TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

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 こいつらずっと話してるな……。




第56箱「それってとっても」

 

 

 めだかくんと善吉くんの歴史的対立の報はまたたく間に箱庭学園を駆け巡った。当然反応は聞いた人によってそれぞれ違ったけれど、しかし当の生徒会執行部はと言うと。

 

 (ゆき)ちゃんがいないという相違点はあるものの、拍子抜けするほどに平常運転だった。

 

「おーい、めだかちゃん! 今年度用の体育祭のプログラム、今日中に申請しなきゃだから判子くれ判子ー!」

 

「……まあ、それは良いのだがな。しかし善吉、貴様私と戦うのはやめたのか? それに(ゆき)もいないし……なんというか、そうだな。()()()()()()

 

 おや、めだかくん……なんか寂しそうだ。そのように見える。多分だけどね。

 

「それはそうと善吉、まさか貴様、私に勝つのを諦めたのではあるまいな? たった一度負けたくらいで、不私不私(しずしず)と引き下がる貴様ではないだろう」

 

「あー、その件なんだけどな──ごめんっ! 昨日のことは俺が全面的に悪かった!

 

 おや、ちゃんと謝るとは。そりゃそうだよね、昨日善吉くんは()()()()()()みたいなことをしちゃったらしいし、謝るのは妥当だよ。

 

 その後善吉くんは、ぼく達の方を向いてもう一度謝った。さらに、お兄ちゃんにもう一度深々と頭を下げた。

 

 理由は()()()()()()()ものだったけど、善吉くんはスッキリした顔してたから、多分大事なことだったんだろう。

 

「……もういい、頭を上げろ! 謝罪が長いとパフォーマンスに見えるぞ。つまり要するに貴様は、私に勝つのを諦めたのだな」

 

「……いや、諦めない! 俺は必ずお前に勝つぜ、めだかちゃん!」

 

 めだかくんの問いかけに対して、善吉くんはそんな風に、いっそ清々しく宣言した。さしものめだかくんも呆気に取られたらしく、目を見開いて固まっている。

 

「んじゃー俺、この書類申請してくるわ! ほら、行くぞ(そそぎ)! こういうのは俺ら庶務の仕事だろ?」

 

「え、ああ、うん……それじゃあみんな、行ってきまーす」

 

 なんだか善吉くんは、昨日の()()以降やけに調子がいいらしい。今だってぼくの両手を取って立たせ、先んじて生徒会室を出て行ってしまった。

 

 ぼくはそれを追いかけて生徒会室を出る──と、そこには()()()()()()()善吉くんが立っていた。

 

「あれ、てっきり走って先に行っちゃったのかと思ったよ。それで、()()()()()()()?」

 

「ああ──(ゆき)ってお前から見てどんな人間だったのか。それが聞きたくてな」

 

「ああ、そういうこと。それなら歩きながら話そっか」

 

 ぼくと善吉くんは、横に並んで廊下を歩きながら話し始めた。といっても、ただのQ&Aでしかないんだけど。

 

「そうだね、(ゆき)ちゃんは……ぼくにとっての恩人だよ。同時に()()()()()()

 

「親友、か。それは()()()()()みたいな意味での親友か?」

 

「いや、ちょっと違うかな……なんて言うんだろう、親友ってのはちょっと違ったかもね──そうだなあ、()()()()()()()()()()、っていうのが正確かも」

 

「なるほどな……じゃあ次の質問だ。互いの心が通じ合っていて、それで互いの考えていることが分かる、みたいな能力はあるか?」

 

()()()()よ。昔はぼくと(ゆき)ちゃんで一心同体──もとい、二心同体の状態だったから、心もリアルタイムで送受信出来たけどね」

 

「実はそれが勘違いだった、とかは?」

 

「絶対に無いよ。ぼくが()()()に分離するにあたって、その機能は()()()()()()()()()()。だから(ゆき)ちゃんの持つ能力は『改稿斬昧(オールリヴィジョン)』だけだよ」

 

 とはいえ、(ゆき)ちゃんの怖いところは()()()()()()()()()()()()()()ってことなんだけど。だから能力が一つしかないからって、侮っていると痛い目を見る。

 

安心院(あんしんいん)さんから聞いた話だとたしか、思いつく限りのスキルを使えるんだっけか。なんつーか、半纏さんのスキルに似てるな」

 

「案外その辺からアイデアを得てるのかもね──とにかく、(ゆき)ちゃんを相手取るにはその辺を弁えてないといけないよ。あの子はやろうと思えば今この瞬間に全員殺すことだってできる

 

「それは、物騒な話だけどよ……あいつ、そんなことするタイプか?」

 

