TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

36 / 95


 前回説明しきれなかったことの補足説明、そして導入回です。
 生徒会関連の補足がメインになりますが、それ以外にも色々って感じで進みます。




黒神(くろかみ)めだかの後継者(こうけいしゃ)(へん)
第34箱「警戒しなくてだいじょうぶ」


 

 

 やっほー。私だ。

 渡し船で有名な私だぜ。

 

 どーも。ぼくだ。

 冒頓単于で有名なぼくだぜ。

 

 というわけで、第99代箱庭学園生徒会執行部第二庶務の球磨川(そそぎ)だ。今は学校の廊下のお掃除をしている。

 

 メイド服で。

 それも、ミニスカメイドみたいなコスプレじみたやつじゃなくて、ロングスカートのクラシックメイド服で。肌の露出なんてほとんどない、清潔感丸出しのメイド服で。

 

 とりあえずその辺も含めて、いくつか端折(はしょ)ったことの説明をしようと思う。

 

 まず一つ目。結局ぼくは生徒会に復帰した。お兄ちゃんは原作通りに、滞りなく、何の問題もなく副会長に就任したけれど、ここで一つ問題が発生したのだ。それは──。

 

 


 

 

(そそぎ)。当然貴様も、生徒会に戻ってくるんだろうな?」

 

「えっ? いやいやいや、確かに戻りたいとは思っているけれど……流石にそれはまずいでしょ。だってぼくは、ついさっきまで学園の脅威だったんだよ? そんなぼくが生徒会に……」

 

「もう貴様の兄を生徒会に引き込んでいるのだから、一人か二人かなど誤差みたいなものだろう。それに、全校生徒の大半が貴様に戻ってきて欲しいと思っておるぞ」

 

「ええ……? いや、そんな、バカな……第一、どうやってそんなこと調べたんだよ!?」

 

「阿久根書記がSNSでアンケートを取ってくれた。ほら見ろ、貴様に悩みを解決してもらったことのある者達がこぞって貴様を支持しているぞ」

 

「ぐっ……いやでも! 生徒会執行部は庶務・会計・書記・副会長・会長の五名からなる組織のはずだ!! そこにぼくが割り込んで、規則を破るわけには……」

 

(そそぎ)。元はと言えば、貴様らが言ったのだろう? 人数が少なければ不備だが、人数が増える分には不備ではないとな」

 

「……………………」

 

「というわけで、(そそぎ)。私には貴様も必要なのだ。共に歩んではくれないだろうか?」

 

「……………………分かったよ、やるよ。丁度いい償いの機会だ、雑務でも何でもこなして、失った信頼を取り戻して見せるさ!! やってやるよ!! ああやればいいんだろ!!」

 

 


 

 

 ──という流れ。

 当初はまたぼくを副会長に据えて、副会長が二人という形になりそうだったのだが……まあ、なんだ。一応いろいろやらかした身の上ではあるし、下っ端からコツコツと積み重ねていくことが大事だと思ったんだよね。

 

 だから庶務に据えてもらって、第一庶務は善吉くん、第二庶務がぼくこと、球磨川(そそぎ)になったというわけだ。

 

 ……別に善吉くんとお揃いが良かったから庶務を志望したとか、そういうわけじゃない。庶務になれば、善吉くんと庶務同士、さらに仲を深められるかもとかは全くもって、砂粒一つほども考えちゃあいないからな。嘘じゃないぞ。

 

 ま、それは置いておいて、二つ目の話に移ろう。

 

 二つ目の話は、どうしてぼくがシックでクラシカルなメイド服を着てお掃除をしているのか。大体予想はつくだろうけれど、これも一応、ことの経緯を説明しておこうと思う。

 

 


 

 

「いやー、それにしても……まさか(そそぎ)ちゃんと仲直りするまでにこんなに時間がかかるとは思わなかったなー。数年間寂しい思いをしたわけだし、これは何かお詫びにやってもらうしかないなー」

 

「お兄ちゃん……うん、本当にごめんね。ぼくにできることだったら、法律の範囲内でなら一つだけNG無しで何でもするから、それでどうにか許してもらいたいです」

 

「えっマジ!? 一つだけNG無しで何でも!? いやー迷っちゃうなーどうしようかなー……ちなみにだけど、(そそぎ)ちゃん。願いの回数を無限回にしてもらうとかは……」

 

「え? うん、それでもいいよ。お兄ちゃんがそう言うのなら、まあそうするけれど……じゃあ、はい。これからなんでも言うこと聞くよ」

 

「おい球磨川……お前実の妹にそれはあんまりじゃ……」

 

「いやいやいやいや善吉ちゃん!? まさかあんな願いが通るなんて思わないだろう!? ごめん(そそぎ)ちゃん、今の願いはなかったことにしてくれ」

 

「んー……ぼくは別に気にしないんだけど……まあいいや。それで、お兄ちゃんはぼくに何をさせるの? 裸エプロンで一日中過ごせとか、手ブラジーンズで学校一周しろとか、全開パーカーを制服にしろとか、そういうのでもいいよ」

