調子乗って書いてたら8,000文字いっちゃった。
おかげで睡眠不足です。
禊は螺子を、宗像は日本刀を両手に
殺意と
生徒会室すらも飛び出し、戦いの舞台は廊下へと移っていたが、それに巻き込まれる生徒は誰一人としていなかった。
下校時間ももう近い。故に、近くに巻き込まれる生徒など居ようはずもない。
が、しかし。
生徒会会計・喜界島もがなである。
彼女は箱庭学園の制圧力ランキング一桁台の猛者である。が故に、この場面で彼女が乱入してくることは、宗像も禊も把握していた。
具体的な位置までは分からないが──恐らくは禊諸共、自分に向けて
こんな激しい打ち合いの真っ只中に、喜界島が入り込んでくるはずがない。放つにしても距離があるはずだから、
──そのせいで、
読み違えた。彼女はそこまでのリスクを冒す人間ではないと思っていた。
だって今まで、それこそフラスコ計画の凍結が決まったあの日から。一度だって、そこまでしなければいけないほどの危機なんて、ほとんどなかった。
それなのに、成長しているはずがない──と、そこまで考えたところで、
近頃色々とありすぎたせいで、宗像は
ああ、もう。これは
本当は、邪魔立てするなと言いたかったけれど。
はあ、しょうがない。これも僕の落ち度だし──。
声がした場所、自らの背後50cmのところを、大して確認もせず、なんの迷いもなく、いっそ思い切りよく──斬り付けた。
────────手応えが、まるでない。
(一体僕は何を斬った? まさか喜界島さんが突然
果たして何を斬ったのか。なぜ喜界島を斬れなかったのか。それらの答えは、一つしかない。
声の発
(まさか、そんな……彼女は
喜界島の
が、しかし。その世界の知識に、映り込まない人物が
だから
皆の成長に置いていかれないよう、喜界島も努力を重ねたのだ。トレーニングの一環として、
それに比べて、宗像の振るう刀は──。
(──ゆっくりに、見える!)
当然それは、宗像の振るう刀が遅いということを意味しない。むしろ、世間一般的には
しかし、しかし。喜界島は既に
今、この瞬間。
『いやー、助かったよ喜界島さん! あのままじゃ僕はまた無様に負けていただろうからね』
「うん……でも、争いたくないって言ったのに、結局争っちゃったね……」
喜界島は倒れ伏した宗像を見ながら、やや悲しげな表情でそう言った。禊はそれを見て、即座にフォローに回る。
『いいや、気負うことはないさ。そもそも先に仕掛けてきたのは宗像くんの方だ。だからきみは悪くない。それよりも今は、無事にこの場を収めたことを喜ぼうぜ?』
「……うん、うんっ。そうだね! いやー、それにしても──ううん、やっぱりなんでもないや!」
『おいおい、そんな気になるところで区切らないでおくれよ。何かあるなら正直に言ってごらん?』
「そ、そう……? それじゃあ言うけどなんだかこんな状況、前にもあったような……って、思っ……ごぷっ」
そう言葉を言い切ろうとした喜界島の口からは、音の代わりだと言わんばかりに、真っ赤に彩られた液体──
「ぁ、ぇ……?」
胸元、つまりは肺を貫くように、背面から前面にかけて日本刀が飛び出している。それは誰がどう見ても致命傷で、また誰がそんなことをしたのかなんて、一目瞭然だった。
「
「な、なんで……わたし、を……?」
「なんでって、きみの方が厄介だからだよ、喜界島さん。きみは
『つまり僕は、まったく成長していないから後回しでも平気、とでも言いたいのかい?』
「その通りだよ。
禊はあまり動揺した様子もなく、極めて平静な状態で宗像にそう問いかける。当然それには宗像も眉を
致命的なものを垂れ流しながら、喜界島は床に倒れ込んだ。もはや声を出すことも、体を楽な姿勢へと変えることもできないらしく、時折体躯が痙攣するばかりであった。
『えげつないことするねえ。仮にも相手は女の子なんだぜ?』
「だから殺す──と言うと、少々僕の人格を疑われそうだけれど、ここは敢えてそう言わせてもらうよ。僕に怯えてくれる人が増えた方が、善吉くんの邪魔立てをする奴の数は減るだろうからね」
『まあいいさ、喜界島さんは
禊はこんな状況にも関わらず、へらへらと笑う。どんな状況でも薄っぺらい笑顔を絶やさず、不誠実に生きる。それこそが彼のポリシーだからだ。
『だから、うっかりきみのことを殺してしまっても、僕は悪くない。』
「そうだよ、僕が殺したんだから、僕が悪い──だから殺す。」
二人は再び相対し、次の一撃に全てを乗せる──といっても、やはり真正面からの勝負で禊に勝ち目はない。
