こいつらずっと話してるな……。
めだかくんと善吉くんの歴史的対立の報はまたたく間に箱庭学園を駆け巡った。当然反応は聞いた人によってそれぞれ違ったけれど、しかし当の生徒会執行部はと言うと。
「おーい、めだかちゃん! 今年度用の体育祭のプログラム、今日中に申請しなきゃだから判子くれ判子ー!」
「……まあ、それは良いのだがな。しかし善吉、貴様私と戦うのはやめたのか? それに
おや、めだかくん……なんか寂しそうだ。そのように見える。多分だけどね。
「それはそうと善吉、まさか貴様、私に勝つのを諦めたのではあるまいな? たった一度負けたくらいで、
「あー、その件なんだけどな──ごめんっ! 昨日のことは俺が全面的に悪かった!」
おや、ちゃんと謝るとは。そりゃそうだよね、昨日善吉くんは
その後善吉くんは、ぼく達の方を向いてもう一度謝った。さらに、お兄ちゃんにもう一度深々と頭を下げた。
理由は
「……もういい、頭を上げろ! 謝罪が長いとパフォーマンスに見えるぞ。つまり要するに貴様は、私に勝つのを諦めたのだな」
「……いや、諦めない! 俺は必ずお前に勝つぜ、めだかちゃん!」
めだかくんの問いかけに対して、善吉くんはそんな風に、いっそ清々しく宣言した。さしものめだかくんも呆気に取られたらしく、目を見開いて固まっている。
「んじゃー俺、この書類申請してくるわ! ほら、行くぞ
「え、ああ、うん……それじゃあみんな、行ってきまーす」
なんだか善吉くんは、昨日の
ぼくはそれを追いかけて生徒会室を出る──と、そこには
「あれ、てっきり走って先に行っちゃったのかと思ったよ。それで、
「ああ──
「ああ、そういうこと。それなら歩きながら話そっか」
ぼくと善吉くんは、横に並んで廊下を歩きながら話し始めた。といっても、ただのQ&Aでしかないんだけど。
「そうだね、
「親友、か。それは
「いや、ちょっと違うかな……なんて言うんだろう、親友ってのはちょっと違ったかもね──そうだなあ、
「なるほどな……じゃあ次の質問だ。互いの心が通じ合っていて、それで互いの考えていることが分かる、みたいな能力はあるか?」
「
「実はそれが勘違いだった、とかは?」
「絶対に無いよ。ぼくが
とはいえ、
「
「案外その辺からアイデアを得てるのかもね──とにかく、
「それは、物騒な話だけどよ……あいつ、そんなことするタイプか?」
「まあ
「なによ、結局戦わないんじゃん……あれ?聞こえてる?」
「──
「あー、濁さなくてもいいよ、もう平気だからさ──そう、ぼくがイジメられてた時に、ぼくが『もういやだ』って言ったら、使ってくれたよ」
「えっと、どんなスキルなんだ、それは」
「範囲内全部斬るスキル『
「おーい、そこのオマエラに話しかけてんだけど?」
「……だけどまあ、
「あのさあ善吉くん、きみ滅茶苦茶言ってるの本当に分かってる?」
「分かってるよ。でもこれくらいの無茶しないと、きっと
「そりゃあそうだけどさあ……」
「二人で話すのが楽しいのは分かるけど少し私の話を聞いてくれてもいいんじゃないかなこの大親友ども!!」
おわぁっ!? ビックリした!! いつの間に横に並んで歩いてたんだ鴎くん……。というか、聞き捨てならないぞ。
「善吉くん善吉くん、どうやら最新の情報に乗り遅れている子がいるよ。ほら、彼ってインターネットやらないから」
「
「「いえーい!!」」
「……もう私、帰ってもいいかな?」
ひとしきり煽った後は、これみよがしに二人でハイタッチだ。こうでもしておけば鴎くんはきっと、あの
ああ、そうそう。最後に忘れず一押ししておかないとね。
「はい、鴎くんも! いえーい」
「いえーい……じゃない!」
「んふふ、鴎くんが怒ったぞー! 鴎くんに怒られちゃったー!!」
「……なんかお前、子供っぽくなってないか?」
おお、善吉くん大正解だ。流石に生まれ変わった人吉善吉はひと味違うなあ。
それで、ぼくが子供っぽく振る舞う理由だけど、まあそんなに難しいことでもない。鴎くんは大人ぶりたがるから、その分
あえて正反対のキャラを演じれば、こういう手合いは大抵こっちの調子に崩されて、さっさと本題に入ってくれるからね。意外と便利だったりするんだよ。
「ところで鶴喰くん、一体全体俺達に何の用だ? 見ての通り、俺達は二学期の三代祭に関する書類を提出しに行くところなんだけど」
「私のことは親しみを込めてバーミーと呼びなさい。なーんて、
「ヒートでもバーミーでも、まあなんでもいいけどよ……」
「ねえぼくは? ぼくはなんて呼ぶの?」
「え? えっと、そうだな……それじゃあそそぎんで」
そそぎん、そそぎんねえ、そそぎんかあ。
「やっぱ普通に
「もうそれでいいよ……それでヒート、さっきの質問の答えだけどね、
「いーや、恥ずかしくない!
