ド寝坊かまして今日で終わらせる予定が一日後回しになりました。
『──ここまで全部、きみの
「おや、どうしてそう思うのかな。僕はこれでも誠心誠意──」
『すっとぼけんなよ。
「バレてた? まあこんな嘘に騙される方が阿呆ってやつさ。それより球磨川くん、可愛い妹を助けなくていいのかい? なんだか大変なことになってるけど」
『どうせそれも予想済みなんだろ。そうやって僕を煽って、やる気を無くして帰らせようとしている』
「どうだろうね。僕のことだから、案外善意でアプローチをかけているかも──ッ!?」
『──そんなに僕達のことを
「おいおい、イラついたからって女の子の頭をぶん殴るなんて──行かれちゃったか……ふう。
ま、せいぜい頑張れよ、甘ちゃんめ。
勝利目前での再拘束。全く予想していなかった球磨川禊の登場。普段と変わりないへらへらとした笑み。
見慣れているはずなのに、なぜだかそれが、ひどく不気味に感じられた。
『や、久しぶり、
「──おにい、ちゃん?」
『うん、お兄ちゃんだよー。正真正銘、本物の球磨川禊さ。ところで
禊は未だ呆気に取られている生徒会の面々+鴎を見ながらそう言った。普段と変わらない調子で、飄々として。
「……お兄ちゃん、どうして、ここに」
『
「えっと、いやっ! そうじゃなくて!」
『違くないなら嘘なんか吐かないでよ』
ぐるん、と擬音がしそうな程に、気持ち悪い動きで振り向いた禊は
「ぁがっ──まっ、待って! お兄ちゃん待って! もう嘘は吐かないから!」
『そう? それならいいんだ、僕は嘘ってやつがこの世で一番嫌いでね、嘘を吐かれると頭に血が上っちまうのさ』
明らかな嘘だ。しかし今の
二本の「
『ところで
「……えっと、それは、そうだけど……」
『そうだけど?』
禊が
「っ、そうだけど! あれがあったからこそ、私は今まで生きる理由を──」
『
「──え?」
『だってさ、考えてもみなよ。「生きる理由」って要するに、
禊はへらへらと笑う。
嘲り笑う。
『おめでとう
「なっ、負け……私は! そういうつもりで『生きる理由』って言葉を──」
『それじゃあ一体どういうつもりなのかな』
禊は三本目の「
「っ、ぉ……」
『「生きる理由」だとか「死にたい理由」だとか、そんな言葉を大して不幸でもないくせに使うな』
禊は四本目の「
『きみは生存競争という勝負事から逃げているだけだよ。その点
「えぅっ、げほっ……そんな、ことは」
『いいやあるね。
ここまでのことをしているのに、禊の表情には一切の変化がなかった。少なくとも、妹に対する態度ではない。
『いつまでそうやって逃げ続けるんだい? 僕達
「でも、もう私は、責任とか、そういうのには疲れちゃって……」
『へーえ。さっきまで「生きる理由」とか言ってた割に、随分しょうもないこと言うんだね』
「なっ──!?」
言葉の端々から滲み出す悪意が教室に充満していく。
自らがいかに小さい人間であるかの証明を延々と聞かされ続けるのは、もはや拷問と言って差し支えない。
言葉尻を取られ、揚げ足を取られ。ありとあらゆる発言を悪意のフィルターに通して解釈されるのは、どうやら思っていたよりも苦痛であったらしく、
「ッ、おっ……お兄ちゃんに! 一体私の何が」
『聞いてないから分かるわけないじゃん。そういう言葉は分かってもらう努力をしてから言えよ』
禊は
『なんだっけ──禁止令? 他人にくっつかないと生きていけない菌糸類の
「──ッ!! こ、のっ……!!」
それどころか、むしろ。
「うぅぅ……なんで……!」
『
禊は
「ひ、ぃっ……いた、
『えぇっ!? どうしたんだい
「やめてっ!!」
いつだったか、黒神真黒や阿久根高貴に対して
『どうして僕を避けるのかな、僕らは頭に螺子を螺子込んだ仲じゃないか。忘れちゃったのかい? 悲しいなあ、寂しいなあ』
「どっ、どうして! どうしてここまで酷いことを、そんな簡単に──」
『僕って昔からこうだけど。生まれてから今まで、僕が
禊は
『これを見ても、まだそんなことが言えるのかい? 嬉々として大手を振って刀を振っていたのに、自分がやられたら被害者振るわけ?』
「そんな、そんなつもりじゃ」
『どういう腹づもりだったのかは知らないけど、それにしたって
「……お兄ちゃんだって──」
『大切な妹を傷つけた奴を、親愛なるライバルを傷付けた奴を、こんな僕のことを慕ってくれていた後輩達を傷付けたやつを、
禊は五本目の「
「がッ!?」
『妹だったら攻撃されないと思った? 自分がこのままタダで死ねると思った? 甘えよ。』
「……ごめん、なさい。もうしま──」
『今更謝られても困るなあ。謝るだけで許されるなら警察はいらないぜ? それに、その甘さは僕好みじゃない』
体が血に染まる。死なない程度に、死にたくなる程度に、
「やめて……お兄ちゃん……」
『ところで
「…………ごめんなさい、許して、もうやめて……」
『神様ごっこは楽しかったかな? 偶然手に入れた力を思う存分振り回すのは気持ちよかった? 僕達のことを上から目線で見下して、自分の好きに扱うのは面白かった?』
「…………」
『黙ってないでさ、もっとお話しようぜ? 僕は怒ってるんじゃなくて理由を聞いてるだけなんだから』
「──私が話したら、許してくれる……?」
『知らねえよ。僕に聞かれても困る。だって、僕は当事者じゃない──だから』
その言葉を皮切りに、突如として
『「
禊の背後には──黒神めだかと、人吉善吉が。
そして
「めだか、ちゃん? それに、善吉くんも……」
『
「……いいの?」
『僕はきみを一生許さないよ。何があっても、絶対に許さない。僕の数少ない宝物である妹を奪おうとした罪は重いからね──その代わりに、きみも、きみを傷つけた兄を……僕のことを、どうか許さないでほしい』
「……うん。分かったよ、お兄ちゃん」
──最後の戦いは幕を閉じた。
ここからの話は、全て後日談でしかない。
なんか球磨川くんが乱暴してるけどちゃんと理由があります。
それと、次回で黒神めだかの後継者編は終わりです。
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