負けて、死ぬだけだ。
本当に、ただそれだけ。
(
『喜界島さんには本当に悪いと思うけど、僕はどうやら少しだけ、まともな人間に近づけたらしい』
「……遺言かな、そんな短くていいのかい?」
『生憎、今度妹達と遊園地に遊びに行く予定があるんだ。言い遺すことなんて一つもないけど、やり残したことが沢山あって──ね!』
禊はそう言い切ると同時に飛び出し、宗像の頭目掛けて螺子を思い切り──螺子込もうとして。
やはり
「
奇しくも喜界島と同じ場所を貫かれた禊は、やはり同じような挙動で地面に倒れ伏す──が、生来の頑丈さ故か、まだ少しだけ息があるようだった。
『がはっ……あー、ああ……。やっぱり、こうなっちゃうか……』
「ん? ああ、まだ息があるんだ……完全に殺すつもりだったんだけど、無意識で手加減でもしていたのかな──まあ、このまま放っておいても死ぬだろうし、僕は警察に自首でもしに──」
『待てよ。』
ほとんど虫の息だと言うのに、禊のその言葉はやけに力強く聞こえた。そのせいだろうか、宗像は立ち去ろうとしていた歩みを止め、禊の方を振り返る。
『きみはさ、宗像くん……きっと初めて出来た大切な友達のためを思って、こんなことをしたんだろうね。だったら最後までやれよ。友達のためなんだろ?』
「……僕は喜界島さんを殺した時点で、他人を殺す気なんてとうに失せていたんだよ。それなのに、つまらないというのに、わざわざ人を殺すのは──」
『
「──僕、は……」
『僕は笑って死んでやる。きみの代わりにへらへら笑って死んでやる。きみに殺されることを心の底から楽しんで、地獄への土産話として持っていく。だからさ、ほら。ゴミ箱にゴミを投げ捨てる感覚で、道端の石ころを蹴飛ばす感覚で、喜界島さんを殺した時みたいな感覚で、僕のこともつまらなそうに殺してみせろ。僕は生徒会副会長だから、二十四時間三百六十五日、いつでも喜んできみの
次の瞬間、禊の頭を宗像の足が踏み潰した。
理由は定かではない。禊の言葉に耐えられなかったのか、それとも先ほど喜界島を殺したことによって失ったはずの殺人衝動が復活したからなのか、はたまたなんとなく殺したくなったからなのか。
きっと、そのどれもが適当ではない。分かったことといえば──宗像は勝利した、ということだけ。
勝利したのだ。確かに、勝利した、はずなのに──宗像は、体がぶるりと震えるのを
「……で、次はお前達か?」
警察へ自首しに向かおうとした宗像の目の前に立ち塞がったのは、鰐塚処理を始めとした、
「……あなたらしくもなく動揺していますね、兄上。やはりあなたといえども、人殺しは流石に
「……今は
「質問に答えてもらっていないのですが……まあいいでしょう。その態度をもって回答と捉えさせていただきますので」
眼帯を取った鰐塚は宗像へとそう伝えると、続いて自分達がこれからどう立ち回るのか、明確に宣言した。
「兄上へ言いたいことはただ一つ。私達はこのたび、
「それは、きみ達全員で決定したことなのかな。それなら黒神さんにつくわけか──まあ確かにそれが一番賢い行動だろうね」
宗像は鰐塚の発言に
「いえいえ兄上、我々は黒神さんにはつきませんよ。
「……いよいよもって話が分からないな。人吉くんの味方も黒神さんの味方もしない、となると──残すはそれこそ
「
鰐塚はいっそ清々しく、一点の迷いなくそう言い切った。しかし宗像からすれば、その作戦は──その行動は、
「残念ながら、球磨川禊は僕がさっき殺したよ。喜界島さんもね。だからその戦略は達成されることはない。それに、きみ達の動機も不透明のままだ。まあ大方、二人を仲直りさせて研修を続け、堂々と黒神めだかの後継者になり、
「まあ、そうですね。そういう小賢しい読みもあるにはあるのですが、でもそれ以前に──私達は生徒会執行部の皆さんが、そしてあの空気感が……たまらないほどに好きなんですよ」
「……まあ、理由なんてなんでもいいさ。だけど先ほどから言っているように、球磨川禊は僕が殺した。第三勢力を作る分には、今の僕には止めるべくもないが、しかし彼がいないならその脅威は半減だね。簡単に殺せると分かった以上、
宗像はそう言うと、今度こそその場から立ち去ろうとした──が、しかし。やはりその動きは更なる展開によって阻害されることとなる。
「ええ、
「……何?」
「
「さっきから何が言いたいんだ、僕は自首しに行きたいんだから、できる限り早く──」
「兄上。
鰐塚がそう言うと同時に──
(後ろに、誰か立っている……? 馬鹿な、ありえない! だってあれは、あのスキルは!
