TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 バレてるかもしれないんですけど、僕はめだかボックスの登場人物の中で球磨川先輩が一番好きなので、出番の時はやたらと筆が乗ります。




第42箱「仮にそうだったとして」

 

 

 いやー、風紀委員たちは強敵だったね! 流石の私も種類の異なるボドゲ四連戦は堪えたよ。ただまあ、これを見越して練習して来たから問題なかったけど。

 

 一番怖かったのは鬼瀬くんだなー……だって彼女、負けそうになると手錠をメリケンサック代わりにして殴ってくるんだもの。うっかり手錠を斬り刻んじゃったけど、そこはなんとか許してもらえた。なんでも、替えの手錠は数えられないほどあるらしい。

 

 ああ、それと喜界島くんたちには会わなかった。まあ会わないように時間調整してるんだから、会っちまったら意味ないんだけどさ。

 

 さて、それでたどり着いたのがこの分かれ道──「2」と「3」なわけだけれど、ここは当然「2」の方に向かう。

 

 なんでかって? そんなの決まってるだろ。お兄ちゃんの勇姿を見てえからだよ

 

「3」の方で待ち構えてるのは食育委員会のダブル委員長である『猟理人』こと飯塚(いいづか)食人(くろうど)と、『超理師』こと米良(めら)孤呑(このみ)のペアだ。

 

 喜界島・希望ヶ丘ペアはこの二人を、満漢全席を作ることによって、その心をもって「()()()()()」ということを体現し、無事に突破するわけだが──私にはここを突破するビジョンが湧かなかった。

 

 だって私、料理下手だし……(そそぎ)ちゃんと料理対決をしたことがあったが、全戦全敗──もとい、惨敗だった。料理の見た目は残飯同然だったが。

 

 と、まあそんなわけで、私は「2」の方へと進ませてもらう。時間調整が完璧なら、おそらく私が着く頃にはお兄ちゃんと財部くんも着いているだろう。そこだけは運任せだが……まあなんとかなるさ。

 

 今までだってなんとかなってきたんだし。

 

 


 

 

「禊せんぱい……私はやっぱり、(ゆき)せんぱいのことが嫌いです」

 

 禊とともに「2」の階段を駆け上がりながら、財部はそんなことを口走った。こともあろうに、兄の前で妹の悪口を。

 

 しかしまあ、(ゆき)には嫌われるだけの理由がある。禊もそこは承知していたのか、苦言を呈すようなことはなかった。

 

『うーん、まあそうだろうね。僕もネガ倉くんのコミックスを斬られたらキレるかもしれないし、言いたいことは分かるさ』

 

「今遠回しに私のパンツが漫画本と同じ価値って言いました?」

 

 これに関して禊はふざけたわけではないが、財部が過剰に反応してしまった。まあ例えが悪かったというのは否定できないが。

 

『別にそういうわけじゃないんだけどね……それより財部ちゃん。どうして(ゆき)ちゃんのことが嫌いなのか、聞いてもいいかな』

 

「なんだか釈然としませんけど……まあいいです。それで、(ゆき)せんぱいがどうして嫌いかと言うとですね──」

 

 財部はそこで一度言葉を切り、少し考え込むかのように間を開けた後、再び話し始めた。

 

「──なんていうか、()()()()()。私とあの人は初対面だった……()()()()()、あの人はまるで、私のことを……いえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()に話しかけてくるんですから」

 

『どう考えても旧知の仲ではないのに、好感度だけはやたらと高いから理由が分からなくて怖い──と、財部ちゃんはそう言いたいわけだ』

 

言い方変えてるだけじゃねえかよええ、そうなります。そこで禊せんぱいに聞きたいんですけど、あの人って嫌いな人間はいるんですか?」

 

『いや、聞いたことないな。多分あの子、箱庭学園の生徒なら全員好きだと思うよ?』

 

「うわぁ……」

 

 他人の妹に対して散々な反応であるが、これもまた責められたものではない。知らない相手が一方的にこちらを好き、というのは十分恐怖に値するし、なんなら(ゆき)は彼女らに対してセクハラもしている。

 

 一応口を聞いてもらえているだけまだ有情なのだ、本当のところ。

 

『好感度がやたらと高いのが怖いと言うけどさ、それならめだかちゃんはどうなんだい? 彼女もまた、(ゆき)ちゃんと同じ枠だと思うけど』

 

「あの人は──生徒会長は、人間離れしてるから平気なんです。それならまあ、一方的に好かれていても理解はできるかなって。だってあの人、多分人類なら誰でも好きですよね?」

 

『まあ僕のことも救おうとしたほどのお人よしなんだ、人間なら誰でも大切にするよ、あの子は。昔からそうだったしね』

 

「そうでしょうね……だけど(ゆき)せんぱいは、そうじゃないんです。あの人は人間離れしてない。()()()()()()()()()()()()。同じなんだ、同じなのに……」

 

()()()()()。そうだろ? 財部ちゃん』

 

 禊は財部の言葉を読み、先に言葉を続けてしまった。当然財部が驚かないはずもなく、彼女は驚きのあまりに足をもつれさせた。

 

 禊は危うくこけるところだった財部の手を取り、その体が倒れるのを防いだ。そして手を繋いだ状態のまま、禊は話を続けた。

 

『どうして分かるんだ、って顔だね。教えてあげようか?』

 

恥ずかしいんだよさっさと手を離せは、はい……教えていただけるんだったら、ぜひ……」

 

『簡単なことだよ。()()()()()()()()()()()

 

「思っていて、思っているのに──それでもあの人を、家族として愛しているんですか?」

 