「まあ()()()()()()()()()からやらないと思うけどさ、それでも頭には入れておいた方がいいよ。追い詰められたらやむを得ず使ってくるかもしれないし」

 

「なによ、結局戦わないんじゃん……あれ?聞こえてる?」

 

「──()()、っつーのは、その……」

 

「あー、濁さなくてもいいよ、もう平気だからさ──そう、ぼくがイジメられてた時に、ぼくが『もういやだ』って言ったら、使ってくれたよ」

 

「えっと、どんなスキルなんだ、それは」

 

「範囲内全部斬るスキル打ち斬り(ターミネート)(ゆき)ちゃんがこれ使うとぜーんぶ斬り刻まれるんだよ、いい感じに死人が出ないように調整はするだろうけど」

 

「おーい、そこのオマエラに話しかけてんだけど?」

 

「……だけどまあ、()()()()()()()()()()()()()()()()。仮に使ってきたとして、俺が耐えればいいだけだし」

 

「あのさあ善吉くん、きみ滅茶苦茶言ってるの本当に分かってる?」

 

「分かってるよ。でもこれくらいの無茶しないと、きっと(ゆき)だって冷静にはなってくれないだろ」

 

「そりゃあそうだけどさあ……」

 

 

「二人で話すのが楽しいのは分かるけど少し私の話を聞いてくれてもいいんじゃないかなこの大親友ども!!」

 

 

 おわぁっ!? ビックリした!! いつの間に横に並んで歩いてたんだ鴎くん……。というか、聞き捨てならないぞ。

 

「善吉くん善吉くん、どうやら最新の情報に乗り遅れている子がいるよ。ほら、彼ってインターネットやらないから」

 

(そそぎ)さん(そそぎ)さん、なにやら仲間外れにされて拗ねている奴がいるぞ。ほら、あいつって週刊少年ジャンプ読まないから」

 

「「いえーい!!」」

 

「……もう私、帰ってもいいかな?」

 

 ひとしきり煽った後は、これみよがしに二人でハイタッチだ。こうでもしておけば鴎くんはきっと、あの()()()()()話し方もしなくなるだろう。

 

 ああ、そうそう。最後に忘れず一押ししておかないとね。

 

「はい、鴎くんも! いえーい」

 

「いえーい……じゃない!

 

「んふふ、鴎くんが怒ったぞー! 鴎くんに怒られちゃったー!!」

 

「……なんかお前、子供っぽくなってないか?」

 

 おお、善吉くん大正解だ。流石に生まれ変わった人吉善吉はひと味違うなあ。

 

 それで、ぼくが子供っぽく振る舞う理由だけど、まあそんなに難しいことでもない。鴎くんは大人ぶりたがるから、その分()()()()()()()()()()()()()ってだけ。

 

 あえて正反対のキャラを演じれば、こういう手合いは大抵こっちの調子に崩されて、さっさと本題に入ってくれるからね。意外と便利だったりするんだよ。

 

「ところで鶴喰くん、一体全体俺達に何の用だ? 見ての通り、俺達は二学期の三代祭に関する書類を提出しに行くところなんだけど」

 

「私のことは親しみを込めてバーミーと呼びなさい。なーんて、安心院(あんしんいん)さんの()()! ところで人吉くん、きみのことはヒートって呼んでいいかな?」

 

「ヒートでもバーミーでも、まあなんでもいいけどよ……」

 

「ねえぼくは? ぼくはなんて呼ぶの?」

 

「え? えっと、そうだな……それじゃあそそぎんで」

 

 そそぎん、そそぎんねえ、そそぎんかあ。

 

「やっぱ普通に(そそぎ)でいいよ。そそぎんってなんか語感悪いし」

 

「もうそれでいいよ……それでヒート、さっきの質問の答えだけどね、安心院(あんしんいん)さんから聞いた話によれば、モチベーションが恋愛感情なんだって? 恥ずかしー」

 

「いーや、恥ずかしくない! 恋愛(それ)が俺の心意気だ!」

 

 ほう、どうやら完全に吹っ切れたらしい。こっちとしてもさっさとくっつけよって思ってたから助かるね。

 

 聞いてるこっちが恥ずかしくなりかねないくらい、善吉くんは清々しくそう宣言したけど、ぼくも鴎くんも茶化してちょけるタイプじゃないから、むしろ話が早くて助かる。

 

「どうやら迷いはないらしい──けど、そううかうかしていられないっていうのは、ヒートも分かっているだろう?」

 

「ああ、球磨川先輩が率いる裸エプロン同盟が()()しているであろう今、時間を無駄にするのは避けたい」

 

 おや、善吉くんって()()まで分かってるんだ。恐らくお兄ちゃんが()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 多分狙いは他にあるんだろうけど……そこまでは分からないな。ぼくが聞いたとしても、多分教えてくれない。意外と隠し事とかはちゃんとするからね。