「兄上。あなたが、友を思ってした行動は……軽率だったんですよ。邪魔者を殺して無力化するつもりだったのに──結果として、取り返しのつかないものを蘇らせてしまった」
宗像の背後から、パチンっと。
直後、宗像の衣服が螺子で壁に縫い付けられ、身動きを取ることが出来なくなった。あまりに急な展開に、宗像といえどついていけないようである。
それもそのはず、「
「なっ……どうしてきみがそれを!!」
『さあ? 奇跡でも起きたんじゃない? それか女の子のピンチという、これ以上ないくらいの土壇場で覚醒したとかね』
「ッ、戯言を……!」
再びいつかのように縫い付けられた宗像は、やはり禊の報復を警戒し、彼の攻撃に備えた──が、そこで口を挟んだのも、また禊だった。
『あー、どうやら僕のことを警戒しているようだけどね、宗像くん。きみはさっさと
禊はそう言うと、候補生五人衆を連れて校舎の外へと出ていってしまった。そして今。
校舎内に残ったのは、頬を膨らませ、涙を目に浮かべている喜界島もがなだけだった。
「あー、ええっと……ごめんなさい、もうしません」
「……やだ。絶対に許さないもん」
「……結局、こうなるのか……」
「すぅ────っ」
喜界島は本気で怒っていた。後々蘇れることを知っていたとはいえ、死ぬのは怖いし痛いものは痛い。
だからこそ、同じくらいにやり返す。
それは直撃すれば黒神めだかでさえ行動に支障をきたす、
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あああああ
あっっっっ
っっっっっ
っっっっっ
っ!!!!
!!!!!
!!!!!」
喜界島の全身全霊の声帯砲は、周囲の建造物に罅を走らせ、窓ガラスを粉砕し、物体という物体を吹き飛ばして──しまいには宗像は壁をぶち破って吹っ飛んでいき、
「うんっ、すっきりしたっ!」
『いやー、喜界島さんも中々やるようになったね。僕としても鼻が高いぜ』
「いや、えっと……それにしたって喜界島せんぱい、強くなりすぎでは……? 校舎全壊なんて、この学園にできる人が何人いるかって話でしょう」
『まあまあ、この際細かいことはいいじゃん──それよりも、ほら。喜界島さん渾身の祝砲だ、受け取りなよ、中学生達』
外から校舎が倒壊するさまを眺め、その後に喜界島をきっちり回収し、校舎も復元した禊は、候補生達の方を振り返るとそう言った。
発言からしばらく経って、候補生達と喜界島はその言葉の意味を理解したようで、とても嬉しそうな表情を浮かべた。
「ってことは、禊ちゃん……!」
「禊せんぱい、もしかして……!」
『うん。生徒会執行部副会長球磨川禊! 今ここに第三勢力、
「……ごめん禊ちゃん、助けてもらっておいてなんだけど、私そんな名前の組織には加入したくない……」
『えっ!?』
第一勢力・黒神めだか。
第二勢力・人吉善吉派。
第三勢力・裸エプロン同盟。
こうして、箱庭学園最後の争いに関わる人間は全員出揃った。果たしてこの先どのように勢力図が推移し、どんな結末を迎えるのか。
──現時点では、誰一人として知り得ない。
なんかインフレしすぎかもしれない。
でもめだかボックスって大体こんな感じだよね。
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