TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 電車移動中暇だったので一話だけ投稿します。
 二ヶ月ぶりらしいです。




第38箱「斬り取らせてもらったぜ」

 

 

「……どうしたの、二人とも。近年稀に見る大怪我だけれど……まさか、階段を踏み外した……だけじゃあ、こうはならないよねえ」

 

 いや、びっくりした。隣にいるめだかくんと半袖くんもびっくりしている。半袖くんって驚いたりできるんだね。いちばんの驚きだ。

 

「あちゃー、(ゆき)ちゃんに至っては死戦期呼吸じゃん……こういう時は改稿。球磨川禊・(ゆき)は怪我をしていない。これでいいかな、お兄ちゃん?」

 

『……うん、ありがとうね、(そそぎ)ちゃん。おかげさまで全身の疲れが取れた気分さ! (ゆき)ちゃんも元気そうで何よりだぜ』

 

「いやー、いい眠気覚ましだった! ところで(そそぎ)ちゃん、これから私達は財部ちゃん達にちょっかいかけに行こうと思ってるんだけど、一緒にどう?」

 

 なるほど、あの五人がやったのか。まあぼくも二人も根に持つ性格じゃないけれど、それはそれとして楽しそうだ。親交でも深めにいくとしようかな。

 

「ねえめだかくん。そういうわけらしいから、ちょっとみんなでお話ししてきてもいいかな? 今日の分の業務は一通り終わっているし」

 

「ああ、構わん。是非とも存分に親交を深めてくるといい! それはとても喜ばしいことだからな。寧ろこちら側から提案する手間が省けたというものだ」

 

 よっし、それじゃあ行こうか。

 お仕置きの時間だ。

 

 


 

 

「なんていうか、球磨川禊と(ゆき)……安心院(あんしんいん)さんが言うほどのこともなかったわね。何というか、拍子抜け」

 

「機械的に言えば、今の彼は『大嘘憑き(オールフィクション)』を失っていますし、彼女は元を正せばどこにでもいる普通の人間ですから」

 

「言っちゃ悪いけど、イージーモードってやつだったにゃー。この調子なら(そそぎ)とかいう奴と黒神も倒せちゃうんじゃ……ん?」

 

「どうした喜々津(ツッキー)?突然なにか重大な見落としに気づいたような顔をするなんて、かなり珍しいが」

 

「まあまあ、万が一にも見落としなんてないと思うけどな。それよりも、黒神さんに手を出すのは悪平等(ぼく)の意思に背くことに──」

 

「──いや、違う」

 

さっきから歯切れが悪いな喜々津(ツッキー)、そんなに心配するようなことなんてないわよ! 私から拷問を受けてやり返しに来た人なんて一人もいないんだから」

 

 

へえ、それなら私が一番乗りだね

 

「ッ!?」

 

 

 やあオッス。どうも、球磨川(ゆき)だ。前回バカみたいに痛い目に遭ったが、それもこれもぜーんぶこの時のため。女子中学生五人組にお仕置きしたかったからだ。

 

 というわけで、私のことを刺してくれた喜々津くんの首筋に指を突きつけてみた。ご指名ありがとう、ってね。

 

「さっきぶり、喜々津くん。後ろ指を指されるようなことはしちゃダメなんだぜ? 見習いとはいえ、生徒会執行部の一員なんだから」

 

「っ……やっぱり気づいていにゃがら刺されてくれたってわけですかー? わーお、優しーい……ですねっ!!」

 

 おっと、流石の私でも二回も刺されるのは避けたい。喜々津くん、なかなかやるねー。後ろを取られるや否や、本気でバタフライナイフを振り抜くなんて……おかげで飛び退く羽目になった。

 

 計画通りに。

 

なんで怪我が治ってんだよふざけんなあら(ゆき)せんぱい、お元気そうですね。まさか女子中学生のやることに目くじらを立てて仕返しにでもきたんですか?」

 

「んー、そだね。これは仕返しだよ、私にとっては。そんでもって──」

 

 

僕は君達を仕置きに来たってわけだ

 

 

 お兄ちゃん……球磨川禊は財部くんの肩にポンと手を置きながら、ヘラヘラと笑ってそう言った。うーわ、怖いだろうなーあれ。

 

「んなっ……いつの間に!?」

 

『や、さっきぶり。いつの間にと聞かれても困るなあ。君達が(ゆき)ちゃんに釘付けになっている間だけれど』

 

「……まあいいですよ、仕返しでも仕置きでも、指導でも仕事でも……できるものなら、やってみてくださいよ!!」

 

 そう言うと財部くんと与次郎くんはお兄ちゃんの方へ、喜々津くん・鰐塚くん・希望ヶ丘くんは私の方へと意識を向けた。うん、咄嗟の戦術にしてはかなりいい部類だろう。

 

 身体能力が高い三人を私にぶつけるというのは、決して悪手ではない。それと同時に、お兄ちゃんにメンタルが強い二人をぶつけるのも。え? じゃあどうしてこんなに余裕の態度なのかって?