『当然だとも! むしろ愛さない理由がないね。ちょっと不思議だから、ちょっと他人よりも変わっているから、ちょっと受け入れ難い趣味があるから、ちょっと醜悪極まりないから、ちょっと生理的に受け付けないから、ちょっと殺したいほどに嫌いだから、ちょっと生まれてきたことを後悔させてやりたいくらいに憎んでいるから──仮にそうだったとして、()()()()?』

 

「それは全然『ちょっと』の範疇じゃないと思いますけど」

 

『僕にとってはこんなの序の口さ。というか、範囲なんて関係ないんだよ。だってあの子は()()()()()()()()()()。家族がどれだけ変な奴だったとしても、愛さない理由にはならない。愛せない理由にはならない』

 

「……そういう、ものなんですか?」

 

『そういうものだよ。クラスメイトみたいな他人を愛せないならまだしも、家族を愛せない奴はもう過負荷(マイナス)どころか人間ですらない』

 

 禊は詰まることなく、澱みなくそう言い切ると、財部と共に階段を歩いて上がりながら、再び話し始めた。

 

『例えばそうだな、家族間でも秘密にしたいことはあるだろう? 秘密でゲーム買っちゃったとか、中学生なのに女児向け魔法少女ものが好きとか』

 

「やけに現実的な例えを出してきましたね……」

 

『まあまあ、この際なんでもいいのさ。そういう家族にも言いたくない秘密があったとして──なおかつそれが露呈したとして。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(ゆき)せんぱいが秘密を隠していそうなのも、その理屈で許すと……そう言いたいんですか?」

 

『許す許さないの問題じゃないんだよ、こういうのは。納得できるかできないかの問題なんだ──と、僕は後輩の女の子に、格好つけてそれっぽく講釈垂れてみるわけだが』

 

 禊はへらへらと薄ら笑いを浮かべ、財部にそう語る。そうしてここで、ようやく財部は気がついたのだ。

 

 適当言って煙に巻かれたのだ、と。

 

「ちょっと禊せんぱいからかいましたね私のこと!? 一応ちゃんとした悩みを打ち明けたつもりだったのに!!」

 

『ははは』

 

「苦笑いで適当に流さないでくださいっ!!」

 

『いやー悪いね、どうにも真面目腐るのは苦手なんだ──嫌いなんだ。反吐が出るね』

 

「それは……言い過ぎだと思いますけど……」

 

 禊たちが階段を登り終え、直線の廊下へと突入するタイミングで禊は振り返り、後ろを向きながら、つまり財部の方を向きながら、奥に見える扉へと向かって、背中を向けながら歩き出した。

 

『それが案外言い過ぎでもない──まあ結論から言わせてもらうとね、そんなに心配しなくていいと思うぜ。身内の僕が言っても説得力が無いかもしれないけど、あの子は根っこからいい子だから。それこそ、かわいい後輩のためなら命を賭けられるくらいには』

 

「でも、私達のパンツを斬り取るような人なんですよ? そんな人を信用しろと言われても……」

 

『ま、その辺は追々ね。あの子のことだ、きっと何かしらの誠意をもって見せつけてくれるよ。いやーそれにしても、つくづくいい妹達を持ったなあ、僕は。ひょっとすると世界で一番の幸せ者っていうのは、案外僕のことだったりするのかもね』

 

「まあ、禊せんぱいがそう言うなら、期待しないで待っておきますけど……あの人がまた変なことしてきたら、今度こそは縁切るんで! その時になって後悔しないでくださいね!!」

 

『はいはい、それでいいよ……さて、それじゃあ財部ちゃん。楽しいお喋りはこの辺にして、次の関門へと挑もうか』

 

 禊はひとまずそうして話を区切り、次の関門へと繋がる扉を開けた。そうして進んだ先にあったのは、時計塔地上五階の機械室──つまり、この時計塔の心臓部分である。

 

 その部屋の中心部分。そこには二つの椅子と共に置かれている机に腰掛けている、赤色のナース服を身に纏った女子がいた。

 

『へえ、これはまた変わった服装の人がきたね。一体今度は何委員長かな?』

 

(あれ? この人ひょっとして……)

 

 禊たちが入り口付近で立ち尽くしているのを見ると、赤ナース服の女子はやけに爪の長い右手の、人差し指を一度上へと立ててから、スッと下へ、スライドさせるように動かした。

 

 次の瞬間、そこへ現れたのは……鎖で繋がれ磔にされている、先ほど別れたばかりの喜々津と与次郎だった。見た限り、どうやら高熱を出して苦しみ呻いているようである。

 

「ッ!? 喜々津(ツッキー)ちゃん!? 与次郎(ジロ)ちゃん!?」

 

『なるほどねえ、大方分かれ道がどこかで合流していたんだろ。そしてどうやら残念なことに、あの二人はすでに敗北したってわけらしい』

 

「そんな……この手のイベントで喜々津(ツッキー)ちゃんが負けるなんて──それに! 禊せんぱい……一応言っておきますが、あの人悪平等(ぼく)です。しかも激レアな、広域殲滅タイプの能力保持者(スキルホルダー)!!」

 

「先に言わないでよ、楽しみが減る……それでは改めまして。私は保健委員長、二年十一組の(あか)青黄(あおき)。赤までが名字だから、そこのところよろしくね」

 

 赤は磔にされている喜々津と与次郎をそれぞれ片手で抱き寄せ、表情をほとんど動かさず、禊たちに問いかけた。

 

「どうする、あなた達もやってみる? 第四関門(2)──痛みの殿堂『完全神経衰弱(パーフェクトメランコリイ)

 

 球磨川禊と財部依真の無謀な挑戦が、始まる。

 

 






 悪平等五人衆の口調も段々と制御できるようになってきてハッピーです。書くのがだいぶ楽になってきた。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

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