TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 しばらく毎日投稿するつもりです。




第41箱「どうしてきみは」

 

 

「阿久根くんお待たせー! 待った──って、あれ?」

 

 ……誰もいない。えっマジで? 置いてかれたの!?

 

「いやまあ、そりゃそうか……『先行ってて』って言ったもんなー……これに関しては私の落ち度かな」

 

 と、なると、当然追いつくまではソロ行動ってわけだが……どうしようかな。この先の関門は選挙管理委員長の大刀洗(たちあらい)斬子(きるこ)くんと、我らが冥利くんの二択なんだけど……うーん、迷う。

 

 冥利くんの方はまだいい。ボードゲームを四連続で仕掛けられるだけ──それも冥利くん本人じゃなく、風紀委員の面々に。これなら私でもなんとかなる。

 

 問題は斬子くんの方だ。私一人で彼女が待ち構えている関門に行った場合、どんな試練が訪れるか分かったもんじゃない。

 

 というかそもそも、斬子くんの方の関門は突破を前提とした作りではないんだけど──と、なるとやはり、冥利くんの方へ行くのが得策か。というより、それしかない。

 

「ってわけで分岐点、階段前までやって来たわけだけど……いや、流石にいくらなんでもこれはないわな」

 

 これ見よがしに階段に貼られているアルファベット二文字を見て、私はそう独りごちる。向かって左には「S」の文字が、右には『C』の文字が貼り付けられていた。

 

 一応「S」はSLEEPを、「C」はCHILDを表しているらしいけど、それにしたって限度がある。まあここで即座に行動できるかどうかを試されているんだろうけどさ。

 

 さて、それで……えっと、確か「S」に阿久根くん、鰐塚くん、財部くん、お兄ちゃんが。「C」に喜界島くん、喜々津くん、与次郎くん、希望ヶ丘くんが行っているはず。

 

 ただなあ、今すぐ行ったらそれはそれで拗れそうで……もうちょい待ってから行くか。

 

 はーあ、オリキャラ演じるのも疲れるよ、ほんと。

 

 


 

 

「ところで例の凶化合宿ってやつさあ、僕が200年前に冗談で考えた冗談なんだけど──」

 

「──ちょうど一昨日終えたところだよ。中途半端になっていたのが気持ち悪かったのでな」

 

 時計塔地下6階・温泉フロア。普段は「十三組の十三人(サーティーン・パーティ)」の「裏の六人(プラスシックス)」が一人、湯前音眼が管理しているそこに、めだかと安心院(あじむ)なじみはいた。

 

 ここに至る経緯を説明すると、宝探し(トレジャーハンティング)開始時点で、安心院(あじむ)なじみは相手の認識をずらすスキル身気楼(ミラージュブナイル)で鍋島猫美に擬態してめだかに接触したのだが、あえなく見破られて撃沈、といった流れになる。

 

 そうして今は一糸纏わぬ姿で、共にお風呂に入りながらゆっくりと御歓談──もとい、胸襟を開いて話し合っていた。いわゆる()()()()()()というやつである。

 

「それはそれは……素晴らしいことだね。こうして君からはまた一つ『出来ない』が失われたわけだ──『出来ることが増えた』とも言うがね」

 

「言い回しで言葉の与える印象など二転三転するものだ。だから、そんな違いに意味はない──故に、私は貴様に対して弁明も弁解もせんよ。何故なら、私は私の意思で動くからな」

 

「まあ、そう思いたいなら思っていればいいさ。実際問題、他人からの意見を取り入れ過ぎて破滅するやつよりはよっぽどいい、とは思うが」

 

 安心院(あじむ)なじみはどこの誰とも知れない奴を例に挙げながら、けらけらと笑って見せた。どこかに思いを馳せるように──簡単に言ってしまえば、まあつまりは()()()()()()ということだ。

 

「む、どうしたのだ安心院(あじむ)なじみ。まさかとは思うが、貴様のぼせたなどとは言うまいな」

 

「ああいや、少し考え事をしていただけさ。みんな今頃何してるのかなーって。一応スキルを使って覗き見できねーこともないが、君と話しているのによそ見をするのも失礼だろう?」

 

「なんだ、そんなことか──心配せずとも、今頃第三関門を突破したあたりだろう。奴らの進行速度であれば、そろそろ次へと向かっていてもいいはずだろうな」

 

「へえ、そうなんだ。いやまあ、だからと言って、僕が何かをしたりするわけではないんだけどさ……露骨に残念そうな顔をするねえ、めだかちゃん」

 

「いやなに、貴様が適当に首でも突っ込んでくれれば、戦って決着を付けられそうだから便利なんだが──いや、やはり今のはなしだ。今回の宝探しはあくまでレクリエーションなのだから、まさか本気でやり合うわけにもいかない」

 

「僕としてもごめん被りたいところだぜ。君と戦って勝てる奴がいるとは思えねーし」

 

 安心院(あじむ)なじみは顔の下半分を湯船に浸けながらそう話した──恐らくは、スキルを使って話しているのだろう。非常に贅沢な使い方である。

 

「それでめだかちゃん。凶化合宿を成し遂げてしまったことから分かるように、本来君は『()()()()()()()』──ただそれだけの人間であることは自明であるが、そんな君に問いたいことがある」

 

「まあ、質問くらいは受け付けてやらんこともない。それに今は、こうして裸の付き合いをしているわけだから、遠慮せずにかかってくるがよい」

 

「『かかってこい』だなんて、随分と交戦的な言い回しじゃないか。もっとも君に言わせれば、言い回しに意味はないらしいが──それでは問わせてもらおうか」

 

