TSした上に『負完全』の妹   作:Minus-4

73 / 95


 皆さんのおかげで、「TSした上に『負完全』の妹」が、タグ「めだかボックス」が付いている小説の中で総合評価が一位になりました。本当にありがとうございます。

 次の目標は総合評価10,000ptです。これからも頑張ります。





第71箱「不幸のどん底に」

 

 

 勢い勇んで押っ取り刀で操縦席の外に飛び出したはいいものの、こいつ……いまいち得体が知れねーんだよな。

 

 それに、あ(・)の(・)姿(・)勢(・)……這い這いの姿勢を取っている理由の方も気になる。なんつーか、俺の周りには癖が強い奴が多いせいで、何か意味があってやってるのか、そういう人なのかの見分けがつかねーのよ。

 

 ……何はともあれ、俺の方が先に動くしかなさそうだ。ほっといたら何されるか分かったもんじゃねーし、さっさとこいつの能力を明かしておきたい。

 

 何をしてくるか分かったもんじゃねーから、念のため俺のスキル、「凍る火柱(アイスファイア)」を使って防御鎧でも展開しておくか。名付けて「氷絶(アイスタンク)」。

 

 あーあ、こういう時は妹と兄貴が羨ましくなるぜ。なんせ、俺はこの身で体(・)験(・)し(・)た(・)こ(・)と(・)じゃないと満足に解(・)析(・)もできやしねーんだから。

 

 とりあえずは、挑発から。

 

「口で鎌なんか咥えちまってさ、キャラ付けのつもりか? そういうのは中学生のうちに卒業しておいた方が身のためだぜ、おばさん」

 

「ほほほ、そこまで歳も離れとらんのに、おばさんに見えるゆうことは……あんたはんから見て、それだけうちが、大(・)人(・)の(・)魅(・)力(・)に(・)溢(・)れ(・)と(・)る(・)ゆ(・)う(・)こ(・)と(・)や(・)ろ(・)? ありがとなあ、ほんま嬉しいわぁ」

 

「……なんだお前、ぶっ殺すぞ……」

 

 いやいや、殺しは無しだ。既に人体実験やらなんやらで限りなく黒に近いグレーゾーンにいる俺が、人を殺しちまったらガチで真っ黒になっちまう。

 

 挑発には皮肉で返して来て、なおかつ余裕を崩した様子もない……本当にやりたくないが、全身氷漬けにしてやるしかないだろうなあ。

 

「……ぜ先輩、名瀬先輩!!」

 

「うおっ!? なんだよ善ちゃん、びっくりするからあんま大声出すなよ。ほら、俺って小心者だから……さあ、配慮してくれよな」

 

「なんで不用意にそいつに近づいたんですか!! 今すぐ離れてください!!」

 

 はあ? 何言ってんだあいつ。俺がそんな子供みたいなミスをやらかすかよ。まったくもー、心配性な後輩を持つと大……変……。

 

 変(・)だ(・)な(・)。俺は翼の根本から離れたつもりはないし、叶野とやらとこ(・)こ(・)ま(・)で(・)近(・)い(・)距(・)離(・)に(・)は(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)はずなんだけどな。

 

「お前……俺に何かしたか?」

 

「ほほ、何もしとらんよ。うちはここでただ大(・)人(・)し(・)く(・)、あんたはんが子(・)供(・)っ(・)ぽ(・)い(・)失敗をするのを待っとっただけどすから」

 

「……俺は、他の奴らに比べれば、十分に大(・)人(・)び(・)て(・)い(・)る(・)と思うんだけどよ」

 

「大(・)人(・)ぶ(・)る(・)ゆうんは、子(・)供(・)の(・)う(・)ち(・)しかできんことやないの? 随分と面白いこと言いはりますなあ」

 

「子(・)供(・)の言うことに目くじら立てて、一々取り上げてムキになって反論して、大(・)人(・)ら(・)し(・)さ(・)ってのはそういうもんなのか?」

 

「うちは大(・)人(・)やから、子(・)供(・)の遊びにも一々付き合ってあげとるんよ。ほんま、感謝して欲しいくらいやわあ」

 

 ……調べるまでもねえ、こ(・)れ(・)がこいつのスタイル──もとい、言葉(スタイル)だろ。だったら逆(・)に(・)好(・)都(・)合(・)、ぶぶ漬けなんか目じゃないくらいに氷漬けにしてやるぜ。

 

「ところで、その鎧……随分と雅どすなあ、ほんま羨ましいわあ。もっと細(こま)いところまで見たいから、こっちに近う寄ってくれまへん?」

 

