決着です。
今回はあえて
それと、UA30万突破しました。
ありがとうございます。より一層精進します。
叱られると思ったらバカにされた……いやいや、こんなことで調子を崩すな。ぼくはあくまで悪役で、断罪されるべきだ。叱られなきゃならない。だからキャラを崩すな。救いようのない悪であれ。
「……まあ、確かにぼくはバカだよ。大馬鹿さ。自分を隠して、それで現実を自分の都合よく斬り変えて。今までずっとそうやって生きてきたのがぼく、球磨川
挙げ句の果てには苦痛から逃れるため、
……
まあ、それはなんとか、頑張って飲み込むとして、だ。
喉元過ぎれば熱さを忘れるってことわざがあるけれど、現実はまさしくその通りで……冷静になって考えると、物を隠されるとか落書きされるとか、殴られたりカツアゲとかされるよりは本当に微々たるものだったなって思う。
いやまあ、当時は本当に辛かったんだけどね。全寮制だったのも良くなかった。全員敵に見えて……善意を踏み躙ってしまった。
それはお兄ちゃんに対してもそうだ。
「善吉くんがぼくを救いたいって言った時、本当に腹が立ったんだよね。別にぼくはそんなこと求めてなかった。むしろ迷惑だったね。ぼくは何か間違ったこと言ってるかな?」
ああ。
「そもそもさ、君はぼくのことを大切な親友だと言ったけれど、ぼくは善吉くんのことを友達だなんて思ったことはないよ。実はぼくは二重人格でね。ほら、杵築
もう。
「ぼくと君には接点なんてないんだよ」
いつもこうだ。善意を受け取れない。善意をもらうことに耐えられない。弱いぼくにはその善意は重すぎる。そんなわけはないのに、どうしても綺麗に彩られた毒にしか見えない。
どうして人の善性をそのまま受け取れないんだろう。なんでいつも穿った見方しかできないんだろう。お兄ちゃんみたいに捻くれ切れてしまえばよかったのに、中途半端なぼくには堕落することですらも満足にできなくて。
「気持ち悪いよ、善吉くん。君はきっと誰でも分け隔てなく救うだけなんだ。そこに好き嫌いとか、善悪とか、そういうものは多分ないんだ。正直、本当に、気持ち悪い」
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
勝手に決めつけて、好き勝手に語って、自分勝手に振る舞って、きっと今のぼくが一番気持ち悪い。
でも、これできっと、善吉くんもぼくに失望してくれたはず。呆れてくれたはず。ぼくに関わったらダメだ。君はめだかくんたちと一緒に楽しい学校生活を送るべきで、そこにぼくみたいな余所者が混ざるのはダメだ。
「ね、善吉くん。ぼくは本当にしょうもないやつなんだ。だから救おうだなんて二度と考えないで、もっと時間を有意義に」
「やっぱお前ってバカだよな」
「さっきからなんなんだよこっちは真面目なんだぞ!?」
なんなんだよもう!? ぼくが重い話してるって分かってないのかこいつ!? 困っちゃうな本当に!!
「いや……なんつーかさ、ついさっきまで、俺はお前に怒るつもりだったんだよ。『お前はやっぱり間違ってる』ってさ」
「……だったら、そうすればいいじゃん。勝手に救おうとしたみたいに、怒りたいなら勝手に怒れば……」
「怒らない。怒れない。そんな顔をされちまったら……怒る気なんてさらさら失せちまった」
えっ? 今のぼくって、そんなに酷い顔してるの? いや、そんなに酷い顔はしてないはずなんだけど……うん、ほっぺもいつも通りむにむにしてるし、気づかないうちに泣いてるなんてこともないし……あれ?
変な所なくない?
「ごめん、別に酷い顔とかはしてないぞ」
「いきなりどうしたんだよマジで!? 人が変わりすぎて怖いって!! 誰なんだよお前!?」
「……ふっ、はははっ……!」
えぇ……? 何こいつ……怒るとか呆れるとかより先に困惑が来るんだけど……大丈夫かな?なにか悪いものでも見せられたのかな……。
というか。
「いやー、笑った笑った……お前さ、気付いてないだろ?」
「気付いてないって……一体何のことさ。気付く気付かないじゃなくて、君とぼくには接点がないって言ってるでしょ」
「だったら『
「……あっ」
……凡ミスだ。いやでも、ぼくには「
「おっと、そうはさせねえよ。折角駄弁りに来たってのに、話のひとつも聞かずに門前払いはちと冷たすぎるんじゃねえの? だからその欠点なら、俺がカバーしよう」
……あー、これはダメだな。話し合わないと絶対に諦めてくれない構えだ、善吉くんがこうするってことは。
「……なにさ、善吉くん」
「いや、俺からお前に言うことは、実はそんなに無いんだよ。ちょっと思う所あってな……考えを改めてきたんだ」
「へえ、だったらさっさと、ぼくを救うとかいう戯言を撤回して──」
「……………………は?」
え?
