TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

38 / 95


 最近生活がめだかボックス漬けになってきてます。
 助けてくれ。




第36箱「モブキャラのみなさん」

 

 

 やっほー。過労で倒れた杵築雪(ゆき)……改め、球磨川雪(ゆき)だ。

 おひさ。

 

 前話……前箱? になるのかな、この場合。

 ともかく、安心院(あんしんいん)さんが笑えない冗談を口にした時、ちょっと青ざめてしまったのでどうにか誤魔化した。

 

 まあ誤魔化しきれてはいないと思うけど……それでも、やるべきことはやった。つまり、打(・)つ(・)手(・)は(・)打(・)っ(・)た(・)。

 

 この私が軽々しく口を滑らせ、わざわざ「憧れの人」だなんて透き通る声で言ったことには、当然理由がある。というか理由もなく口を滑らせるやつなんてバカだろ。

 

 私があんなことを言った理由は単純だ。お兄ちゃん……つまりは球(・)磨(・)川(・)禊(・)に(・)嫉(・)妬(・)し(・)て(・)ほ(・)し(・)か(・)っ(・)た(・)だ(・)け(・)。

 

 ああいや違う違う、確かに私は長年の間、妹を名乗る不審者だったわけだけれど、今回そんな思わせぶりなことをしたのは、要するに封(・)印(・)を(・)強(・)め(・)た(・)か(・)っ(・)た(・)ということだ。

 

 自慢じゃないが、私は割とお兄ちゃんに気に入られているらしい。そしてそれがどうやら『憧れてほしい』という気持ちにもつながっているらしい。だから尊敬している人を明確にしてみた。

 

 するとびっくり、封印が強まった。お兄ちゃんってかわいいところあるよね。そういうところが大好きだ。

 

 いやー、それにしても、ビックリしたよ。本来であれば完全に封印されているはずの、安心院(あんしんいん)さんの左手が完(・)全(・)に(・)自(・)由(・)に(・)な(・)り(・)か(・)け(・)て(・)た(・)ん(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

 それはまずい。もしあの調子で封印が緩んでいくとすると、時計塔の宝探しが終わったタイミングで右手まで自由になってしまう。

 

 そのまま芋づる式に封印が緩むまでの時間が早くなり……最終的にクリスマスの生徒会信任投票で、自殺を試みる、ほ(・)と(・)ん(・)ど(・)全(・)て(・)の(・)ス(・)キ(・)ル(・)を(・)万(・)全(・)に(・)扱(・)え(・)る(・)安心院(あじむ)なじみを阻止できずに終わる。

 

 本当に危なかった。多分雪(そそぎ)ちゃんだけなら、あのまま話が進んでいって、最悪の結果を迎える所だった。私が演技派でよかったよかった!!

 

 ……いや、やめだ。実際私の憧れは安心院(あんしんいん)さんだし、例(・)の(・)シ(・)ー(・)ン(・)を思い出して気分が悪くなったことも本当。メソッド演技……とはまた違うけれど、演技じゃなくて本当のリアクションだったんだから、そりゃあ安心院(あんしんいん)さんも騙せるよな。

 

 と、まあそれはひとまず置いておこう。どうやら私達が保健室に向かった後、事態はやはり原作通りに進んだらしく、めだかくんの後継者を作ろうということで方針は決まったらしい。

 

 そんで私は今、生徒会主催の学園見学会……中学生を対象とした箱庭学園への体験入学の説明会へとやって来た中学生達を整列させていた。対外的な業務になるので、流石にメイド服は脱いだ。これからは隙を見て着ようと思う。

 

 さて、この間に生徒会メンバーは校庭に集まることになるが、それで生徒会の業務が滞ってしまってはいけないので、雪(そそぎ)ちゃんは生徒会室で書類仕事をしている。差し入れにミルクティーでも持っていくつもりだ。

 

 それにしても……ここにいる632人中、実に600人が安心院(あんしんいん)さんの端末だってんだから大したもんだ。しかも、中々に名の知れた連中もいるんだから大したもんだ。

 

 酒甕(さかがめ)中学の『群集軍隊(チームピープル)』鴨池(かもいけ)多々狼(たたろう)、厩庫(きゅうこ)学園中等部の『極彩色剣美(ザ・ソード)』羽衣(はごろも)唯無(ゆいむ)、結界中学の『閉じ込め系(クロスクローズド)』曽於(そお)消希(しょうき)、檻舎第二中学の『罪悪漢(ビカレスク)』荒生田(あろうだ)くるみ。