 その口角をやや上げながら、安心院(あじむ)なじみはめだかへと口撃、もとい質問を(おこな)った。

 

「きみは『完璧な人間など作れっこない』と、あの球磨川くんを引き合いに出してまで、フラスコ計画を否定したらしいじゃないか。でもさ、それを言うなら──『みんなを幸せにする』というきみの志も、同じくらいに実現不可能だとは思わないのかな

 

「──思うな。でもそんな、実現不可能な絵空事だからこそ、私が取り組む意味がある

 

 めだかはあくまで毅然とした態度で、それが当たり前のことであるかのように答えた。

 

「ふーん、安心したよ(安心院(あんしんいん)さんだけに)。君が本気でそれを信じて疑わない主人公くんだったら、もう殺すしか打つ手がなかったからね──でもまあ、僕も同じ気持ちだったさ。もしもフラスコ計画が誰にでも達成できる簡単な議題なら、そもそも思いついてさえもいないだろうからね」

 

「……そういえば、だ。喜々津候補生だったかな、難易度の高いゲームに挑戦するのが生き甲斐だとかなんとか言っていたが──ということは、五人の候補生に混じっている悪平等(ノットイコール)は、ひょっとすると彼女ということかな?」

 

 それを聞いた安心院(あじむ)なじみは、やはり上がった口角を下げることはない。何故なら五人とも悪平等(ノットイコール)であるため、未だに一人しか見抜けていないめだかに──。

 

「『失望したよ』『がっかりだぜ』とでも思ったか? 安心院(あじむ)なじみ」

 

「失望したよ」「がっかりだぜ」と思っていたのだが……どうやらそうではなかったらしい。あの黒神めだかが、その程度のことを予想できないはずもないのだから。

 

「なめるな。候補生が五人とも悪平等(きさま)であることくらい、既に私は見抜いておるよ」

 

「──へえ。()()()()、ねえ……いやはや、()()()だよ。しかしめだかちゃん、今回はどうして見破れたのかな──どうやって見破ったのかな」

 

()()()()()()()()()()()()()だよ。本来であれば候補生として競い合う仲のはずが、ライバル意識・ポジション争いのようなものが一切見受けられないからな……まあつまりは、ただの推理だよ」

 

 もっともこの推理法は、卓越した観察眼を持つめだかくらいにしか不可能なものである。だから純然たる推理であるかと言われれば、それもやや違うのだが。

 

「いやしかし、球磨川も──球磨川禊も厄介なことをしてくれたものだ。まさか六百数人の中からよりにもよって悪平等(ノットイコール)だけを選別するとはな」

 

「いいや違うぜめだかちゃん。僕は本来あの場に、もっと多くの悪平等(ぼく)を忍ばせてたんだが……えーっと、何人だったかな。確かそう、六十人──」

 

「ふむ、六十人か。それならば球磨川にも感謝しておかねばなるまい──」

 

じゃなかった六百人だぶっちゃけあの時集まった参加希望者の、ほとんど全員が悪平等(ぼく)なのさ

 

「なっ……!?」

 

 安心院(あじむ)なじみはより一層笑みを深めながら、めだかを驚かせることを楽しんだ。どうにも人を手玉に取るのが好きなようである。

 

「さて、それでどうするんだい、めだかちゃん。五人が五人とも悪平等(ぼく)であると分かった今、研修は中止──」

 

「いや、()()()()()。むしろ私は俄然燃えてきたぞ! 何故なら悪平等(きさま)を育て悪平等(きさま)を教え悪平等(きさま)を導く──それができてこそ、悪平等(きさま)に対して勝利したと言えるだろうからな!」

 

「──だろうね。まあきみならそう言うと思ってたさ」

 

 それでもめだかが折れることはない。この程度の困難、今まで何度でも跳ね返して来たのだから──打ち倒して来たのだから。

 

「そんなきみに、僕から悪いニュースを差し上げようじゃないか──最低でも六百人いることが確定した悪平等(ぼく)だけど、一体何人いると思う?」

 

「……そこまで思わせぶりな態度を取る、ということは……最低でも六千は下らんのではないか、と予想してみるが」

 

「六千人ねえ、まあ惜しいところはついているさ。何を隠そう、悪平等(ぼく)の人数は七千人」

 

「ふむ、まさかそれほどまでとはな……が、しかし! その程度であれば、まだなんとか──」

 

 七千人であればなんとかなる。めだかはそう言おうとしたのだが、しかし。あの安心院(あじむ)なじみが、サプライズを隠しておかないわけがなかった。

 

 

 

じゃなかった

  七億人だぜ

 

 

 

「──なッ……七、億人だと……!?」

 

「まあつまりぶっちゃけ、人類の十人に一人がこの悪平等(ぼく)だ──そして! ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 安心院(あじむ)なじみは更に笑みを深める。その口角はまるで三日月のように釣り上がり、悦に浸っているように見えた。

 

「……正直、これを超えるニュースなどないように思えるが……」

 

「場合によってはこちらの方が大きいダメージかもね。まあそうだな、ところでめだかちゃん──どうしてきみは、この宝探し(トレジャーハンティング)の参加者に、悪平等(ぼく)()()()()()()()と思ってたんだい?

 

「──まさか、()()()がいるというのか……?」

 

 安心院(あじむ)なじみはその質問に、笑みをもって返すだけだった。その薄ら笑いはまるで──かの負完全(マイナス)を、想起させるようだった。

 

 






 さて、誰でしょう?
 見当もつきませんね。

 感謝・評価・ここすき等よろしくね。

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