久々にランキングに載りました。
これを機に、めだかボックスを好きな人が増えてくれたら嬉しいな。
すっかり夜も更けた頃、箱庭学園旧校舎、通称
とりあえずここで一度はっきりと、ここにいるメンバーを明記しておくとしよう。人吉善吉、黒神真黒、名瀬夭歌、江迎怒江、不知火半袖、負安心モードのままの
「いやはや、それにしても
──全身包帯
「いや、いやいやいや……宗像先輩、一体何があったんです? 以前球磨川兄にやられた時でも、そこまでじゃなかったでしょうに」
「喜界島さんにやられたんだよ。僕としたことが、彼女の制圧力を見誤った──というか、見
「僕としても、宗像くんが喜界島さんに負けるとは思っていなかったからびっくりだぜ。この後大事をとって
えーっ、ぼく? そんなこと言われても……。
「喜界島くんの強みを活かすために、肺活量を重点的に鍛えて、あとはついでに地上でもそこそこ動けるように稽古つけてあげただけだけど……」
「うーん、間違いなくそれだね。つーかそれ以外だったら流石に困る。原因が分からなくなっちまうからね」
そういうもの? まあ、
言葉足らずなことは多々あるけどね。
それが故意にせよそうでないにせよ。
「──それで、真黒くん。どうしてさっきから固い表情をしてるの? ぼくは
「……うん、まあそうなんだろう、とは思っていたよ。だけどそれに甘えて、謝罪をしないのも違うと思ってね。だから一応、こんな謝罪に意味はないが──
ぼく達が話しているのは、
真黒くん、自分のせいでぼくと
……でも、ここで変に謝罪を拒み続ける理由もないか。貰えるものは素直に貰っておこう。
「はい、分かりました。確かに謝罪は受け取りました。それじゃあ……はい、仲直りの握手」
「……ああ、ありがとう。こんな僕だが、出来ればこれからも仲良くしてくれると嬉しい」
がしっ。はい、これで仲直り。やっぱり握手はいいね、大抵の相手と仲良くなれるし、仲直りだって出来る。手と手を通して他人同士が繋がるから、人同士の繋がりを作るにはもってこいだ。
「そういうわけで、どうだろうみんな。いっそめだかくんに握手を仕掛けてしまって、手と手を取り合いノーサイドというのは」
「あのなー
まあ……それはそうだ、名瀬くんの言う通りだ。僕だってそんなの不可能だってことは分かってたし、分かってるつもりでいた。
だけど、やっぱり。名瀬くんみたいに賢い人から、面と向かって「無理だ」と否定されてしまえば、ぼくみたいな肉体派は折れざるを得ない。
無闇に歯向かっても時間と体力の無駄だからね。
「それにしても不知火がいてくれて俺は本当嬉しいぜ。この流れでお前がいなかったらすげーショックだったしな!」
「まったく、しょーがねーな人吉は。あたしがいなきゃなんにもできねーんだから」
なんか久々に会った気がするな、半袖くん……こんどドーナツでも奢ってあげよう。きっと喜ぶぞ。
「それで、えっと……
「ああ、彼は人見知りだからね──それにこういう集まりにも顔を出せない。まあどうしてもと言うなら、
「ああ、うん、まあ……えいっ。
「……
え? どうなんだろう……
「さあ? 別にどっちでも良くないかい?