「ん? おう……ったくよー、しょうがねーな。羨ましいんなら羨ましいって、さっさと言ってくれりゃあいいのによ」

 

 俺は叶野に近づき、氷絶(アイスタンク)を触らせた。何でかは分かんねーけど、褒められて悪い気はしなかったし、触れられたところでどうにもならねーだろうし。

 

「名瀬先輩!!」

 

「だから、あんまり大きな声出すなって。俺だって考えなしに近づいたわけじゃ……? あれ、俺……どうして近づいたんだ?」

 

「今更気付いてももう遅いわ」

 

 俺は身を翻し、その場から離れようとするが……しかし、叶野が投げた石(・)礫(・)によって氷絶(アイスタンク)を砕かれた。

 

「──ちっ、俺もまだまだ詰めが甘いな……いつもならあり得ねー判断ミスばっかだぜ。叶野の、お前の言葉(スタイル)のせいでな」

 

「そんな風に言われると傷つくわあ。子(・)供(・)ら(・)し(・)い(・)ミスばっかりで、可愛らしいやんか……今だって、た(・)っ(・)た(・)今(・)仕(・)込(・)ん(・)だ(・)石(・)に(・)気(・)付(・)い(・)と(・)ら(・)ん(・)」

 

「たった今仕込んだ……?」

 

 どこに? 仕込まれた感覚はない……いや、しかし、叶野が嘘を吐いているようには全く見えねーし、だが石なんて、どこにも──。

 

「石にも気付かんくらい、体が強いんやねえ。その頑丈な体に感謝しなはれな、夭歌はん」

 

 ──そう言った瞬間、俺(・)の(・)全(・)身(・)の(・)皮(・)膚(・)が(・)切(・)り(・)刻(・)ま(・)れ(・)た(・)。

 

「──ッ!!?? なっ、ぐっ……はーっ、はーっ……お前、マジでなんなんだよ……さ(・)っ(・)き(・)ま(・)で(・)無(・)か(・)っ(・)た(・)は(・)ず(・)の(・)石(・)が、何(・)故(・)か(・)こ(・)の(・)手(・)に(・)握(・)ら(・)れ(・)て(・)る(・)しよー……!」

 

「ほほ、赤色が映えてて綺麗やねえ。ぺっぴんさん過ぎて、少し妬けてまうわあ」

 

 即座に傷を凍らせて出血を止めるが……いやしかし、どういう言葉(スタイル)なんだマジでよ。

 

「名瀬先輩の全身が傷だらけに……まるで志布志殿の『致死武器(スカーデッド)』のように、古(・)傷(・)を(・)開(・)く(・)言葉(スタイル)なのでしょうか……?」

 

「お前は戦挙の時まだいなかっただろ……だけど『致死武器(スカーデッド)』とは、少し違うように見えるんだがな……」

 

 善ちゃんの言う通り、これは「致死武器(スカーデッド)」とは全くの別物だ。だってあれで開くのはあくまで古(・)傷(・)! 作りたての鎧が壊せるわけないし、何より俺が受けたダメージは全てピッカピカの新品!

 

 いや、しかし……氷絶(アイスタンク)を砕けるくせに、全ての傷が皮(・)膚(・)止(・)ま(・)り(・)なのは、一体どういう仕組みなんだ? これじゃあまるで、皮膚だけ狙って攻撃したみたいじゃんかよ。

 

 ……や(・)け(・)に(・)頭(・)が(・)冴(・)え(・)る(・)な。さっきまではあんなに子(・)供(・)み(・)た(・)い(・)な(・)ミ(・)ス(・)をしてたっつーのに、今になって突然──。

 

 ──まさか、別(・)物(・)なのか?

 

 さっき俺が子(・)供(・)っ(・)ぽ(・)く(・)な(・)っ(・)た(・)理由。これは叶野の言葉(スタイル)の影響で間違いない。大人だの子供だの、あからさまだったしな。

 

 しかしその言葉(スタイル)で、俺を子供っぽくした言葉(スタイル)で……鎧を砕けるか? 皮を裂けるか? 出来るわけねえだろ。

 

 つまり、叶野の言葉(スタイル)は、少なく見積もって二(・)つ(・)。贄波と同じく、複数の言葉(スタイル)を使い分けるわけだ。

 

 そこまで分かれば、後は検証するだけだよな。いつもの俺らしくいこう。別に片方に限定する理由はないし、ここは炎(・)と(・)氷(・)の(・)合(・)わ(・)せ(・)技(・)だ。

 

「……そろそろええかいな? うちかて漆黒宴には遅刻した身やけども、うち自身はそこまで長ーい気はしとらんのよ。まあそういうわけやし──」

 