 

「よくねえよ!! どうせ『風紀が乱れてます!!』とか言いながら鬼瀬(おにがせ)に私人逮捕されて終わりだ!!」

 

「まあまあ善吉ちゃん。これはかなりデカいヒントだぜ。幼気な女の子がするにはいささか過激な服装を(そそぎ)ちゃんは掲示したけれど、それはつまり……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()一世一代の大チャンスだぜこれは」

 

「なっ……球磨川、てめえ!? なんて恐ろしいことを考えるんだよお前は!?」

 

「うーん、どうしようか……流石に実の妹に破廉恥な服装をさせるのは流石の僕といえども忍びない……だがしかし、健全な男子高校生としては、こんなチャンスを逃すわけにはいかない……露出度は前述の三つに比べると高くないけど体のラインが強調されるスク水か? いや、それなら旧スク水の方が何となく落ち着いて見えそうだ……(そそぎ)ちゃんのイメージにも合ってる。それとも体育繋がりで体操着? いやいや体操着はあまりに陳腐だ。そんなのいつでも見れる……ならばいっそのこと剣道着はどうだろう? 全体的に引き締まって見える上に、袴を着用する関係上スタイルもかなり良く見える……いやでも、道着も発想としては貧弱……ただなあ、和装というのは中々捨てがたい……いや待て、なるほどな、袴と似た形状であれば、袴と同等の効果は得られるはずだ。ロングスカートならどうだろう? 制服を改造して、(そそぎ)ちゃんの足下を覆い隠すような形に……だがそうすると、制服としてはバランスが崩れて持ち味が無くなるよなあ。箱庭学園の制服の色味の関係上、ロングスカートはあまり合うとは言えないし……制服にこだわるのはやめにしよう。ロングスカートの方を主体で考えればいいんだ。足下を覆い隠すほどのロングスカートが違和感なく馴染んで、加えて目の保養になる服装……ワンピース……はダメだね。下方向のガードが緩すぎて、心配で夜も眠れなくなっちまう。となるとドレス……学校生活には不向きすぎるかもな。卒業式ならまだしも、日常的に使うにはあまりに浮きすぎる……いや待てよ、ドレス、ドレス……ドレスといえば、貴族だよな──ッ!! 分かった、決めたよ、(そそぎ)ちゃん。僕が君に望むことはただ一つ!! それは……明日から制服を、クラシックメイド服にして欲しいということさ!!

 

「それでさ、お兄ちゃんってば、昔っからぼくのこと大好きでさ、ぼくが悔しくて泣いちゃった時とかは──」

 

「へえ、今までずっとただのろくでなしだと思ってたが、そういう話を聞くとだいぶ──」

 

「…………………………」

 

 


 

 

 と、まあ……そういうことだ。お兄ちゃんなら露出度の高い服装を選ぶだろうと思ってたんだけど、流石に実の妹にそういう格好はしてほしくなかったみたい。

 

 言ってくれれば何でもやったのにね。毎日身の回りのお世話をしてあげるとか、毎日三食、腕によりをかけたお料理を作ってあげるとか。むしろぼくとしては、そういう使い方を想定してたんだけど。

 

 まあ、これもおまけみたいなものだ。善吉くんの前で醜態を晒した今、この程度のことは全く気にならない。それにこの服、瞳くんが作ってくれたやつなので、ぼくに合っててすごくいい。

 

 本当なら、作ってもらったお礼としてお金を払いたかったけれど、瞳くんは「子供がそういうこと気にするんじゃないの。大人しく受け取っておきなさい」って言ってくれた。大人の対応っていうのは、きっとああいうことなんだなって思ったよ。

 

 ……さて。

 

 正直言って、ここまでは前座……いやまあ、前座と言うには少々濃すぎるけれど……本当に前座みたいなものなのだ。ぼくが生徒会に戻ったことも、クラシックメイドに転身したことも。

 

 もう気づいている人もいるかもしれないけれど、実はぼくは今、()()()()()()()()()()()()()()()()。ああいや、善吉くんと二人きりとかじゃあないぞ。だけど、みんなも知ってる人だ。

 

(そそぎ)ちゃん(そそぎ)ちゃん。どうしたんだい、いきなりぼんやりし始めちゃって。今のうちにお掃除終わらせておかないと、お兄ちゃんに呆れられちまうぜ?」

 

「あなたのことについて考えてたんだよ、(ゆき)ちゃん。戦挙戦が終わるなり、却説遣い(ブックマーカー)を使って飛び出して来た君のことを」

 

 そうなのだ。(ゆき)ちゃんが帰ってきた。しかも実体を持って。却説遣い(ブックマーカー)をうまいこと使って精神を斬り離し、もともと二人の人間だったことにしたらしい。

 

「おや、私のことを考えてくれていたとは感慨深いね。(そそぎ)ちゃんに想ってもらえて私は幸せ者だよ」

 