 

「避けるのは構わないけどね、とはいえ私だってそんなに長く待てないよ。大人な私は引き伸ばし漫画が一番嫌いなんだ」

 

「その辺は心配すんなよ。もう決めたんだ、来年四月の()()()()()でめだかちゃんに勝って、箱庭学園百代目の生徒会長になるってな」

 

 四月になれば()()()()()()()()だ。それに()()()()()()()()()()()()()()。言うなれば、めだかくんの卒業を待つ安心院(あんしんいん)さんと、同じ手を取ったということになる。

 

 (ゆき)ちゃんを救うのも、ちょうどその日。つまりは選挙の開票日と同日になる。それが()()()()()()()から。

 

「へえ、ヒートは本当に見た目よりも多くのことを考えているね……だけどしかし、選挙だなんて()()()()()で決着が着くもので勝負を挑んだのは愚策じゃないかい?」

 

「うーん、なんつーか、戦挙戦みたいに腕っぷしの勝負の方が、まだ勝ち目があるのかもしれねーけど……ま、そこは()()()()()って奴だよ」

 

「そんなこと言ってたら何やっても勝てないでしょ。()()()()()()の間違いじゃないのかい?」

 

「おうよ、惚れたら負けだ。だからめだかちゃんには来年、生徒会長人吉善吉に惚れてもらうんだ」

 

 ……いくらなんでも、吹っ切れすぎな気もするけど、まあでもこのくらい猪突猛進な方がいいよね。人として好感が持てる。

 

 ただまあ、()()()鴎くんは反論してくるだろうな。世の中を斜めに捉えるのが得意な彼だ、恐らく「そんな動機は不純」って反論してくるだろう。

 

 めんどくさいしその反論はぼくが潰しとこ。

 

「さっきからあからさまに反論する気満々な鴎くんも、好きな女の子の一人でもできれば考え変わるかもよ? 差し当たっては、ぼくなんてどうでしょう」

 

「いや、遠慮どころか断固拒否しておくよ。そもそもきみと付き合える人間なんていないだろうし……それこそ安心院(あんしんいん)さんくらいじゃないと」

 

「誰か僕を呼んだかい?」

 

 うわっ、びっくりした──いや、ちょっと慣れてきたな。いっつも後ろに突然現れて声をかけてくるもんだから。

 

「おお、善吉くんに(そそぎ)ちゃん、それに鶴喰くんじゃないか。こんなところで会うなんて奇遇だね」

 

「絶対に三人まとまってるところを狙ってきたよね?」

 

「わっはっは何を言ってるのか分からないぜところで善吉くん」

 

 露骨に話逸らしやがったぞこいつ。

 

()()()()()ってのはちょっと冗長な展開じゃないかな? それまでの間には三大祭くらいしかないわけで、展開もいささか退屈なものになりかねないぜ?」

 

「つってもよ、選挙の日取りは校則で決まってるだろ? そこは変えようがないんじゃ……」

 

「おいおい、半袖ちゃんのことを忘れんなよ。彼女は()()大刀洗斬子を相手取って、戦挙戦の会長戦における()()()をもぎ取ってきた化物だぜ?」

 

「あー、なるほど。つまり安心院(あんしんいん)さんは、選挙の日程を()()()()()()ってこと?」

 

「概ねその通りだよ。それに、選挙だけじゃなく(ゆき)ちゃんの救出もあるんだから、球磨川くんが卒業する前に助けてあげなきゃ酷だろう?」

 

「確かにね。あの人あれで妹想いなんでしょう? 私からすれば、意外もいいところだけど」

 

 鴎くんから見たお兄ちゃんは、一体どんな感じなんだろう? 案外関わり薄い人からすると、まだ()()()って印象の方が強いのかもね。

 

 あんなに優しいんだけどなあ。

 

「まあともかく! 日程の方は僕と半袖ちゃんでなんとかしよう──五十話以上続くネット小説は惰性、ってのがそれに僕の持論でね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()? あれ、えっと……なんだっけ、昔に(ゆき)ちゃんが、()()()()()()()()()()()()()()()()()んだけど……。

 

 ──ダメだ、思い出せないな。

 

だから見てな、アニメ三期が始まる前に、僕がこの()()()()を終わらせてあげるぜ。」

 

 ……なんというか、安心院(あんしんいん)さん、()()()()()()? あんまりそういうタイプじゃないと思ってたけど。

 

 安心院(あんしんいん)さんも段々変わってきてるってことなのかな? だとしたら、多分それってとってもいいことだよね。

 

 






 いいことなのか、それとも悪いことなのか、予想してみてください。答えはありません。

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