TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 タグに「曇らせ」を追加しました。
 そんなに仕事はさせません。

 あと過去一でメタい発言多いです。




第47箱「もうわかんない」

 

 

 私は校舎の上から、めだかくんたちに向けて意味のない虚言を繰り返す善吉くんを眺めていた。

 

「俺は本当に関門を全部突破して──」だとかなんとか言っていたけど、めだかくんたちは困惑するだけで、誰も善吉くんの言い分なんて信じていなかった。

 

 (そそぎ)ちゃんでさえも。

 

 私が、斬り変えたから。

 

()()()()()()

 

「……そんなこと、分かってるよ。私が一番()()()()()()ことなんて」

 

 私は声がした方を振り返る。そこにはやはり、左腕が()()()自由になった安心院(あんしんいん)さんがいた。

 

「それにしても、非道(ひど)いことをするねえ。あのまま行けば、善吉くんは生徒会副会長になれてたんだぜ? それを君のエゴで──」

 

「違う。エゴじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「よく言ったもんだぜ、君にとって都合のいいように斬り変えたくせに。神様ごっこは楽しいかい?」

 

「楽しいわけないじゃん。私だってこんなことしたくないよ、善吉くんが悲しむところなんて見たくない」

 

「だったら──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。僕の記憶も残っているが、それはどうでもいい」

 

 ……なんだ、何が言いたい? 一体何がしたいんだろう、安心院(あんしんいん)さんは。

 

 そんな風に考えていたら、善吉くんがめだかくんにぶん殴られているのが見えた。よし、これで元通りだ。

 

 元の展開通りに。

 

「露骨にホッとした表情を浮かべたね。まあ僕としてもこの展開は望ましい。そのために五人の悪平等(ぼく)を──五人の普通を送り込んだんだから」

 

「うん、だろうとは思ってたよ。だから私は、その考えを読み取って──」

 

「本当かい? 場を()()()()()しっちゃかめっちゃかに掻き回したっていうのに?」

 

「……それに関しては、ぐうの音も出ないよ。言い訳の一つすらない。それも全部、(そそぎ)ちゃんの行動を読めなかったことが原因だけどね」

 

「ふうん、()()()()()()、ねえ……」

 

 ……? さっきから含んだ事ばかり言っているけど、本当にどうしたんだろう。万が一にも勘付かれることはあり得ないし……。

 

「それで、僕の質問には答えてくれないのかな? どうして君は善吉くんの記憶だけ残しているんだい?」

 

それは……。

 

「それはね、安心院(あんしんいん)さん。私は善吉くんが苦しんでいる姿を──」

 

「あー、そういうのいいから。僕も意地悪なことを聞いたからね、いやーごめんごめん。自分の罪悪感の捌け口として善吉くんがちょうどよかっただけなんだろう?」

 

 ちがう。

 

 断じて違う。

 

「違っ、いや、そうじゃなくて」

 

「君は()()()()()予想外の出来事に弱いね。()()()ずーっとそうだ。僕はそういうところを直せって散々言ってきたはずだがね」

 

「昔から? えっと、いや、私は安心院(あんしんいん)さんからそんなことを言われた記憶は」

 

「すっとぼけんなよ。もう手遅れなんだから」

 

 はあ、手遅れ……手遅れ?

 

 

──まずい。

 

 

「『改稿斬昧(オールリヴィジョン)』!! 改こ──」

 

 

 

「もう遅い。」

 

 

 ぐッ……なんだ、これ……動けない……!? 息も、できない……!!

 

「君のスキル『改稿斬昧(オールリヴィジョン)』は確か、『斬る』ことが発動条件だったかな? だったら全身固定のスキル怪力乱神を固まらす(ハードメイカー)で全身固めてしまえば、君はスキルを使えない。特別に口だけは動くようにしてやるがね」

 

「ッハァッ、げほっ……安心院(あんしんいん)さん、残念!! 口が動けば私のスキルは使えんだよ!!」

 

 舌を噛み斬っちまえば万事OK!! 安心院(あんしんいん)さんから記憶も奪えるはず!! 行くぞ、やるぞ、噛み斬るぞ──!!

 

「──ァう、いっ  絶叫  ッッ!!

 

 ……あれ?