いや、え?
「俺はお前を救わない。俺にお前は救えない。
えっ……善吉くんが、すくわない?
じぶんで、じぶんが、じぶんの?
「そもそもさ、これから友達になろうって奴相手に『救ってやる』って……何様だよって話だよな。鼻につくっつーか、癪に障るっつーか……とにかく、気に食わないよな」
じぶんって?
「お前の中にいる誰かに刺された時……夢を見たんだよ。お前の過去に関わる夢を。きっと辛かったよな……寂しかったんだろうな。夢の中のお前は……今よりずっと、弱かったよ」
むかし……ぼくが……弱い?
「おい人吉善吉。どういう意図だよそれは」
「っ……意図なんざ無えよ。昔のお前は今より弱くって、今のお前は昔より強えってことを言っただけだ」
「それが!! 一体何だっていうんだよ!! ああそうさ昔のぼくは弱かったさ!! 君の見た夢の通りに、虐めに屈して大好きな剣道を投げ出しちまうくらいには、心が弱かった!! でも今は違う!!」
「本当に……そうかよ?」
「ああそうさ!! 昔とは違うんだ!! 今のぼくにはなんでも出来る!! ぼくは強いんだ、だからこの強さを、誇示し続ける必要が……………………?」
誇示……誇って示す……意味は誇らしげに示すこと、あるいは得意になって見せること……意味は分かる。単語の意味は、はっきり分かる。
「……あるはずだ。この強さを、見せびらかす必要が……」
あるはずだ。何かあるはずだ。きっとあるはずだ。ぼくは強くなった。書き換えちゃえば負けないし、何だってできちゃうんだ。だから、だから、だから……。
強くなって感じたことは?
強くなってからの目標は?
強くなったからこそできたことは?
強くなってからやろうとしたことは?
強くなった理由は?強くなった意義は?
強くなった方法は?
強くなって、一つでもいいことがあったか?
「……お前は、間違ってるよ。間違い続けてるんだ。きっと、お前が兄貴を拒絶した時から、ずっと。」
そっか。あの時から、ずっと、ぼくは──。
はあ、そっか、まいったな。
どうしよう、これ。
この気持ち、どうしよう。
「ぁっ、ぅ、むだだった?ぼっぼくのしてっ、ぃてきたこっ、こと、ぜんぶ……?」
ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ。
無駄だったみたい。
ぼくが強さに固執した数年間は。
一人でも生きていけるっていう証明は。
さっきから意味のない言葉を繰り返して泣いているだけだ。一体これのどこが強いんだろうか。
腕っぷしだけ
ははっ……どうするんだよ、ぼくの人生。
個人の強さを手に入れようとして孤独になるとか、笑い話にすらならない。滑稽なだけだ、こんなの。
「ねえ……善吉くん。ぼく、これからどうしよう。どうすればいいんだろう。なんも分かんないよ、もう」
こんなことを善吉くんに聞いて何になるんだろうか。善吉くんはぼくを助けない。意味なんて、ない。
教えてよ。どうすればいいか。教えてよ。何すればいいか。誰でもいいんだ、誰でもいい。誰でもいいから──。
「え……?」
「だから、後悔は済んだかって聞いてるんだよ、俺は。ま、その調子だとたっぷり後悔したみたいだが……それで、どうだ? 今何を考えてる?」
どう……って言われても。そんなの、一つしかない。
「……ひとりぼっちはいやだ。それしかないよ。でも、そうは言っても、いまさら、なにをしても……」
「お前はなあ、後ろ向きすぎるんだよ。もっと前見ろ前。今は昔とかどうでもいいんだ」
「……さっきから、何なんだよ!! ぼくが間違ってたってことに気付かせて、救わないって言って、それで挙げ句の果てにはぼくの人生全否定して!! 何がしたいんだよ!!」
ちがう。
こんなことが言いたいわけじゃない。
ぼくが言いたいのは、こんな言葉じゃない。
「善吉くんなんて、大っ嫌い……」
ちがう。ちがうよ。
そんなわけないんだ。
みんな大好きなんだよ。
「……
「……今更前向きになったって、ぼくに何ができるっていうんだよ」
「やり直せる」
「無理だよ。ぼくは許されるべきじゃない」
「いいや、許されるべきなんだ」
「だから!! ……だから、許されるべきじゃないんだよ。ぼくみたいな、最低なやつが……」
許されるべきじゃない、と言いかけたところで、ぼくは善吉くんに突然両頬を掴まれた。
「むぐっ!? なっ、いひなりなにふるんだよ!?」
「お前があまりにも焦れったいからもうこの際はっきり言ってやろうと思ってな!! 一回しか言わねえからよく聞けよ!!」
善吉くんは顔を真っ赤にして怒りながら、ぼくに向かって一息で叫んだ。
「お前が何でそんなに自己肯定感が低いのかは分かってんだよ!! 球磨川の野郎に負い目を感じてるからそんなに自分を卑下してるんだろ!?