 

 いや、だって……()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「──残念だよ。せっかくいい子達だと思ってたのに

 

 

 女子中学生五人組の死角、つまりはちょうど五人の中心部分に突如として現れた(そそぎ)ちゃんは、心底残念そうに、刀を右手に持ちながらそう言ったのだ。

 

 あーあ、知ーらね。

 

 


 

 

「で、誰がやってくれたのかな。お兄ちゃんと(ゆき)ちゃんを必要以上に痛めつけたのは」

 

 とりあえず聞いてみる。もしかしたら素直に答えて謝ってくれるかもしれないし。ま、そんなことは期待してないんだけど。

 

えー? なんのことですかー? 私達とせんぱい方はー、ちょーっと楽しく遊んだだけですよー? あれ? 今は私が話してたはず……?」

 

()()()()()()!? 成程安心院(あんしんいん)さんが警戒していたのはこういうことか!! ……? え? 斬られて……ない? いや、斬られて……」

 

にゃるほどにゃー、こいつが(そそぎ)って人ってことね。いーじゃんいーじゃん、前二人よりも歯応えありそうで!! えーっと、なんだっけ……?」

 

これ見よがしに刀なんて持っちゃって!! そんな物騒なもの、学校で振り回させるわけにはいかないわ!! …………あれ、私ってば、いつの間にか眠っちゃってた……?」

 

 ふう、一丁上がり。ダメじゃない、女の子がそんなに血気盛んに戦いに身を投じちゃ。ぼくが言えた義理でもないんだけどさ。

 

「……私は、斬らないのですか? てっきり斬り伏せられるものかと、機械的に考えておりましたが」

 

「ん? だって希望ヶ丘くんはこんなことしなくても分かってるでしょ? ぼくが何をしに来たのか」

 

 そう聞くと希望ヶ丘くんは機械的に首肯した。そりゃそうだよな、彼女は頭がスーパーコンピューターだから、ぼくの言いたいことなんて丸わかりだろう。

 

「……さっきから黙って聞いてれば、随分と上から目線でものを言ってくれるじゃないですか、(そそぎ)せんぱい。それで? (そそぎ)せんぱいは私達に何をしてくれるんでしょう? 指導ですか? それとも試合でも?」

 

 財部くん、前に見た時に比べて随分攻撃的だなあ。せっかくの可愛らしい印象が台無しだ。なんていうか、よく吠えるワンちゃんみたい。

 

「ま、それもアリか……生憎だけど財部くん。先に一つだけ謝らせて欲しいことがあるんだ」

 

「へえ? 一体何を──」

 

「君達を躾けさせてもらう」

 

「え?」

 

 あれ、伝わってなかったかな? 声が小さかったとか? しゃーない、もう少し大きい声で言うか。

 

「君達を、躾けさせてもらう」

 

「どうやってそんなに冷静に大きい声を……」

 

 剣道やってるからね、このくらいの声なら日常会話の範疇だ。実際に剣道やると耳が悪くなるから、少しばかり声が大きくなっちゃう人も多いらしい。

 

「──それにしても、躾とはまた大きく出過ぎたんじゃないですかあ? 自慢じゃないですけど、そんなに簡単に考えを改めるほど、私達もやわじゃありませんし!」

 

「うーん、まあ確かに……頑固そうだって言うのには素直に同意するよ。頭のてっぺんからつま先まで、まるで『大真面目ですよ』って表現したいみたいな見た目だし」

 

 特にメガネとかはそうだな。この手の子はメガネをアイデンティティとして認識しがちだし、誇りを持ってメガネをかけているのだろう。

 

うるせえな黙ってろよ随分とまあ言ってくれるじゃないですか。それで? 私が真面目だったらなんだって言うんです? 馬鹿真面目にお話で分かり合えるとでも──」

 

「大真面目に話を聞いてくれて本当にありがとう。それと()()()()()()()()、そろそろ真面目ぶるのもやめてくれて大丈夫だよ。ま、自分の状況でも確認してみるといい」

 

「──はあ? 一体何を……あれ、あれ? あれっ!? いつの間に私っ、壁に張り付けられて!?