 

 ……ま、ご存知の通り。様々な界隈で名高い彼らは、あくまで前座で噛ませで無個性なモブキャラでしかないわけだが……狙われているな。

 

 元々が雪(そそぎ)ちゃんの精神(からだ)から生み出された存在だからなのかは定かではないが、この体は敵(・)意(・)に(・)敏(・)感(・)だ。だから大体の悪感情は察知することができる。

 

 視線の数は……5人分。まあ予想はできていたけれど……お兄ちゃんの洗礼を耐える5人だろうね。ちょこざいな。まあでも今は仕掛けてこないと思うから放置放置。私は生徒会第二庶務として職務を全うするのみであります、なんちゃって。

 

 さて、そろそろかな。

 

 

改稿。

中学生632人は、礼儀正しく整列する。

 

 

 これでよし、と。んふふ、混乱してるな、みんな。

 実は私、雪(そそぎ)ちゃんがよく使っていた、書き換えるスキルである『改稿斬昧(オールリヴィジョン)』改め、斬り変えるスキルの『却説遣い(ブックマーカー)』をコピーしておいたのです。んふふん。

 

 そうそう、話はズレるのだが、このスキルって本当に雪(そそぎ)ちゃんって感じのスキルだよね。捉えようによっては異常性(アブノーマル)にも過負荷(マイナス)にもなるんだから。

 

「めだかくーん!! なんかさっきまでわちゃわちゃしていたはずの中学生が、突然自発的に軍隊もびっくりの統率の取れた整列をしてくれたから、始めちゃっても大丈夫だよーっ!!」

 

「流石私の友だ、雪(ゆき)!! きっと貴様の健気な『整列お願いします』の呼び掛けに心を動かされたのだろうな!! 素晴らしい精神性の持ち主が大挙して押し寄せてくれたようで私は嬉しいぞ!!」

 

 なんだかんだで、めだかくんとも仲良しのまんまだ。というよりむしろ、以前よりも仲良くなっているかもしれない。不思議なこともあるもんだね。

 

 おっと、マイクを持って壇上に上がったのは……お兄ちゃん、つまりは球磨川禊だ。流石に5人……じゃない、7人で600人は面倒見きれないからね、見切りをつけるしかないってわけだ。

 

『えー、』

 

 さ、来るぞ。耐性のない奴は目を瞑って耳を塞げ。

 

 

 

 

 

 

 

『モブキャラのみなさん

こんにちは°』   

 

 

 

 

 

 

 

 たったそれだけの一言で、お兄ちゃんは約600人余りの心をへし折った。心を折られた中学生たちはその場に倒れ込む。しかしそこで終わらないのが、うちのお兄ちゃんだ。

 

『どうしました個性なきみなさん!』

 

 追撃。

 

『怪我はありませんかその他大勢のみなさん!』

 

 連撃。

 

『気分が悪いのなら早く帰った方がいいですよもう出番のないみなさん!』

 

 終劇。

 

 おーおー、こりゃまた壮観だぜ。気迫に溢れていた600人の中学生たちが、5人を残して全員虫の息だ。流石お兄ちゃん……いや、この場合はお兄ちゃんの過負荷(マイナス)に耐えた5人の方を褒めるべきだな。

 

 さ、こっからが本題だ。

 きっと忙しくなるぞ。

 

 私はめだかくんにどやされるお兄ちゃんを見ながら、そそくさと倒れた中学生たちを綺麗に並べたのでした。

 

 


 

 

 こんにちは。

 球磨川雪(そそぎ)です。

 

 書類仕事もひと段落ついた頃に善吉くん達も帰ってきたので、ここはみんなで一回休憩でもしようかなと思っていたら、善吉くんの肩に安心院(あんしんいん)さんがワープしてきて、ぼく達を煽って帰っていっちゃった。

 

 どうやら彼女の言葉によれば、「黒神めだかの後継者作り」はフラスコ計画と全く同じらしい。安心院(あんしんいん)さんお得意の、完全に別々なものをそれらしく縫合して認識を偏らせる話し方だ。

 