……えっ、そうなの?
「えっと、それじゃあ。ぼくが千文字くらいかけて落ち込んでたのは」
「無駄なんだよ無駄無駄!! それに自分のことを守るために強くなることが間違ってるわけないだろうが!! その点に関して、お前は間違ってねえよ!!」
「はあ!? 意味分かんないんだけど!? ぼくの人生の選択が間違いじゃなかったんだったら、どうしてお兄ちゃんに負い目を感じてることが間違いになるんだよ!!」
私がそう言うと、善吉くんはあからさまにこちらをバカにする目で見た。おい、やめろそれ。
「
「んぐっ……またバカって……ああそうだよ、分かってないよ! ため息つくな!!」
「
「ッ──」
……そんな優しい顔で、そんなこと言うなよ。優しくするなよ。いいこと言ったみたいな顔すんなよ。
バカ野郎。
そんなこと言われたって、ぼくの心は動かねーよ。
あー、くそ。
また泣いちゃうだろ。
「お前が気付いてたかは分からないけどさ。お前の兄貴はずっとお前を心配してるんだよ。しかも、二言目には『
うん、そうだよ。お兄ちゃんは善も悪も、全部ひっくるめて受け止めちゃうような人なんだ。本当はずっと前から、そんなことは知ってた。知ってはいた。
「……でも、やっぱり不安だよ。元はといえば、私が──」
「不安なら、安心にしちまえばいいんだ。だからさ、心の底から安心するためにも、
……本人?
本人って、まさか。
「おい、球磨川!! どうせ聞いてんだろ!! さっさと入ってこい!!」
善吉くんが叫んだ直後、教室の扉を開けて入ってきたのは。
「……や、久しぶりだね、善吉ちゃんに、
「……お兄ちゃん」
校舎の屋上からここまで全速力でやってきた、球磨川禊その人であった。
「ん……? 球磨川お前、なんかあったのか? 随分と吹っ切れたように見えるけどよ」
「いやー、何かあった所の騒ぎじゃあなかったぜ。めだかちゃんに僕がぶん殴られて、僕はそれで負けを認めて、学園中の生徒たちが大喜びだったよ。酷い話だよね」
……ここにお兄ちゃんがいるってことは。つまり、そういうことで。
「お兄ちゃん。やっと、負けられたの?」
「……ま、そういうことさ。完膚なきまでにやられて悔しかったけれど、それ以上に
そう言うお兄ちゃんの顔は……ぼくが知るものよりも、わずかに柔らかかった。
……お兄ちゃんが一歩踏み出したんだ。妹であるぼくがこんなんじゃあ、お兄ちゃんも格好がつかないよな……よし、覚悟は決まった。さっきまでは全然ダメダメだったけれど、この二人にこれ以上情けないところを見せたくはない。
「……よし」
「ん、おい球磨川!