「あー、すまんね叶野の。あんまりにもダラダラとしてるもんだから、その間、俺は俺で色(・)々(・)や(・)ら(・)せ(・)て(・)も(・)ら(・)っ(・)た(・)わ(・)。こんなのにも気が付かないとは、あんたも中々のんびりしてんだな」

 

 俺は足元から氷を伝わらせ、叶(・)野(・)の(・)手(・)足(・)を(・)凍(・)ら(・)せ(・)た(・)。わざわざ這い這いしてくれてるんだから、それを利用しないってのも無粋だろ。

 

「……うちは、氷をも砕ける女どす。それはもうさっきの攻撃で、分かり切っとることやと思うとったけどなあ」

 

「そうは言うけどさあ、氷を砕いたのはお前じゃなく、石礫のほうだ哀炎気炎!!」

 

「なっ、名瀬先輩……セリフの途中で攻撃ぃぃぃぃッ!? 卑怯だ! 卑怯すぎる!!」

 

 善ちゃんちょっとうるせえよ。この攻撃で叶野の言葉(スタイル)の仕組みが分かるんだから、こんくらい多めに見てくれって。

 

「下は氷塊、上は炎塊……これ、なーんだ? 別に答えなくていいぜ、答える間もなく焼き尽くすからな」

 

「はて、分からんなあ。どれだけ考えても、ほんまに分かりませんわあ。いやはや、肝が冷える思いどす」

 

「いつまでその余裕を保っていられるか疑問だぜ。たった今から焼き尽くされて、お前は無様に負けるっていうのに──」

 

「せやから言うとるんよ。こ(・)の(・)程(・)度(・)で(・)ど(・)う(・)し(・)て(・)勝(・)っ(・)た(・)気(・)で(・)い(・)ら(・)れ(・)る(・)の(・)か(・)分(・)か(・)ら(・)ん(・)っ(・)て(・)」

 

 叶野はそう言うと、い(・)つ(・)の(・)間(・)に(・)か(・)溶かした氷──水を手で掬い、哀炎気炎にぶつけて完(・)全(・)に(・)掻(・)き(・)消(・)し(・)た(・)。なるほどなあ、ほ(・)と(・)ん(・)ど(・)理(・)解(・)で(・)き(・)た(・)ぜ。

 

 だから次は、この仮説を完(・)成(・)させに行く。

 

「……今のは流石に、肝が冷えたわあ。ギリギリで氷も溶けてくれはったし、運はうちの方に向いとるみたいやね」

 

「どうだかな。むしろ今の攻防で、俺の方はお前の言葉(スタイル)の実態をほとんど掴んだぜ」

 

「無理や無理や! いくら考えても本家仕込みの平和な脳では、うちの言葉(スタイル)は見抜けまへん。おっと、そう言えばあんたはん、黒神家除籍やったっけ? ほなえらい災難やったなあ」

 

 ……えらい災難、か。そりゃあ確かに、お前から見たら俺の境遇は、災難としか表現できねーだろうよ。

 

「関係ないのに巻き込まれて、訳のわからん攻撃に晒されて、頼りのスキルは一個も通じんで……ほんま、不幸のどん底ゆう感じやろ?」

 

 

 

 

「いや絶頂♡」

 

 

 

 

「出た変態ーっ! 異様(いよ)っ! 不幸の絶頂M笑顔!!」

 

「ち、ちょっと、善吉くん! なんで僕の目塞ぐのさ、ぼくにも見せてよ名瀬くんの笑顔。別に見てもいいでしょ?ねっ?」

 

「お前にああいうの見せるとお前の兄貴が滅茶苦茶文句言ってくるんだよ!!」

 

 ……善ちゃんには迷惑かけるなあ。が、しかし、俺が最高に最悪な場面に立たされて嬉しいってことも理解してくれ。

 

「つーわけでよ、叶野の。不(・)幸(・)の(・)ど(・)ん(・)底(・)に(・)落(・)ち(・)て(・)か(・)ら(・)が(・)こ(・)の(・)俺(・)だ(・)。こっからの俺は一味違うし、人(・)が(・)違(・)う(・)と思って貰って構わねえよ」

 

「……これはまた、随分なことを言いはりますなあ。元気がある子みたいで、何よりやわ」

 

 さて、こっからが正念場だぜ、名瀬夭歌。後輩が見てんだ、かっこ悪いとこなんて見せてられっかよ。

 

 






 京都弁に自信がないので京都弁に自信がおありの方は、どしどし誤字報告をよろしくお願いします。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。