 

「おいおい困るよそんなことされちゃあ。一応僕達は少年誌のキャラクターなんだぜ? 今頃これを読んでる子供達は泣いてるよ」

 

「ッハっ、ぅあ()……あんれ(なんで)ぇスいう(スキル)が、っはァっ、ふかえあいぉ(つかえないの)……?」

 

「スキルを無効化するスキル無効脛(ライフゼロ)を使ったのさ。生殺与奪のスキル存亡(ゼロサムリアル)も使っているから、君は死なせないぜ」

 

 どうする? どうする!? ああもう最悪だどうすればいい!? 死ねよ、死んでみろ、死んじまえ!!

 

「あーあ、可愛いお顔が涙と血でめちゃくちゃだ。ちょっと待ってなさい……よし、これで()()()。時を操るスキル時感作用(タイムバニー)で時を戻してあげたよ、感謝しなさい」

 

「……だったら、もう一回舌を──」

 

()()()()()()? それならやってみるといい」

 

 舐めやがって、私だってやる時はやれるんだ、見てろ──見てろよ。

 

 見てろ、今から。そう、今から……。

 

 ──また、()()()()を味わうの?

 

「……できないならやらなくていいんだぜ。そんなに何回も痛々しいことをやられても困るんでね」

 

「私っ、私は……」

 

「いやいいよ。自分で舌を噛み切るのなんて、精神をだいぶ削るだろうしね。だからここからは、僕が言いたいことを一方的に話すだけにしよう」

 

「…………」

 

「あのねえ(ゆき)ちゃん。世界ってのは何も考えずに──無計画で生きていけるほど上手くは出来てないんだぜ?」

 

「…………」

 

「それを君は、あっちを斬ったりこっちを斬ったり。めちゃくちゃに掻き回してくれたね」

 

「…………」

 

「君は世界を好きなように書き換え──もとい、斬り変えたけれど、やるなら最後までやりきって欲しいと、僕は苦言を呈さざるを得ないな」

 

「…………」

 

「例えば、そうだな。初期の頃に『黒神めだかは杵築(ゆき)のピンチに間に合わない』だとか、『杵築(ゆき)はこの世界に結果を残せない』みたいな設定があっただろう? あれは結局何だったんだい?」

 

「…………」

 

「他にもまだまだ沢山あるぜ。変数(ヴァリアブル)のコピーは本人を目の前にしていると出来ない』とか『球磨川(そそぎ)はその時一番意識している人間を模倣する』とか──『アンケート機能で望まれた方の行動を取る』とかね」

 

「…………」

 

「それに……僕との出会い方。あれだって捏造されてる。大方僕に何かを隠したいからそんなことをしてるんだろうけど、今となってはそれも無駄足だったね」

 

「…………」

 

「君はさ、どうして僕に隠し事をするのかな。どうして僕から逃げようとするのかな。球磨川(ゆき)ちゃん、君だって、僕と同じ悪平等(ぼく)の内の一人なのに

 

「…………」

 

「もう隠し事なんてしなくてもいいんだぜ? だって、ほら。僕は怒ってるわけじゃない。君がどういう考えで動いているのか知りたかっただけなんだから」

 

「…………」

 

安心院(あじむ)なじみを助けたい』んだろう? 『めだかボックス』という()()()()()()()()()()()である僕のことを、助けたかったんだろう? ネタバレは嫌いだから、仔細まで知ろうとは露ほども思わなかったけどさ」

 

「…………」

 

「ちなみに言っておくが、僕はきみの知識について、結構前から知ってたぜ。(ゆき)ちゃん、本当に詰めが甘えよ。ええと、いつだったかな……そうそう、第20箱の時だ。()()()()()()()なんて、そんなこと話したらバカでも分かっちまうぜ?」

 

「…………」

 

「さて、僕が言いたいことは大方言わせてもらったが……そんなに泣かないでくれよ、僕が悪いことしてるみたいだろ──いや、違うな」

 

「…………」

 

「『おーよしよし、泣かないでおくれ(ゆき)ちゃん。まるで僕が泣かせたみたいじゃないか。そんなふうに思われたら、僕のキャラクター人気投票の順位が下がっちまう』──だったね」

 

「…………」

 

「だからそんなに泣くなよ。そこまでして僕を助けたいのかい? 君は元々存在しないんだから、君が動かなくてもどうにかなることだろう?」

 

「…………」

 