「その前に、善吉ちゃん。僕の妹を泣かせたことについて、何か言い分はあるかな」
「ねえよ。なんならこの後一発ぶん殴ってくれたっていいぜ。
「……そうかい、それじゃあ後で、遠慮なく。めだかちゃんに負けてスッキリしたけれど、それはそれとして悔しさはぶつけたいからね」
……何でこんなに意気投合しているんだろうか。この二人が仲良くなるのはもう少し先のはずなんだけど……まあ細かいところはいいか。
「それで、
お兄ちゃんはそう言うと、私の目の前まで歩いてきて、そこで動きを止めた。
ちょっと待ってよ、そんな、いきなり……。
「さ、何か話があるんだろう? 言ってごらん。僕はどんな言葉だって受け入れるぜ。
言ってごらんって、言われても…………いや、もうこの二人に、真剣に、親身になってくれた二人に、つまらない嘘はつきたくない。本当は、ずっと昔から、言いたかったことがある。
それを言うだけだ。言うだけ、言うだけ……なのに、勇気が出ない。
いっつもこうだ。最後の最後で、結局全部ダメに──。
なんて、また腐りかけていたぼくを引っ張り上げてくれたのは、いつも通りに、彼の言葉だった。
「
……善吉くん、それは卑怯だよ。
「……分かったよ。うん、君が言うなら……がんばる。」
結果なんて、言う前から分かってる。
本当はただ、万が一、億が一、許してもらえないかもしれなかったのが怖いだけ。
だけど、きっと、お兄ちゃんなら。
「……折角助けてくれたのに、拒絶しちゃって、本当にごめんなさい。えっと、それと……それとっ!!」
お兄ちゃんなら。
いいよって、言ってくれると思うんだ。
「……可愛い妹の頼みだ、しょうがない。
──ああ。
なんだよ、なんだよ。
ちょっと自分に素直になるだけでよかったんじゃないか。
心を隠して、一線を画して、自分勝手に、一人っきりで悩んでたのがバカみたいだ。
ぼくは、ぼくのままでよかったんだ。
「……善吉ちゃん、ありがとう。僕はどうにも身内に甘くなっちまってね……君みたいに、ちゃんと良し悪しをはっきり言える奴が、
「……カッ、何だよ急に丸くなりやがって。怒るに怒れねえじゃねえか……それに、はっきり言うのなんて当たり前だろうが。肯定するだけが友達じゃねえ。間違ってることを間違ってるって言えるからこそ……親友なんだよ」
「……はずかしい。お兄ちゃんの前でそういうこと言うのやめて。ただでさえ今、慣れないことして顔が赤いのに……でも、まあ」
ここは正直に、本音を言っておくべきだろう。今まで散々逃げてきたんだから、ここでまた逃げて逆戻りするわけにはいかない。
すぅーっ……はぁーっ……よし、言うぞ。
「善吉くん、その……ありがと。ぼくを、助けてくれて」
「カッ! 俺が助けた? いいや違うね!
善吉くんはそう言うと、元気に歯を剥き出して笑った。
笑っている善吉くんは、何だかとても嬉しそうに見えた。
親友が嬉しそうで、ぼくもとても嬉しかった。
後日談というか、今回のオチ。
結局あの後、おおよそは原作と同じ流れになった。
少し違うこともあったが……それはまた今度話すことにしよう。少し整理する時間が欲しい。
長者原くんは大方の予想通り、あまり空気を読まないで「負けたと思えていますか?」って聞いてきた。まあぼくにとって、その無遠慮さはありがたいものだったけれど。
なんて答えたか? 恥ずかしいから言わせないでよ。
……まあ、そうだね。スッキリしてるよ、今は。
思えば、ここまで本音を曝け出して戦ったのは初めてかもしれない。今まではずっと、あー、なんて言うんだろう……「理想の自分」みたいなのを演じ続けていたから。
剣道ができて、他人に合わせられる、みたいな。実際は他人に合わせるどころか、ぼくが一番身勝手だったけれど……これから改めていければいいなって思う。悲観的な性格とか、すぐ卑下する癖とかも。
善吉くんとお兄ちゃん、それにめだかくんにも怒られちゃったからね。竹刀で叩かれるよりも、三人から食らったチョップの方がぼくには重かった。だけど別に、重苦しいわけじゃない。心地のいい重みだった。
みんなには迷惑をかけた。
生徒会だけじゃなくて、全校生徒のみんなにも。
後で聞いた話では、やっぱりぼくのことを悪く言っていた人たちも何人かいたらしい。それは別に構わないんだけど、一つだけ奇妙なことがあった。
──誰も、ぼくを責めた時の記憶がなかった。
どうやら何かに操られていたみたいな状況だったらしく、本当に何も覚えていないようだった。その後その人たちはぼくに謝りに来たけれど、悪気がないのは分かっていたので許してあげた。そもそも怒ってないけどね。
ああ、そうそう。
これだけは言っておかなくちゃね。
みんなには迷惑をかけてしまった。かけてしまったんだけど……本当に不謹慎なことなんだけど。
今年の夏は、最高に楽しかった。
今のところは、それだけ。
これからは失った信用を取り戻すために、色々なことを一生懸命になってやっていこうと思う。
以上、後日談、終わり。
アンケートの答え合わせ、というかネタバラシをすると、別にあれどっち選んでも構わないんですよね。
ただ、票数を多い方を先に言わせるつもりでした。
今回は「間違ってる」を先に言ったので、
しかし「間違ってない」を先に言うと、一回ぶっ壊したメンタルを善吉くんが一から十まで修復する形になるので、
友達のために死ねないのならそれは友達ではないですけれど、だからって脳死で肯定しても、それを親友とは呼べないですよね。
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