺気や悪意は感じなかったしな。ほとんど白で確定したようなものだ」
「……うっし! 仮にとはいえ、これで生徒会は揃ったんだ! これからもじゃんじゃか悩み解決して、学校中花畑にするっつう夢、叶えちまおうぜ!」
「ああ、善吉。無論そのつもりだ!」
──めだか達は、気付かない。
相手によって実力が変わる……それはつまり、『
うーん、そうだな……変数変数と呼び続けるのも不便ではあるし、ここはいっそ思い切って、僕が勝手に彼女の通称を付けてしまおうか。決まり。彼女の本質は──。
──うん、いいね。正直やっつけにも程があるが、原作にいないオリキャラなんてこんくらいの適当加減でいいもんだよな。
ん? 「彼女は『
……なーんてね。
信じるか信じないかは君次第さ。
以上、謎の美少女による補足説明のコーナーでした。
じゃ、また今度、ってね。
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