TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 ちょっとやることがいっぱいあるので今日は短めです。




第49箱「そういうものでしょう?」

 

 

「善吉くん、なんであんなことしたんだろ……」

 

 ぼくは周りに誰もいない廊下を歩きながら、誰に向けてでもなくそう呟いた。

 

 思い返されるのは、今から約数分前のこと。ぼく達がまだ着替えてたのに突然生徒会室に乗り込んで来た善吉くんは、これまた突然めだかくんに「お前は間違っている」と口にした。

 

 めだかくんはついさっきまで、善吉くんのことを本当にど(・)う(・)で(・)も(・)よ(・)さ(・)そ(・)う(・)に(・)見(・)て(・)い(・)た(・)のに……敵対したと判断した瞬間、とっても嬉しそうな目になってた。

 

 善吉くんはボコボコにされるし、めだかくんはそのまま生徒会室から出ていっちゃったし──なんなんだ本当に。

 

 それに。

 

「雪(ゆき)ちゃんはいつの間にかいなくなってるし……折角宝探し(トレジャーハンティング)は楽しかったのに、台無しだよ……」

 

「人の頭を勝手に覗き見て声を当てるのはやめてくれないかな、安心院(あんしんいん)さん」

 

「まあいいじゃないか。僕と君の仲だろう?」

 

 はあ……まあ別にいいけどさ。ぼくの頭に覗(・)か(・)れ(・)て(・)困(・)る(・)情(・)報(・)はないから。

 

「で、何? ぼくに喧嘩でも売ってるの? 買うけど」

 

「嫌だなあ雪(そそぎ)ちゃん。ちょっと雪(ゆき)ちゃんの体を借りてるだけじゃないか」

 

「それは操(・)っ(・)て(・)る(・)っつーんだよ。あんまりぼくの心を逆撫でしないでくれないかな」

 

「怒らせるつもりはないんだがね。さっき善吉くんに会った時も言ったんだけど、僕はむしろ、雪(ゆき)ちゃんにとっての命の恩人だぜ」

 

 へえ、そうなの。ありがとね。

 

「ぼくの言いたいこと分かんねえかな? そ(・)の(・)顔(・)で話すなっつってんだよ」

 

「……やめてくれよ雪(そそぎ)ちゃん。僕の体は雪(ゆき)ちゃんの体だぜ? 傷付けたりしたら──」

 

「関係ないよ。ぼくと雪(ゆき)ちゃんの間に遠慮なんてないんだから。元を辿れば、同一人物なわけだしね」

 

 そうでなくとも、ぼくが雪(ゆき)ちゃんを斬った所で、その程度で雪(ゆき)ちゃんはぼくのことを見捨てたりしないし。

 

「だからって刀を突きつけるのはどうなんだろうね。そもそも僕は君と戦いに来たわけじゃねーし……まあその辺は善吉くんが目覚めた後に聞きなさい。僕は信用できなくとも、彼の言うことなら信用できるだろう?」

 

 ふーん……善吉くんが突撃してきたのは安心院(あんしんいん)さんの差し金だったと。まあそれしかありえないだろうけど、明言してくれたのはありがたいかな。

 

 そしてわざわざ明言したと言うことは、こ(・)の(・)情(・)報(・)は(・)バ(・)レ(・)て(・)も(・)問(・)題(・)な(・)い(・)ということだ。何かしら裏の意図がある……とは思うけど、今の時点じゃ分からないし、ジタバタしてもしょうがないかな。

 

「それなら、まあ……信用はするよ。ひとまず刀も納める。で、どうして雪(ゆき)ちゃんの体を乗っ取ってるわけ? 理由によってはまた刀を──」

 

「雪(ゆき)ちゃんの心が死んで自殺寸前だったから乗っ取って止めた」

 

「刀突きつけてごめんなさい……!」

 

 嘘だろ本当に命の恩人なことあるの? この人外、他人に気を遣うとかそういうことできたんだ。

 

「いやー、放っておいてもよかったんだけどね、それじゃああまりに不憫だろう? 命がもったいない。復活できるとはいえ、ね」

 

「そりゃあそうだけどさ……」

 

 その命(・)が(・)も(・)っ(・)た(・)い(・)な(・)い(・)っていうのは、人命のことで合ってるのかな。命を物として捉えてる……とかではないことを祈るけど。

 

「で? 要件は何。わざわざぼく一人の時を狙ってきたところを見るに、どうせまた碌でもないことなんだろうけど」

 

「せっかちだね、雪(そそぎ)ちゃんは。もう少し会話を楽しもうって心構えはないのかな?」

 

「生憎、雪(ゆき)ちゃんが死にかけたって聞いた直後に会話を楽しむほどの余裕は待てないよ。ぼくはほら、お兄ちゃんと雪(ゆき)ちゃんに比べたら心が弱いから」

 