 よくもまあ、そんな簡単に歯の浮くような言葉を言えるな……まあ、ぼくがそういう風に望んで生まれた子なのだから、当たり前といえば当たり前なのだけれど。

 

 それより。そんなことより、だ。ぼくが気にしているのは別に、(ゆき)ちゃんが身体を手に入れて戻ってきたことじゃない。その辺に関しては、既に説明済みだから。

 

 問題なのは──(ゆき)ちゃんの苗字が変わったこと。

 

 ああ違う違う、別に(ゆき)ちゃんが良縁に恵まれて嫁ぐとかそういうことではない。そうではなくて、単純に名前が球磨川(くまがわ)(ゆき)になったというだけの話。

 

 お兄ちゃんは(ゆき)ちゃんのこともしっかり認知していたらしくて、(ゆき)ちゃんは妹であるという認識だったらしい。お兄ちゃんの器が大きすぎて、ついつい自慢しちゃいそうになるな。

 

 ……(ゆき)ちゃんは優しい子だ。だからぼくの代わりに色々と引き受けて、少なからず傷付いてきた。本人にそのことを謝ったら、(ゆき)ちゃんは「でも(そそぎ)ちゃんがその選択をしなければ、私は生まれて来れなかったよ」って言ってくれた。大人の対応だ。

 

 散々救うだの救うなだの、ごたごたと揉めた奴の言うことではないと思うけど……その言葉でぼくは救われちゃった。ぼくの心を封じていたものは、もう一つもない。

 

「……なんか、(ゆき)ちゃんの方が大人っぽい気がする」

 

「そうかい? 私からすれば、最近の(そそぎ)ちゃんの方がよっぽど大人だけどね。私なんて、ほら。好き勝手やってるだけの遊び人みたいな奴さ」

 

 うーん……やっぱり余裕がある気がする。癪に障る感じじゃなくて、綽々というか。

 

「その点(そそぎ)ちゃんは偉いと思うよ? クラシックメイド服でお掃除なんて、一昔前のライトノベルでもそう見ないってのにさ。恥ずかしがりもせずによくやるぜ」

 

「まあ、これも一つの禊だからね。やるからには本気で、全力で、極めるまでやるだけだよ」

 

「一意専心」が今のぼくの座右の銘なのだ。逃げも隠れもせず、やらなければならないことをやり、やりたいこともやる。球磨川(そそぎ)は進化したのだ。

 

 ちなみにだが、(ゆき)ちゃんも第二庶務だ。元が同じ人間なのだから問題ないということで、半袖くんが色々誤魔化してくれた。おかげで、(ゆき)ちゃんは元々箱庭学園に在籍していた生徒ということになった。

 

 そのうち半袖くんにもお礼を言いに行かなきゃね。

 

「っていうか、(ゆき)ちゃんもメイド服着てるくせに……人の心配をしてる場合なの?」

 

「いやほら、こう見えても私って女の子なわけでさ。メイド服とかはいっぺん着てみたかったんだよね。だから案外乗り気だったりするんだよ」

 

 へえ、意外。思ってたよりもかわいいものがお好きらしい。今度色々と見繕ってあげようかな。

 

 そんなことを考えながらお掃除をせっせと続け、3時間くらいかけて全校の廊下を掃除し終わった。

 

「よーっし、お掃除終わり!! 廊下がピカピカだと何となく綺麗な心持ちになるし、みんなに気持ちよく学校に来てもらうためにも、こういう所から綺麗にしていくのが基本だよね」

 

「いやー、それにしても……大階段の掃除は中々にハードだったねぇ。デカいし広いし長いしで、思わずスキルを使うところだったよ」

 

「でもそれじゃあお掃除の意味がないからね。ちょっと大変だったけど、やっぱりこういうのは自力でやらないと」

 

「その通りだね、違いない……ただまあ、まさか私がへし折ったほうきがそのまんま残ってるとは……備品くらい買い替えてくれてもいいのに」

 

 なんて話をしながら、ぼくらは掃除したばかりで綺麗な廊下を3分ほど歩き、ピカピカになった廊下を見て嬉しくなりながら生徒会室の前までたどり着いた。

 

 そして扉を開き、生徒会室の中へと入っていった。ここがぼくの居場所の一つだから、当然遠慮も何もなく、平穏な心持ちで。

 

「失礼します!(「失礼します。)第二庶務兼クラシックメイドの(第二庶務兼クラシックメイドの)球磨川(球磨川)そそぎ(ゆき)()ただいま戻り──」(ただいま戻り──」)

 

 しかし、そこには。

 

 というより、そこでは。

 

『ゆえに僕達は警戒しなければならないんだ。この世でたったふたりきりの悪平等(ノットイコール)が、いったい今、何を企んでいるのかを!』

 

いや、別に何も企んでないよん。だから警戒しなくてだいじょうぶ

 

 ──「黒神めだかの後継者編」が、その幕を開けていた。

 

 






「黒神めだかの後継者編」、ついに始まります。
 原作と乖離する場面もかなり多くなりそうですが、頑張って書き斬るつもりです。今から楽しみ。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。