 

『君だけじゃないよ、財部ちゃん。一人ぼっちは寂しいからね、みーんなまとめて壁に張り付けておいてあげたぜ』

 

 ありがとうお兄ちゃん。いつ見ても流石の螺子投擲精度だ。多分みんなもがけば抜け出せるけど、そうすると制服がボロボロになって絵面が際どくなってしまうだろうね。

 

 いやまあ……女子中学生五人が廊下に張り付けられているのは、十分絵面としては際どいものなんだけど。

 

「なっ、だってそんな……いつの間に!?」

 

()()()()()()だよ。ぼくが却説遣い(ブックマーカー)でちょっと書き変えただけさ。『財部ちゃん達は指摘されるまで自分が張り付けにされていることに気づかない』って」

 

 こうしてネタバラシと相なった訳だが──まだ一つ言ってないことがある。(ゆき)ちゃんが何をしたか、ということなのだが……まあ(ゆき)ちゃんの性格的に、嬉々としてバラシに行くだろうなあ……。

 

「さて、気分はどうだい財部ちゃん? さっきまで散々見下してた先輩達にコテンパンにしてやられた気分は? 余裕ぶってたのにその実気づきもしないうちに壁に張り付けられていたと気づいた時の気分は?」

 

「……あなたは、あなたは! 何もしてないのに随分と偉そうですね! それともまさか、全部他の2人に任せておいて、最後の最後にこうやって煽り散らかすのが、あなたにできる精一杯の仕返しなんですかあ!?」

 

 財部ちゃんはそう言って煽り返すが、そいつは悪手だぜ。

 

「へえ、この状況でそんな口聞いちゃうんだね。元気がいいのはいいことだよ、うん」

 

「……何が、言いたいんですか」

 

「私に斬られてることにも気づいてないくせに、よくもまあギャンギャン吠えられたもんだ」

 

「はあ? そうやって脅したって無駄ですよ。現に私達は今! 全員無傷で張り付けられているわけですが……その気になればいつだって抜け出せるんですから!」

 

 もちろん()()()()()()()()()()()()()()、だが。でもまあ多分、この悪平等(ノットイコール)五人衆は、いざとなれば羞恥心も何もかも脱ぎ捨ててしまえるのだろう。

 

 ──羞恥心が意味をなさないのならば、増幅させてしまえばいい。

 

死ぬほど恥ずかしいいい!! ほら! この通り、私は羞恥心なんかに屈しない!!」

 

『へえ、財部ちゃん……パンツを履き替えたのかい? さっきまでのとは違って、随分と大胆じゃないか。これ校則に違反してない?』

 

「えっ? って、ええええええっ何これえええええ!!!???

 

 財部ちゃんはスカートが破れることも気に留めず、張り付けられた状態から脱出する……が、お兄ちゃんの声を聞いて、自分のパンツを確認した。しなければよかったのにね。

 

 財部ちゃんのパンツは──ギリギリの所まで斬り取られていた。事情を知らない人が見たんだったら、財部ちゃんは際どい下着を露出する変質者にしか見えないだろうね。

 

「いや待て、もしや私達の下着も……!?」

 

「いやー、ちょっとこれは……倒錯的すぎるんじゃないかにゃー……」

 

 おや、ようやくみんな事態を理解し始めたらしい。(ゆき)ちゃんがやったことが、果たしてどんなことなのかを。

 

「もしかして、お前がやったことって……!」

 

「ようやく気づいたかよ中学生ども!! やられっぱなしってのも気に触るんでね、少年誌に掲載できるかできないかぐらいまでパンツを斬り取らせてもらったぜ!!」

 

 うん、いいね。しっかり気迫が乗ってるし、何よりネタバラシのタイミングも最高だ。やっぱり(ゆき)ちゃんはすごい。ぼくの趣味にも合ってるし。

 

 予想外の事態で顔を真っ赤にする女の子っていいよね。

 

 






 女子中学生のパンツを三人がかりで斬り取る生徒会とか、潰してしまった方がいいのでは?

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