「どうだかね。僕から見れば、なんなら君が一番強いように見えるんだけど」

 

「腕(・)っ(・)ぷ(・)し(・)ならね。でもそれで雪(ゆき)ちゃんに──ほら、あれあるじゃん。ス(・)キ(・)ル(・)を(・)連(・)打(・)す(・)る(・)や(・)つ(・)。あれを攻略できるかと言われると、なかなか厳しいよ」

 

「そんなことを言ってるが、もし雪(ゆき)ちゃんがそ(・)れ(・)を使って自殺しそうになったとしたら、君はどうするんだい?そう言って諦めるのかな」

 

 やけに煽ってくるけど……これはわざとだな。安心院(あんしんいん)さんはこういう時、やたらと煽ってこっちをコントロールしようとしてくるから。

 

 残念だけど、それには乗らないよ。

 

「諦めるわけないじゃん。そうなった時、別にぼく一人で戦うわけじゃないんだ。お兄ちゃんだって止めようとするだろうし、めだかくんや善吉くんだっている。友達に『死ぬな』って言われてるのに死ぬような子じゃないでしょ」

 

「ふーん、まあ君がそう思うならそれでいいさ。まあこんなのは仮定の話で、実際に起こるわけじゃないけどさ。で、そうそう、僕が君に接触した要件だったね」

 

「うん。話が逸れまくっちゃったから、手短に、なおかつ分かりやすくお願いね、安心院(あんしんいん)さん」

 

 さて、どうくるか……と言っても、大方の予想はついてるけどさ。めだかくんと善吉くんが対立して、そこに安心院(あんしんいん)さんが一枚噛んでいて……なんて。

 

 ここから予(・)想(・)で(・)き(・)る(・)展開は、一つしかない。

 

「雪(そそぎ)ちゃん。君はめだかちゃんと善吉くんのどちらに着きたい?」

 

「善吉くんに決まってるでしょ」

 

「……だろうね、君ならそう答えると思っていたさ。ちなみになんだが、念のため理由を聞いても?」

 

「理由なんて簡単なことだよ。だって──」

 

 だって。

 

 

「め(・)だ(・)か(・)く(・)ん(・)は(・)ぼ(・)く(・)を(・)助(・)け(・)て(・)く(・)れ(・)た(・)こ(・)と(・)が(・)な(・)い(・)」

 

 

 思い返せば、ぼくはめだかくんに助けてもらったことがない。一応中学生の頃──あの時の僕はほとんど雪(ゆき)ちゃんだったけど、それでも基本的に、ぼく達を助けてくれたのは。

 

「い(・)つ(・)だ(・)っ(・)て(・)善(・)吉(・)く(・)ん(・)だ(・)っ(・)た(・)。戦挙戦の時だってそうだったよ。めだかくんはお兄ちゃんを助けはしたけれど、ぼくのことは助けてくれなかった」

 

「…………」

 

 

「いつだって、ぼくは善吉くんに救われてきた。」

 

 

だから今度は、ぼくが助けてあげたいんだ。

 

 

「きっと友(・)達(・)って、そういうものでしょう?」

 

「──ああ、そうだね。その通りさ、雪(そそぎ)ちゃん……合格だ。君も着いてきなさい、善(・)吉(・)く(・)ん(・)の(・)お(・)友(・)達(・)のところへ案内してあげよう」

 

「やっぱり他にもいるんだ、善吉くん派。誰がいるの?」

 

「それは着いてからのお楽しみに取っておきなさい。きっと驚きで腰を抜かすぜ」

 

 へえ、ってことは意外な人物がいるってことか。誰だろう……鍋島くんとかかな? いたら面白いかも。

 

 


 

 

「──ここは、どこだ……保健室?」

 

 保健室のベッドで目を覚ました善吉は、辺りを見渡し、気絶する前のことを思い出した。

 

 焦った心のままに生徒会室へと入って行き、そして──。

 

「呆気なくボコボコにされたんだよな……焦ってたとはいえ、自分で自分が情けないぜ」

 

「そうだね、正直言って私も情けないと思うよ。赤さんの治療に感謝しなくちゃね、善吉くん」

 

「ッ!? 誰だお前!?」

 

 突如としてベッドの横からかけられた声に、善吉が驚いて声を上げ、飛び起きる。

 

「私かい? 私の名前は鶴喰(つるばみ)鴎(かもめ)。きみよりも少しだけ、主人公(めだか)に近い男さ」

 

 そこにいたのは、いかにも陰気そうな顔をして、独りで独楽(こま)に紐を巻く男だった。

 

 






 雪(そそぎ)ちゃんはめだかちゃんが嫌いなわけじゃないです。ただ、めだかちゃんと善吉くんなら、善吉くんの味方をするってだけです。

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