「──だってさ、名瀬くん。どうしても気になるようだったら、今度ぼくの体をいじくり回して研究していーよ」
「へえ、そいつは魅力的だね。まあそれは今後の楽しみに取っておくとして──横に置いておくとして、
「えいっ」
「なんでわざわざ切腹してるの……」
「切腹は武士の誉れだからね。なんなら江迎くんが文化包丁で介錯付けてくれてもいいよ」
「いや……断固断るね……」
まあ流石にそりゃそうだよね。ぼくも本気で言ったわけじゃないし……これで本当に介錯付けられたらぼくが困ってたよ。
と、ぼく達は数人で駄弁って戯れあったわけだったけど、そこで突然
「はいはい、注目。たしかに互いに親交を深めるのはいいことだがね、僕達が集まったのは見ての通り『
「ああ、そういえばそうだったな──それで、その勢力図が
「せいかーい。ああ、そうそう。めだかちゃんのところに阿久根くんの名前を書いていないのは、阿久根くんがめだかちゃんに付かないと分かっているからだぜ」
黒板には現在の勢力図──さっき纏めたぼく達と、お兄ちゃんが作ったらしい第三勢力、そしてめだかちゃん単騎の三つが三つ巴になっているものが設置されていた。
第三勢力にはお兄ちゃんの他に、喜界島くんと候補生五人衆の名前が書かれていた。まあ、なんというか……狙いはなんとなく透けて見えるね。
それにつけても阿久根くんだ。めだかくんに付かないのは何となく分かっていたけど、まさか
「あとは……そうそう、球磨川くんは宗像くんのおかげで『
「ああ、確か球磨川の旦那は、死の淵でスキルの残り滓──
「またまた正解だ。もっとも今の『
今まで脇を開けないように封印されていたのが解放されたからか、何だか楽しそうに見える。よかったね。
「ただ、
「それに関しても問題はないよ。むしろ彼ら彼女らがこの場を引っ掻き回せば回すほど、こちらは善吉くんを育成する時間が稼げる。だから寧ろ、この場合は都合がいいね」
あっ、そうだ。さっきから──というか、
「はーい、質問質問! 質問いいですか!」
「えらく元気がいいねえ、なにかいいことでもあったのかな──と、冗談はさておき。聞きたいことがあるなら何でも聞いてくれたまえ」
「
そう、結局重要なのはそこだ。仲間を集めるのは確かに大切だし、めだかくんに勝つためだったらぼくだって協力を惜しむつもりはない。
──けど。
「こうやって頭数を揃えて、知恵を絞って、状況を整えて、善吉くんを鍛えて──
「ああ、俺だって負けるつもりは更々ねえ……けど、俺が鍛えるだけ鍛えた所で、めだかちゃんに勝てるとは到底思えない。だから教えてくれ、
やっぱり善吉くんもそう思っていたのか、ぼくの質問に追従して疑問を口にした。周りを見ると、他のみんなもそう思っていたらしく、しっかりと頷いている。
「ああ、それね……結局のところ、最後は君自身の力が重要になる、ということは分かるね?」
「……ああ、それは分かってる。確かに大勢プラス俺対めだかちゃんなら、こっちが勝つ目も万に一つはあるかもしれねえ──けど、俺はめだかちゃんと
「それが分かっているならいいんだ。そしてもう一つ、大事なことがある。それは『自分との戦い』みてーな
あー、なるほど。要するに
「『自分は味方だ』と、そう言いたいのかな、
「そう言いたいんだよ。君にも覚えがあるんじゃないかい、
「あ、あはは……中々痛いところを突いてくるね……」
いやまあ、それは本当にそうだ。自分は常に自分の味方である、と……そう思っておいた方がいい。世界中の全員が敵になった時、自分を守れるのは自分だけだしね。
「と、全ての疑問も氷解したところで善吉くん! 差し当たり今日中に、きみの
「能力? それは『
「そうだね、ただそのスキルは
「と、なると……もしかしてだけど、
「……そうだよ、正解だ
おっと、まさかピタリで正解とは。案外ぼくの直感も捨てたものではないのかも。完全にまぐれだけどさ。
「つまり、俺はめだかちゃんに勝つためのスキルを提示して、それを作ってもらい、そのスキルを駆使してめだかちゃんに勝つ必要があるってわけか」
「うん、そうなるね。何を隠そう、僕の一京のスキルのうち百個くらいは彼に作ってもらったものでね。だから人吉くん、遠慮せずに何でも言ってくれ。『時間を止める』でも『光を操る』でも『空間を切断する』でも、彼は何でも、何個でも作ってくれるからさ」