 騙されるようならぼくが訂正しようと思ったけれど、善吉くん達はそもそもバカじゃない。だから安心院(あんしんいん)さんに対して「それは違う」とはっきり宣言していた。さすが善吉くん。NOをNOと言えるやつが一番かっこいい。

 

 ただまあ、問題があるとすればそこではなく、次に彼女が口走った方だろう。お兄ちゃんの選別……どうやらなにやら楽しそうなイベントがあったらしいんだけど、それに耐えた5人の恐るべき中学生の中に、安心院(あんしんいん)さんの端末がいるらしい。

 

 なんて厄介なことをしてくれたんだろう。このせいでぼく達は、この上なく理不尽な5択ゲームを強いられるハメになった。許せない。

 

 ま、いいけどね。どうせ安心院(あんしんいん)さんのことだし、5人全員が端末とかそういうオチでしょ。ぼくには分かるぜ。

 

棺桶(かんおけ)中学の喜々津(ききつ)嬉々(きき)、

潜水艦(せんすいかん)中学の鰐塚(わにづか)処理(しょり)、

一升(ひとます)女子中学の財部(たからべ)依真(いま)、

缶詰(かんづめ)中学の与次郎(よじろう)次葉(つぎは)、

聖カーゴ女学院の希望ヶ丘(きぼうがおか)水晶(すいしょう)。

 

 お兄ちゃんの選別を簡単に耐えて見せた彼女らは、今現在生徒会メンバーによってそれぞれ面接を受けている。それぞれの性格や人間性の確認のために、また、誰が端末なのかを識別するために。

 

 ぼくと善吉くんは第四面接会場で、与次郎くんの面接を任された。張り切って見極めていこうと思う。ちなみにお兄ちゃんと雪(ゆき)ちゃんは財部くんの面接…‥大丈夫かな?

 

「缶詰中学三年D組、与次郎次葉です。えーっと……その……えっと……?」

 

 この子かわいい!!!! えすっごくかわいくない? ふわふわしてて儚げで、話し方とか声とかもかわいい!! 肌もすべすべしてるし髪もサラサラだ!! いつまででも触ってられるなこれ。

 

「あのー……私の髪に、何かついてますか……?」

 

「いや? さらさらすべすべで凄く可愛いなって思って、そこら中触ってただけだけど」

 

「雪(そそぎ)お前……同性でもセクハラは存在するんだぞ? 女子同士とはいえ、あんまりそういうのは……」

 

「いやまあ、髪や肌に触れるくらいならいくらでもやってもらって構いませんけど……」

 

 わお、寛容。緊張を困惑で上書きして話しやすくしてあげようと思ったけど、この分だと必要なさそうだ。善吉くんの見た目に気圧されてるわけでもないし、中々に豪胆だね、この子。

 

「……まあいいです。不束者ですが……不束者? 不届き者? えっと! 不束者ですがよろしくお願いします。人吉さん、球磨川さん」

 

「あー……どうするよ雪(そそぎ)? うちの生徒会って球磨川三人いるからさ、できれば与次郎達には下の名前で呼んでもらうことにする、でいいか?」

 

「別にいいよ。雪(そそぎ)さんでも雪(そそぎ)先輩でも……与次郎くんがいいのなら、ぼく個人としては、雪(そそぎ)ちゃんとかでもいいけど」

 

「では親しみを込めて、雪(そそぎ)ちゃん先輩と呼ばせていただきますね」

 

 かわいい呼び名だ。なんとなくほんわかしてていいね。

 お兄ちゃんと雪(ゆき)ちゃんには申し訳ないけど、こっちの子はまともそうでよかった!!

 

「それと人吉さん、雪(そそぎ)ちゃん先輩……申し訳ないんですが、与次郎と呼ぶのはやめていただいてもよろしいですか?」

 

「ん? ああ悪い、確かに男っぽい名前だしな」

 

「多分そういうことではないと思うけど……それで、ぼく達は君のことをなんて呼べばいいのかな?」

 

「いえ、与次郎次葉というのは人間界で使っている仮の名前で、私の本名は『ツギハギスタ・SS(ダブルエス)・ルビーサファイア5世』といいます。『間近でマジカル☆ワンダーツギハ』と言えばおわかりでしょうか」

 

「…………」

 

 ごめん、ぼくが悪かった。

 お兄ちゃん、雪(ゆき)ちゃん。

 

 助けてくれ。

 

 






 全員際物なのでみんな貧乏くじです。
 残念でした。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。