ほう、どうやら完全に吹っ切れたらしい。こっちとしてもさっさとくっつけよって思ってたから助かるね。
聞いてるこっちが恥ずかしくなりかねないくらい、善吉くんは清々しくそう宣言したけど、ぼくも鴎くんも茶化してちょけるタイプじゃないから、むしろ話が早くて助かる。
「どうやら迷いはないらしい──けど、そううかうかしていられないっていうのは、ヒートも分かっているだろう?」
「ああ、球磨川先輩が率いる裸エプロン同盟が
おや、善吉くんって
多分狙いは他にあるんだろうけど……そこまでは分からないな。ぼくが聞いたとしても、多分教えてくれない。意外と隠し事とかはちゃんとするからね。
「避けるのは構わないけどね、とはいえ私だってそんなに長く待てないよ。大人な私は引き伸ばし漫画が一番嫌いなんだ」
「その辺は心配すんなよ。もう決めたんだ、来年四月の
四月になれば
「へえ、ヒートは本当に見た目よりも多くのことを考えているね……だけどしかし、選挙だなんて
「うーん、なんつーか、戦挙戦みたいに腕っぷしの勝負の方が、まだ勝ち目があるのかもしれねーけど……ま、そこは
「そんなこと言ってたら何やっても勝てないでしょ。
「おうよ、惚れたら負けだ。だからめだかちゃんには来年、生徒会長人吉善吉に惚れてもらうんだ」
……いくらなんでも、吹っ切れすぎな気もするけど、まあでもこのくらい猪突猛進な方がいいよね。人として好感が持てる。
ただまあ、
めんどくさいしその反論はぼくが潰しとこ。
「さっきからあからさまに反論する気満々な鴎くんも、好きな女の子の一人でもできれば考え変わるかもよ? 差し当たっては、ぼくなんてどうでしょう」
「いや、遠慮どころか断固拒否しておくよ。そもそもきみと付き合える人間なんていないだろうし……それこそ
「誰か僕を呼んだかい?」
うわっ、びっくりした──いや、ちょっと慣れてきたな。いっつも後ろに突然現れて声をかけてくるもんだから。
「おお、善吉くんに
「絶対に三人まとまってるところを狙ってきたよね?」
「わっはっは何を言ってるのか分からないぜところで善吉くん」
露骨に話逸らしやがったぞこいつ。
「
「つってもよ、選挙の日取りは校則で決まってるだろ? そこは変えようがないんじゃ……」
「おいおい、半袖ちゃんのことを忘れんなよ。彼女は
「あー、なるほど。つまり
「概ねその通りだよ。それに、選挙だけじゃなく
「確かにね。あの人あれで妹想いなんでしょう? 私からすれば、意外もいいところだけど」
鴎くんから見たお兄ちゃんは、一体どんな感じなんだろう? 案外関わり薄い人からすると、まだ
あんなに優しいんだけどなあ。
「まあともかく! 日程の方は僕と半袖ちゃんでなんとかしよう──五十話以上続くネット小説は惰性、ってのがそれに僕の持論でね。
──ダメだ、思い出せないな。
「だから見てな、アニメ三期が始まる前に、僕がこの
……なんというか、
いいことなのか、それとも悪いことなのか、予想してみてください。答えはありません。
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