そう聞くととんでもないな。例えば『相手の関節を全部逆に曲げるスキル』とか頼んだら、それができるわけでしょ? おっかない……。
「まーとはいえ、あまり強力すぎてもダメだ。強すぎるものはどっちかっつーとラスボス側が持ってるもので、強すぎる力を扱うと、最後には自滅して自爆すると相場が決まっているからね」
「……上限は、大体何個くらいなんだ?」
「一京のスキルを持つ僕が言うのも何だが、最高でもみっつかな。できればひとつに絞って欲しいところだが」
「……そういうことなら僕とくじらちゃんは席を外そうか。また余計なことを言い出す前に失礼させてもらうよ」
「なっ待てよ兄ちゃ……変なとこ触んなコラ!!」
「……行っちゃった」
んー……なーんかわざとらしかったけど、何だろうね? まあいいや、それよりも今は善吉くんの能力について、しっかり把握しておかないとね。
「じゃあ人吉くん、急かすようで悪いがそろそろ決めてもらえるかい? それで今後の、君を主人公にするためのフラスコ計画の基本方針って奴を決定するからさ」
「そうだな……そういうことなら
そう前置くと、善吉くんは自分が望むスキルの内容を事細かに語り始めた──が、それは
「──って感じなんだけど、どうだ?」
ぼくを始めとして、宗像くん・江迎くん・半袖くんの三人は、あまりに
が、しかし。
「ふーん、
と、なんとなくの方針が固まり、話が次のステップに進むと思われた矢先。善吉くんが再び
「あー、それなんだけどよ──
話の内容は──
ただでさえ信じられない内容だというのに、善吉くんはさらにもうひとつ、ぼく達に『信じられない』を提供してくれた。
「ほら、俺の目的はめだかちゃんに勝つ
「──ああ、そうか、そうだね。いやはや、ぼくとしたことがうっかりしてたぜ。めだかちゃんという強大な存在を前にしたせいで、
善吉くんと
「善吉くん、
「『めだかちゃんとの戦いに集中して』だなんて、そんなことは言うなよ。
善吉くんは真剣な顔つきでぼくの方を向き、そしていっそ馬鹿馬鹿しいほどに、真っ直ぐぼくの目を見て宣言した。
「俺は俺の意思であいつを助ける。助けを望んでなかろうが死にたがっていようが、そんなのは関係ない。俺は俺が幸せに生きていくために、あいつを助ける」
──強いなあ。
善吉くんは、強いなあ。
あんなに恥ずかしいことを、あんなに真剣に言えるなんて。あんな風に想ってもらえる
だけどぼくは、
だから今度はきっと、ぼくが善吉くんを助ける番なんだろうな。そしてそれは、多分
「──それじゃあ、さ。
「おう。むしろ俺は、お前を頼りにしてるぜ、
「……んふふ、約束だよ。言質、取ったからね?」
「あー、そろそろいいかな? スキルを作るなら、あんまり時間をかけ過ぎるわけにもいかねーからさ、善吉くんは出来るだけ早く発表してくれたまえ」
おっとそうだった。そういえば善吉くんと
「ああ、ふたつ目のスキル……俺が、
そうして善吉くんは再び語る。
そのスキルは、あまりにも。
あまりにも──。
──あまりにも、
それこそ、
「善吉くん、きみって……」
「おう、サタンかっけぇアイデアだろ?」
「超が着くほどバカだよね?」
「えっ……あれ? ダメだったか?」
「あーもう『ダメだったか』じゃないよ!!
「だから言っただろ、
「──ッ!? う、うぅっ……ぅあーもう! 後になって後悔しないでよ!? ぼくもう知らないからね!!」
もう、ばかだ! こいつは本当におばか! その時になって泣き言とか言ったって知らないんだからな!!
「ぼくを頼りにしてるって言うんだったら! もうぼくも遠慮なんてしないからな! 分かった!?」
「ああ! よろしく頼むぜ、
善吉くんはそう言って、手を差し出してきた。ぼくはそれをわざと荒々しく取り、思い切りぶんぶんと上下に振った。
──この日。ぼくと善吉くんは
絶交なんて、絶対にしてあげないからな。
この二人の絡み書くの楽しくてついつい長くなりがちです。
でも楽しいからおっけー。
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