「そういえば、(そそぎ)ちゃん。あの子も本当はいないキャラクターらしいじゃないか。しかも設定では男の子だとか。なんで女の子になってるんだろうね。知らない? そう、まあ別にいいや」

 

「…………」

 

「それで、ええと……そうそう、君は無計画すぎるって話だったね。もっと思慮深く、綿密に話の道筋を作るべきだったんだよ、君は」

 

「…………」

 

「ストーリーはめちゃくちゃ、設定の数々は破綻して矛盾を抱える結果に。当初自分が思い描いていた展開からは大きく逸れてしまい、出来上がったのはもはや構想とは別物の何かだ」

 

「…………」

 

「それもまあ、お手本が無かったからこそなんだろうね。手本が無かったからこそ、手間を惜しまず、手当たり次第に出来ることをやるしかなかった。それなら僕が手本を見せてあげよう。人の動かし方を教えてやるぜ」

 

「…………」

 

「ところで、そうだ。僕は君が勝手に作り出した設定の中で、一つだけ結構気に入ってるのがあってねえ。それだけはまあ、なかなかに高く評価しているんだぜ」

 

「…………」

 

負安心モードだったっけ? そんな名前のやつだよ。僕と(ゆき)ちゃんで合体するやつ」

 

「…………」

 

「ああ、そうそう。合体した時に君の心を読んでね。それで気が付いたんだよ。あれはファインプレーだったぜ」

 

 ……私の、せいだ。

 

 私が無闇にストーリーに関わろうとしたせいで、安心院(あんしんいん)さんにこの世界が漫画だって知られちゃった。

 

 ……どうしよう。どうしよう。

 

 どうすればよかったんだろう。

 

 どこで間違えたんだろう?

 

 いっつもこうだ。

 何かしようとすると、何もかも間違えてる。

 

 私なりに頑張って、物語をより良くしようとしたのがいけなかったのかな。それとも、安心院(あんしんいん)さんの端末であることを放棄したのがいけなかったのかな。

 

 もうわかんない。

 何がしたかったのか。

 なんで今まで生きてきたのか。

 

 どうして今になって『ああすればよかったな』が浮かぶんだろう。いっつもそうだ、終わってからの方がいい案が出る。

 

 生徒会にしがみつかなければよかった。

 

 生徒会戦挙になんて関わらなければよかった。

 

 時計台の戦いに参加しなければよかった。

 

 生徒会副会長代理になんてならなければよかった。

 

 善吉くんやめだかくんと知り合わなければよかった。

 

 キャラを作らないで、凡人のままでいればよかった。

 

 (そそぎ)ちゃんを放っておいて早く消えればよかった。

 

 お兄ちゃんなんて知らなければよかった。

 

 安心院(あんしんいん)さんに逆らわなければよかった。

 

 そしてなにより。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──私なんか、生まれてこなければよかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慢心操意(テイクオーバー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 校舎の上には、五人の人間と()()()()()がいた。

 

 人外の外見は──白髪と黒髪が混ざり合った、身長は150cm半ば程の、巫女服と制服を折衷したかのような衣服を纏った少女だった。

 

「ッ──安心院(あじむ)、なじみ? お前、その姿……なるほどな、そういうことかよ」

 

「……つくづく、自分の低脳さに反吐が出るね。時計台で、彼女にあんなことを言わなければ……」

 

「そんな……どうして(ゆき)ちゃんが……?」

 

「彼女とは、いつか殺し合ってみたいと思っていたんだけどね。残念だ」

 

「…………」

 

「まあまあ、そんなに暗い顔すんなよ、名瀬ちゃん、真黒くん、江迎ちゃん、宗像くん、半袖ちゃん。僕はあの子に手本を見せてやるだけだぜ?」

 

 人外──安心院(あじむ)なじみはそう言って不敵に笑った後、今なお校庭の真ん中でうずくまっている善吉に目を向けた。

 

「まあそこで見てなよ。(ゆき)ちゃんも見ておきなさい。そして教えてやるぜ」

 

 安心院(あじむ)なじみは嘲笑うかのような笑みを顔に貼り付け、そして言い放った。

 

僕にとって若造ひとり(たぶら)かすなんて、週刊少年ジャンプを卒業するのと同じくらい簡単なんだってことをさ

 

 






「曇らせ」なのでいつかは晴れます。
 というか、絶対に晴らします。

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